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第二次スパロボバトルロワイアル9
- 1 :それも名無しだ:2009/03/21(土) 02:14:02 ID:Izr/t2qA
- ※初めて来た人はまずはここを読んでください。
【原則】
リレー企画ですのでこれまでの話やフラグを一切無視して書くのは止めましょう。
また、現在位置と時間、状況と方針の記入は忘れずに。
投下前に見直しする事を怠らないで下さい、家に帰るまでが遠足です。
投下後のフォローも忘れないようにしましょう。
初めて話を書く人はまとめサイトに行ってルールや過去のお話にしっかり目を通しましょう。
当ロワは予約制です。投下する前にスレでトリップを付けて使うキャラを宣言しましょう。
予約の期限は5日です。間に合わなくても2日延長可能なので、延長する場合は一言連絡を。
【ルール】
EN・弾薬は補給ポイントを利用することで補給することができます。
補給ポイントは各キャラの所持するマップにランダムに数個ずつ記載されています。
機体の損傷は、原則として機体が再生能力を持っていない限り直りません。
再生能力も制限で弱体化しています。
特定の機体がスパロボのゲーム内で持っている「修理装置」「補給装置」はありません。
DG細胞が登場していますが、機体の過度の変質、死者のゾンビ化は制限により禁止されています。
機体の再生、感染、「生きている人間」の身体の補強のみが行われるようです。
マシンセルによる機体の変質や環境操作も制限を受けています。
唯一メディウスロクスのみ機体が変質していますが、これはスーパーロボット大戦MXの展開に準拠したものです。
乗り換えは自由です。
参加者へロワ参加者の名簿は支給されていません。
【備考】
作品の指摘をする場合は相手を煽らないで冷静に気になったところを述べましょう。
ただし、キャラが被ったりした場合のフォロー&指摘はしてやって下さい。
おやつは三百円までです、ただしクスリはダメ、ゼッタイ。
スパロボでしか知らない人も居るので場合によっては説明書きを添えて下さい。
水筒の中身は自由です、未成年者も多いのでアルコールは控えてください。
これはリレー小説です、一人で話を進める事だけは止めましょう。
作品の保存はマメにしておきましょう、イデはいつ発動するか分かりません。 ( 凸 _)<1本(SSを因果地平の彼方に)いっとく?
前スレ 第二次スパロボバトルロワイアル8
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gamerobo/1233038003/
第二次スパロボバトルロワイアル7
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gamerobo/1221562748/l50
第二次スパロボバトルロワイアル6
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/gamerobo/1209040285/
第二次スパロボバトルロワイアル5
http://game13.2ch.net/test/read.cgi/gamerobo/1187103340/
第二次スパロボバトルロワイアル4
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/gamerobo/1176030907/
第二次スパロボバトルロワイアル3
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/gamerobo/1170806726/
第二次スパロボバトルロワイアル2
http://game11.2ch.net/test/read.cgi/gamerobo/1161702283/l50
第二次スパロボバトルロワイアル感想・議論スレ
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/gamerobo/1149764572/
第二次スパロボバトルロワイアル
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/gamerobo/1149350054/
第2次スパロボロワイヤル企画スレ
http://game10.2ch.net/test/read.cgi/gamerobo/1148890280/
まとめwiki
http://www30.atwiki.jp/srwbr2nd/
携帯用簡易まとめ
http://srwbr2.nomaki.jp/SRWBRi/index.html
旧まとめサイト(停止)
ttp://2nd.geocities.jp/s2matome/main.html
仮まとめサイト(停止)
ttp://srwbr2.nomaki.jp/index.html
- 2 :それも名無しだ:2009/03/21(土) 11:54:02 ID:wA2KuX8x
- >>1乙
- 3 :代理投下:2009/03/21(土) 13:50:07 ID:4jF0m6+o
- 【カミーユ・ビダン 搭乗機体:VF-22S・Sボーゲル(マクロス7)
パイロット状況:強い怒り、悲しみ。ニュータイプ能力拡大中。疲労(大) 気絶
機体状況:オクスタン・ライフル所持 反応弾所持 EN10% 左肩の装甲破損 全体的に装甲表面に傷。
現在位置:D-3南部
第一行動方針:インベーダーへの対処
第二行動方針:首輪の解析を行ないつつしばらくJアークに同行
第三行動方針:ユーゼス、アキト、キョウスケを「撃ち貫く」
第四行動方針:遭遇すればテニアを討つ(マシンセルを確保)
最終行動方針:アインストをすべて消滅させる
備考1:キョウスケから主催者の情報を得、また彼がアインスト化したことを認識
備考2:NT能力は原作終盤のように増大し続けている状態
備考3:オクスタン・ライフルは本来はビルトファルケンの兵装だが、該当機が消滅したので以後の所有権はその所持機に移行。補給も可能】
【Jアーク(勇者王ガオガイガー)
機体状態:ジェイダーへの変形は可能? 各部に損傷多数、EN・弾薬共に100%
現在位置:D-3南部
備考1:Jアークは補給ポイントでの補給不可、毎時当たり若干回復
備考2:D-4の空間観測を実行中。またその為一時的に現在地を固定
備考3:ユーゼスが解析した首輪のデータを所持(ただし改竄され不完全なため、単体では役に立たない)】
D-3を中心としてその周辺のインベーダーはすべて消失しました。
【二日目16:00】
- 4 :それも名無しだ:2009/03/21(土) 13:50:26 ID:xkV1oLP+
- >>1乙です!
一杯になったのでこちらに残りを投下します
- 5 : ◆ZqUTZ8BqI6 :2009/03/21(土) 13:51:20 ID:xkV1oLP+
- と、すでに代理投下があった……代理投下してくださった人、感謝します。
投下、完了です。
だいぶいろいろ書きなおして落ちついた感じにはなってるはず……
これでもやり過ぎでしたら修正しますのでお願いします
- 6 :それも名無しだ:2009/03/21(土) 13:53:01 ID:4jF0m6+o
- 代理投下完了です。
512kbに引っ掛かったので状態表を次スレと二分割してしまいましたorz
- 7 :それも名無しだ:2009/03/21(土) 13:56:35 ID:4jF0m6+o
- >>5
乙でした。
こちらこそスレまたぎで分割してしまい申し訳ありません。
まだ読み途中なのですが超絶展開にwktkしてます
これから全部読むのが楽しみです。
- 8 :それも名無しだ:2009/03/21(土) 17:06:39 ID:YCU+mAef
- おおお熱い!アムロかっけぇ!
しかし最後の一文見て改めて読み返すと、なんか勇者王アムロと同質のノリを感じたのは気のせいかw
- 9 :それも名無しだ:2009/03/21(土) 21:13:02 ID:6smcUS3i
- ゴwッwドwフwィwンwガwーwwwwwwww
吹いたwwwwwwwwwww
乙!
- 10 :それも名無しだ:2009/03/21(土) 22:16:14 ID:JtMHsfOV
- 投下&代理投下乙!
前の投下から二日とか早すぎるwww
まさかのギンガナム復活でテラフリーダムwとか思ってたらアムロの方がもっとフリーダムだったw
ゴッドフィンガーも最初はん?って思ったけどZガンダムのハイパービームサーベルと同じ原理と考えたら何の問題もないな!
・・・ところで、
>多重に重なり合い映りだされるF-91から、無数の拳が繰り出される。
>さながら、拳だけが高速で撃ち出され、分裂したように。瞬きすらも許さぬ速度で繰り出される拳が、モビルファイターを押し倒す。
ペガサス流星拳ならぬガンダム流星拳かよw
- 11 :それも名無しだ:2009/03/21(土) 22:46:26 ID:xkV1oLP+
- >10
実は最初はシャイニングフィンガーソードとZ式ハイパービームサーベルの予定だったんですけど……映えないのでこっちにw
- 12 :それも名無しだ:2009/03/22(日) 03:51:47 ID:M5hkZoep
- 毎度毎度クライマックスのアムロ自重www
細かい事なんですが、インベーダーはゲッター線が主食です
真ゲッターロボはインベーダーに飽和以上の量のゲッター線を与え進化を暴走させて倒してるようです
チェンゲの敷島博士が言ってた
だから多分生命や進化のエネルギーに弱い訳ではないと思います
あとコーウィンではなくコーウェンだったと思います
話の大筋には関わらなそうなので一応
- 13 :それも名無しだ:2009/03/22(日) 16:01:08 ID:v9GjSjbZ
- >>12
すいません、wiki収録時それらの設定の祖語や細かいミスは直しておきます……
テニア、統夜、ガウルン、あとちょい役でほとんど出番ありませんがキョウスケ、合計4名を予約します
- 14 : ◆ZqUTZ8BqI6 :2009/03/22(日) 16:08:42 ID:v9GjSjbZ
- しまった、トリが出てないorz
- 15 :それも名無しだ:2009/03/22(日) 17:55:59 ID:LYAVgmSB
- またかw
なんという覚醒の使い手・・・!
- 16 :それも名無しだ:2009/03/23(月) 15:54:29 ID:6Sbi3nGi
- ふと思ったんだが、御大将の復活と死亡って死亡者リストと殺害数ランキングに入れるべき?
死亡前と別人てことで入れてもいいと思うんだけど。
最後のセリフが
「これが『ガンダム・ザ・ガンダム』と言うものかあぁぁぁぁっ!!?」
と、かなりカッコいいものだしw
- 17 : ◆ZqUTZ8BqI6 :2009/03/23(月) 16:47:56 ID:WOfmoOPt
- 完成したので投下します
- 18 :排撃者――表:2009/03/23(月) 16:49:14 ID:WOfmoOPt
- またも押し寄せるインベーダー。
それを小蠅を払う気軽さでダイゼンガーはなぎ払い始めた。
テニアは知る由もないが、このダイゼンガーはオリジナルを越える戦闘能力を有している。
元来、両立しえない斬艦刀モード、オリジナルダイゼンガーモードの二つの特性と武器の使用を可能とし、
さらにもともとガンダムファイターなどフィードバック型の機体の強化に適したDG細胞で機体の性能、追従性を高めてるのだ。
腕を斬り飛ばして飛ばすシーンすら正確に想像できるようになったガウルンの頭脳と持ち合わせている体技。
これだけ揃っていれば当然だろう。
ダイゼンガーを中心に竜巻が起こる。
その斬撃は、インベーダーたちをまたたく間に壊滅させていく。
一刀で百の群れを切る。
二刀で二百に増えた肉片を四百へ。
空から降り注ぐ肉片が、大地を穢す。
広域殲滅戦闘において、ダイゼンガーの斬艦刀を中心とした武装はこれ以上ないほどの高相性を発揮する。
「ガアアアアアアア!!」
インベーダーの突撃――しかし、無為。
突如として大型のナイフ――これもテニアは知らないが、見る人が見ればグルカナイフと分かる――へ形を変えた斬艦刀が、
インベーダーを瞬殺する。その後も立て続けに飛来する数体を、使い勝手のいいナイフでダイゼンガーはさばいている。
そして、僅かにダイゼンガーへの攻撃の間が空いたとき、ナイフから大刀へと姿を変えた斬艦刀が、群れをなぎ払う。
テニア達は逃げるわけにはいかなかった。
逃げれば、そこにいるインベーダーの物量に押しつぶされる形となるだろう。
結果として、最悪の悪鬼がいまや自分を守護する盾なのだ。
結局僅か五分もかからなかった。
空を覆うほどだったインベーダーの大半を意気揚揚と片づけたガウルンが、またも自分たちの前に立つ。
まずい。
テニアがガウルンを見て反射的に浮かんだこの言葉だった。
ガウルンは、知ってる。自分と統夜、両方と話したからこそ真実を。
統夜は、もう別になんであろうとかまわないと言ってくれた。
それでも、ほんの少し、失望するのではないか。
そのほんの少しが、とても恐ろしい。
- 19 :排撃者――表:2009/03/23(月) 16:49:55 ID:WOfmoOPt
- 統夜は、剣を失っているにもかかわらず、自分を守ろうとガウルンと自分の間に立つ。
やっぱり、統夜は優しい。そんな彼を裏切る……いや裏切ったことは知られたくなかった。
「よう、また会ったな統夜」
「いったい、何の用なんだ。 俺を騙して、駒にして……もういいだろ!?」
ああ。
そこだけは触れないで。
それを聞いてしまったら、ガウルンは答えるだろう。
―――「いやいや騙してるのはそっちの嬢ちゃんのほうだ」と。
そして、失望された自分を見て嘲り笑うのだろう。
一瞬後に起こる出来事が、この上なく幻視できてしまう。
お願い、やめて。
そう叫ぼうとする喉を、必死に押さえる。
ガウルンが、通信機越しに、下卑た笑いを深める。
そして、こう言った。
「いやあ、分かったか。お仲間同士本気で殺し合うのは楽しみにしてたんだが……ばれたらしょうがないな」
え?
その言葉の意味はなにか。今から何をするか。身構えた時。
ガウルンから飛び出したのは、さらに驚愕の一言だった。
「いや正直に嘘は認めてやるよ。
その代わりってわけじゃないが……もう一度手が組まないか、ってな」
◇ ◇ ◇
ガウルンに関して以前言ったことをもう一度言おう。
このガウルンという人間、一見単純で自堕落で享楽的に見えるが、その認識は間違っている。
この男は自分自身の経験と、だれよりも狡猾で、深い戦闘および戦術の判断で冷静に戦う、歴戦の戦士……いや修羅なのだ。
故に、無策であの蒼い魔王と戦うなどという気はさらさらなかった。
いかに自分に与えられたこの大型機が強かろうとも、それでもなお正面からぶち当たって勝てるとは思えない。
そうガウルンにすら感じさせるほどの人間離れした――いや人間という壁を越え彼岸を超えてしまった力。
- 20 :排撃者――表:2009/03/23(月) 16:50:36 ID:WOfmoOPt
-
そんなものと、のこのこ突っ込んでいって戦う?
正気の沙汰ではない。
人間としてのモラルなど欠片も持ち合わせてない狂人が、正気を語るのもいささかおかしいが、
ここ一点、戦闘においてガウルンの判断に間違いはなかった。
元の世界でも、この箱庭でも、ここまで戦闘を繰り返し生きてきたことがその証明となる。
戦闘狂で死をも恐れないことと、無為無策で命を投げ出すことでは、超えられない壁があるのだ。
そのため、手を組む相手としてガウルンが選んだのは、統夜とテニアだった。
二人とも、殺しに乗り、けして倫理なんて言うものを振りかざすことなく、そして十分な力を持ちえる存在。
さらに言うなら、統夜にはまだまだ伸びしろがあるし、遊びがいがある。
若干失望した部分もあるが、そんなものはカシムと同じだ。
本質的には、カシムも統夜も、そしてアキトもガウルン側の人間。
かなめやテニアのような存在で向こう側にいる気分に浸っているが、そんなものは薄い膜のようなものだ。
簡単に――そう、本当に簡単な、『かなめやテニアを殺す』というシンプルな方法できちんと戻すことができる。
むしろ、こうなったらテニアの真実を話すのはよくない。統夜にとって、テニアは綺麗な綺麗な宝石でなければいけないのだ。
そうでなければ、汚したときに生まれるお楽しみも薄くなる。統夜はアキトよりも、もっともっと輝くかもしれないほどの原石だ。
まだまだ光る卵を放置するのも気まぐれではあるが癪に障る。
(と、言ってもテニアを殺すのはまーだ少し先だがな。最低でも基地のあれを殺すまでは、な)
テニアをこの場、統夜の前でぐっちゃぐちゃにするのも悪くないが、それをやってしまえば統夜と手を組むことは不可能だ。
気持ちの問題としては、優先順位として統夜を起こすのを第一にしたいところだが、
現実自分がカシムのいるあの世界に戻ってさらに楽しむためには、生き残らねばならない。
ということは、あの魔王を倒さねばならないということだ。
誰かが倒してくれるだろうなどという夢想ができるほリアリストのどガウルンは楽観的にはなれなかった。
「……どういうこと、だよ? しかも……よくも……よくもぬけぬけと……!」
相手を探るような、それでいて怒りをこらえ切れていない声で統夜がガウルンに問う。
まあ、そうだよな、しかし若いねえ、と内心考えながらガウルンは薄く笑う。手を組もうという問いかけは100%ガウルンの勝手な都合なのだ。
統夜たちからすればわけがわからないに決まっている。
「まあ、その前に見てほしいものがあるんだが……そっちに送る。この殺し合いのマスターからの一杯だよ」
そう言って、ベルゲルミルとヴァイサーガにビデオメールを送信する。
少し不審がる様子を見せたものの、見てみなければ始まらないとでも思ったのか、両者ともその映像を開いた。
「なんだよ……これ……?」
愕然とした統夜の声。
まあ、そうだろう。自分が感じたあのプレッシャーを、統夜も経験しているのだから。
二人に送ったのは、自分が見てきた魔王が基地でインベーダーを蹂躙する映像だ。
ぐちゃぐちゃ語るのは、こういうときは逆効果だ。余計に胡散臭くなる。だから、分かりやすく映像で示す。
「これ……あたしが戦ったの化け物……?」
テニアのお嬢ちゃんは、どうやらこれと戦ったことがあるらしい。
余計好都合だ。この映像のリアリティが増すってものだ。
さてさてと、一拍時間を置き、話をガウルンは切り出した。
- 21 :排撃者――表:2009/03/23(月) 16:51:22 ID:WOfmoOPt
-
「さーて、テニアのほうは戦ったことがあるらしいんだが……これが今暴れ回ってるわけだ。
当然、空飛ぶ化け物に加えてこんなモンがあったらずいぶん面倒なわけだが……そこで、だ。
手を組まないかってわけだ。もちろん、条件はさっきまでと同じで、好きな時に後ろから撃っていい。
この空飛ぶ化け物と、その蒼い化け物の両方を殺るまでの限定でな。今度こそ嘘は抜きだぜ」
自衛のために手を組めという説明。
無論、先ほどこの二人がずいぶん空の化け物にも苦戦していたのを見越しての提案だ。
得物を失ったヴァイサーガと、まだまだ本調子じゃないベルゲルミルでは、
インベーダーどもに、たかられ続ければそう遠くない未来、落ちるのは向こうも理解している筈だ。
「もっとも、俺一人でもやれるんだが……ちょっと今回ばかりは骨が折れるんでね。こうやって話に来たってわけだ」
自分一人ではまず無理などとは言わない。そんなことを言えば相手は間違いなく断るだろう。
弱みは見せず、相手の弱みに付け込む。それこそが、交渉の基本。
正直言えば、ガウルンも連戦の大きな疲労がたまってつらいのだ。
無言でいる二人を観察する。お互い、無言で目を合わせては、眉をしかめている。
強がりともいえる言葉だが、どうやら気付かれた様子はない。
今まで、自分がやってきた戦いが、結果として大きく効いているのだろう。
どうやらずいぶんと自分は恐怖の魔人の如く思われているらしい。
「ねぇ統夜。……ガウルンの提案、飲もうよ。統夜を『だましてた』ことを正直いってくれたし、このままじゃ危ないよ。
それに……あの蒼い角突きは、本当に危ないんだ。もし、不意を突かれたあっという間にやられちゃうかもしれない」
「テニア!?」
少し目くばせし、先に切り出してくれたのはテニアだった。
実際戦った分だけあの脅威は理解してるということだろうか。それにしても、話し方の妙なイントネーションのあった場所。
暗に、『手を組んでやるから真実は絶対に言うな』ということなのだろうか。
まったく、欲が深いというかちゃっかりしてると思いながらも、ガウルンは統夜に視線を戻す。
テニアと、ガウルン両方に見られては、さすがに同意するしかないと思ったのだろう。
相変わらず猜疑にまみれた声ではあったが統夜も再度の同盟を認めた。
「分かったよ。またあんたと組む。けど、俺たちは、『二人』で生き残るんだ。
以前言われた通り、何かあったら後ろから討つし、いざって時あんたを見捨てると思う。……いいんだな?」
「あぁ、もちろん。むしろそれで大変結構。こっちも、『一人』で生き残るつもりなわけだ。
しばらくは頼むぜ、統夜、テニア。これでどこぞの誰かと違ってネゴシエーションは成功ってわけだな」
なんにせよ、しばらく機体慣らしもしたいし、まだもう少し戦力もほしい。
基地にいるのは伏せて、しばらく話したあとなにか理由をつけて基地に向かわせればいいだろう。
「それで、とりあえずこっちは満足なわけだが……そっちは何か都合はあるか?」
「次の放送までは、A-1にいなきゃいけない」
「ほぉー、どうしてだ?」
「それは、ここに、ユーゼスが……っと!?」
流石にしびれを切らしたのか、再び周囲から集まり攻撃を始めるインベーダーの群れ。
「ユーゼス、ねぇ……何かしらないが、これを潰したらまた話は聞かせてもらおうか」
「こいつら……! 剣があれば……!」
「ああ、それならくれてやるよ」
- 22 :排撃者――表:2009/03/23(月) 16:52:04 ID:WOfmoOPt
-
ガウルンは、ダイゼンガーの腰に備えつけられていたもう一刀を、缶ジュースでも放るような気軽さで投げ渡す。
ヴァイサーガが、なんとか掴んだその刀の名は――ガーディアン・ソード。
身長がほとんど変わらないダイゼンガーの刀は、ヴァイサーガも扱うに適したサイズだ。
いや、むしろ鎧兜に似たダイゼンガーに比べて、騎士甲冑のヴァイサーガのほうがその日本刀離れしたフォルムの剣が似合っていた。
剣さえ手に入れれば、ヴァイサーガならインベーダー如き敵ではないはずだ。
「じゃ、こいつらで慣らしたあと……休んどくか」
鎧武者と西洋騎士が並び立つ。手に握られるは断てぬものなき刃。
その後ろを護るは、勝利の女神。
眼前に立ち塞がる醜悪なる怪物はその供物。
虐殺同然の戦いが始まった。
【ガウルン 搭乗機体:ダイゼンガー(バンプレストオリジナル)
パイロット状況:疲労(大)、全身にフィードバックされた痛み、DG細胞感染
機体状況:万全
現在位置:A-1 市街地
第一行動方針:存分に楽しむ。
第二行動方針:テニアはとりあえず適当なところで殺す。
第三行動方針:アキト、ブンドルを殺す
第四行動方針:禁止エリアのインベーダー、基地のキョウスケの撃破
最終行動方針:元の世界に戻って腑抜けたカシムを元に戻す
備考1:ガウルンの頭に埋め込まれたチタン板、右足義足、癌細胞はDG細胞に同化されました
備考2:ダイゼンガーは内蔵された装備を全て使用できる状態です
備考3:謎の薬を一錠所持。飲めば禁止エリアに入っても首輪が爆発しなくなる(飲んだ時のペナルティは未定)】
【紫雲統夜 登場機体:ヴァイサーガ(スーパーロボット大戦A)
パイロット状態:精神的に疲労 怒り
機体状態:左腕使用不可、シールド破棄、頭部角の一部破損、全身に損傷多数 EN70% 五大剣紛失 ガーディアンソード所持
現在位置:A-1
第一行動方針:インベーダー、キョウスケに対処
第二行動方針:ガウルン、ユーゼスと協力。でも信用はしない
最終行動方針:テニアと生き残る】
【フェステニア・ミューズ 搭乗機体:ベルゲルミル(ウルズ機)(バンプレストオリジナル)
パイロット状況:焦り
機体状況:左腕喪失、左脇腹に浅い抉れ(修復中) EN50%、EN回復中、マニピュレーターに血が微かについている
現在位置:A-1
第一行動方針:インベーダー、キョウスケに対処
第二行動方針:ガウルン、ユーゼスと協力。隙があれば潰す。
最終行動方針:統夜と生き残る
備考1:首輪を所持しています】
- 23 :排撃者――裏:2009/03/23(月) 16:52:46 ID:WOfmoOPt
-
「はじまりましたの……」
デビルガンダムの中、アルフィミィは、圧倒的強さでインベーダーを破壊するガウルンたちの様子を観測し独りごちた。
世界に溢れたインベーダーの最中、なお彼女のそばには静寂がたたずんでいる。
夕焼けの赤を全員に浴びた液体が照り返すことで、血のような色に輝くデビルガンダム。
彼女は、今実験の箱庭の中にいた。
目的は、たった一つ。インベーダーの排除だけ。
この事件が起こり、ようやく眠るレジセイアから届けられた意識。
それは、『現状を維持、インベーダーを排撃』というものだった。それ以外は、何度問うてもなにも返ってこなかった。
ゲームマスターの任を一時凍結する事になっても、不確定要素の排除を行うようにとデビルガンダムを受け取った時に続き、二度目の命令だ。
彼女は、たった一言で表せる命令を聞き、こうしてついに会場に出向いてる。
この意識が届いたのは、実は、ガウルンが来る直前のことだ。だからこそ、彼女は今までできなかった機体の授与を行ったのだ。
あそこでデモンストレーションとして首を一つ飛ばすのは最初から決定していた。
つまり、本来支給される予定の機体とはいえ、必ず一つあまるのは分かっている。つまり、必然生まれるはずの余剰だった。
それを、ああも堂々と支給できたのは、この命令があったからこそ。
もっと強力なものの支給を、とも思ったが、レジセイアは『現状の維持』も求めているのだ。
以前として越権行為はできない。個人的な肩入れはせず、可能な限りこのままインベーダーを排除しなければならない……
そんな矢先たどり着いたのがガウルンだ。
彼は、インベーダーがなければ、本来彼女の領域に来ることもなかった。
あの場で首輪の爆破も思わないでもなかったが、元をたどればインベーダーが原因。
インベーダーの影響は、受けてはならない。そして、インベーダーを排撃しなければいけない。
その二つの妥協点……それがガウルン相手に行った取引なのだ。
これでも、レジセイアの不興を買い、アルフィミィ自身に処罰を受けてるのではないかと恐れていたくらい。
ここに彼女がいるのもそのため。
一応再度隠ぺいを施し、インベーダーの再流入は防いでいるとは言え、あまりにも多すぎる。
直接、自分も繰り出す必要があった。
レジセイアの意識を害することないよう公平さを保つ――誰にも消して見つかってはいけない。
インベーダーを排除しなければならない――直接会場に行かねばならない。
そして、さらにゲームマスターとしての役目もある。
その、結果。
「全部やらなきゃいけないのがつらいところですの……」
理不尽に思う部分もあるが、そでもやるしかないのだ。
「それにしても……空間の穴は直さないのにインベーダーだけは駄目……いったいどういうことですの?」
ふと、レジセイアのやろうとしていることに疑問を感じた。
空間の穴は塞ごうとせず、何をしても傍観を保つレジセイアが、インベーダーだけは拒否したのだ。
空間の穴だけ必要で、インベーダーは不要……ということなのだろうか?
「まあ、いいですの」
そう言って、ちらりと視線を下におろす。
- 24 :排撃者――裏:2009/03/23(月) 16:53:44 ID:WOfmoOPt
-
そこにあるのは、死骸、死骸、死骸。
足もとにうず高く積まれたインベーダーの死骸は、完全に生命を終わらせられ、ぴくりとも動くことはない。
唯一、この世界の全てを知覚することを許される存在である彼女は、空を眺め目を細める。
彼女が見るのは、たった一か所。もはや廃墟となった基地エリアだ。
基地もここと等しく、動くものはない。
あらゆるインベーダーが圧倒的力で噛み潰され、撃ち貫かれ、殺戮された。
では――その殺戮者は今どうしているか?
―――フフフ………ハハハハ…………
アルフィミィの頭に反響する魔王の笑い声。
嘲笑が、風を切りふりまかれる。基地から、ではない。別所からだ。
彼の者が、インベーダーにより覚醒し、闘争を求めて動き始めた。
ひたすら、目に映るインベーダーを砕き、突き進んでいる。
アルフィミィが純化したキョウスケを放置していた理由に、基地から移動しなかったからというのがある。
干渉できないこともあったが……定められた箱舟の中の戦いをかき乱す不穏分子も、他者と遭遇しなければ当面何の問題もない。
偶然も絡むが、オルバ・フロストとフェステニア・ミューズ以後は、誰も基地へ訪れ接触することなく、
キョウスケ自身も動くつもりはなかった。
だというのに。
各所の参加者たちの思念をアルフィミィは追う。
最後にこの箱庭から切り離された者たちを除き、現在まで誰一人として欠けていない。
流石は選別を経て選らばれ、さらにここまで生き足掻いてきた者たち。インベーダー如きの不確定要素で命を落としたものはない。
そうであるべきなのだ。この戦いはあくまで中で生き抜くものだけで行われるべき閉じた儀式。
それを干渉するゲッター線も、インベーダーも、そして……………も、等しく不要。
言うならば、完全なる静寂にも似た調和のとれた世界を犯すウイルスであり巨大な歪みのようなものだ。
だが、しかし。
結果的にあれの移動は都合がよかったのかもしれない。
インベーダーの襲来という事実を見せつけられては、殺し合い自体を放棄しようという心理も生まれる危険がある。
インベーダーなど関係ない、自分は絶対に管理者側に屈しないと豪語するもの、
最初から管理者の都合など知らない、成すべきこと成せればいいというもの、
そんな参加者ばかりだから今更とはいえ、それでもこの殺し合いへ意識に置いて歪みが生じることは考えられる。
それを叩きなおすため、参加者同士のつぶし合いであることを自覚させるために必要なのは他者を殺す意識を持つ参加者だ。
いまや亜種ともいえる存在だが、元をたどれば参加者そのもの。
歪みを是正するために、さらなる歪みを利用する。危険すら孕んでいる方法だが、確実でもある。
「ん……っ」
ビクリ、と小さくアルフィミィの体がはねる。
世界に繋がれたが故、世界の一部のたわみがフィードバックされたためだ。
インベーダーなどが流入したような不快な感覚ではない。
むしろ、どこか温かいような、ふわふわしたような、なんだか不思議な感覚。
感覚の元を探せば、そこにはとある機体が、別の機体を持ち上げていた。
一体何かと食い入ってみるように、そこの場所に感覚を集中させる。
その中の一機が放つ、温かい光。持ち上げられた機体が光の中溶けて行く。
そして――ものすごいのが来た。
- 25 :排撃者――裏:2009/03/23(月) 16:54:45 ID:WOfmoOPt
-
「あ……っ ん、ぁぁぁあああああああ!?」
世界を塗りつぶす光量。その光が放たれた瞬間、インベーダーたちは限界を超えたイノチの力を受けて膨張、消失していく。
静寂を保つため、徹底して人の心など、『雑味』を排除して作られた世界に、物理的に転化したイノチの光が差し込んだ。
それは、繋がっていたアルフィミィの心にも刺し込む。
いままで、人の意思という一切の汚れを許さなかった場所に、光の柱が入れられた。
初めてのその出来事が、接続に伴い流れ込む。
体が火照り、一種性的な感覚すら含む高揚が、体を包む。頭に火花が何度となく弾けた。
力を体から奪う突然の出来事に、自分を支える触椀に体を預け、荒い息をする。
「すこし……おどろきましたの……」
まだ、どくん、どくん、と鳴る胸を押さえ、改めて何が起こったのかを確かめる。
「……え?」
光の爆心地から意識を広げ、全体を確かめた直後、感じる違和感。
会場全体のインベーダーが、減っているのだ。それも、かなりの数が。
いったい何が起こったのかと、感覚を研ぎ澄まし全体を把握する。
そして、彼女も理解した。
個体として力を保っていなかったインベーダーが、すべて蒸発してしまっているのだ。
機械や、施設とは融合することで大きな力を生むインベーダー。
無論、何割かは個体として群れなして移動し、生贄たちを襲っているが、
大多数のここに来たインベーダーは融合という手段で己を強化しようとしていた。
そのため一度体を解き、液状化や個々としての意識を落としていた矢先に、あれだけの人のイノチを込めた輝きが世界を照らしたのだ。
着て時間ももほとんど経っておらず、融合の最中にあった以上、ひとたまりもないだろう。
周囲のインベーダーを全滅させただけでは飽き足らず、その余波は会場全体にまで目に見えない形で炸裂したいたのだ。
そんなありえないですの、とも思うが、
物理面ではなく、アストラル的、オーガニック的な意味において、あの輝きが特別な意味を持っていたことは、自分の胸に聞けばわかる。
今でも、まだ高鳴りがおさまらないくらいなのだ。
インベーダーが施設に巣食い、もしも強化を繰り返せば、最悪の事態――実験の根底からの瓦解――もありうると彼女は覚えていた。
参加者がどこに行っても、インベーダーが待ち受ける、そうなれば休める場所はなくなりもはやインベーダーに人は狩られるのみ。
その心配が、消失したのだ。
「本当に助かりますの……♪」
心からの笑顔をこぼすアルフィミィ。
これで、インベーダーは事実上、個体として浮遊、移動するタイプのもののみだ。
確かに、移動すればインベーダーと接触する恐れはあるが、先ほどよりははるかにましだ。
目に見えるわかりやすいかたちの脅威は残るが、潜在的に拡大する驚異がなくなった。
しかも、そのわかりやすい脅威も、自分、ガウルンたち、彼の者、そしてあの光で群れ単位で壊滅させている。
壊滅させられた地域は、インベーダーはほとんどでないだろう。そこに置いては、安全が確保される。
まだ、いくつか群れはあるかもしれないが、それらも参加者の人目につかないかたちで自分が処理すればいい。
「それにしても……」
最後に、もう一度、彼女はある参加者を見る。
それは――このバトル・ロワイアルを立て直した最大の功労者。
- 26 :排撃者――裏:2009/03/23(月) 16:55:27 ID:WOfmoOPt
-
――アムロ・レイ
人間一人の体のどこに、あれほどの力があるのか。遺伝子改造を受けたわけでも、特殊な因子を持っているわけではない。
純粋に人間と呼べる範疇の人間が見せた、自分にも難しい現象。人は分かり合えると信じ、叫ぶ男。
結局、道化以外何物でもない。自分たちゲームマスターを倒すと息巻いておきながら、やったのは結果として正反対なのだから。
所詮、自分たちに及ばない生き物なのだ。けれど――――
「ちょっと……気になりますの」
果たして、彼女の言葉はなにを意味するのか。
小さな音を立てて、アルフィミィが消える。
後に残ったのは音なき静寂。そして虚空だけが広がっていた。
箱庭の中の殺し合い―――バトル・ロワイアルはいまだ崩れず。終わらず。変わらず。
【キョウスケ・ナンブ 搭乗機体:ゲシュペンストMkV(スーパーロボット大戦 OG2)
パイロット状況:ノイ・レジセイアの欠片が憑依、アインスト化 。DG細胞感染。
機体状況:アインスト化。ディバイデッド・ライフル所持。機体が初期の約1,2倍(=30mより少し小さいくらい) EN80%
現在位置:F-6
第一行動方針:すべての存在を撃ち貫く
第二行動方針:――――――――――――――――――――カミーユ、俺を……。
最終行動方針:???
備考1:機体・パイロットともにアインスト化。
備考2:ゲシュペンストMkVの基本武装はアルトアイゼンとほぼ同一。
ただしアインスト化および巨大化したため全般的にスペックアップ・強力な自己再生能力が付与。
ビルトファルケンがベースのため飛行可能(TBSの使用は不可)。
実弾装備はアインストの生体部品で生成可能(ENを消費)。
備考3:戦闘などが行なわれた場合、さらに巨大化する可能性があります(どこまで巨大化するか不明)。
直接機体とつながってない武器(ディバイデッド・ライフルなど手持ち武器)は巨大化しません。
現在はギリギリディバイデッド・ライフルが使用できますが、これ以上巨大化した場合規格が合わなくなる恐れがあります。
胸部中央に赤い宝玉が出現】
【アルフィミィ 搭乗機体:デビルガンダム(機動武闘伝Gガンダム)
パイロット状況:良好、アムロにドキドキ。 ちょっぴりまだ高揚。
機体状況:良好
現在位置:ネビーイーム
第一行動方針:バトルロワイアルの進行
最終行動方針:バトルロワイアルの完遂】
※禁止エリアにインベーダーが出現しました。
これ以上数が増えることはありませんが、操縦者のいない機体に取りつくとメタルビースト化します。
また、F-1エリアにゲッター線が高濃度で残留しています。
【二日目16:10】
- 27 :それも名無しだ:2009/03/23(月) 16:56:27 ID:6Sbi3nGi
- sienn
- 28 : ◆ZqUTZ8BqI6 :2009/03/23(月) 16:56:35 ID:WOfmoOPt
- 投下完了しました。
今回は落ち着き目の話を……とりあえず、まだバトルロワイアルは終わってませんよ、ということで。
- 29 :それも名無しだ:2009/03/23(月) 17:23:10 ID:6Sbi3nGi
- 投下乙!
前作と続けて半端じゃない執筆速度だw
ジョーカーとして動き始めたガウルン、相変わらず泳がされる統夜、命を狙われてるテニア・・・こいつらちっとも信頼関係がないw
そしてユーゼスを待ってもそこにはアキトも付いてくる・・・これは波乱の展開だ
キョウスケ、アルフィミィも徐々に動きが見えてきて終盤戦の空気がヒシヒシと感じられるぜ
アムロもアムロでやったことの影響がでかいwミィ感じるなwww
そしてガウルン、
> しばらくは頼むぜ、統夜、テニア。これでどこぞの誰かと違ってネゴシエーションは成功ってわけだな」
それは言ってやるな・・・
>>20の誤字です
誰かが倒してくれるだろうなどという夢想ができるほリアリストのどガウルンは楽観的にはなれなかった。
↑ここちょっとおかしい
- 30 :それも名無しだ:2009/03/23(月) 17:43:36 ID:WOfmoOPt
- すいません、wiki収録時に自分の手で誤字は修正しておきます……
- 31 :それも名無しだ:2009/03/23(月) 22:07:22 ID:WOfmoOPt
- wiki収録お疲れ様でした!
誤字などは修正しておきました。よければ確認をお願いします
- 32 :それも名無しだ:2009/03/23(月) 23:05:55 ID:5879Sp53
- あれ?今気づいたけど大量脱出で残り3割きってるw
- 33 :それも名無しだ:2009/03/23(月) 23:58:53 ID:6Sbi3nGi
- まとめ更新乙!
この数日の投下で更新履歴が完全に埋まったw
200作までに完結しそうだな・・・!
ところで誰か観察日記も頼む
- 34 :それも名無しだ:2009/03/24(火) 12:55:19 ID:28VSnsXx
- それにしてもアムロはキラをさしおいてキングジェイダーの発動条件を満たした気がしてならない
というかその内ララアを呼び寄せてJスワンとかやっちゃいそうだw
- 35 :それも名無しだ:2009/03/24(火) 13:47:24 ID:CzI1VJ1c
- 熱血路線キラが完全に食われちまったなwアムロ恐ろしすぎるw
ていうかあの御大将が完全に霞んでしまっているというのがまたw
- 36 : ◆ZqUTZ8BqI6 :2009/03/24(火) 20:33:28 ID:/CA4DVLi
- ユーゼス、アキト、
端役で話の大筋には絡みませんがシャギア、アイビス、甲児、キラ、ロジャー、ソシエ、ブンドル、バサラを予約します。
ええと、多分投下は5日後になると思います。
- 37 :それも名無しだ:2009/03/25(水) 04:55:23 ID:EleHJb9c
- 観察日誌を投下するんだぜ!
第181話「排撃者――裏」まで
死亡者編
・『死亡者名(搭乗機)/殺害者名(搭乗機)』 キャラ辞典より抜粋&コメント
なお順番は死亡順
・エクセレン=ブロウニング(搭乗機なし)/アインスト=ノイ=レジセイア(搭乗機なし)
アインスト=ノイ=レジセイアに最初の見せしめにされ首輪を吹き飛ばされ死亡。
このことによりキョウスケはアインスト達を倒しアルフィミィを解き放ちエクセレンを迎えに行くこと
を覚悟する。
・メルア=メルナ=メイア(ジム・カスタム)/グ=ランドン・ゴーツ(ラフトクランズ)、流 竜馬(大雷凰)
グ=ランドンに機体を串刺しにされ竜馬に機体を爆散されロワ参加者(除くエクセレン)初の死亡者となる。
早々にテニアとの合流を果たすも彼女の目の前で死亡。このことがきっかけでテニアがゲームに
乗ってしまいカティアを殺害、統夜も乗っているので彼女の死は報われない。
・グ=ランドン・ゴーツ★(ラフトクランズ)/フェステニア=ミューズ(ベルゲルミル)
竜馬の大雷凰に機体をライジングメテオ・インフェルノで真っ二つにされる。
それでも生存していたがテニアを挑発、そのまま彼女に撃ち殺される。
だが彼の言葉は彼女の心に絶望を植えつける。
・ラクス=クライン EVA零号機)/ヒイロ=ユイ(レイダーガンダム)
EVA零号機を操ってヒイロを追い詰め、説得しようとするも常識外れの攻撃により零号機を破壊され、死亡。
版権作品初の死亡者となる。似た思考の持ち主であるリリーナとは遭遇できなかった。
・木戸 丈太郎(クロスボーン・ガンダムX2)/相羽 シンヤ(搭乗機なし)
知恵と技術でサイコガンダムを撃破するものの、相羽シンヤがテッカマンに変身できるとは見抜けず、
PSYボルテッカにてコクピットブロックごと蒸発させられる。
彼が放送で名を呼ばれてもたいして影響がないことも考えると可哀想な死に様である。
・神名 綾人(アルトロンガンダム)/テンカワ=アキト(YF-21)
ロジャーとリリーナを奇襲するも、割り込まれたアキトにマーダーとみなされコクピットに拳を
打ち込まれ死亡。だが、彼との戦闘で凰牙のENがなくなったためリリーナの死にも関与している。
・カティア=グリニャール(VF22S・Sボーゲル2F)/フェステニア=ミューズ(ベルゲルミル)
テニアと再会するも、すでに彼女はゲームに乗っており絞殺される。テッカマンに殺られたキッドを
除けば当ロワで生身で殺られた人、第一号である。なお、友人に殺されるという最後をとげた一番欝な
死に方である。
・ジョシュア=ラドクリフ(クインシィ・グランチャー)/ギム=ギンガナム(シャイニングガンダム)
アイビスと行動中に統夜に御大将を擦り付けられる。そのまま戦闘中にクインシィに邪魔され
シャイニングフィンガーを喰らい機体が大破、アイビスと共に逃げるものの既に彼は爆死していた。
なお、彼の死はラキに影響を与えるため彼女の今後が心配である。
・リリーナ=ドーリアン(セルブースターヴァルハラ)/相羽 シンヤ(搭乗機なし)
機体をばらばらにされ連れ攫われテッカマンにコックピットの ハッチをこじ開けられ首を跳ね飛ばされる。
おとなしく凰牙にENを供給していればもっと違った展開が待っていたかもしれない。
・ギャリソン時田(ガンダムレオパルド・デストロイ)/ガウルン(マスターガンダム)
ガウルンと再び交戦、激戦を繰り広げるもガウルンの宗介の愛の前に敗れ去る。
すごい執事だけに序盤でおしい人が逝ってしまったのは残念。
<<第一回目の放送で上記10名の死亡が伝達
- 38 :それも名無しだ:2009/03/25(水) 04:56:13 ID:EleHJb9c
- ・ユウキ=コスモ(ジガンスクード・ドゥロ) /ジョナサン=グレーン(ガンダムF91)
ギャリソンの死を悲しみバサラの歌に心を癒されている
最中にジョナサンの奇襲を受ける。機動性の高いF91を倒すため広範囲攻撃の
G・サークルブラスターを放とうとするも生きていたバサラがいたため躊躇。
そのままコクピットにヴェスバーを撃ち込まれ蒸発、死亡する。
・九鬼 正義(ドラグナー2型カスタム)/バーナード=ワイズマン(ブラックゲッター)
ブラックゲッターの強襲を受け、あっさりと撃墜されてしまう。
ラーゼフォン系は全滅、薄氷同盟最初の死者となった。
・アスラン=ザラ(ファルゲン・マッフ)/カテジナ=ルース(ラーゼフォン)
カテジナに盗られたラーゼフォンと遭遇。
バサラが乗っていると思い込んだまま交戦。だが、ドラグナ−系の力ではデウスエクス・マキナに
一歩及ばずに機体を両断され敗北。最後に思いを親友に託しながら死亡してしまう。
・神 隼人(YF-19)/クルツ=ウェーバー(ラーズアングリフ)
同行していたクインシィがエイジに襲いかかり、続いて現れた竜馬も加わり混戦状態に陥る。
その中、クインシィ・ガロードに3人目を探せと言い押し切る形で離脱させた。
さらに竜馬の説得を試みるも失敗。最後はクルツの狙撃で被弾、そのまま地表に墜落死となった。
・アルバトロ=ナル=エイジ=アスカ(ガナドゥール)/流 竜馬(大雷鳳)
消えたラキを探している途中でクインシィに襲われる。
途中乱入してきた竜馬によって一度は気絶するも意識を回復。
壊れたフォルテギガスからガナドゥールを分離して、逃走を試みるが追い詰められる。
最後は大雷鳳と正面からぶつかり合い敗れ去った。
・ヒイロ=ユイ★★(搭乗機なし)/ベルナルト=モンシア(搭乗機なし)
一度交戦をしたモンシアとG-6基地で再び遭遇する。
モンシアがヘビーアームズを自爆させた結果、機体を失う。
基地の状態を調べ、格納庫へ一応の確認しに行く途中にまたもやモンシアに遭遇。
白兵戦で彼を追い詰めるも自爆に巻き込まれ帰らぬ人となる。
なお彼の死を持って薄氷同盟は全滅となった。
・ベルナルト=モンシア★(搭乗機なし)/ヒイロ=ユイ(搭乗機なし)
大破したヘビーアームズを有効利用しヒイロの乗るレイダーを破壊。
しかし、外の様子をうかがいに行く途中に実は生きていたヒイロと遭遇する。
子供と舐めた結果追い詰められて、ヒイロを巻きこんで自爆死する。
・孫 光龍(レプラカーン)/キョウスケ=ナンブ(ビルトファルケン(L))
機体の整備にと立ち寄ったG-6基地でバーニィを発見。これに襲いかかる。
戦闘中、ゼクス・キョウスケが現れて場が複雑化。
そんな中でキョウスケと戦闘となり、念の暴走の果てにオーラコンバーターを貫かれて死亡した。
・シャア=アズナブル(核ミサイル)/カテジナ=ルース(ラーゼフォン)
アムロとの合流を目指し、F-2補給ポイントで待機中、カテジナと遭遇。
機転を利かせ、一度はカテジナの撃退に成功するもラーゼフォンの長距離狙撃を受けてしまう。
アイビスを逃がし、彗星は地に落ちる。だがその意志は確かに受け継がれていた。
死亡後も、窮地のアムロと共振する、アイビスの悪夢に出てくると大活躍である。
・相羽 シンヤ★★(テッカマンエビル)/クルツ=ウェーバー(ラーズアングリフ)
ロジャーから受けた痛手を癒すべくD-8にあるコンビニの食糧を根絶やしにする。
続いて機体の奪取を目指し、移動してきていたクルツに戦闘を仕掛ける。
テッカマンの能力を活かし終始優勢に戦闘を進めていたが、最後の最後でクルツの策にかかり死亡。
テッカマンとしての傲りが最大の敗因であったのは間違いない。
・ゴステロ(スターガオガイガー)/ギム=ギンガナム(シャイニングガンダム)
アムロを追いつめるも、ブンドル、ギンガナムに乱入され、勝機を逃してしまう。
そのままギンガナムと戦闘になるが、彼には「勇気」が足りなかった。
純粋な力比べに負け、死亡。
- 39 :それも名無しだ:2009/03/25(水) 04:57:25 ID:EleHJb9c
- ・ゼクス=マーキス(メディウス・ロクス)/キョウスケ=ナンブ(ビルトファルケン(L))
キョウスケと共に基地の制圧に成功するも、直後に機体制御をAI1に乗っ取られてしまう。
が、メディウス内部からキョウスケをサポート。
オクスタンライフルに撃ち抜かれ死亡するも、その魂は最後まで気高かった。
・カズイ=バスカーク(メディウス・ロクス)/キョウスケ=ナンブ(ビルトファルケン(L))
ゼクスの操縦技術をAI1に学習させ、メディウスの制御を奪う。
圧倒的な力でキョウスケを追いつめるが、最後には人の力に破れることとなる。
オクスタンライフルを撃ち込まれ死亡。
・マサキ=アンドー(アルトアイゼン)/ガウルン(マスターガンダム)
キラたちと共にダイへと戦闘を仕掛ける。
ガウルンと戦闘になり、ボロボロのアルトアイゼンで善戦するも一歩及ばず、コクピットブロックをもぎ取られ死亡。
彼の持っていた小石がある人物の運命を大きく変えることとなる。
・ミスマル=ユリカ(無敵戦艦ダイ)/ガウルン(マスターガンダム)
Jアーク組と交戦。地盤を崩すという荒技で戦況を一変させたが、その直後にガウルンによってダイの艦橋は大破。
外に投げ出されアキトと再会を果たすも、マスターガンダムに踏まれ圧死。
彼女の死はアキトに多大な影響を及ぼすことになる。
・巴武蔵(RX-78ガンダム)/フェステニア=ミューズ(ベルゲルミル)
戦艦三隻総勢14名が入り乱れる大混戦の中、一度は気を失うもフロスト兄弟・ガウルン相手に健闘する。
だが彼は最も信頼していた仲間テニアの姦計に陥る。彼がテニアの裏切りに気づいた瞬間、彼の生は終わりを告げた。
人が良すぎたのが、彼にとって災いしたのかもしれない。
・カテジナ=ルース★★(ラーゼフォン)/紫雲統夜(ヴァイサーガ)
水中での休憩中にキョウスケ・カミーユの二人組に見つかり接触する。
誤った情報を与え穏便に事を運び離脱するが、その離脱中に悲劇は起こった。
同じように水中で休んでいた統夜の不意打ちでラーゼフォンは大破し、彼女は火に包まれる。
それでも生きていたのだが、救助中に潰される最期となった。
・クルツ=ウェーバー★★(ラーズアングリフ)/ギム=ギンガナム(シャイニングガンダム)
ギンガナムと交戦状態に入ったアイビスをフォロー。残弾が少ない中、牽制・狙撃にサポートと戦場を駆け回る。
最後はラキと行動不能に陥ったアイビスを離脱させ、ギンガナム相手にコードATAによる自爆で一人散っていった。
最初から最期まで他人のサポートに奔走するのが、彼の生き様であったといえるだろう。
・グラキエース★(ネリー・ブレン)/ギム=ギンガナム(シャイニングガンダム)
ギンガナムと交戦中のクルツを見つけ戦闘に割り込む。そしてその戦場に彼女の探し人は存在した。
一時は負の感情に支配されながらもブレンを感じ、ジョシュアを信じ、アイビスとクルツに支えられて彼女は戦い抜く。
しかし、ギンガナムを制しきれずにクルツが自爆。ラキもまたアイビス一人を残して戦地へ赴く。
相打ち覚悟で挑んだ勝負で狙い通り禁止エリアへと跳びギンガナムと共に散っていった。
・ギム=ギンガナム★★★★(シャイニングガンダム)/グラキエース(ネリー・ブレン)
ブンドルと共に訪れた中央市街地でアイビスに襲われ、そのままクルツ・アイビスとの戦闘状態に入る。
途中さらにラキが加わり苦戦を強いられるも、満足の行く戦いにヒートアップ。テンションが最高潮に達する。
そして、突き上げる衝動のままに二機のブレンを圧倒。ヒメ・ブレンを仕留め、クルツの自爆にも耐え抜いてみせた。
しかし、ラキとの一騎打ちの末、禁止エリアへと追いやられ死んでいく。最後の最後までギンガナムらしい暴れっぷりであったと言えるだろう。
<<第二回目の放送で上記20名(+その他生死不明1名)の死亡が伝達>>
・ジョナサン=グレーン★(真ゲッター)/紫雲統夜(ヴァイサーガ)
ガロードとの合流待ちの間に統夜に見つかり、これに襲われる。
一度は動きを読まれ敗れるも救援に駆けつけたガロードのピンチに復活。真ゲッター2を乗りこなし決死の攻勢に出るも遅すぎた。
既に致命傷を負っていたジョナサンは最後の攻撃に出る。だが命届かず燃え尽き散っていった。
最終目標であるクインシィの生還はガロードに託されたが、それが果たされる日は来るのだろうか。
- 40 :それも名無しだ:2009/03/25(水) 04:58:31 ID:EleHJb9c
- ・ベガ(月のローズセラヴィー)/バーナード=ワイズマン(メディウス・ロクス)
第二回放送直後、我を失ったカミーユを心配し気にかけるも罵声を浴びせられることになる。
そのときに受けた言葉に苦悩するもカミーユを人として正しい方向へ導きたいという想いを胸に再度前を向いて立ち上がる。
しかし、その言葉はカミーユに届かずバーニィの仕掛けた攻撃によって基地と共に最期を迎えることとなった。
常に集団全体のことを考え、一人一人を気遣い、板ばさみに会いながらも前を向き続けた彼女はやはり強い母であったのかもしれない。
・バーナード=ワイズマン★★(メディウス・ロクス)/カミーユ=ビダン(VF-22S・SボーゲルU)
ユーゼスの誘いを蹴りメディウスを強奪した後に基地を崩壊させる攻撃を仕掛ける。
ベガの殺害には成功するも、カミーユ、キョウスケ、アキトの三機と戦闘に。
エース級の実力を持つ三人にじりじりと押され続ける中、ユーゼスの砲撃により生じた隙と油断を突かれ死亡。
「生きて帰りたい」という切実な彼の願いが叶うことはなかった。
余談だが、彼の死亡話が投下されたのはクリスマスシーズンであり、これは原作での彼の死亡時期と一致する。皮肉なものである。
・オルバ=フロスト(ディバリウム)/キョウスケ=ナンブ(ゲシュペンストMkV)
第二回放送後、ナデシコと別行動を取りテニアの始末を目論む。
ロジャーとの接触などを経て基地へと辿り着くが、そこで待っていたのはアインストと化したキョウスケだった。
テニアと共にキョウスケと交戦するも、土壇場でテニアに裏切られキョウスケに撃ち貫かれることとなる。
彼の最期の声は、シャギアにどう影響していくのだろうか。
・宇都宮比瑪(ぺガス)/シャギア=フロスト(ヴァイクラン)
ナデシコへと戻ってきたテニア、彼女を殺そうとするシャギア。
二人の間に立ち和解を呼びかけるも、運命の悪戯か統夜の一撃により事態は急変。
仲間であるシャギアの手でその身を焼き尽くされることとなる。
誰よりも優しく、人を疑うことをしなかった彼女が生存者に、とりわけシャギアに遺したものは大きいだろう。
・クインシィ=イッサー(真ゲッター)
・ガロード=ラン(真ゲッター)
・流竜馬(真ゲッター)
ついに目覚めたクインシィはガロードを求め戦闘に突入、その最中弟である勇のブレンを発見し暴走する。
彼女を止めるため命を賭けたガロードの言葉に安定を取り戻すも、ゲッターの最後のシートに座ったのは死亡したはずの流竜馬。
ゲッター線の見せる無限の闘争を知った彼らは、それぞれの大事なものを守るため旅立つことを決意する。
そう、今も彼らは世界の外で戦っているのである。
<<第三回目の放送で上記8名の死亡が伝達予定>>
・ギム=ギンガナム★★★★(メタルビースト・シャイニング)/アムロ=レイ(ガンダムF91)
クルツ=ウェーバー、グラキエースの捨て身の攻撃により死を迎えたはずの戦闘神。
が、有機無機問わず融合するインベーダーによりまさかまさかの復活を遂げる。
生前のブンドルとの約束など知ったことかと、ここぞとばかりに黒歴史に名高いニュータイプコンビに戦いを挑む。
さすが御大将、インベーダーの支配なぞだが断る!と跳ねのけ、100%自分の意志で闘争に身を委ねるその姿はまさにこの世の春。
念願であったアムロとの死闘の中、ニュータイプに対する価値観の違いをぶつけ合う。
最後はシャイニングフィンガー対ゴッドフィンガーという黒歴史の象徴ともいえる幕引きとなった。
そして再びの死を迎える御大将は、勝利者たるアムロにこの言葉を贈ったのだった。
『ガンダム・ザ・ガンダム』――お前がガンダムだ、と。
以上、死者……と、まあそれ以外の説明を終わりますの。 ホントにこれは予想外ですの。
- 41 :それも名無しだ:2009/03/25(水) 05:00:04 ID:EleHJb9c
- 生存者編
●小隊(最新エピソード時の場所と時刻)状況コメント
・『生存者名(搭乗機)タイプ分け』備考&一口コメント
自衛協力型(自衛はするが友好的。対マーダー予備軍)
無差別型(見敵必殺・問答無用)
猫被り型(友好的に見えるが、攻撃の機会を狙っている)
策士型(知略戦で漁夫の利狙い。攻撃は最終手段)
対マーダー(マーダーは攻撃。他には協力的)
自衛戦闘型(敵対するなら相手を殺す気あり)
協力暴走型(基本は自衛協力的だが、状況によって暴走してしまう)
平和解決型(攻撃されても話し合いで解決したい)
●アムロ&カミーユ(D-3/二日目16:00)
宇宙世紀を代表するニュータイプ達。空間の歪みを観測し、D-3にて仲間達の帰りを待つ。
・アムロ=レイ★(ガンダムF91)自衛戦闘型
Jアークにて着々と主催者への反逆を企てる。
集団のまとめ役として胃の痛い時間を過ごす彼のポジションは冷静なリーダーというところ……だったはずだが。
その後突如発生したインベーダーと戦う中にかつて感じた無邪気な悪意、ギム=ギンガナムを発見する。
壮絶な死闘の果て、ニュータイプの力をフルに活用した新たな戦術を見出しゴッドフィンガーに開眼、黄泉返ったギンガナムに再びの死を与える。
『ガンダム・ザ・ガンダム』、まさにその称号に相応しい圧倒的な勝利であった。
(余談ではあるが戦闘の余波で会場中のインベーダーを半数ほど消滅させ、主催者であるアルフィミィに感謝されている。
当該SSを持って当ロワで一番自重しない男はifの勇者王アムロと合わせてアムロ=レイと満場の一致と共に認定された。熱血対主催筆頭だったキラの立場は(ry)
・カミーユ=ビダン★(VF-22S・SボーゲルU)対マーダー型
アインストと化したキョウスケの意志を胸に、運命に抗い続ける少年。
テニアの嘘を看破し撃退。その後Jアークと合流、キラとの衝突・模擬戦を経てその精神はひとまずの安定を得る。
新たに合流したブンドルに憤るも、それは彼のセンシティブで真っ直ぐな感覚ゆえのことだった。
インベーダーとの戦いで優れた戦闘センスを見せつけるも、まさかのギンガナム復活に対応しきれず気絶した。
……だがある意味、はっちゃけすぎたアムロの姿を見ないで済んで幸せだったのではないだろうか?
次代を導くニュータイプたるシャアもあんなノリだった、と知ることがないのが彼のもう一つの幸運だろう。
●シャギア&甲児&キラ&アイビス&ロジャー&ソシエ&ブンドル&バサラ(F-1/二日目15:05)
ついに合流したナデシコ組とJアーク組。だがそこは会談の場ではなく、怨嗟渦巻く闘争の場であった。
目前で消え去った真ゲッターの光は、彼らの心に希望を残せたのだろうか?
・シャギア=フロスト(ヴァイクラン)自衛戦闘型?
世界でたった一人、最愛の弟を亡くし暴走する男。その元凶たるテニア、ガウルン、キョウスケの殺害を誓う。
ナデシコへと帰還したテニアの嘘を見抜きあと一手の所まで追い詰めるも、比瑪の献身により復讐は果たせず。
状況が煮詰まったとき、テニアを狙う統夜の奇襲を受け比瑪を誤射、殺害してしまう。
茫然自失のままガウルン、アキトとの戦闘に突入。乱戦を経てユーゼスの裏切りを受け、敗退。
その後ソシエに救出され戦線を離れるも、今度は永遠のライバルたるガロードが彼に伝言を託し消失する。
彼の思いを託されたシャギアはどんな道を選ぶのだろうか。
・兜甲児(ストレーガ)自衛協力型
二度砲火を交えたキラと顔を合わせ、テニアとどちらの言い分が正しいか確かめるためキラをナデシコへと誘う。
そこで待っていたのは比瑪の死、テニアの裏切り。
困惑する甲児だったが、シャギアの危機に迷いを振り切り参戦、その危機を救う。
愛機のプロトタイプたるマジンガーZが近くにあるが、果たしてゲッター線の影響はあるのだろうか。
真ゲッターの消失を受け、そこから一切の行動が未だ不明である。
- 42 :それも名無しだ:2009/03/25(水) 05:00:59 ID:EleHJb9c
- ・キラ=ヤマト(Jアーク)対マーダー型
幾度の戦闘と仲間の死、そして自らの間違いを知り一時は混乱の極みに達する。
しかしロジャーやソシエといった仲間たちに支えられ、再び立ち上がることを決意。
アムロとアイビスという信頼できる心強い仲間たちと共に、勇気を胸に前へ進む。
専門であるプログラム分野から首輪の解析にチャレンジしている。
甲児・アイビスとともにナデシコへと赴くも、そこは激戦の只中であった。
真ゲッターの消失を受け、そこから一切の行動が未だ不明である。
・アイビス=ダグラス(ネリー・ブレン) 自衛協力型
クルツやグラキエースと共にギンガナムと死闘を繰り広げる。
仲間の死の上にある自分の生の重みを感じ、立ち止まらずに前へ進み続けることを誓う。
気持ちばかりが先行してしまい具体的な目的を持たなかったが、Jアークと合流しアムロと再会を果たす。
最近やっと出番が増えてきた。もう影が薄いなんて言わせないよ!
真ゲッターの消失を受け、そこから一切の行動が未だ不明である。
・ロジャー=スミス(騎士鳳牙)自衛せんt……平和解決型
キラからの依頼を受け、ナデシコとの交渉の場を設けるべく動き出す。
オルバ、テニアとの交渉では互いの利を生かす見事な交渉を見せ、スレ住人を大いに沸かせた。
続いてのガウルンとの交渉ではガウルンの本性を見極めることができず情報を渡すこととなる。
ソシエに自分を見失っていると指摘されるも、歌に殉じようとするバサラに心を打たれ、自信を取り戻す。
バイパーウィップとの契約――交渉を成功させ、ようやく彼本来の武力によるネゴシエーションを見せる時が来た。
真ゲッターの消失を受け、そこから一切の行動が未だ不明である。
・ソシエ=ハイム(搭乗機体なし)自衛協力型
ロジャーがJアークを離れる際ちゃっかりと潜り込み行動を共にする。
予備のギアコマンダーとロジャーの腕時計を巻き上げるあたり抜け目ない。
エイジの眠るガナドゥールを発見、彼を弔いその機体を借り受ける。
F-1の戦闘にてついにブタ……いやガトリングボアと契約。しかしGEARに乗っていないうちは宝の持ち腐れか?
真ゲッターの消失を受け、そこから一切の行動が未だ不明である。
・レオナルド=メディチ=ブンドル(サイバスター)自衛協力型
サイバスターを駆り会場からの脱出方法に見当を付け、首輪解除のために行動中。
ユーゼスとの接触を経て首輪の解析情報の一部を得るが、サイバスターに興味を持つユーゼスを警戒。
自分ではサイバスターの全能力を引き出せないため、相応しい操者として甲児・キラ・カミーユに興味を抱く。
F-1の戦闘に途中参戦するも、そこは懸念通りユーゼスとアキトが思う様掻き回しているところだった。
真ゲッターの消失を受け、そこから一切の行動が未だ不明である。
・熱気バサラ(ラーゼフォン)平和解決型
ようやく目覚めたバサラだが、声が出ないという異常事態に意気消沈。しかしガロードと比瑪の機転でナデシコ内では声が出るようになる。
戦いを止めるために懸命に歌うも、ユーゼスの干渉の結果オモイカネを失ってしまう。
ガロードとともにナデシコから撤退、声が出なくとも歌うことを諦めなかった。
ラーゼフォンの奪還を目指し奔走、遂にユーゼスの支配から天使を解き放つ。
アニマスピリチアと調律の天使、その歌声は次元を超えてあまねく世界に響き渡る。
真ゲッターの消失を受け、そこから一切の行動が未だ不明である。
●アキト(F-1/二日目15:05)
想いを黒き仮面で隠し、ただ愛する女のために他者の命を求める。純粋であるがゆえに曲がらず、鋭く、しかし脆い。
・テンカワ=アキト★(ブラックゲッター)無差別型
愛するユリカを生き返らせるために優勝を狙う復讐鬼。
ユーゼスとの関係は共犯者。薬の残数という不安材料もユーゼスとAI1の力により解決された。
アルトアイゼンからブラックゲッターに乗り換え、機体のパワーもアップ。
遂に怨敵ガウルンと相見えるも、今一歩のところで取り逃がしてしまう。
憎悪の行き先をなくし、彼の精神は更なる歪みを引き起こす。
ユーゼスが処方した薬の存在も忘れてはならない。彼の身体はナノマシンの苗床になりつつある。
- 43 :それも名無しだ:2009/03/25(水) 05:01:55 ID:EleHJb9c
- ●ユーゼス(E-1/二日目15:05)
逆境すらも己の野望の踏み台にする男。どんな状況だろうと自重しないのが彼の彼たる所以か。
・ユーゼス=ゴッツォ(メディウス・ロクス)自衛戦闘型
基地の乱戦のさなかアキトと主催者の繋がりを看破し、アキトと協力関係を結ぶ。
その後、統夜・テニアとコンタクト。同盟を約束しナデシコへと向かう。
そのナデシコでの乱戦の最中ラーゼフォンを奪還されるも、現れたデータウェポンを吸収しメディウスを修復。
一人戦場を離れたが、今もその瞳はナデシコとその周辺を鋭く睨みつけている。
●ガウルン&統夜&テニア(A-1/16:10)
三度結成されたマーダー同盟。その実誰もが誰かの命を狙うという歩く火薬庫のような彼ら、火種は健在である。
・ガウルン★★★(ダイゼンガー)無差別型
各地で争いを巻き起こす火種キャラ。これ以上なくロワを満喫している一人でもある。
アキト、ブンドル、アムロ、統夜、テニアと多くの人物と因縁を作り上げ、しかもその全てを成就させようとしている欲張りさん。
F-1での乱戦をまんまと生き延びアルフィミィの下へと辿り着き、仕事の依頼とダイゼンガーを譲り受ける。
統夜の才能を認め、協力関係を結ぶ。統夜の更なる成長のため、テニアをどこで間引くか思案中。
現在A-1にてユーゼスを待っているが、希代のテロリストと仮面の魔人の出会いはどんな結果をもたらすのだろうか。
・紫雲統夜★★(ヴァイサーガ)無差別型
揺れ続ける心を定めはじめた新人マーダー。 潜在的な戦闘センスをガウルンに見初められ、師弟関係を結ぶ。
テニアの立ち回りをガウルンから聞き、強い憎しみをテニアへと向けるも寸でのところでその手は彼女の手を掴むことに。
ガウルンの元から巣立ち、戦場の只中でテニアと愛を確かめ合うも運命はそれを許さなかった。
ユーゼスとの接触、インベーダーの襲来、ガウルンとの再会。
そしてキョウスケの撃破を手伝わされることになり、少年にまだまだ安息は訪れないのであった。
・フェステニア=ミューズ★★★(ベルゲルミル)猫被り型
基地での戦闘で自らを危険視し、泳がされていた相手・オルバの殺害に成功する。
その後カミーユに正体を看破され、ようやく辿り着いたナデシコでは弟の死を知るシャギアの銃口に迎えられた。
間一髪、その危機を救ったのは彼女の最愛の人、統夜であった。
手に手を取って逃亡し愛を確かめ合うも、二人の前にはインベーダー、ガウルンという馬に蹴られても死なないような邪魔者が。
恋する少年少女の明日はどっちだ?
●キョウスケ(F-6/16:10)
――すべての存在を撃ち貫く。
・キョウスケ=ナンブ★★★★(ゲシュペンストMkV)無差別型
基地での戦闘の末アインスト化。カミーユに己の始末と撃ち貫くライフルを託す。
基地を訪れたオルバとテニアの二人を圧倒し、オルバを撃ち貫いた。
戦闘で得た戦力の不安を基地の動力を吸収し巨大化することにより解消、眠りにつく。
その後基地に襲来したインベーダーを鏖殺、更なる闘争を求め蒼い孤狼は動き出す。
●アルフィミィ (ネビーイーム/16:10)
バトル・ロワイアル、いまだ終わらず。
・アルフィミィ(デビルガンダム)司会進行型
主であるノイ=レジセイアの突然の降臨に戸惑いつつも、自らの存在意義に賭けキョウスケという新たなアインストを認めない。
イレギュラーたるインベーダーを排撃するためガウルンに仕事を依頼し、自らも裏方として参加者の前に出ることなく会場の維持を行う。
目下のところ、彼女の興味はインベーダーの排除に一役買ったアムロ=レイにある(もちろん性的ないm(ry)。
以上、時系列順に17名(+1人)の紹介と状況説明を終わりますの。 いよいよクライマックス。さて、やろうか……ですの!
- 44 :それも名無しだ:2009/03/25(水) 05:23:21 ID:EleHJb9c
- キラ、アイビス、ブンドルの項が手抜き気味なので誰かもっとうまいこと書いてくれ・・・
- 45 :それも名無しだ:2009/03/28(土) 01:57:05 ID:Q2jzjkTk
- >>44
乙です。
あとキラとアイビスを簡単に修正してみました。
・キラ=ヤマト(ストレーガ)対マーダー型
幾度の戦闘と仲間の死、そして自らの間違いを知り一時は混乱の極みに達する。
しかし数多くの仲間たちに支えられ、再び立ち上がることを決意。
専門であるプログラム分野から首輪の解析にチャレンジ中。
現在は甲児・アイビスとともにナデシコへと赴くも、激戦の只中であった為、勢いのまま戦闘に加わる。
真ゲッターの消失を受け、そこから一切の行動は未だ不明である。
BR世界でも常に女性に振り回され続けているキラにこの先生きのこる道は拓けるのか!?
・アイビス=ダグラス(ネリー・ブレン) 自衛協力型
ジョッシュやシャア、クルツやグラキエースといった仲間の死の上にある
自分の生の重みを受け止め、立ち止まらずに前へ進み続けることを誓う。
気持ちばかりが先行してしまい具体的な目的を持たなかったが、
アムロとの再会や新たな仲間との出会いを経て持ち前のひたむきさを取り戻していく。
現在はキラ・甲児とともにナデシコへと赴くも、激戦の只中であった為、勢いのまま戦闘に加わる。
真ゲッターの消失を受け、そこから一切の行動が未だ不明である。
最近やっと出番が増えてきた。もう胸も影も薄いなんて言わせないよ!
キラの機体は一応ストレーガに変更してみました
ブンドルは思い浮かばなかった…
- 46 :それも名無しだ:2009/03/28(土) 02:03:29 ID:Q2jzjkTk
- 修正して早々ですが、SS読み返したらキラは搭乗機体なしって書いてありましたね(汗)
あと修正点ですが、
>>41のシャギアは搭乗機体なし、>>42のソシエは搭乗機体がガナドゥールのようです
- 47 : ◆ZqUTZ8BqI6 :2009/03/29(日) 17:54:27 ID:XPQMfqYc
- 投下します。
まとめたつもりですが、それでも少々長いため、さるなどに引っ掛かった場合下記の場所に投下しておくので、代理投下をお願いします
二次スパSS仮投下スレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/30868/1149349532/
- 48 :時の結実――すなわち成長:2009/03/29(日) 17:55:24 ID:XPQMfqYc
- 【15時22分】
「現状は……どうにかなった……ということか?」
迂回をくり返し、ようやく爆心地から少し離れた所にあるナデシコへとユーゼスは到達する。
乗り込むその機体は、酷く不完全で、規格の合わないパーツを継ぎ合わせたようなチグハグな外見だった。
それもそのはず。
本来規格の合わない、しかも腕などの上から噛み合わせるかたちで装着するデータウェポンを無理やり手足として機動させているのだ。
ユーゼスが確保したデータウェポンは合計4基。
右腕――ブルホーン。
左腕――ユニコーンドリル。
右足――レオサークル。
左足――ドラゴンフレア。
4基の装着されたデータウェポンを四肢として、一機のメディウスの安定剤にしている。
ラーゼフォンから強引に引きはがされたため、装甲はところどころ砕け、ひび割れてしまった。
支える基礎となる四肢なきまま不安定につけられたデータウェポンと、砕け内部の露出した現状では、もしも奴らに会えば敗北は必至。
それでも、ユーゼスが姿を隠しながらナデシコへと足を向けた理由は、一つ。
まさしく、奴ら――すなわちネゴシエーター一同――との関係が険悪だからだ。いや、最悪と言ってもいい。
もし会えば殺されるかもしれない最悪の相手が側にいる場所へ、最悪の相手がいるから向かう。
一見矛盾しているように見えるが、これにはけして矛盾していない。
ユーゼスは超合理主義だ。そして、理論は感情を超越すると思っている。
無論、理屈より感情を優先する相手もいるのは知っているが、今回の場合、相手の一団にはネゴシエーターがいるのだ。
故に、ユーゼスはこう判断した。
現実に沿う利益さえ示せば、感情面において最悪の自分でも生存しうる、と。
では、自分が現在示せる最大のメリットとはなにか。
簡単だ。自分がもっとも信頼でき、そして他者が及ばないと信じられるものは、この頭脳。
引いては、工学系の深い知識――つまり、首輪を解除しうる知識だ。
さらに、自分は殺し合いの中、さまざまなデータを確保し、検証してきた。
これは誰にも及び付かないことだと自負している。
しかし、それも現段階で、という話。これから奴らが首輪を解析すれば、自分のアドバンテージは減る。
自分ほどでないにしろ、首輪の構造程度なら解析するだけの頭をもった人間もいるかもしれない。
最悪、自分は用済みだ。
それを防ぐためには、相手が首輪を解析しうる施設、あるいはそれに準じるものを全て掌握、不可能なら抹消すればいい。
首輪を操作できるのは自分だけ。そうなればあの化け物への反抗を願う者たちはすべて自分にひれ伏すことになる。
そのために、ユーゼスは危険を冒してでもナデシコへ進んだのだ。
「……残念だが破壊するしかないか。だが、それでも役に立ってもらうぞ」
- 49 :時の結実――すなわち成長:2009/03/29(日) 17:56:23 ID:XPQMfqYc
-
現在のナデシコは、推進部が破壊されている。
仮に破壊されていないとしても、この巨体が宙を飛ぶとなれば、否応なしでも目立つ。
ナデシコの速度では、目一杯飛ばしても足の速い機体には補足される。そうなれば、戦闘は避けられない。
修理や何らかの措置を施すことも考えたが、それをする時間もない。
今こうしている間にも、奴らは姿を見せるかもしれないのだ。
戦闘だけは現状避けたいユーゼスにとって、このナデシコをどうにか確保、使用することは不可能だった。
しかし、それは利用価値が完全にゼロであることを示すわけではない。
ユーゼスは、機能を現在停止しているナデシコの熱源をサーチ。
そして、微弱な反応があったその中心へ、一気にユニコーンドリルを差し込んだ。
歪なユニコーンドリルで形作られた腕が掴むのは、ナデシコの心臓部。
動力炉である、相転移エンジンだった。
「意外に小さいな……このサイズ2つと補助動力炉4つで300m級戦艦を航行させているとは」
引き抜かれた腕の2,84mの球体を眺め、ユーゼスは呟く。
高いレベルの技術力に対する純粋な賛美。その青く照らし返す銀色の球体を、しげしげとユーゼスは見つめ――取りこぼした。
「な……!?」
握っていたユニコーンドリルの手が、球体を中心に光の屈折が起こったかのようにぶれたのだ。
突然の出来事に、反射的に機体をひかせた結果腕から球体はこぼれおちる。
落ちた球体は、何度か光の照り返しを行うと、音もなく光を失った。
「空間直結連動型エンジン……? それとも相転移炉循環型エンジンか……?
……ちょうどいい、これを使わせてもらおう。レオサークル……『ハイパースキャン』」
ぎちぎちと音を立てて変形する右足。
それに合わせて、目の前の物体のデータが集積され、ユーゼスのコクピットにあるウィンドウへ調べた結果の詳細が表示される。
その結果を見て、ユーゼスは目を細めた。
「なん……だと? 相転移炉……これは……!」
相転移エンジン――それはインフレーション理論で説明されている真空の状況下における相転移を利用し、
真空の空間を、エネルギー準位の高い状態から低い状態へ相転移させることでエネルギーを発生させる技術である。
故に、大気圏内では機能はそこまで高くない。真空下に比べれば格段に劣るだろう。
だが、相転移エンジンの最大の特徴はそこではない。事実上、無から有を作り出すことで、半永久、半無限の力を生み出すことができるのだ。
一回、一時間、どんな単位の基準でもかまわないが、一ケースごとの放出量は少なくとも、時間をかけることで総合的には大きなエネルギーを生み出せる。
以前、ブラックゲッターからメディウスへ移行したエネルギーが、使用したとみなされず補給されなかったことからユーゼスはこう考察した。
この会場におけるエネルギー総量は有限であり、時間がたち機体が破壊し使用不能になるたびその総量は減る――と。
しかし、このエンジンはその枠を破壊しうる。なにしろ、『上限なし、無限を発生させる』のだから。
多少エネルギー変換効率が悪いは、問題ない。
ただ……今度は逆の問題が生じる。
ナデシコから採取した相転移エンジン2基。そして核パルスエンジン4基、これだけのものを現状メディウスが積み込むことができないのだ。
現状大型機並みのメディウスでも、戦艦のエンジン全てを搭載するにはサイズが足りない。
さらに、強引に積み込んだとしても今のメディウスではそれだけの膨大なエネルギーを使用、および貯蔵することは難しい。
コンパクトで、物質への変換性を持つ高エネルギー物質がベストだが、そんなものはここにはない。
- 50 :時の結実――すなわち成長:2009/03/29(日) 17:57:04 ID:XPQMfqYc
-
余談だが、とある世界でメディウスが取り込んだラ・ムーの星はその全ての条件を満たした物質だった。
超巨大な姿へライディーンの質量を増大させ、大きさは数センチでありながら、莫大なエネルギーを保有していた。
話を戻すが、今のメディウスは、成長にエネルギーがいるが、現状飽和量のエネルギーを取り込めば物質に変換できない以上崩壊してしまうのだ。
こればかりはどうしようもない。急激なエネルギーの収集に耐えられるだけの基礎、肉体をどうにかして作り出す必要がある。
「これを持って、A-1に向かうのが現状最高か……? テンカワ・アキトの回収もしたいが、リスクが大きすぎるな……」
扱いにくい手駒プラス研究対象としての価値と、今からさらにネゴシエーターたち相手に近づく危険を天秤に乗せる。
貴重な手駒としての価値も、あの二人で埋め合わせできた。今から、向かうのはどうなのか。
そう考えながらもひとまずこの場を離れようとしたときだった。
天を覆う大群が、こちらに迫ってくることにユーゼスは目をむいた。
【15時27分】
「二人とも! 大丈夫ですか!?」
キラが、気絶した二人へと声をかける。
あの戦いが終わったあと、力を使い果たし、気を抜いたためか、バサラとシャギアは気絶してしまった。
元々、シャギアは相当な境地まで精神をすり減らしたうえで、あのヒメの誤殺からずっと気を張っていたのだ。
そこから意識が困憊するに至り、戦闘の終わりと同時に限界がきた。
バサラも、時間は短かったとはいえ激動、激震の状況を全力全開で動き続けたのだ。
泥のように今はラーゼフォンの中で眠っている。
どうにかあの戦いを切り抜け、この場に残っている面々は、まず情報の交換、そして負傷者の最低限の処置を行うことにした。
なにしろ、全員この場にたどり着いた途端戦いに巻き込まれていき、全景を正確に把握しているものがいないのだ。
まず、情報や認識、立場の祖語を埋めなければ今後の行動も決定しようがない。
無論、ユーゼスや危険人物の追走などから、時間も大切であることは分かっている。
しかし、現状一度戦いを潜り抜けきった時に整理しておかねば、また連戦となり結局意思疎通ができなくなる可能性もある。
どうにかナデシコの惨状を知るシャギアが起きたのは、戦いが起こって30分経ってからだった。
ロジャーとブンドルが機体に乗って周囲を警戒し、キラ、甲児、アイビス、ソシエはシャギア、バサラの様子を確認し、今に至る。
「それじゃ、俺がブンドルさんと行ったあと……」
「ああ……その通りだ。予定の地点へ……進んでいた、我々は……テニアと合流し―――」
とつとつと、どうにか紡ぎだすシャギアの言葉は、すべての誤解を解くに値する言葉だった。
両者にもぐりこみ、内乱、自滅を誘った人間がいる。そして、その人間こそ他でもないテニアだった、と。
結局、ナデシコチームも、Jアークチームもその言葉からくる疑心暗鬼に乗せられていた。
そして、ナデシコチームはテニアの予想外の出来事が重なった結果か、ほぼ全滅に至る。
テニアは裏切り、オルバとヒメは死に、ガロードとクインシィは消えた。残ったのは、シャギア、甲児、バサラのみ。
「それじゃあ、今ナデシコはどこに?」
- 51 :時の結実――すなわち成長:2009/03/29(日) 17:57:51 ID:XPQMfqYc
-
しばらく話し、内容がこの戦場に差し掛かった時、キラはシャギアに問いかけた。
「分からん……バサラに任せ、後退したのは……いいが、その後……ユーゼスが、
ナデシコをどうしたのか。分かるのは……私ではなく――」
シャギアは疲労しきった顔でラーゼフォンを見る。全員が、その意味を理解した。
そう、ナデシコがどこにあるか、どうなっているかを知る人間はバサラだけなのだ。
その肝心のバサラが気絶しているのだからどうしようもない。
最悪、あのユーゼスがどさくさ紛れに強奪、今頃奴の手札となっているかもしれない。
ただでさえ、サイバスターのコスモノヴァクラスの破壊力の武器が複数必要なこの段階で、これだけの機体の損失は重すぎた。
「もし、彼等が残ってくれればよかったのだが……」
「そもそも、先ほどのあれはなんだったんでしょうか……?」
ほんの僅か、声に力をいれてシャギアは言った。
「……我々には及び付かない。ただ、分かることは『もうガロード・ランは帰ってこない』ということだ。少なくともこの場は」
あの目の当たりにした超現象。誰一人として理解の追い付かぬ先へと彼らは行ってしまったのだろう。
あの衝撃を受け、雲も謎の生き物も消失した空は何もなく、ただ茜空が広がっている。
「これからの行動方針、つまりやるべきことは大きく分けて3つ。Jアークとの合流。
可能ならばナデシコの回収もしくは奪還。そして、最後はガイ……いやアキトからの話を聞くことだ」
周りの人間が話していたことを、ロジャーが的確にまとめる。
前の二つは当然ながら、最後の一つも重要なのだ。ここにいる、大きな勢力3つ。すなわち、
Jアーク、ナデシコ、そしてユーゼスチームだ。彼らもまた、チーム単独でレジセイアへの反抗を決定しているに違いない。
カミーユの言動からも、首輪や手駒を集めなどレジセイアへの反逆に必要なことを多々おこなっている。
今は、少しでも全員の知恵を結集させねばいけないのだ。そのためには……ユーゼスとの情報交換も必須。
その言葉に、苦い顔をする者も多かったが、こればかりはどうしようない。タイムリミットは迫っているのだ。
「だが、今再び分かれるのはまずい。戦力も足らない。ここは合流して一つ一つ―――」
そこまで言った時だった。
天を覆う大群が、こちらに迫ってくることにロジャーは目をむいた。
【15時31分】
F-1――そこに残留した高濃度のゲッター線は、インベーダーたちを引き寄せるに足るものだった。
ゲッター線を好み進化を願うインベーダーたちの群れは、一度はガロードたちに全て吹き飛ばされ空白地帯となったF-1になだれ込む。
- 52 :時の結実――すなわち成長:2009/03/29(日) 17:58:40 ID:XPQMfqYc
- 【15時47分】
「皆さん、引いてください!」
キラの言葉に合わせて、一同がその場から飛びすさる。
前線で食い止めていたインベーダーが密集した場所へ、ストレーガのエレクトリックキューブが投げ込まれた。
撒き散らす電撃がインベーダーを焼くが、すぐさまその屍を乗り越えてインベーダーは彼らに殺到する。
「くっ! 言葉の通じる相手ならやぶさかではないが……!」
騎士凰牙の回転する右腕が、インベーダーを砕き、飛び散らせる。
しかし、立て続けに横からもインベーダーたちは騎士凰牙へ肉薄する。涎を垂らし、かみつかんと口腔を広げるインベーダー。
「どうする!? 数が多すぎてこのままじゃ……!」
騎士凰牙のすぐ側にいたネリー・ブレンが、超短距離ジャンプで騎士凰牙をインベーダーから引きはがす。
即座にそのままサイバスターがディスカッターを振りかざし、インベーダーのそれ以上の接近を許さない。
「理性もなく破壊衝動にとらわれ蠢く様……美しくない、な」
しかし、サイバスター一機では限界がある。怒涛のように押し寄せる怪物の前に、サイバスター一機では無力過ぎた。
飲み込まれる直前にサイバードへチェンジ、空へと舞い上がる。
あまりにも、数が足りない。何しろ、事実上戦えるのは四機だけだ。
ガナドゥールはとても戦闘に参加できる状態ではなく、怪我人を抱えている以上、後方で待たせるしかない。
ラーゼフォンは、バサラが気絶した今、戦闘行動は不可能だ。
なぜか、障壁のようなものが発生し、ラーゼフォンとバサラを守っているが、ラーゼフォンが自律起動している理由は分からない。
ともかく、八方ふさがりと言っても過言ではない状況だ。
この孤島から脱出するためには、大なり小なり飛んで湖を超えなければいけないが、それが難しい。
インベーダーの中、戦闘不能直前の機体を二機護衛しながら超えるというのは、現実不可能と言えた。
しかし、決して誰も見捨てないのは彼らの人徳によるものが大きいだろう。
「ちょっと、どうするのよ、これ!?」
ソシエの声。さしもの吉良やロジャーも、回答のしようがない。
今では、持ちこたえているが、いつ押し切られるやも分からない。このまま行けばじりじりと押し切られてしまうだろう。
「この様子では、まさか会場全体にこれが出現しているのか?」
「そんな……そうだとしたらJアークが危ない!」
しかし、危ないとは分かっていてもまずここから脱出することができないのだ。
Jアークの救援どころか自分たちの身の護衛すら難しい。
「だれか、このエリアの補給ポイントを知っているか?」
ブンドルの言葉に、即座にキラは反論を返す。
「補給する前にみんなの気力が尽きます、それに機体のダメージだって……!」
- 53 :時の結実――すなわち成長:2009/03/29(日) 17:59:22 ID:XPQMfqYc
-
キラの言うことは、ある意味正しい。
ここまでの疲れに加え、先ほど大規模な戦いで疲弊している。
ここで補給をしたところで、ほとんど戦闘継続という意味においては意味がない。
だが、ブンドルの言葉の真意はそこにない。
「違う。ネリー・ブレンのバイタルジャンプを使う。そうすれば……っ!?」
不意を突く角度で接近するインベーダーをどうにかサイバスターは反応して両断する。
キラも、今の言葉を受けてやっとブンドルの言葉の真意を理解した。
「そっか……! バイタルジャンプで隣のエリアへジャンプを繰り返せばいけるんだ……!」
アイビスは知っている。長距離ジャンプは、4割近いエネルギーを使用する。
だが……『4割』という数値は、10割ならば2回できるということだ。一回使っても5割は切らない。
一機を抱えて飛ぶことで生まれる消耗を加味しても、往復はできる。
つまり、飛ぶ以外の方法で脱出も可能というわけだ。
「わたし……が……知っている……!」
疲労困憊の中、それでもシャギアは声を絞り出す。
ソシエの肩を借り、どうにかウィンドウを指で押さえた。
「ここに、あるのね!?」
「ああ……そう、だ……!」
ソシエが、その情報を全員に伝達する。
地図に、希望の星が灯った。
【15時58分】
「なんだ……!? 先ほどですべてではなかったのか!?」
ユーゼスの周りを取り囲むは、数多のインベーダーの群れ、群れ、群れ。
たった一人で、他者を信じないユーゼスに、味方はいない。
どうにか、手足に纏いつくインベーダーをレオサークルで切り裂き、ブルホーンで突き刺し、ドラゴンフレアでなぎ払うが、数が多すぎる。
完全に焼け石に水だ。四人がかりでも、追いつけなかった破壊速度を、たった一機のユーゼスがこなせる理由などなかった。
たちまち、全身をインベーダーが覆い尽くす。締め付けるインベーダーが、メディウスのひび割れた装甲から入り込み始めた。
「システムエラーだと!? まさか……ラズムナニウムを侵食しようというのか!?」
インベーダーは機会と融合し、その機能を操作するなど乗っ取りができる。
これほどの力を持つ素体を、インベーダーが見逃すはずがなかった。二重三重にインベーダーが重なりあう。
ユーゼスも必死にプログラムを送り、逆にラズムナニウムによる乗っ取りを行おうとするが、あまりにもインベーダーの量が多すぎる。
侵食速度が、AI1の処理速度を上回っているのだ。このまま行けば……中央のコクピットにすらインベーダーは侵入してくる。
そうなれば、自分は終わりだ。しかし、無情にも浸食は止まらない。
機体の放棄も、ハッチの上にもインベーダーが重なっているため不可能だった。
- 54 :時の結実――すなわち成長:2009/03/29(日) 18:00:03 ID:XPQMfqYc
-
「こんなところで……! こんな不確定要素で私が……!」
会話できるネゴシエーターたちならまだマシだった。
しかし、目の前にいるのは利害を説くことも、そもそも会話すら不可能な化け物。
ただ無慈悲にメディウスを攻め立てる。
「こんな……結末など……」
ついに、コクピットが一部陥没を始める。金属隔壁の一枚向こうには、もうインベーダーがいるのだろう。
「絶対に……認めん!」
16時ちょうど。その時間が――――――訪れる。
【16時17分】
「ちょっとあれ!?」
「まさか――アキトか?」
必死の行軍の末、どうにか補給ポイントに到達したキラ達。
その補給ポイントの前に倒れていたのは、ブラックゲッター、つまりアキトだった。
マスターガンダムの装甲を引きはがし、中を改めてからの2分ばかりの間。
消費したエネルギーの回復、そして何よりガウルンとの遭遇のためアキトは補給ポイントへ足を進めていたのだ。
焦る意識の中、ガウルンが放置機体を回収したとすれば、この戦いの消耗をまず回復するだろうという読みで、
バッドトリップまでの僅かな時間をアキトは駆け抜けていたのだ。
この読みは、半分当たり半分はずれだ。
ガウルンは確かに放置された機体を回収はしたが、そのままワームホールへ飛びこんでしまった。
もしガウルンがいるなら立て続けに錠剤を飲むつもりだったが、その姿はない。
そして悪夢の時は訪れ、アキトはただ暴れ回る。
これがモビルスーツなどなら、アキトは今の今までインベーダーにただ蹂躙されることとなっていただろう。
だが、よりにもよって彼の乗っているマシンはゲッター1を改良したブラックゲッター。
その操縦方法は、体の各部に装着されたコードとマシンアームを通し、モビルファイターと同じく自分の動きを再現すること。
機体との接続を切らず、ユーゼス謹製の薬による重度のバッドトリップの中のたうち暴れ狂う。
そのことが結果として、戦闘はせずともインベーダーから身を守る結果となったのだ。
獣のように四肢を振り回し、バッドトリップの中目に映るもの全てに狂気を写す。
「が、ああああ、あああああああああああ!?!!?」
インベーダーが、ブラックゲッターが手足を振るうたびになぎ払われていく。
アキトの体に染みついた動きが無意識下でもある程度行われ、インベーダーを確実に破壊していた。
――補給ポイントのすぐ側で。
「止まれ、アキト! どうした、何があった!?」
ロジャーの呼びかけにも応じようとしない。通信を開けば、頭や体を掻きむしり、目に映る全てを薙ぐため手足を回す。
ロジャーもキラも、誰一人としてアキトがバッドトリップで苦しんでいることは分からない。
分かるのは何かがあってアキトが錯乱に近い状態であることだけだ。
このまま暴れ続け、もしもアキトが補給ポイントを傷つけることになれば、希望は断たれてしまう。
- 55 :時の結実――すなわち成長:2009/03/29(日) 18:00:45 ID:XPQMfqYc
-
「どうにかして押さえましょう!」
「けど、どうするんだ! こっちじゃ押さえられるのなんかいないぜ!?」
ブラックゲッターの身長は、60m級の大型機。
対して、今の一同の戦える機体は大きくて30m級と、とてもブラックゲッターを抑えられるようなパワーや体格を持っていない。
唯一持っているラーゼフォンも、今は乗り手が気絶し、引きずってここまでもってくるのにも苦労したくらいで意味がない。
「下手に攻撃しては、補給ポイントを傷つける恐れがある、というわけか……!」
珍しく僅かに焦りの混じったブンドルの声。それに追い打ちをかけるように状況は切迫していく。
「うしろからも来てるわよ!」
「駄目、抑えきれない!」
背後から迫るは、群れなすインベーダー。
倒しても倒してもきりがないほどの数が、空と後ろから蠢き声を上げる。
アキトを補給ポイントの無事を確保しながら倒すのは、全員がかりでも至難の業。
しかも、全員で取りかかればその隙にインベーダーはキラ達を飲み込むだろう。
そして、インベーダーを相手にすれば、アキトは放置するしかなく、脱出はできない。
アキトが補給ポイントを破壊してしまえば万事休すだ。
手が足りない。どうしようもない。
絶望がじわじわと全員の心を蝕む。けしてあきらめない、ここで死んでたまるかと思っても、現実は非常過ぎた。
こんな絶望を吹き飛ばし、一蹴に伏すような、ご都合主義の神様はここにはいなかった。
全てが最悪に組み合い、終わりの時はもうすぐそこにある。
それでもやってみせるとロジャーがアキトへ、ブンドルとキラがインベーダーに向かいあった。
- 56 :時の結実――すなわち成長:2009/03/29(日) 18:01:36 ID:XPQMfqYc
- その時だった。
天から声が響く。
「それは私にとって重要なサンプルなのでな。――手荒な真似はやめてもらおう」
空を覆うインベーダーが、突如発生した巨大な黒級を中心とする重力異常体に引きずり込まれた。
次の瞬間、極彩色の世界がキラたちの前で発生。インベーダーごとビルを飲み込み、その内部にあるものを分解する。
さらに、流れ玉のように虚無色の柱――グラビティ・ブラスト――が正確にブラックゲッターを叩く。
アキトが気を失ったが故か、ブラックゲッターは動かなくなった。
ものの一瞬で、悪夢を粉砕した存在は。
彼らに話しかけるその声は。
そう、その声は。
「ユーゼス・ゴッツォ………!? その機体は!?」
空から舞い降りる、超・超大型機。優に100mを超えようかという巨体が空に浮かんでいる。
胸の中心に輝くは、2つの蒼星――相転移エンジンと、4つの赤星――核パルスエンジン。フォルムは、獣のようでもあり同時に人間にも近い。
「そうだな……これは名付けるなら超神ゼスト・第3段階とでも名付けようか」
ここに至るまでにさらに蓄積されたAI1の情報、この乱戦で集まった数多くの機体のデータと戦闘経験、
そしてナデシコやその周囲に放置された機体の動力炉を積み込むことで誕生した新しいゼスト。
その構成物質は、元・インベーダーの肉体とナデシコの装甲、僅かに第二段階ゼストに残っていたラーゼフォンの欠片、そしてゼスト自身。
16時00分――何が起こったかを語ろう。
その瞬間、遠く離れたアムロ・レイの放った光は、今まさに寄生中であったインベーダーを焼いた。
そして、その意志を殺しつくしたわけだが、肉体まではゲッター線の影響もあって強固だったため破壊しつくすことはできなかった。
融合し、相手の構成物となるインベーダー特有の機構と、ラズムナニウムの変化、吸収の理論が、
浴びたゲッター線と体内に内蔵されたゲッター線の両面から合わさり、猛烈な勢いで自己形成を始めた。
意思を失い、完全にラズムナニウムに高速で食い荒らされる苗床と化したインベーダーの肉体は、メディウスの糧となる。
新しい大量の肉体を構成できる物質を得た。そして、それを最大速度で完成するために必要なエネルギー源もまた、ナデシコなどから奪い取ったものがある。
ここに来るまでに、ヴァイクラン、マスターガンダム、プロトガーラント、マジンガーZ、旧ザクの動力炉をさらに取り込み、
ナデシコから奪った6つを合わせれば、最初からメディウスに積まれていたものも含めて12の動力炉を内蔵するに至ったのだ。
相転移砲やベリア・レディファーを使用することすら可能となったその姿は、まさに神に匹敵する。
「やいやいてめぇ! 突然出てきて何言ってんだ!」
甲児がユーゼスに向けて叫ぶ。しかし、あまりにも力の差がありすぎる両者の立ち位置を考えれば、それはひどく空しいものだった。
事実、ユーゼスはいつでも踏みつぶせる虫けらをみるような眼で甲児を見下ろすばかりだ。
「……せっかくこれらを消滅させてやろうと申し出るつもりだったのだがな。必要はないか?」
「何?」
「この害虫どもを全て駆除してやろうと言っている。その代わり、それが必要なのでな」
くいと指をユーゼスはブラックゲッターへ向ける。
「どうやら、これはゲッターの放つ宇宙線を好む性質があるようなのでな。そのブラックゲッターの心臓をここで暴発させる。
そうすれば、ただでさえ深刻な……そう、『ゲッター線』とでも名付けようか。ゲッター線が、さらにまき散らされる。
上空でできれば、おそらくそれにひかれて会場中の害虫が集まってくるだろう。そこを私が掃除する」
「本気か……? この会場全ての化け物を一人で片づける、とでも?」
- 57 :時の結実――すなわち成長:2009/03/29(日) 18:02:26 ID:XPQMfqYc
- ブンドルの推し量るような言葉を、ユーゼスは一蹴する。
「このゼストの慣らすにはちょうどいいだろう?」
押し黙る全員に、ユーゼスは言う。
「どうした、不満があるなら今ここで全機を破壊し、その動力炉を奪った上でブラックゲッターを回収してもかまわないが?」
圧倒的、高みからの発言。しかし、今のユーゼスはそれを虚勢ではなく実際に実行するだけの力があるのだ。
そう、ここにいる全員をまさに言葉通り『瞬』殺するだけの力が。
「最後に聞かせてほしい。なぜユーゼス、君は私たちを殺すだけの力がありながら見逃す? その意図は何だ?」
「簡単なことだ、ロジャー・スミス。私には私の、お前たちにはお前たちの役目がある」
「役目……?」
「そう、役目だ。私はレジセイアを破壊するため、やらなければいけないことがある。それでお前たちと分担しようと提案したい」
その言葉に、ロジャーは顔をしかめる。
「ユーゼス。相手と交渉をしたいと思うのなら、まずは武力をちらつかせるのはやめるべきだ。フェアではないな」
「フフフ……その通りだなMrネゴシエーター。いいだろう」
ゼストが、轟音を響かせながら地面へ降りる。そびえたつその巨体は、ただ立っているだけで凰牙を圧倒する威圧感を持っていた。
「私は、先ほどの空間の亀裂、そして相転移エンジンによる空間の在り方を観測した。そして、気付いたのだ」
「それは……この空間が崩壊しつつあることですか?」
空間、と来ただけで気付いた聡明なキラの台詞に、ユーゼスは満足げな目を向ける。
「その通りだ。いざとなれば力技で突破も不可能でもないかもしれないが、どこをどう破壊すれば効率がいいのか、
どこを破壊すればレジセイアの元に向かえるのか……それを知るために空間の観測をお前たちにはやってほしい。
もっとも、今返答をよこす必要はない。そうだな……私に協力してくれるのならば、E-3に24時に来てほしい」
「それに対する見返り、は……?」
「首輪の解除方法。これで不満はあるか?」
「現状、それに対する具体的な方法と、その確保は?」
「現在はないが、24時までに用意するだけの駒はそろっている。そして、現状私が一番首輪の真実に近いと自負しているが」
「では、今の時点ではないということだな」
「それはお前たちが空間の観測を行えるかどうかも同じことが言える」
「しかし持ちかけた側には………」
ロジャーとユーゼスの問答が続く。
そこへ、キラが口をはさんだ。
「わかりました。僕たちはあなたの提案を飲みます」
- 58 :時の結実――すなわち成長:2009/03/29(日) 18:03:07 ID:XPQMfqYc
- 「キラ!?」
「ちょっと何を言ってるのよ!?」
不満の声が上がるのを手で制して、キラは言う。
「今は、争ってる場合じゃないんだ。確かに割り切れない部分もあります。けど、そうやって争っても……
僕たちは、まだ完璧とは言えませんが、空間に関してはすでに観測を始めています。
それで分かったのは……思った以上に時間がないことです。もう、争っている時間はないんです。
本当に……協力してくれるんですね?」
「無論だとも。私も同じことを重々承知している。そう、無駄な血を流す猶予はないということだ」
キラの言葉にユーゼスは頷くと、ブラックゲッターの首を掴むと、そのまま上空へ昇って行く。
「では、24時、E-3で会おう。お前たちが、この島を離れられるように害虫を掃除せねばな」
それだけ言い残し――ゼストの姿は見えなくなった。
【シャギア・フロスト 搭乗機体:なし (ガナドゥールに同乗中)
パイロット状態:疲労 戸惑い
機体状態:なし
現在位置:D-2
第一行動方針:??? (とりあえずキラたちについて行くつもりのようだが、内心何を考えているか不明)
第二行動方針:ガウルン、テニアの殺害
第三行動方針:首輪の解析を試みる
第四行動方針:比瑪と甲児・ガロードを利用し、使える人材を集める
第五行動方針:意に沿わぬ人間は排除
最終行動方針:???
備考1:首輪を所持】
【アイビス・ダグラス 搭乗機体:ネリー・ブレン(ブレンパワード)
パイロット状況:精神は持ち成した模様、手の甲に引掻き傷(たいしたことはない)
機体状況:ソードエクステンション装備。ブレンバー損壊。 EN25%
無数の微細な傷、装甲を損耗
現在位置:D-2
第一行動方針:Jアークへ向かう
第二行動方針:協力者を集める
第二行動方針:基地の確保
最終行動方針:精一杯生き抜く
備考:長距離のバイタルジャンプは機体のEN残量が十分(全体量の約半分以上)な時しか使用できず、最高でも隣のエリアまでしか飛べません】
【兜甲児 搭乗機体:ストレーガ (スーパーロボット大戦D)
パイロット状態:疲労
機体状態:機体状態:右肩に刺し傷、各部にダメージ(戦闘に支障無し) EN40%
現在位置:D-2
第一行動方針:誤解は氷解したため、Jアークに協力する
第二行動方針:ゲームを止めるために仲間を集める
最終行動方針:アインストたちを倒す 】
- 59 :時の結実――すなわち成長:2009/03/29(日) 18:04:08 ID:XPQMfqYc
-
【キラ・ヤマト 搭乗機体:なし
パイロット状態:健康、疲労(大) 全身に打撲
現在位置:D-2
第一行動方針:殺し合いを止める。
第二行動方針:出来るだけ多くの人を次の放送までにE-3に集める
第三行動方針:首輪の解析(&マシンセルの確保)
第四行動方針:生存者たちを集め、基地へ攻め入る
最終行動方針:ノイ=レジセイアの撃破、そして脱出】
【ロジャー・スミス 搭乗機体:騎士凰牙(GEAR戦士電童)
パイロット状態:肋骨数か所骨折、全身に打撲多数
機体状態:左腕喪失、右の角喪失、右足にダメージ(タービン回転不可能)
側面モニターにヒビ、EN60%
現在位置:D-2
第一行動方針:殺し合いを止める
第二行動方針:出来るだけ多くの人を次の放送までにE-3に集める
第三行動方針:首輪解除に対して動き始める
第四行動方針:ノイ・レジセイアの情報を集める
最終行動方針:依頼の遂行(ネゴシエイトに値しない相手は拳で解決、でも出来る限りは平和的に交渉)
備考1:ワイヤーフック内臓の腕時計型通信機所持
備考2:ギアコマンダー(黒)と(青)を所持
備考3:凰牙は通常の補給ポイントではEN回復不可能。EN回復はヴァルハラのハイパーデンドーデンチでのみ可能
備考4:ハイパーデンドー電池4本(補給2回分)携帯
備考5:バイパーウィップと契約しました】
【ソシエ・ハイム 搭乗機体:ガナドゥール
パイロット状況:右足を骨折
機体状態:頭部全壊、全体に多大な損傷 駆動系に障害 機体出力の低下 EN40%
現在位置:D-2
第一行動方針:殺し合いを止める
第二行動方針:出来るだけ多くの人を次の放送までにE-3に集める
第四行動方針:この機械人形を修理したい
最終行動方針:主催者を倒す
備考1:右足は応急手当済み
備考2:ギアコマンダー(白)を所持
備考3:ハイパーデンドー電池4本(補給2回分)、騎士凰牙の左腕を携帯
備考4:ガトリングボアと契約しました 】
【レオナルド・メディチ・ブンドル 搭乗機体:サイバスター(魔装機神 THE LORD OF ELEMENTAL)
パイロット状態:良好(主催者に対する怒りは沈静、精神面の疲労も持ち直している)
機体状態:サイバスター状態、各部に損傷、左拳損壊 ビームナイフ所持
現在位置:D-2
第一行動方針:殺し合いを止める
第二行動方針:マシンセルの確保
第四行動方針:サイバスターが認め、かつ主催者に抗う者にサイバスターを譲り渡す
第五行動方針:閉鎖空間の綻びを破壊
最終行動方針:自らの美学に従い主催者を討つ
備考1:ハイ・ファミリア、精霊憑依使用不可能
備考2:空間の綻びを認識
備考3:ガウルン、ユーゼスを危険人物として認識
備考4:操者候補の一人としてカミーユ、甲児、キラに興味
備考5:ユーゼスが解析した首輪のデータを所持(ただし改竄され不完全なため、単体では役に立たない)】
- 60 :時の結実――すなわち成長:2009/03/29(日) 18:05:03 ID:XPQMfqYc
- 【熱気バサラ 搭乗機体:ラーゼフォン(ラーゼフォン)
パイロット状況:DG細胞感染。喉の神経圧迫は完治。気絶
機体状態:右腰から首の付け根にかけて欠落 胴体ほぼ全面の装甲損傷 EN残量20%
現在位置:D-2
第一行動方針:???
最終行動方針:自分の歌で殺し合いをやめさせる
備考1:真理の目が開いています】
【16時50分】
「さて……うまくこちらの誘いに乗ってくれたようでなによりだ」
ユーゼスはF-1上空で、そう嘯いた。
遠くを映せば、島の向こう側をキラたちは進んでいる。
「どのように解釈し、納得したかは知らないが……これでもう問題はない」
そう言って視線を向けるは、相変わらず気絶の最中でも副作用に苦しんでいうのか呻き続けるアキト――いや、ブラックゲッター。
ユーゼスが求めたのは、ゲッターだったのだ。
あれだけの事態を収束させたゲッターの存在。そしてゲッターから放たれる宇宙線が与えるあの生物への影響。
そして、死んだはずの人間をエネルギーとして保存し、再生する能力。
今振り返れば、首輪と何かがメディウス内部で衝突し、コントロールが失われかけた時、それを押さえたあの光。
「こんなところに、鍵が眠っていたとは……存外気付かないものだな」
今から真に調べるべきなのは、このゲッター線が首輪など外部の物体に、いかな影響を与えるかだ。
これを調べることこそ、首輪の解除、引いては新たな超神をさらなる高みに登らせるために必要なことだ。
ゲッター炉を暴発させる? そんなことはもったいなさすぎてできるはずがない。
「もっとも、これらが私の計算に収まらない存在だった時……すべて終わった後その手は打たせてもらおう」
インベーダーという会話すら不可能な存在に、死の目前まで追い込まれたことはユーゼスも忘れていない。
いつか、計算外の存在が自分の敷いたレールを外す可能性がある。そのため、せん滅する必要もわずかではあるがユーゼスは感じていた。
だが、今は。
今――自分は。
「何も恐れるに足りん……! ここまでくればラプラス・コンピューターの確保も奴らを使いつぶしてからで十二分。
素晴らしい成長だ、AI1……様々な物質、要因が重なることで、ここまで成長するとは……!
お前は素晴らしい存在だ! 必ず、唯一無二の存在……『超紳』まで押し上げてやろう……!」
ユーゼスの笑い声が、インベーダーの消えた夕焼けの中で木霊していた。
- 61 :時の結実――すなわち成長:2009/03/29(日) 18:05:44 ID:XPQMfqYc
-
【ユーゼス・ゴッツォ 搭乗機体:メディウス・ロクス(バンプレストオリジナル)
パイロット状態:疲労(中) ハイ
機体状態:EN残量100% ヴァイサーガの五大剣を所持 データウェポンを4体吸収したため四肢が再生しました。
第三段階へ移行しました。
デザインの細部、能力(相転移砲などが使用可)が一部違いますが、基本MXのそれと変わりありません。
現在位置:F-1 上空
第一行動方針:ひとまず放送前にA-1に向かい統夜、テニアと合流
第二行動方針:AI1のデータ解析を基に首輪を解除
第三行動方針:サイバスターのラプラス・コンピューターの回収
第四行動方針:20m前後の機体の二人組みを警戒
第五行動方針:キョウスケにわずかな期待。来てほしい?
第六行動方針:24時にE-3へ
最終行動方針:主催者の超技術を奪い、神への階段を上る
備考1:アインストに関する情報を手に入れました
備考2:首輪の残骸を所持(六割程度)
備考3:DG細胞のサンプルを所持 】
ナデシコやマスターガンダム、ヴァイクランといった放置機体は解体(心臓部を除き粉砕)されました。
生存しているインベーダーは、ゲッター線にひかれてF-1に集まる傾向があるようです。
【テンカワ・アキト 搭乗機体:ブラックゲッター
パイロット状態:マーダー化、五感が不明瞭(回復傾向)、疲労状態 怒り バッドトリップ中 気絶
機体状態:全身の装甲に損傷、ゲッター線炉心破損(補給不可)
現在位置:F-1 上空
第一行動方針:ガウルンの首を取る
第二行動方針::キョウスケが現れるのなら何度でも殺す
最終行動方針:ユリカを生き返らせる
備考1:首輪の爆破条件に"ボソンジャンプの使用"が追加。
備考2:謎の薬を2錠所持 (内1錠はユーゼス処方)
備考3:炉心を修復しなければゲッタービームは使用不可
備考4:ゲッタートマホークを所持 】
- 62 : ◆ZqUTZ8BqI6 :2009/03/29(日) 18:06:27 ID:XPQMfqYc
- 投下、完了しました。
矛盾、指摘、こうしてはどうか? などがありましたら意見をよろしくお願いします
- 63 :それも名無しだ:2009/03/29(日) 18:57:26 ID:7v/qhqZ1
- 投下乙!
ユーゼスwww
ついにメディウスも第三形態に進化したか・・・もう会場内では大きさで張り合えるのはJアークだけだな
しかしここでもアムロ版ゴッドフィンガーの影響がw
激突ならず分散とは、これからどうなるかwktkだ
- 64 :それも名無しだ:2009/03/29(日) 20:08:11 ID:sDV/QNgt
- 投下乙でした!
うわー…それにしてもこのユーゼス、ノリノリである
正直、インベーダーに潰されかけた時は終わりかと肝を冷やしたけれど…アムロのアレの余波がこんなところまで来るとはなあw
にしても、一体メディウスはどれだけ喰ったんだ…?
本気でコイツが1stのDG並みになりそうで怖い、いやそれ以上か?
- 65 :それも名無しだ:2009/03/30(月) 09:02:31 ID:ABrR0tnq
- 乙です
ユーゼスがあまりにも絶好調すぎるw
でも、折角機体面で他の優位に立ったのに仲間の待つ地では
ガウルンという新たな火種が待っているとは皮肉だな
しかし機体が消滅しちゃったから、Jアークがあるキラはともかくシャギアはどうするんだ…
Jアークに乗せた場合、キラとシャギアが手を取り合ってJフェニックスするのか?ww
- 66 :それも名無しだ:2009/03/30(月) 09:28:59 ID:/y9XjGB2
- しかし残ってたのはガーラントに旧ザク、パイルダーではあまりにも戦力としてはwww
ヴァイクランもかなりガタが来てたし、放置するとなっちゃユーゼスが見逃すはずのない最高の餌だし。
そうだ、協力の証としてクロス・メディウスの力でAI1抜き初期メディウスをユーゼスから(ry
- 67 :それも名無しだ:2009/03/30(月) 17:05:35 ID:NmMf2dh4
- ヴァイクランはともかくマジンガーはもったいないかも
ゲッター線が溢れてるならマジンカイザーになる可能性もあったんだし
- 68 :それも名無しだ:2009/03/30(月) 17:16:22 ID:/y9XjGB2
- 首ちょんぱされてるからつなげられないし、コクピットが首から上なのが……つながったらインベーダーカイザーにならないか?
あとちょっと気になったのがメディウスが人型っぽい?描写。第三形態のメディウスは、馬じゃなくて獅子版ケンタウロスだから。
リアル投身だとむっちゃかっこいいのに、MXのデフォルメだとダサいばかりか4本足ってことすらまず分からないのが悲しい。
ライオンの体で、頭のところに人、っていうかメディウス第二形態の上半身乗っけて、手はビッグオー見たいに体のわりにでかく長くしてあるのがメディウス第三形態。
リアルだと本当にかっこいんだよー!
- 69 :それも名無しだ:2009/03/31(火) 20:05:01 ID:zM2VUQHj
-
- 70 : ◆VvWRRU0SzU :2009/03/31(火) 20:09:05 ID:zM2VUQHj
- おっとミスった
アムロ・カミーユ・シャギア・甲児・キラ・アイビス・ソシエ・ロジャー・ブンドル・バサラ予約
- 71 : ◆YYVYMNVZTk :2009/03/31(火) 20:24:50 ID:XZmq579H
- 予約ktkr!
執筆ファイトー
この流れに乗って俺もユーゼス、アキト、ガウルン、統夜、テニアで予約します
- 72 :それも名無しだ:2009/04/01(水) 07:49:11 ID:TWbj/1YV
- いやっほーう、頑張れふぁいとー
- 73 :それも名無しだ:2009/04/01(水) 09:06:50 ID:VndBhkBo
- そろそろ放送原稿を起こす時期になってるなw
御二方の投下後、放送案書かなきゃ。
- 74 :それも名無しだ:2009/04/01(水) 17:27:05 ID:VndBhkBo
- 第二回放送から第三回放送まで、現在の投下数をまとめてみました。
投下数の多い人3名が禁止エリアを指定できるため、今回の指定者は
◆7vhi1CrLM6氏、◆VvWRRU0SzU氏、◆YYVYMNVZTk氏ということでよろしいでしょうか?
詳細
◆ZbL7QonnV氏 3
◆ZqUTZ8BqI6 7
◆7vhi1CrLM6氏 16
◆VvWRRU0SzU氏 8 (9)
◆YYVYMNVZTk氏 7 (8)
◆C0vluWr0so氏 1
かっこ付きは、現在予約中のものを投下するとその数になる、ということです。
- 75 :それも名無しだ:2009/04/01(水) 20:46:19 ID:E02x2M4J
- 個人的事情で暫く執筆環境が取れない身ですので、辞退させていただきます。
あと、禁止エリアは前の話では2→4→6っていうふうに増えていく話だったような気がする。
- 76 : ◆7vhi1CrLM6 :2009/04/01(水) 20:48:00 ID:E02x2M4J
- トリ出し忘れ失礼
- 77 :それも名無しだ:2009/04/01(水) 21:15:43 ID:6gA/96G9
- しかし随分と生き残りも減ったな。
このロワもあと何人くらい残ってるんだろうか…
- 78 :それも名無しだ:2009/04/01(水) 21:16:27 ID:VndBhkBo
- ということは6個ですねー
ええと、すると◆VvWRRU0SzU氏が2つ、
◆YYVYMNVZTk氏と◆ZbL7QonnV氏、◆C0vluWr0so氏と自分が1つずつでしょうか。
禁止エリアの指定は、放送にかかわるのでできれば早めの申告をお願いします
- 79 : ◆VvWRRU0SzU :2009/04/01(水) 22:18:21 ID:uQMNGyup
- 自分が二つ指定できるとのことでしたので、
A-1 G-6
を指定します
- 80 : ◆ZqUTZ8BqI6 :2009/04/01(水) 22:22:14 ID:VndBhkBo
- では自分はF-1で
- 81 : ◆VvWRRU0SzU :2009/04/05(日) 00:34:15 ID:DHXDqqAo
- 投下します。今回は短めです
- 82 : ◆VvWRRU0SzU :2009/04/05(日) 00:35:07 ID:DHXDqqAo
- 太陽が西の地平線へと沈んでいく。
朱に染まった視界の中、ぼんやりとその様を見詰めていたキラ・ヤマトはふと違和感に気付く。
(……早すぎる)
計器を見れば、時刻は17時過ぎ。
そう、早すぎるのだ――陽が落ちるのが。
詳しい時間までは覚えていないが、一日目で陽が落ちた時はおよそ19時を回っていたはず。
ジョナサンと別れ、補給ポイントでJアークの制限を確認していた頃だ。
この作り物の世界のこと、太陽とて本物ではないのだろう。単に主催者が趣向を変えただけなのかもしれない。
(いや、そんなことをする意味がない。加速してるんだ……空間の崩壊が)
が、すぐにその考えを否定する。
F-1の戦闘……インベーダーの出現、真ゲッターの消失は確実に主催者の意図するところを超えたはずだ。
もはや天候の操作などに手を回していられないという可能性も十分にあり得る。
(ナデシコの人達と合流することはできた。でも……)
傍らで、言葉もなくストレーガを操作する兜甲児を見る。
彼だけでなく、傍らを歩むガナドゥール、ソシエ・ハイム。騎士凰牙のロジャー・スミスを。
今だ眠り続ける熱気バサラとラーゼフォンは、ネリー・ブレンのアイビス・ダグラスがバイタルジャンプを用い先行している。
その護衛にレオナルド・メディチ・ブンドルのサイバスターがついた。
先行する三機と違い、こちらの三機は飛行能力がないため必然、移動速度に差が生じた。
一刻も早くF-1から離れるためにひとまずの分散を選んだ形だ。
行く先は勿論、D-3のJアーク。アムロ・レイ、カミーユ・ビダンとの合流を目指して。
他人の機体に同乗している今、キラにすることはない。
甲児も、ソシエも――気絶しているシャギアは別だが――口を開かない。
キラとて同じだ。それほどまでに、先刻対峙したユーゼス・ゴッツォとその乗機の放つプレッシャーは凄まじかった。
巨人――いや、もはや魔獣という方が近い。
神話上の存在であるケンタウロスというのが最も適切な表現か。
四つの足を持ち、空を駆ける翼すらある。そして何より……大きい。
全高は100m近くあったはずだ。単純にサイズだけ考えるのなら、キラが知っているどんな兵器よりも大きい。
戦艦のように複数名で運用するならともかく、個人が操る機動兵器というには過剰すぎる。
頭の中で何度も繰り返す、戦闘シミュレーション。
数の上ではラーゼフォンを除いたとしても五対一。だが、恐ろしいまでに勝てる気がしない。
空を黒く染め上げるほどのインベーダーを事もなく駆逐したあの力。
規模が違いすぎるのだ。出力の、射程の、サイズの。全てに置いてあの機体は空前の水準にある。
撃破するならそれこそ、カミーユが持つ反応弾くらいしかないのではと思う。
Jアークのジェイクォースでは恐らく足りない。
ブラックゲッターを止めたアレはナデシコの重力波砲だろう。ジェネレイティングアーマーを突き抜けてきたあの威力。
おそらくジェイクォースと同程度の破壊力であるはずだ。
損傷を与えることはできるだろうが、決め手にはなり得ない。
(あるいは、同じサイズ、同じ出力の機体か。でも、そんな機体はもう残って……いや、あった。キングジェイダーだ!)
- 83 : ◆VvWRRU0SzU :2009/04/05(日) 00:35:48 ID:DHXDqqAo
- パッと閃くのは、トモロに教えられたJアークの戦闘形態。
人型になるという話だったが、あのサイズならおそらく100mを超える。ユーゼスの機体とも十分に渡り合えるはずだ。
搭乗者に負担がかかるなどとはもう言っていられない。その時が来たら、キラは迷わず剣を手にすることを決めた。
とは言え、ユーゼスと敵対すると確定したわけではない。
先程提案を呑んだのはもちろんその場を逃れるためという意味もあったが、半分ほどはユーゼスの提案に有用性があったからだ。
敵に回せば恐ろしいが、味方――とは言わずとも、少なくとも敵対していないだけで気がかりは減る。
カミーユはおそらく納得しないだろう。ユーゼス、そしてアキトの排除を一番に唱えていたのだから。
キラとてユーゼスを信用し切れるわけではないが、今の状況とあの機体の力を鑑み、現状で彼らと敵対するのは得策ではないと考える。
「お、D-3の市街地が見えてきたぜ。アイビスさん達はもう着いてんのかな」
甲児の言葉に顔を上げると、確かに市街地に到達していた。
だが……おかしいとキラは思った。
ビルは薙ぎ倒され、道路は砕き抉られている。まるで戦場跡のように。
カミーユとの交戦があったからと言って、自分達が出発するまでこの街はここまで荒廃してはいなかったはずだ。
「何かあったのかしら……」
「Jアークは……!?」
「待てよ、今索敵を――っと、通信だ。ブンドルさんからだな」
『こちらブンドルだ。甲児君、Jアークの位置を送る』
転送されてきた座標は市街地の中でも比較的広い空間のある場所だ。着陸しているらしい。
やはり戦闘があったのだと確信し、瓦礫や様々な機械のパーツが転がる街を駆け抜けていく。
やがて、Jアークを発見。背の高いビルの影にその身を横たえ、遠目に発見できないようになっていた。
「アムロさん、カミーユ! 何があったんですか!?」
『キラ、二人は今医務室だ。とにかくブリッジに来てくれ』
問いかけるキラの声に応えたのはJアークを制御するAI、トモロ。
二人が医務室にいるということは怪我をしたということだろう。
甲児が急いでストレーガを着艦させた。格納庫にはF91とVF22に加え、先行したネリー・ブレン、ラーゼフォンの姿があった。
コクピットから降りる。走りだそうとした時、ガナドゥールに同乗していたシャギアのことを思い出した。
「キラ君、甲児君。君達はブリッジに急ぎたまえ。私とソシエ嬢は彼を医務室まで運ぶ」
ロジャーに促され、甲児と二人でブリッジへと走る。
飛び込んだそこには、ブンドルがただ一人立っていた。
「何が……あったんですか?」
「俺達がナデシコに向かった後、誰かに襲われたのか!?」
「落ち着きたまえ、二人とも。私も詳しくは聞かされてはいない。トモロ、改めて説明を頼む」
『了解だ。まず、君達が出発してからだが……』
焦る少年二人を制して、ブンドルが促す。唯一人全ての事情を知るAIの声だけが響く。
- 84 : ◆VvWRRU0SzU :2009/04/05(日) 00:36:43 ID:DHXDqqAo
- □
「……う、ん? 俺は……」
「あ、気がついた?」
覚醒したアムロ・レイを出迎えたのは、赤毛の少女の姿。アムロの記憶では、ここにいるはずのない仲間だ。
よろよろと身を起こすと、身体のあちこちに鈍い痛みが疼く。
「外傷はなかったけど、変な体勢で気絶してたから身体が固まっちゃったんじゃない?」
「ああ……機体を降りる余裕もなかったから、な。それよりアイビス、いつ戻って来たんだ?」
「ついさっき。キラや甲児も一緒だよ」
視界を巡らせれば、隣のベッドにはカミーユ、そしてその向こうには見覚えのない髪を逆立てた男もいた。
こちらはまだ目覚めないようで、浅い呼吸を繰り返している。
アイビスが水の入ったコップを差し出してきた。
受け取り、飲み干す。喉を滑り落ちる冷たい水の感触が、気だるさをいくらか拭い去ってくれた。
「私達が来たとき、アムロもカミーユも機体に乗ったまま気絶してたんだよ。戦闘があったの?」
問いかけてくるアイビスに応えようとして、ふと思い留まる。
ギンガナムと戦ったなどと言えば、せっかく安定した彼女の心をまたかき乱すことになるかもしれないと思ったからだ。
話さなくてはいけないとは思ったが、それなら他に人がいる状況の方がいい。自分より上手い慰め方ができるだろうと期待して。
「ああ……いや、後で話すよ。キラや甲児も一緒か? それに、彼は?」
「うん。それにブンドルさん、ロジャーさん、それにソシエって娘も。それと……ナデシコの人もいるよ。その人がそう」
口ごもるアイビスを見て怪訝に思う。
元々ナデシコとの和解を目指し別行動を取ったのだから、その彼らがいるということは和解したということではないのか。
どことなく沈んだ様子のアイビスに問い質そうとした時、医務室の扉が開いた。
入ってきたのは黒ずくめの男。その背に気を失っているらしい男性を担いでいた。
「あなたは……Mr.ネゴシエイター?」
そう、始まりの場所で主催者と向き合っていた交渉人。この舞台で一番顔と名が知られていると言って差し支えない男。
その後ろからこちらは見覚えのない少女が顔を出す。
「いかにも私はロジャー・スミス。自己紹介を……といきたいが、まずは彼の手当をさせてほしい」
背負った男を示すロジャー。空いているベッドへと男を寝かせ、てきぱきと処置をする。
Jアークに備え付けてあった栄養剤を打ち、呼吸が安定したところでようやく交渉人はアムロへと向き直った。
「改めて名乗ろう。私はロジャー・スミス。この艦に以前身を寄せていて、今はキラ君の依頼を受けて動いていた」
「俺はアムロ・レイ。そこの青い髪の少年はカミーユ・ビダン。俺達も、あなたやキラと志を同じくする者だ」
しっかりと手を握り合う。主催者に反抗すると誰の目にも明らかに宣言していたロジャーと合流できたのはアムロにとっても喜ばしいことだった。
- 85 : ◆VvWRRU0SzU :2009/04/05(日) 00:37:28 ID:DHXDqqAo
- 「ちょっとロジャー。あなた達だけで盛り上がってないで、私の紹介もしなさいよ」
「む、申し訳ない。アムロ……と、呼ばせてもらうよ。彼女はソシエ・ハイム。彼女もまた、私やキラ君の同志だ」
よろしく、と手を差し出してくるソシエの手を握り返す。艦の平均年齢が一気に下がった気がするな、とアムロはぼんやりと思った。
「アムロ、カミーユも起きたみたい」
アイビスの声に振り向くと、今まさにカミーユも気がついたようだ。
今度はアムロが彼に水を手渡す。
落ち着いたカミーユに、ロジャーとソシエが自己紹介をする。
「さて。ではここで何があったかの説明と、我々がナデシコと接触した経緯を話したいところだが……キラ君や甲児君がブリッジに向かった。
二度手間にならないよう我々もできれば移動したいが、動けるか?」
「ああ、俺は問題ない」
「俺も……大丈夫です。行きましょう」
「よし。ではソシエ嬢かアイビスさん。どちらかが残って、彼ら――シャギア・フロストと熱気バサラの面倒を見てほしいのだが」
「む、なんでそういうことを女に押し付けるのよ。私達だって作戦会議に出席する権利はあるでしょう」
「そう言う訳ではない……誰かが残っていないと、彼らが目覚めたとき困るだろう」
「まあ待て。この医務室からでも、端末を使えば……」
言い合う二人を見かねて、アムロが備え付けの端末を操作する。
ブリッジと回線が繋がり、モニターにキラ、甲児、そしてブンドルの姿が映し出される。
「ブンドル、俺だ。聞こえるか?」
『アムロ、気がついたか。今トモロから事情を聞いている。動けるなら君も来て欲しいのだが』
「すぐに行く……ではソシエ、ここから会議に参加してくれ。そのシャギアとバサラに変化があったら教えてくれると助かる」
「むー……まあいいわ。二人のことは任せておいて」
ソシエを置いて、四人でブリッジへと向かう。
道すがらそれまであったことの情報を交換しつつ、やがてブリッジへ着いた。
「アムロさん、カミーユ! 大丈夫なんですか?」
「ああ、俺達はもう心配ない。キラ、君も無事に帰ってきてくれて何よりだ」
「さて……全員、とはいかないがとりあえず面子は揃った。改めて状況の整理を始めよう」
ブンドルの声を契機に、各々が語りだす。
F-1、ナデシコをめぐる乱戦を。
D-3、突如出現したインベーダー、甦った戦闘神との戦いを。
- 86 : ◆VvWRRU0SzU :2009/04/05(日) 00:38:18 ID:DHXDqqAo
- □
「……ガウルン、ユーゼス、そしてインベーダー。俺達が知らないところで、状況は大きな変化を見せたということか」
「それはこちらのセリフだ。ギンガナム……まさか死者すらも眠りから呼び覚ますことができるとはな」
一通りの経緯をお互いが語り終えた。
ブリッジを重苦しい沈黙が支配する。その原因は、やはり……
「そうか……ガロードが、な。死んだ訳ではないというのが救いと言えば救いか」
「私にも彼が何をしたのか、詳しくは分からない。だがおそらく、彼らは我々を助けるためにあの選択をしたのだろう。それだけは間違いないはずだ」
「……そうだな。ガロードの分まで、俺達が戦わねばならない。今は彼らを悼むよりも、前に進むことが必要……だな」
ブンドルに声を返すアムロも、やはり落胆を抑えきることはできない。
ニュータイプを幻想と切って捨てる少年には未来への希望を感じさせる何かがあった。
こんなところで失われていいものではない――なかったはずだ。
カミーユも、彼と出会っていればまた違う物の見方ができるようになったはずだ。
自分がその場にいられなかったことが堪らなく悔しい。力になれたかどうかは分からないが、見届けることすらできない自分の無力が。
「――我々が今考えるべき案件は、おおよそ三つ。
まず一つ、今まで通りの殺戮者の排除だ。現在、我々は生き残った者の中で最大の勢力と言っていいだろう。
余程のことがない限り危険は少ないはずだが……油断しないに越したことはない。
現状確認されている危険人物は、と言うか我々以外の生存者と括ってももはや問題はないか。
まずはガウルン。これは言うまでもなく敵だな。あの戦闘でどうなったかは分からないが、確証がない以上生きているとして扱うべきだろう」
「ああ。生き残ることに掛けては、あの男は俺達の誰よりも優れている。正直なところ、二度と戦いたくない相手だ」
ブンドルが進行役を買って出た。各自、自分の意見を口々に表明する。
「次にテンカワ・アキト。私としては彼が戦いに乗った理由もわからなくはない。できれば説得したいところだが……」
「ユーゼスと組んでいる。排除する理由はそれだけで十分です」
ロジャーに厳しい声を返したのはカミーユだ。
「それにあの人は明確に優勝を目指して戦っています。説得に応じるようなことはないでしょう」
「……その時は私が止めるさ。それがユリカ嬢を守れなかった私の責任でもある」
「ではテンカワ・アキトのことは、ネゴシエイター、あなたに任せる。だが説得に応じなければ、排除。
我々の安全と天秤に掛けられるものではないということだけは忘れないでくれ」
了解、とロジャーが苦い声で返す。続いて声を上げたのはアイビスだ。
「次はテニアだね。それと、統夜だっけ? テニアを助けて一緒に逃げた男の子って」
「バサラさんはそう言ってたね。何でも、テニアの元々の知り合いだとか」
「テニア……畜生。なんで俺達を騙したりなんかしたんだ。みんな力を合わせれば、主催者にだって勝てるのに」
キラ、甲児が付け加える。
ブンドルは数秒思案した後、キラに向かって問い掛けた。
「彼女とその統夜少年はそう考えなかったということだろう。が、気になるのは彼らの今の方針だな。
彼らが恋人関係だとするのなら、優勝するにはどちらかが死ななければならない。
果たしてどう動くのか……キラ、君はどう思う? 人を集めるとした君の意見が聞きたい」
「そう、ですね……もし、彼らが殺し合いを放棄して生還のための協力を求めてきたら、受け入れるつもりです」
「ほう。彼らは少なくともカティアという少女、巴武蔵、ジョナサン・グレーン、そして間接的にオルバ・フロストを殺害している。その彼らとでも手を取り合えると?」
「殺し合いに乗った理由が生きて帰るためだったのなら、僕に責めることはできません。
容認するという訳でもありませんが、今の彼らの声も聞かずに切り捨てることは違うと思います。
パートナーと再会して、殺すこと以外に道を見つけたのなら協力することはできるはずです」
「誘いに応じなかったら?」
「……討ちます。ロジャーさんがアキトさんを止めると言うなら、僕も同じようにテニアを。
疑いはあったんです――最初に会ったときから。それを行動に移せなかった僕のミスでもありますから」
- 87 : ◆VvWRRU0SzU :2009/04/05(日) 00:39:11 ID:DHXDqqAo
- ブンドルが見たところ、そう宣言するキラの目には苦味こそあれど揺れてはいない。
これなら任せることもできるか、と声に出さずに称賛する。
「では、彼らに対してはアキトと同じく一度は対話を呼びかける。応じなければ排除、ということでよろしいかな」
「……賛成だ。キラ、お前だけにはやらせねえ。もしもの時は、俺も手伝うからよ」
甲児もまた、覚悟を決めることはできたようだ。
反対する者がいないことを確認し、次を促す。
「続いてはキョウスケ・ナンブだ。これについてはカミーユ、君が話を進めてくれ」
「わかりました。キョウスケ中尉は俺の仲間だったんだが、今は主催者、アインストに取り込まれている。
詳細はさっき説明したから省くが、俺もあの人は排除するしかないと考えている」
「ちょ、ちょっと待ってよ。そのキョウスケって人、カミーユの仲間なんでしょ? 助けてあげられないの?」
「俺もできればそうしたいさ。でも、オルバって人……テニアと一緒に戦った人は、かなりの腕だったんだろ?
いくら俺達が数で勝ってるとは言え、そんな甘い気持ちで戦えば殺されるのはこっちだ。
あの人は俺に自分を討てと言った。だから――俺も、中尉の気持ちを無駄にしたくない」
「……俺はそのキョウスケと言う男を知らないが、アインストであるのなら説得や交渉は通じないと考えるべきだ。
また、主催者の力を削ぐ、あるいはその正体に一歩でも近づくためには、撃破もやむなしというところだろう」
アイビスの疑問をカミーユ、そしてアムロが封じる。
ブンドルが思うに、キョウスケと言う男は望んでアインストに身体を委ねたのかもしれない。
カミーユが、まだ見ぬその仲間が必ず己を撃ち貫き主催者を打破してくれると信じて。
そうであるなら、悪を自認するブンドルとて感じ入らずにはいられない。
我が身を捨ててでも敵を倒す――本物の戦士の姿ではないか。生きている内に会えなかったことが悔やまれる。
「キョウスケ・ナンブはガウルンと同じく見敵必殺、発見次第排除。油断すればこちらがやられる、ゆめゆめそのことを忘れるな。
では、最後……ユーゼス・ゴッツォについてだ。彼は二つ目の案件、空間の排除にも関わっている。
先程説明した通り、我々はユーゼスと手を組むことになっている。次の放送までにここで合流する予定だ」
「それです。俺はどうしても納得できません。キョウスケ中尉がアインストに取り込まれたのも、そもそもの原因はユーゼスです。
あいつが俺達と協力するはずなんてない。きっと裏で何か考えてるに決まってます」
「そうだとしても……だ、カミーユ。お前も奴の機体は見ただろう」
コンソールを示すアムロ。そこには対峙した時に記録された、100mを超えるユーゼスの機体が映し出されている。
「このサイズだ、おそらく機体性能は俺達のものとは比べ物にならんだろう。まともにぶつかり合う前に、少しでも手の内は知っておきたい」
「戦力だけの問題ではない。首輪の解除においても奴は我々の一歩先を行っている」
『そして何より、空間を突破する力の一つに成り得る、ということです』
アムロ、ロジャーに続いたキラは声ではなくタイピングで意見を示す。これはさすがに主催者側に聞かれるとまずい。
それを見た面々も同様にタイプで応える。
『現時点で我々が所有する、空間の綻びを打開できる可能性のある兵器を挙げていこう。まずはサイバスターのコスモノヴァだ』
『俺のVF22の反応弾も、ですね。戦いに使うのならともかく、こういうことなら核も有用なものです』
『騎士凰牙のことも忘れないでいただきたい。先刻契約したデータウェポン、あれなら十分条件に合致するはずだ。電池次第で連発もできる』
『Jアークのジェイクォースも、でしょうか。これは少し、先に挙げられたものに比べると見劣りするかもしれませんが』
『キングジェイダーならその懸念も解消されるのだがな』
『トモロ、それも後で検討しよう。ユーゼスの機体に対抗できるのはキングジェイダーを置いて他にないからね』
『それに俺のF91もだ。エネルギーの残量にもよるが、おそらく候補の一つにはなる』
Jアークに記録されていた戦闘映像から、アムロが見せたMSの枠を超える非常識な技のことは誰もが知っている。
特にカミーユ、キラのガンダムパイロット二名が理解し難いと苦笑いしていたものの、あれなら確かに十二分の威力。
残るストレーガ、ガナドゥール、ネリー・ブレンは残念ながらそこまで高威力の兵器はない。
あるいはアイビスの最初の乗機、ヒメ・ブレンがあれば話は別だったのだが……それはもはや終わった可能性。
- 88 : ◆VvWRRU0SzU :2009/04/05(日) 00:39:56 ID:DHXDqqAo
- そしてリ・テクノロジストの天才科学者、クリフォード・ガイギャクスが建造した二体の巨人。
ストレーガとガナドゥールには本来合体機構が備わっている。フォルテギガス、『強き巨人』の名を冠した力。
度重なる激戦の末分離し、今や満足に動く機体はストレーガのみとなったが。
「ストレーガとガナドゥールについてだが……合体機構を使うのは現状難しいと言わざるを得ないだろう。
修復次第で可能かもしれないが、あるいは分離したまま二つの機体として扱う方が合理的かもしれん」
と言ったのはアムロ。唯一両方に乗った経験から来る言葉だ。
「修復するにしろ、部品がない。ある程度はJアークの機材で補えるが、消失した部位まではさすがにな」
『いや、そうでもない』
が、その言葉にトモロが待ったをかける。
モニターに周辺の映像が映し出された。ところどころに機械と瓦礫が散見された。
『これを見ろ。先程襲来したインベーダーの残骸だ』
「これがどうした……いや、そういうことかトモロ」
アムロの声が一段高くなる。宝物を見つけたというように。
『インベーダーは機械と融合しメタルビーストとなる、と言っていたな。確かに奴らは機械と融合する性質をもつ。
先の交戦でアムロ、お前がインベーダーを全て消滅させた後に残ったのが融合されたパーツと言う訳だ』
折れたブレンバー。
拳、肩、そして胸部を粉砕されたシャイニングガンダム。
自爆し、だが腕や頭部と言った細かな部分が残っているラーズアングリフ。
頭部を砕かれ埋められていたヒメ・ブレンの姿はなかった。生体メカたるアンチボディまではさすがに取り込めなかったのだろうか。
「探してみれば使えるパーツがあるかもしれませんね」
「よし、探しに行こうぜ!」
「……それは後で行うとして、話を戻そう。とりあえず五つ候補があるが、不安も多い。
まず私のサイバスターだ。正直なところ、私ではサイバスターの力を完全に引き出すことはできん。
諸君の内誰か相応しいものに委ねたいと思っている。まあ、これもまた後で改めて話すが」
「それを言うなら、Jアークもです。キングジェイダーは確かに強力らしいんですが、僕が使えるかどうかは……わからないんだよね、トモロ?」
『ああ。本来J……身体を機械で強化し、Jジュエルに選ばれた者が操縦する機体だ。
生身の人間が使えば死は免れんが、Jアークが制限下にある今ならあるいは可能かもしれん。操縦者に負荷がかかることは間違いないがな』
「死は免れんって……駄目だよ、そんな危ないこと!」
「だが、逆に言えばそれほどの力がいま必要だということでもある……」
押し黙る一同に、トモロが感情を感じさせない声で告げる。
- 89 : ◆VvWRRU0SzU :2009/04/05(日) 00:43:09 ID:DHXDqqAo
- 『もし使うということになれば、の話だが。その場合、操縦するのはキラでなければ承認はしない』
「え……僕じゃなければ駄目なの?」
『理由は二つ。一つ、勇気を持つ者。ジョナサン・グレーンにはその資質はなかったが、キラ、君にはある。
もっとも、この条件だけで言うなら他にも該当者はいる。そこで二つ目の理由だ。これこそキラしか持ち得ない条件でもある』
「僕にしかない理由……あ、コーディネイターってこと?」
『そうだ。肉体的な頑強さと言う点で、キラはここにいる誰よりも優れている。
もちろんJやガオガイガーを駆る獅子王凱とは比べるべくもないが、少なくとも普通の人間が乗るよりは負担を抑えられる』
「……わかった。キングジェイダーは僕が乗るよ」
「少年に押し付けるのは大人として忍びないが……頼む、キラ君」
「よし、キングジェイダーについてはキラ、そしてトモロに一任する。
とにかくだ、ユーゼスと組むのは奴がそれだけの力を確実に有しているというからでもある。
いずれ戦うことは大いにあり得る……というか、奴は確実に仕掛けてくるだろう。その時までに準備は万全にしておきたい」
とブンドルが締め括った。
代わりに進み出たのはロジャーだ。
「当面の行動だが、ユーゼスとの合流まで体勢を整えるということでいいだろうか?
私としては凰牙の腕の修理をしたい。キラ君やカミーユ君、アムロ。君達の力を借りたいのだが」
『ちょっとロジャー! ガナドゥールもよ!』
「……凰牙とガナドゥールの修理、だ。見たところ、ほとんどの機体が修理と補給を必要としているように見える。
もはやこの会場に単独で残っている非戦闘者もいないだろう。ここは腰を据えて足元を固める時期だと思うが」
「そういや、ストレーガも結構無茶したしなぁ。俺も賛成だぜ」
「ふむ……ではこうしよう。
トモロ、君はこのまま空間の観測を。私は念のためサイバスターで周辺を警戒する。
ソシエ君は医務室で二人の看病を。
甲児君とアイビス君は完全に日が沈むまでに周辺の残骸から使えるパーツを集める。
残るアムロ、カミーユ、キラ、ロジャー氏は機体の修復と、……ということで、異論はないかな?」
最後、アムロ達にだけは首輪をトントンと叩きつつ言うブンドル。
了解したと声に出さず頷く彼らを見て、満足げに微笑む。
「ああ、言うまでもないが最初に補給を行ってからだ。幸いここからすぐの場所に補給ポイントがある。順番に行ってくれ」
- 90 : ◆VvWRRU0SzU :2009/04/05(日) 00:44:28 ID:DHXDqqAo
- □
やがて、Jアークから次々に発進していく機体達。
赤く染まった世界はやがて暗闇へとその身を沈めていく。
そして散らばる命のなれの果て、様々な機械の中に一つ。
彼らが求め、確保せんとするもの――フェステニア・ミューズが機体、ベルゲルミルの腕があった。
かつてD-7にてガウルンに持ち去られ、ここD-3にてブンドルと対峙した時放り出されていったもの。
インベーダーが取り込んだそれも、今はシャイニングガンダムやラーズアングリフの欠片と同じく打ち捨てられている。
腕だけとはいえ、ナノマシン・マシンセルの塊とも言えるそれを手にしたとき、彼らの反逆はまた一歩先へと進むだろう。
そして今だ眠り続ける熱気バサラ。
彼の身体を侵食したDG細胞は、しかしその侵攻をある一線以上に進めることができないでいた。
かつて希代の武術家である東方不敗がそうしたように、熱気バサラの意志の力はDG細胞を完全に抑え込んだのである。
これがテンカワ・アキトのように身体に重大な欠陥があり、また定期的にDG細胞の塊を摂取していればこうはならなかったであろう。
希釈されたDG細胞ではバサラの歌への熱を冷ますことができなかったという訳だ。
吸い寄せられるように、一つの場所へと力が集まっていく。
生き残った者達はこれ以上の暴虐を許さないと誓い、その想いと力を一つに束ねて暗闇へと――その先の希望へと指を伸ばす。
宴の終焉は、近い。
【二日目18:00】
【共通の行動方針
1:24時にユーゼスと合流。現状敵対する意思はない
2:ガウルン・キョウスケの排除
3:統夜・テニア・アキトは説得を試みる。応じなければ排除
4:ユーゼスとの合流までに機体の修理、首輪の解析を行い力を蓄える】
【アムロ・レイ 搭乗機体:ガンダムF91( 機動戦士ガンダムF91)
パイロット状況:健康、疲労(中)
機体状態:ビームランチャー消失 背面装甲部にダメージ ビームサーベル一本破損
頭部バルカン砲・メガマシンキャノン残弾100% ビームライフル消失 ガンポッドを所持
現在位置:D-3
第一行動方針:機体の修復 首輪の解析
第二行動方針:D-4地区の空間観測
第三行動方針:協力者を集める
第四行動方針:マシンセルの確保
第五行動方針:基地の確保
最終行動方針:ゲームからの脱出
備考1:ボールペン(赤、黒)を上着の胸ポケットに挿している
備考2:ガウルン、ユーゼス、テニアを危険人物として認識
備考3:首輪(エイジ)を一個所持
備考4:空間の綻びを認識】
備考5:ゴッドフィンガーを習得しました。
残存エネルギーのほぼすべてを発動すると使用します。
また、冷却などの必要があるため、長時間維持は不可能です。
発動、維持には気力(精神力)や集中力を必要とし、大幅に疲労します。
ほぼ完全な質量をもった分身の精製、F-91を覆うバリアフィールドの精製、
および四肢に収束させての攻撃への転嫁が可能です(これが俗にいうゴッドフィンガー)。
- 91 : ◆VvWRRU0SzU :2009/04/05(日) 01:01:55 ID:DHXDqqAo
- 【カミーユ・ビダン 搭乗機体:VF-22S・Sボーゲル(マクロス7)
パイロット状況:強い怒り、悲しみ。ニュータイプ能力拡大中。疲労(中)
機体状況:オクスタン・ライフル所持 反応弾所持 EN100% 左肩の装甲破損 全体的に装甲表面に傷。
現在位置:D-3
第一行動方針:機体の修復 首輪の解析
第二行動方針:ユーゼス、アキト、キョウスケを「撃ち貫く」
第三行動方針:遭遇すればテニアを討つ(マシンセルを確保)
最終行動方針:アインストをすべて消滅させる
備考1:キョウスケから主催者の情報を得、また彼がアインスト化したことを認識
備考2:NT能力は原作終盤のように増大し続けている状態
備考3:オクスタン・ライフルは本来はビルトファルケンの兵装だが、該当機が消滅したので以後の所有権はその所持機に移行。補給も可能】
【キラ・ヤマト 搭乗機体:Jアーク(勇者王ガオガイガー)
パイロット状態:健康、疲労(中) 全身に打撲
機体状態:ジェイダーへの変形は可能? 各部に損傷多数、EN・弾薬共に100%
現在位置:D-3
第一行動方針:殺し合いを止める
第二行動方針:機体の修復 首輪の解析
第三行動方針:マシンセルの確保
第四行動方針:生存者たちを集め、基地へ攻め入る
最終行動方針:ノイ=レジセイアの撃破、そして脱出
備考1:Jアークは補給ポイントでの補給不可、毎時当たり若干回復
備考2:D-4の空間観測を実行中。またその為一時的に現在地を固定
備考3:ユーゼスが解析した首輪のデータを所持(ただし改竄され不完全なため、単体では役に立たない)】
【アイビス・ダグラス 搭乗機体:ネリー・ブレン(ブレンパワード)
パイロット状況:精神は持ち成した模様、手の甲に引掻き傷(たいしたことはない)
機体状況:ソードエクステンション装備。ブレンバー損壊。 EN100% 無数の微細な傷、装甲を損耗
現在位置:D-3
第一行動方針:使える部品を集めて機体を修理する
第二行動方針:協力者を集める
第二行動方針:基地の確保
最終行動方針:精一杯生き抜く
備考:長距離のバイタルジャンプは機体のEN残量が十分(全体量の約半分以上)な時しか使用できず、最高でも隣のエリアまでしか飛べません】
【兜甲児 搭乗機体:ストレーガ (スーパーロボット大戦D)
パイロット状態:疲労
機体状態:機体状態:右肩に刺し傷、各部にダメージ(戦闘に支障無し) EN100%
現在位置:D-3
第一行動方針:使える部品を集めて機体を修理する
第二行動方針:誤解は氷解したため、Jアークに協力する
第三行動方針:ゲームを止めるために仲間を集める
最終行動方針:アインストたちを倒す 】
【ソシエ・ハイム 搭乗機体:ガナドゥール
パイロット状況:右足を骨折
機体状態:頭部全壊、全体に多大な損傷 駆動系に障害 機体出力の低下 EN100%
現在位置:D-3
第一行動方針:殺し合いを止める。バサラ・シャギアの看病
第二行動方針:出来るだけ多くの人を次の放送までにE-3に集める
第四行動方針:この機械人形を修理したい
最終行動方針:主催者を倒す
備考1:右足は応急手当済み
備考2:ギアコマンダー(白)を所持
備考3:ハイパーデンドー電池4本(補給2回分)、騎士凰牙の左腕を携帯
備考4:ガトリングボアと契約しました 】
- 92 : ◆VvWRRU0SzU :2009/04/05(日) 01:03:46 ID:DHXDqqAo
- 【ロジャー・スミス 搭乗機体:騎士凰牙(GEAR戦士電童)
パイロット状態:肋骨数か所骨折、全身に打撲多数
機体状態:左腕喪失、右の角喪失、右足にダメージ(タービン回転不可能)
側面モニターにヒビ、EN100%
現在位置:D-3
第一行動方針:殺し合いを止める。機体の修復 首輪の解析
第二行動方針:首輪解除に対して動き始める
第三行動方針:ノイ・レジセイアの情報を集める
最終行動方針:依頼の遂行(ネゴシエイトに値しない相手は拳で解決、でも出来る限りは平和的に交渉)
備考1:ワイヤーフック内臓の腕時計型通信機所持
備考2:ギアコマンダー(黒)と(青)を所持
備考3:凰牙は通常の補給ポイントではEN回復不可能。EN回復はヴァルハラのハイパーデンドーデンチでのみ可能
備考4:ハイパーデンドー電池4本(補給2回分)携帯
備考5:バイパーウィップと契約しました】
【レオナルド・メディチ・ブンドル 搭乗機体:サイバスター(魔装機神 THE LORD OF ELEMENTAL)
パイロット状態:良好(主催者に対する怒りは沈静、精神面の疲労も持ち直している)
機体状態:サイバスター状態、各部に損傷、左拳損壊 ビームナイフ所持
現在位置:D-3
第一行動方針:殺し合いを止める。周辺の警戒
第二行動方針:マシンセルの確保
第四行動方針:サイバスターが認め、かつ主催者に抗う者にサイバスターを譲り渡す
第五行動方針:閉鎖空間の綻びを破壊
最終行動方針:自らの美学に従い主催者を討つ
備考1:ハイ・ファミリア、精霊憑依使用不可能
備考2:空間の綻びを認識
備考3:ガウルン、ユーゼスを危険人物として認識
備考4:操者候補の一人としてカミーユ、甲児、キラに興味
備考5:ユーゼスが解析した首輪のデータを所持(ただし改竄され不完全なため、単体では役に立たない)】
【熱気バサラ 搭乗機体:ラーゼフォン(ラーゼフォン)
パイロット状況:DG細胞感染。喉の神経圧迫は完治。気絶
機体状態:右腰から首の付け根にかけて欠落 胴体ほぼ全面の装甲損傷 EN残量20%
現在位置:D-3
第一行動方針:???
最終行動方針:自分の歌で殺し合いをやめさせる
備考1:真理の目が開いています】
【シャギア・フロスト 搭乗機体:なし
パイロット状態:疲労 戸惑い 気絶
機体状態:なし
現在位置:D-3
第一行動方針:??? (とりあえずキラたちについて行くつもりのようだが、内心何を考えているか不明)
第二行動方針:ガウルン、テニアの殺害
第三行動方針:首輪の解析を試みる
第四行動方針:比瑪と甲児・ガロードを利用し、使える人材を集める
第五行動方針:意に沿わぬ人間は排除
最終行動方針:???
備考1:首輪を所持】
D-3を中心としてその周辺のインベーダーはすべて消失しました。
- 93 : ◆VvWRRU0SzU :2009/04/05(日) 01:07:58 ID:DHXDqqAo
- 投下終了です。
時間かかった割に短い…orz
タイトルは「闇の彼方に伸ばす指先」、ご指摘お待ちしてますー
- 94 :それも名無しだ:2009/04/05(日) 01:20:36 ID:6bLeLF3p
- 投下乙!
しかし気絶王は目を覚ましたと思ったらまた気絶かwww
- 95 :それも名無しだ:2009/04/05(日) 01:23:04 ID:dkSksfew
- 投下GJ!
しかしついに終わりが見えてきたな。もう、最終決戦はそう遠くなさそうだ。
これからは一戦一戦が死闘になるな……全員の補給が完了して、戦力とかも整い始めたし、どこまでいけるのか。
しかしユーゼス、キョウスケ、ミィとか中心に波乱が多すぎるwww
- 96 : ◆VvWRRU0SzU :2009/04/05(日) 05:08:32 ID:DHXDqqAo
- うわあああミスったああ
騎士凰牙のENは補給ポイントじゃ回復しませんでしたね
EN100%→EN60%
に修正します
- 97 : ◆YYVYMNVZTk :2009/04/05(日) 19:37:22 ID:2urNjSLm
- 投下GJ!
対主催集団がついに集合か……!
戦力も揃ってきたし、最終決戦も見えてきたぜ
……で、良い流れに水を差して申し訳ないですが予約の延長お願いしますorz
- 98 :それも名無しだ:2009/04/05(日) 23:59:09 ID:GdhqXVlX
- 一次のスレ落ちたんだな…
- 99 :それも名無しだ:2009/04/06(月) 00:47:12 ID:psqXMF1n
- 偉大な先達に敬礼しつつ、見送ろうぜ!
完結して980超えて、大往生だったんだ
- 100 :それも名無しだ:2009/04/06(月) 00:51:34 ID:87rG5aPv
- ありがとう!スパロワ!さようなら!
そしてこんにちは!二次スパ終盤!
- 101 : ◆ZqUTZ8BqI6 :2009/04/06(月) 01:29:58 ID:psqXMF1n
- ためしに、放送原案を投下します。
こうしてほしい、こう変えてはどうか? などがありましたらお願いします
- 102 :第三回放送:2009/04/06(月) 01:30:42 ID:psqXMF1n
- また日は沈み、次なる夜がやってくる。しかし、この世界の夜はもう二度と訪れることはない。
比喩ではなく本当に夜の夜が来る。この夜が明けた時、この世界に立つのは誰か。
いや、その世界の夜は明けるのか。澄明は、まだ遥か向こうにも見えない。
『皆さま、お疲れ様ですの。ここまで頑張った人たちは、もう少し。そのためにご褒美があるですの。
何か気になりますの? けど、まずは今回死んじゃった人たちの連絡ですの』
……ジョナサン=グレーン
……ベガ
……バーナード=ワイズマン
……オルバ=フロスト
……宇都宮比瑪
……クインシィ=イッサー
……ガロード=ラン
『―――以上、7名が皆様の犠牲となりお亡くなりになられましたですの。ちょっと勢いが落ちちゃってますの。
早く帰りたいならちゃきちゃき殺しちゃうことをお勧めしますの。次は、禁止エリアの発表ですの。
ここまで来て禁止エリアで死ぬなんて恥ずかしいからしっかりメモするべし!ですの。
禁止エリアは……A-1、G-6、F-1 (1) (2) (3) ですの。
それじゃお待ちかねご褒美発表タイムですの。やっぱり目標があったほうがやる気も出ると思いましたので、
特別に名簿をプレゼントしますの! 残りの人たち全員の名前が書いてある特注品、受けとってほしいですの。
水や火からは離れて待っててくださいの。残り人数といる人が分かれば効率もあっぷですの。
あと……ちょっと会場に変なのが出ちゃったりもするけど、気にしないでくださいの。すぐに全部いなくなりますの。
あんなのは無視してお隣の人を撃つのに武器は使ってくださいですの。武器の無料サービスも大変ですの!
それでは十二時間後、最後の一人として私とお会いできますよう、皆様の無事をお祈り申し上げますの。では』
そう言って、アルフィミィは通信を切る。ちらりと、視界の隅の机を見た。
「……あら?ですの??」
そこには、なぜか一枚だけ名簿が残っていた。
【アルフィミィ 搭乗機体:デビルガンダム(機動武闘伝Gガンダム)
パイロット状況:良好
機体状況:良好
現在位置:ネビーイーム
第一行動方針:バトルロワイアルの進行
最終行動方針:バトルロワイアルの完遂】
備考 転送されなかった一枚は、ユーゼス(首輪の機能停止が原因)の分です。
- 103 :第三回放送:2009/04/06(月) 01:49:12 ID:psqXMF1n
- ぐあ、ミスがあった……というか初期版間違えて投下したので修正
また日は沈み、次なる夜がやってくる。しかし、この世界の夜はもう二度と訪れることはない。
比喩ではなく本当に最後の夜が来る。この夜が明けた時、この世界に立つのは誰か。
いや、箱庭世界の夜は明けるのか。澄明は、まだ遥か向こうにも見えない。
『皆さま、お疲れ様ですの。ここまで頑張った人たちは、もう少し。そのためにご褒美があるですの。
何か気になりますの? けど、まずは今回死んじゃった人たちの連絡ですの』
……ジョナサン=グレーン
……ベガ
……バーナード=ワイズマン
……オルバ=フロスト
……宇都宮比瑪
……クインシィ=イッサー
……ガロード=ラン
『―――以上、7名が皆様の犠牲となりお亡くなりになられましたですの。ちょっと勢いが落ちちゃってますの。
早く帰りたいならちゃきちゃき殺しちゃうことをお勧めしますの。
……次は、禁止エリアの発表ですの。
ここまで来て禁止エリアで死ぬなんて恥ずかしいからしっかりメモするべし!ですの。
禁止エリアは……A-1、G-6、F-1 (1) (2) (3) ですの。
それじゃお待ちかねご褒美発表タイムですの。やっぱり目標があったほうがやる気も出ると思いましたので、特別に名簿をプレゼントしますの!
残りの人たち全員の名前が書いてある特注品、受けとってほしいですの。水や火からは離れて待っててくださいの。再度支給はなしですの。
残り人数といる人が分かれば効率もあっぷですの。あと……ちょっと会場に変なのが出ちゃったりもするけど、気にしないでくださいの。すぐに全部いなくなりますの。
あんなのは無視してお隣の人を撃つのに武器は使ってくださいですの。武器の無料サービスも大変ですの!
――それでは十二時間後、最後の一人として私とお会いできますよう、皆様の無事をお祈り申し上げますの。では』
そう言って、アルフィミィは通信を切る。そしてちらりと、視界の隅の机を見た。
「……あら?ですの??」
そこには、なぜか一枚だけ名簿が残っていた。
【アルフィミィ 搭乗機体:デビルガンダム(機動武闘伝Gガンダム)
パイロット状況:良好
機体状況:良好
現在位置:ネビーイーム
第一行動方針:バトルロワイアルの進行
最終行動方針:バトルロワイアルの完遂】
備考 転送されなかった一枚は、ユーゼス(首輪の機能停止が原因)の分です。
- 104 :それも名無しだ:2009/04/06(月) 16:08:47 ID:64DLb6ku
- ん、ユーゼスの首輪ってもう完全に停止したの?
一時の休眠って書いてるし、そもそもなんでユーゼスの首輪だけなんだろ。
バサラの歌を聴いたあの場にいたから止まったのなら、キラとかシャギアとかの首輪も全部止まってるんじゃ?
- 105 :もう一つの対主催 ◆YYVYMNVZTk :2009/04/07(火) 14:21:07 ID:WeGIpo5q
- 三度目の放送まで残り一時間弱――アキトの回復を待ち、ユーゼスは待ち合わせの場所であるA-1へと機体を進めていた。
このまま進めば放送を前に統夜、テニアと合流出来るだろう。
あの二人が無事であるならば、の話だが。
ユーゼスでさえ苦しめられた、圧倒的な物量を誇る異形の群れ。
単体でならばさほどの脅威ではない。とはいえ、あれだけの数が群れて来られてしまえばそれは絶対の脅威となりうる。
認めよう。あのタイミングでゼストが進化を遂げていなければ、取り込まれていたのはこちらだった。
そう、あの怪物たちは、まさしくインベーダーと呼ぶに相応しい能力を備えていた。
インベーダーは他の機体と融合し、そのコントロールを奪うことで自己の勢力を拡大していく。
その様は、まさに侵略そのもの。
統夜は得物をユーゼスに奪われ、テニアは少なくない損傷を抱えている。
十分な力を持たぬ機体ならば、そのまま取り込まれてしまうだろう――あんな、イレギュラーとしか言えない存在によって。
この殺し合いの主催たるもう一つの異形は、それを是とするだろうか。
いいや、それは有り得ない。あの怪物が何を考えてこの催しを開催したのかは分からない。
だが、これだけの手間をかけ、非効率甚だしい殺し合いを強制させるのならば、そこには何らかの意味が存在するはず。
簡易なルールしかないが、参加者同士が殺し合いを行うというのがこの催しの肝である。
その根本が破綻しようとしているのが、現在の状況。
ならば主催者から参加者へと向けられる唯一のアクション――放送で、主催者側が何かを仕掛けてくる可能性も出てくる。
統夜とテニアは、完全に互いに依存している。二人だけで完結している関係だ。
今はユーゼスとも仮初めの協力関係を築いているが、放送次第で向こうの気が変わるとも分からない。
出来るならば、放送のその瞬間を二人と共に迎え、出来る限りのフォローをしてやる必要がある。
そう考え、更なる速度でメディウス――いや、ゼストを駆る。
傍らのゲッターをちらりと見て、ユーゼスの思考は更に深く。
ゲッターロボ。そして、ゲッター線。
一見する限りでは――勿論、そのスペックは決して平凡なものではなく、ユーゼスの知る様々な技術と比してもなんら劣るものではないが――取り立ててユーゼスの興味を引く代物ではなかった。
ゲッター線というエネルギーを動力にする特機。ブラックゲッターではオミットされていたようだが、分離・変形機構もその特徴の一つではある。
だがユーゼスの持つ知識ならば、ゲッターの性能を再現することはさほど難しいことではない。
完全なコピーを作れずとも、同等、あるいはそれ以上の性能と能力を持った同コンセプトの機体も相応の時間と手間をかければ建造は可能だ。
しかし、先ほどの混乱の中でユーゼスは知ったのだ。
ゲッターには単なるマシンスペックで語ることのできない力があるのだと。
混乱の原因。そして収束。一連の流れの中で、ゲッター線は大きな役割を担った。
世界の歪から生じたインベーダーが求め――死者を蘇らせる力を持ち――そして、この忌々しい枷にさえ反抗する力を持つ、大きなエネルギー。
まさに神が持つに相応しい力だと、そう思う。
あの怪物とその眷属である少女に礼の一つでも言いたくなるほどに己の気分が高揚しているということを自覚する。
僥倖であったと認めよう。
未知の知識、未知の技術――たった一日と数時間で、ユーゼスの悲願であった超神の完成はすぐそこに迫っている。
湧き上がる歓喜の感情が胸を満たす。
とはいえ、いつまでも浮かれているわけにはいかない。
むしろここからが正念場である。これから先、一手でも指し損じることがあればそのミスはそのままユーゼスに返ってくることとなる。
首輪の解除、会場からの脱出、そして主催者の始末。
失敗すれば即座にユーゼスの命が奪われることとなるだろう。
それでもユーゼスは知っている。
自らの命を賭けてでも遂げなければいけないものがあるのだということを。
そして、今がその時なのだと、直感する。
何者にも行く手を阻ませるわけにはいかないのだ。
そう、全てが終わるその時まで――
◇
- 106 :もう一つの対主催 ◆YYVYMNVZTk :2009/04/07(火) 14:22:20 ID:WeGIpo5q
- 「さて、粗方片付け終わったか」
ユーゼスの向かうA-1。そこには戦い終えた三機のロボットがいた。
ダイゼンガー、ヴァイサーガ、ベルゲルミルの三機である。
彼らの行った戦闘――いや、虐殺の後に残ったのは凄惨な光景のみ。
三機共にインベーダーの返り血を浴びぬらりと照らされている。
ガウルンと統夜は剣を一閃し、刀身にこびりついた血を払う。
出来ることならば血を拭う布の一枚でも欲しかったが、ダイゼンガーのために見繕われた巨剣に合う巨大な布など見つかるはずもなく。
しかし手入れが必要なのかと疑うほどに、その剣の鋭さは変わらず、名刀の輝きを保っていた。
刀を眺め、満足そうな顔をしながらガウルンは二人に問う。
「さて、それじゃ話の続きだ。
……ユーゼスと言っていたな? 悲しいことに俺はそいつのことをまったく知らない。
だから教えてくれよ。そのユーゼスって奴の話と、そいつがお前らとどんな約束をしたかってことをな」
ガウルンの放つ言外の圧力は、主にテニアに向けられていた。
テニアとしては生き残るために策謀を張り巡らせていたという事実を、出来ることならば統夜にだけは隠し続けたい。
そう、テニアは自分が生き残るために、統夜でさえも殺害の対象としていた。
今の二人の蜜のような甘い関係を、完全にとはいかずとも悪化させるに十分な情報である。
そして、ガウルンはその事実を知っている。それどころか、テニアの目的を知った上で、彼女がナデシコに潜り込む手伝いまでもしてのけた。
先ほどの短い会話の中からでも、テニアがそれを弱みと考えているのは自明。
ならばそれを最大限に有効活用してやろうではないか。
言葉に出して統夜に気取られることはガウルンとしても望むところではない。
統夜にとってのテニアが綺麗に輝く宝であればあるほどに、それを壊したときの反応は――ああ、考えるだけでもぞわりと身が震える。
ガウルンが浮かべる笑みの意味を瞬時に理解したテニアは、ガウルンの望み通りの反応を。
「アタシたちは、ユーゼスとも協力することにしたんだ」
「おいテニア!」
不用心に情報を喋るなと、統夜が窘める。
何も知らない統夜君ならそれも仕方のないことだろうと、ガウルンは口の端を更に歪ませた。
「ユーゼスは『あれ』をどうにかして、生き残ろうとしてる。アタシたちもそれに乗っからせてもらうつもりなんだ。
ただ、アタシたちだってユーゼスがどんな人間なのかは分からない。話をしたのも少しだけだし、すぐに別れちゃったからね」
「ほう……奇遇なことに、その後ユーゼスとは一戦構えさせてもらった。ナデシコのすぐ傍でな。
生憎だが、仲良く出来そうにはなかったな。つまり……俺としては、ユーゼスとの関係は破棄してもらいたい」
「ちょっと待ってくれよ! 言ったよな? 俺たちは『二人』で生き残るって。
だったら俺たちがどうするかなんてのは……」
三人の口論が始まりかけたその時、三機のレーダーがほぼ同時に二つの光点を表示する。
光る先を見遣れば――あまりにも巨大な機体が、こちらに近づいてくるのを確認できた。
どう見ても大き過ぎる。あれだけ離れていても確認できるということは、全長100メートル級の――少なくとも、この殺し合いの中においては戦艦を除いて最大クラスの機体ということになる。
単独で運用できるというならば、複数人で動かすことを考えて設計されている戦艦よりも戦闘力は大きいかもしれない。
近づいてくる危険を前に、ガウルン、統夜、テニアは揃って対峙の形を取る。
互いの危険の排除のために協力をするという三人の提携は、今後一人と二人がどう動くかに関係なく、巨機を前に強固なものとなる。
こちらに害を為すものならば排除する。こちらの利に成らないものも排除する。そうでなければ――
巨機が通信圏内に入る。
その姿は、既に人型機の体裁さえも取ってはいなかった。
伝承に残る、半人半獣の姿――いや、そのパイロットに言わせれば――半神半獣といったところか。
腰から上は未だ人の姿をしていると言えないこともない。
それでも全体のバランスを狂わすほどに巨大な腕や肘から生える触手、各所から突き出る刺、それらを見逃せばの話だが。
腰から下は――完全に人の姿を捨てている。
百獣の王たる獅子を模した下半身。その上に前述の上半身が乗っている姿はもはや怪物の様相。
そして――その怪物から、ガウルン達に向け通信。
聞こえてきた声は、聞き覚えのある声。
- 107 :もう一つの対主催 ◆YYVYMNVZTk :2009/04/07(火) 14:23:01 ID:WeGIpo5q
- 「フフ……待っていてくれたとは、嬉しいものだな。統夜、テニア。
そして……こちらから名乗らせてもらおうか。ユーゼス=ゴッツォだ」
「ハハ、何時の間にそんな大仰な機体に乗り換えたんだ、ユーゼスさんよ?」
◇
その声を聞いた時、アキトは全身の血が一瞬で沸騰したかのような感覚に襲われた。
見たことのない機体だ。だが、あの声を聞き間違えるはずがない。
アレに乗っているのは――!
懐に残る錠剤は二。そしてそのうち一つはユーゼスが処方したもの。
信用しないわけではない――だが、信頼はするべきではない人物が作った薬をそのまま飲むのは、ただのバカがすること。
飲むのならば――
「止まれ、テンカワ。貴様の考えていることは分かるが――今動くのは得策ではない」
「止めるな、ユーゼス! 俺は……俺は!」
「ああ……アキトも一緒か。こりゃあなかなかに豪勢な面子が揃ったんじゃないか?
まったく、面白くなってきたねぇ」
「く……!」
「止まれ。動くのならば、私が力づくでも貴様を止める。このゼストでだ」
ユーゼスの言葉で幾分か冷めた頭で状況を確認する。
今この場にいるのは自分を含め五機。
ユーゼス、ガウルン、そして……一度交戦した機体と、ダイが落ちた乱戦の際に軽く見た程度の機体。
向こうの三機の関係は、詳しくは分からない。
だが、決して敵対しているわけではないのだろう。
周囲のインベーダーの死骸を見てみれば、既に体液が凝固し始めている。
つまりインベーダーたちとの戦闘の終了から、少なくない時間が経っている。
それでもなお行動を共にしているということは、敵対関係にあるわけではないのだろう。
少なくとも、今ここでアキトが戦闘を仕掛けるというようなことがあれば、共通の敵として潰すというくらいはやってのける。
ガウルンだけならば同士討ちに持っていくことは可能かもしれない。
だが、それでは――優勝しなければ、ユリカを生き返らせることは出来ない。
目と鼻の先に仇がいるというのに動くことが出来ないという悔しさを噛み殺し、アキトはブラックゲッターの出力を非戦闘時のものにする。
ユーゼスはこの三機に対し、交渉を試みるつもりだろうか。
何にせよ――今の自分に残された時間は一時間。たったそれだけの時間でこの会場に残る参加者の全てを殺しつくすことは不可能だということは分かっている。
事態がどう動くことになろうと、薬を握るユーゼスから離れることは出来ない。
故にここは静観を貫く。元々交渉事は得意ではない。アキトを共犯者へと引きずり込んだユーゼスならば、自分よりは上手くやってのけるだろう。
「――さて、それでは早速話を始めようか。
まず確認させてもらいたい。君たちは、この殺し合いの中でどう動いている?
統夜とテニアについては聞かせてもらっている。ガウルン……君は、どうするつもりかね。
もっとも、君から直接聞かずとも推測は容易だがな」
「俺はこう見えても良い子でね。皆が皆このパーティの主題を忘れちまっても一人で最後まで踊り続けるつもりさ。
しかし一人で踊り続けるのも疲れる。こいつらみたいに見込みがありそうな奴らには一緒に踊ってもらおうかと思ってるとこさ。
で、あんたはどうするつもりなんだい?」
「私はこの催しの主催者である怪物を打破する。今はそのために動いている……といったところだな」
五機ともに通信回線はオープン。
モニターに映る四人の顔を見てみれば、それぞれがそれぞれの思惑で動いているということが見て取れる。
ユーゼスはガウルンと共にいた二機とも接触をしていたようだが、こちらは殆ど初見と言っていい。
「そこの二人についても教えてもらおうか。俺はテンカワ=アキト。今はユーゼスと手を組んでいる」
「アキトか。なかなか良い面構えになったな。俺は嬉しいぜぇ」
下卑た笑いを浮かべるガウルンは無視。
こちらの様子を窺う若い男女の応答を待つ。
どちらも十七、八といった年頃だ。騎士甲冑の機体に乗る少年に関して言えば、こちらとの交戦経験もある。
初見の敵に突っ込むあたり戦闘経験そのものは少ないようだが、それでも機体のスペックと時折見せた動きは油断の出来ない強さだった。
少女のほうも、あの乱戦を生き延びたことと機体に残る損傷から、修羅場を潜ってきていることは分かる。
二人がどう動くのか――それは優勝を狙うアキトにとって、把握すべき事柄。
ガウルンは「見込みがある」と言っていた。ならばこの二人もまた、優勝を狙い、そのためにガウルンと手を組んでいるのだろうか。
- 108 :もう一つの対主催 ◆YYVYMNVZTk :2009/04/07(火) 14:23:46 ID:WeGIpo5q
- 「俺は紫雲統夜。こっちはフェステニア=ミューズ。
俺たちは……『二人』で生き残るために動いてる。どうすればこの殺し合いが終わるのか分かってないわけじゃない。
だけど俺たちはもう殺し合うことは出来ない。だから……二人で、生き残る。その方法のためにユーゼスとは協力する……つもりだったんだけど」
言って、少年はガウルンをちらりと見る。
ユーゼスだけでなく、ガウルンともまた協力するということだろう。
しかし語尾が濁ったところを見るに、それは統夜たち側から提案されたものではなく、おそらくはガウルンからの申請によるもの。
ダブルブッキング。
これはつまり、ユーゼスとガウルンがどのような交渉をするのか――そしてその結果、統夜たちがどちらに付くのかを決断する、そのための接触。
どうやらこれで本当に、自分の出る幕はないとアキトは判断する。
アキトにとって重要なのは、ガウルンの動向だ。それさえ確認することが出来れば、交渉の中身そのものはユーゼスに一任する。
ユーゼスもまた、アキトの判断を了解したのだろう。軽く目くばせをしてみれば、首肯と共に言葉を紡ぎだした。
「ふむ、不足は幾らでもあるが――ひとまずは、名前だけでも紹介は済んだ。本題に移らせてもらおう。
単刀直入に言おう。私は、君たちが欲しい。私と協力関係を結ぶつもりはないかね?」
そう動くか。目的を端的に話し、そこを糸口に交渉を開始する。
理を積み重ね、逃げ場を無くしてから半ば脅迫とも取れる交渉を行ったアキトの時とはまた違うやり口である。
だが向こう三人の目的が具体的には分からぬ現状、最初に切り込む必要があるのだろう。
あくまで傍観者を貫くつもりのアキトは、極めて客観的にユーゼスの交渉を眺める。
ただ問題があるとすれば、それはガウルンがユーゼスと協力することを選択した時だ。
もしそうなれば、ユーゼスはアキトがガウルンに手を出すことを許しはしないだろう。
ボロボロの身体と機体のアキトと、機体、パイロット共に(少なくともアキトが見る限りでは)良好な状態であるガウルンとなら、間違いなくアキトを切るのがユーゼスという人間だ。
ガウルンとユーゼスの交渉さえ決裂すれば、ガウルンに手を出そうとユーゼスが邪魔をすることはなくなるはずだ。
しかしそうなってしまえば、殺し合いで勝ち残りを狙うことは難しくなる。
ナデシコの周りにいた機体は、その殆どが主催者への反抗を企てる者たちだった。
あれだけの大人数が一致団結してしまえば、単独で全滅させることは非常に困難。
恐らくはガウルン達もまた、それを考慮して手を組むことを選んだのだろうと推測。
「……イマイチ話が見えないねぇ。あんた達は……いや、あんたはあの怪物をぶっ倒すつもりでいる。それは分かる。
だがそこのアキトは優勝するつもりがあるんだろう? 優勝して願いを一つ叶えてもらうつもりなんだろう? 俺だってそうさ。
あんたが上回るだけの見返りを用意してくれるんなら話は別だがね、あんたにそれが出来るのかい?」
「成程。君の疑念も当然のものだ。私とて君の立場ならば疑ってかかるだろうな。残念ながら、私に今現在それを証明する手立てはない。
私が所属する組織は宇宙の支配を目指す強国の軍事を担っており、その技術レベルは宇宙でも随一のものである。
そして私はその組織の力を自由に扱える極めて重要なポジションにいる……こう言っても、信じてはもらえないだろう」
「それに、あんたについていってあの化け物が倒せるかというと、それもまたはっきりしないよな。底が知れない、本当の怪物さ」
「確かにそれも、私が明らかな根拠を示すことは出来ない。私個人の感覚と経験から言えば、あの怪物を手持ちの駒で倒すことは十分に可能ではあるがね」
手を組むということに難色を示すガウルン。
対して、ガウルンの反応に気を落とすこともなく話を続けるユーゼス。
アキトは沈黙を保ったまま話の成り行きを見守る。
と、ここでユーゼスは話の矛先をガウルンから統夜とテニアへと切り替えた。
- 109 :もう一つの対主催 ◆YYVYMNVZTk :2009/04/07(火) 14:24:28 ID:WeGIpo5q
- 「そこの二人にとっては、私の提案は決して悪くないものだろう? 二人で生き残るというのならば、正規の生還手段――優勝は狙えない。
ならば私の提案は、二人にとって救いの手であると、はっきりと言い切れる。実際に、一度は了承もしてもらえた。
ガウルン、君に後から奪い取られてしまったが、本来ならばこの二人は私と共に行動をするつもりだった――このA-1に留まってくれていることがその証明でもある」
「確かに俺は……俺たちは、今更優勝を狙うつもりはない。あんたが俺達を生きて帰らせてくれるっていうんなら、それに付いていくつもりだ」
「おいおいおいおいィ? それは少し冷たいんじゃないかい、統夜ァ? 元々統夜は俺が目を付けて鍛えてたんだ。
早い者勝ちだって言うなら、俺に優先権があるんだぜ?
いくら本人の意思を尊重すべきだとは言っても、このままあんたに持っていかれるのは癪だな」
あくまで統夜とテニアは二人で生き残ることを選択するか。
それならば付くべきはガウルンではなくユーゼスである。至極当たり前の思考だ。
このまま順当に話が進めば統夜とテニアがユーゼスの側に付き、ガウルンは単独行動を余儀なくされる――となるだろう。
もしそうなってくれれば万々歳。ユーゼスがアキトを止める理由もなくなり、統夜とテニアが新しい駒となってくれるのならば貴重な薬を使う場面も少なくなってくれる。
しかし話の雲行きはそう単純に進みそうになかった。ガウルンの目――それがまだ、ぎらりと怪しく輝いているからだ。
「ユーゼス――あんたは俺が欲しいかい?」
「欲しくないと言えば嘘になるな。ナデシコでの交戦で、身をもって君の力を知ることとなった。
そして今、周囲に散らばるインベーダーの死骸――その力が手に入るのならば、それ以上に心強いことはないだろう」
「やっぱり俺の思ったとおり、欲張りな奴だな。……ククッ、それでこそ面白い。
あんたが俺の力を借りなきゃいけないのは、それだけが理由じゃないだろう?
あんたは少しばかり暴れ過ぎたようだ。あそこにいた連中とは――今更仲良く出来ない。
だからこそ俺たちみたいな危険要素の力を借りなければならない。違わないよな?」
「――物分かりが良すぎるのも考えものだな。少なくとも今この場において私とこのゼストは、絶対の力を有していると自負している。
貴様はこの私の掌の上にで踊る俗物に過ぎないということを自覚しろ。それでもなお聞き分けのないようならば……!」
「おっと、おっかないことはなしだぜ。あんたが強いってことは分かるさ。その力なら、ひょっとするとあの化け物も倒せるかもしれない。
……ここらでもう少し、踏み込んだ話でもしないか? お互い触れずにいるが……気付いているだろう?」
ユーゼスは一旦戦闘時のそれまで上げた出力を再度落とし、対峙する機体を眺めた。
ユーゼスもアキトも、知らない機体だ。何時の間に乗り換えたのか――いやそれ以上の疑問もある。
あの時、ガウルンもまたナデシコの傍で戦っていた。どうしてそれが、自分たちよりこうも早く統夜たちと合流した?
それだけではない。お互いに、とガウルンは言った。
ユーゼスもまた、乗る機体を変えている。しかし呼称は――ゼストのまま。
これが意味するのは何か? 二人は互いに手札を隠したままだ。それをはっきりさせるのならば、それ次第で仲間に入ることも考えよう――ガウルンはそう言っているのだ。
- 110 :もう一つの対主催 ◆YYVYMNVZTk :2009/04/07(火) 14:25:10 ID:WeGIpo5q
- 「ならばまずはこちらから手札を切らせてもらおうか。ゼストについての説明で――よろしいかね?」
「ああ、それを教えてくれるんなら、こちらとしても不満はない」
「君と戦った時と比べ、このゼストの姿が変わっているのは――それがゼストの性質だからと説明するしかないな。
得たデータを基に、どこまでも成長するシステムを、この機体は備えている。あの場所で吹き荒れたエネルギーの奔流、そしてインベーダーという構成物質の出現。
それらのイレギュラーが幸いし――ゼストは、次なる新しい姿へと進化を遂げた。これがあの怪物に打ち勝つ根拠の一つだが、どうかね?」
「納得……出来たわけでもないが、まぁ信じるさ。実際、あんたの機体が強いってことはよく分かる。
それでもまだ、あんたを信頼して一緒に戦おうって気にはならないがな。何より――この首輪をどうにかしないことには、戦いのしようもないだろう。
それに、どうやってあの化け物のところまで行くつもりだ? 俺を仲間に入れるつもりなら、もっと思い切り良く勝負札を切ってくれないと話にならないぜ?」
「それだけの口を叩くのなら、そちらの札も相当なものなのだろうな? ハッタリやブラフでいつまでも生き残れる局面ではあるまい」
「それに関しちゃ心配御無用。首輪と脱出、その両方について手ごたえのある答えが返ってくるんなら、俺が仲間になることと合わせて十分に釣りが来る内容だ」
「ならば先にこちらから札を明かさせてもらうか――言ったところで私以外がモノに出来る情報とも思えん。
首輪に関しては既に目処が立っている。後は実例を――テストさえ行えれば、実用に耐えうる理論となる。
会場からの脱出については、私のほうでは特に進めていない」
「と、いうのは?」
「ナデシコ――それと、Jアークと言ったか。あの連中に任せてある」
「へえ! あんた、面白いことをしたな。で、連中はそれをやれそうなのかい?」
「今のところは判断は出来ないが、着眼点そのものは私のそれと同じだった。よほど的外れなことでもしない限り、私のプラスとなってくれるだろう」
意外――だった。アキトが副作用で苦しんでいたその間に、その交渉は行われたらしい。
どのような形で交渉が行われたのかまでは分からないが、少なくとも主催者打倒という点において、あの集団とユーゼスは意識を同じくしている。
感情では自分と組んでいたユーゼスを信用することは出来ないが、ユーゼスの持つ技術は欲しいと、そう考えての分担なのだろう。
「見込みは、全く無いわけじゃない……そういうことか。だが気になるのは、何で俺達を必要とするのかってことだな。
あの連中と、今のところは仲良くやれているわけだろ? 俺達を入れてしまえばあんたらの関係も崩れちまう」
そう、それだ。アキトとガウルンは、あの集団と真っ向から衝突した。
二人を加えた状態であの集団と合流・協力することは感情の面から難しい。
統夜とテニアはユーゼスに付くことを選び、ガウルンは反対した。この状況こそが、ユーゼスにとっての最善手だと考えていた。
だが、どうやらユーゼスの思惑はそれだけではないようだ。ガウルンへの執拗な勧誘がその証拠。
「そうだな……理由は簡単だ。何故なら私は、あの集団を喰ってしまうつもりだからな」
◇
話は殆どガウルンとユーゼスの二人が進めていて、俺たちには出番なんてなかった。
だけど、ユーゼスのその言葉には驚いてしまって、だから反射的に言葉が出たんだと思う。
「集団を喰うって、どういう意味なんだ? あいつらを潰すつもりなのか!?」
ユーゼスが何を考えているのかよく分からなかった。
集団を、喰う?
それはつまりあの連中に何かをするってことなんだろうけど……それにしては喰うという単語が何を意味するのか。
単純に、殺す、潰すとはまた違う意味合いを持っているように思える。
- 111 :もう一つの対主催 ◆YYVYMNVZTk :2009/04/07(火) 14:25:53 ID:WeGIpo5q
- 「表現が些か抽象的だったか。では、こう言い直そう。私はあの集団の持つ機体の技術が欲しい。
だが、パイロットは不要でね。そこで、丁度良くあの集団と敵対している君たちの力を借りたいと、そういうわけだ」
「あいつらを殺して、機体だけ奪おうっていうのか?」
「基本的にはその考えで構わない。――私の目的は、既に君たちとは一線を画している。
私が欲しいのは未知の技術。君たちも知っているだろう――この場所には、自分たちの常識を超えた技術が幾つも集められているということを。
私はそれが欲しいのだよ。喉から手が出るほどにね。特にあの集団、真っ向から主催者に立ち向かうだけあって、その戦力はこの殺し合いの中でも最大級のようだ。
そんな力こそ、私が――ゼストが求めている力。――何、戦力が不足するなどということは考えなくとも良い。
倒した機体の力を得て、ゼストは更に進化を遂げる――怪物退治に何の不足もない」
俺たちが生き残るために必死になっていたのが馬鹿らしくなるほどだった。
ユーゼスの奴は、この殺し合いでさえも――逆に、自分の利になるように仕向けようとしている。
きっと俺たちを仲間にしようとしているのも、全ては自分が力を得るためってことなんだろ?
だけどそれでも――それだけの絶対の自信を見せてくれるなら、ユーゼスなら、何とかしてくれるんじゃないかと、そう思ってしまう。
二人で生き残るだなんて言って、俺は具体的なことを何も考えてはいなかった。
テニアと二人で生き延びていれば、いつか何か糸口が見えるんじゃないかと漠然と考えていただけだった。
「ユーゼス、あんたの考えは良く分かった。……改めて頼む。俺たちも、それに付いて行かせてくれ」
「アタシは、統夜がそうするって決めたなら、統夜に付いていく」
「……ふぅ、全く二人とも俺には手厳しいねぇ。仕方ない、俺もあんたと手を組むことにするか」
ガウルンまでもがあっさりとユーゼスの提案に乗ったことに軽い驚き。
だが当然のように、条件を付け加えていく。
「ただし、だ。そこのアキト――そいつは俺の命を狙ってる。仲間になったと油断させて、後ろからズドン! なんてのは御免だ。
更に言えば、俺はまだあんたを完全に信用出来たわけじゃない。これはまだ、仮契約の段階だと思ってくれ。
そうだな……あんたが首輪を解除して、ここから逃げ出す目処を立てたなら、その時にまた交渉しようじゃないか。
現段階で俺が出来るのは、互いの不可侵が限界だ。あんたと手を組んだといっても、優勝を狙うという方針まで変えるつもりはないさ。
ただ、数減らしの時にあんたの言う未知の技術らしきものがあれば大事に取っておいてやるよ。何かしらの見返りはあるんだろう?」
「私が満足できるものを見つけてこれたなら、主催者のいうご褒美に相当する願いを叶えてやるつもりだ。それで満足か?」
「了解だ。で、俺としてはアキトとは離れたい。しかし一人になるのは嫌だ。よって統夜とテニアはこのまま俺が預かっておきたいんだがそれでもいいかい?」
「君が私との契約を順守するつもりならば、それでも構わない。どちらにせよ、君たちの力が本格的に必要になるのは六時間後からだからな。
六時間後、私はあの集団と再び接触するつもりだ。そのときあの集団がここからの脱出に十分なデータを提供してくれたならば――その後は、食事の時間となるだろう」
ククク、と仮面の下で嗤うユーゼス。
ぞくりと背筋が凍る。邪悪さを隠そうともせずに周囲に撒き散らす仮面の男は、それでも俺たちにとっては唯一と言っていい救いの手。
「よし、俺もそろそろ手札を切る必要があるかね。……今からデータを送る。それを見て、どう動くかはあんたらに任せる。
俺はこのインベーダーって奴らと、ソイツを殺せと――あんたがぶっ殺そうとしている怪物の手下のお嬢ちゃんから直々に頼まれた。
この機体も、その時にもらったものだ。あんたらが作り出した、空間の穴――そこから偶然お嬢ちゃんの所に行けたもんでね」
ガウルンの言葉に、今度はユーゼスが驚く番だった。
主催者との接触――打倒のためには避けては通れない難所を、ガウルンが既に通過していたからだろう。
そしてその驚愕はガウルンから送られてきた映像を見て、更に強くなる。
「これは……」
「あんたのその機体もかなりの化物だが、そいつも負けず劣らずといったところだな。
あのお嬢ちゃんも怖がるってことは……まぁ、それだけの化物だってことだよ。俺に駆除を頼むくらいだからな。逆に言えば……」
- 112 :もう一つの対主催 ◆YYVYMNVZTk :2009/04/07(火) 14:26:33 ID:WeGIpo5q
- 主催者さえも恐れる何かを、あの機体は持っている――そう言いたいのだろう。
これでお互いに手札は切り終わった。残るのは伝えきれなかった情報の交換。
ユーゼスが言うには、あの集団に任せたのは空間の歪みの観測。
俺には理屈が良く分からなかったが、弱くなっている空間に意図的にエネルギーをぶつけることで、ガウルンが通ったような穴を作り出すつもりらしい。
それだけは襲うなとユーゼスから念を押されることになった。
そしてもう一人、ユーゼスの口から出た名前があった。
熱気バサラ。
首輪の解除、そして会場からの脱出。両方の面で、鍵となり得る人物……らしい。
ラーゼフォン――俺が一度破壊した機体――と合わせて、出来る限り無傷で手に入れろとのお達しだ。
ガウルン側からは、一人の名前が出ただけだった。
シャギア=フロスト。
ユーゼスが与えるご褒美とやらをちらつかせれば、もしかするとこちらに転ぶかもしれない人物――とのこと。
その他、交戦した機体の特徴、特性など、覚えている範囲で情報を伝え合う。
気付いた時には、時刻は18時になろうとしていた。
◇
アタシは話にも殆ど口を挟まないで聞いていただけだったけど――凄く、嫌な予感しかしない。
女の勘ってヤツなのかな?
統夜と二人で生き残るって考えも、閉塞感ばかりで焦り始めてはいたけど――ユーゼスの提案に乗ってしまえば、先は開けてもずぶずぶと堕ちていくような気がしてならなかった。
気のせいであればいい。アタシは統夜に付いていくしかないんだから、アタシだけユーゼスにもガウルンにも付かないなんてことは出来ない。
でも、嫌な予感は、今もどんどん加速していっている。
そして――三回目の放送が始まった。
【ユーゼス・ゴッツォ 搭乗機体:メディウス・ロクス(バンプレストオリジナル)
パイロット状態:疲労(中) ハイ
機体状態:EN残量100% ヴァイサーガの五大剣を所持 データウェポンを4体吸収したため四肢が再生しました。
第三段階へ移行しました。
デザインの細部、能力(相転移砲などが使用可)が一部違いますが、基本MXのそれと変わりありません。
現在位置:A-1
第一行動方針:放送を聞き、ガウルン達との契約について細部を詰める
第二行動方針:AI1のデータ解析を基に首輪を解除
第三行動方針:サイバスターのラプラス・コンピューターの回収
第四行動方針:20m前後の機体の二人組みを警戒
第五行動方針:キョウスケにわずかな期待。来てほしい?
第六行動方針:24時にE-3へ
最終行動方針:主催者の超技術を奪い、神への階段を上る
備考1:アインストに関する情報を手に入れました
備考2:首輪の残骸を所持(六割程度)
備考3:DG細胞のサンプルを所持 】
【テンカワ・アキト 搭乗機体:ブラックゲッター
パイロット状態:五感が不明瞭(回復傾向) 疲労状態 怒り
機体状態:全身の装甲に損傷、ゲッター線炉心破損(補給不可)ゲッタートマホークを所持
現在位置:A-1
第一行動方針:ユーゼスと共に行動し、優勝を狙う
第二行動方針:ガウルンの首を取る
第三行動方針:キョウスケが現れるのなら何度でも殺す
最終行動方針:ユリカを生き返らせる
備考1:首輪の爆破条件に"ボソンジャンプの使用"が追加。
備考2:謎の薬を2錠所持 (内1錠はユーゼス処方)
備考3:炉心を修復しなければゲッタービームは使用不可】
- 113 :もう一つの対主催 ◆YYVYMNVZTk :2009/04/07(火) 14:27:14 ID:WeGIpo5q
- 【ガウルン 搭乗機体:ダイゼンガー(バンプレストオリジナル)
パイロット状況:疲労(大)、全身にフィードバックされた痛み、DG細胞感染
機体状況:万全
現在位置:A-1
第一行動方針:存分に楽しむ。
第二行動方針:テニアはとりあえず適当なところで殺す。
第三行動方針:アキト、ブンドルを殺す
第四行動方針:禁止エリアのインベーダー、基地のキョウスケの撃破
最終行動方針:元の世界に戻って腑抜けたカシムを元に戻す
備考1:ガウルンの頭に埋め込まれたチタン板、右足義足、癌細胞はDG細胞に同化されました
備考2:ダイゼンガーは内蔵された装備を全て使用できる状態です
備考3:謎の薬を一錠所持。飲めば禁止エリアに入っても首輪が爆発しなくなる(飲んだ時のペナルティは未定)】
【紫雲統夜 登場機体:ヴァイサーガ(スーパーロボット大戦A)
パイロット状態:精神的に疲労 怒り
機体状態:左腕使用不可、シールド破棄、頭部角の一部破損、全身に損傷多数 EN70% 五大剣紛失 ガーディアンソード所持
現在位置:A-1
第一行動方針:インベーダー、キョウスケに対処
第二行動方針:ガウルン、ユーゼスと協力。でも信用はしない
最終行動方針:テニアと生き残る】
【フェステニア・ミューズ 搭乗機体:ベルゲルミル(ウルズ機)(バンプレストオリジナル)
パイロット状況:焦り
機体状況:左腕喪失、左脇腹に浅い抉れ(修復中) EN50%、EN回復中、マニピュレーターに血が微かについている
現在位置:A-1
第一行動方針:インベーダー、キョウスケに対処
第二行動方針:ガウルン、ユーゼスと協力。隙があれば潰す。
最終行動方針:統夜と生き残る
備考1:首輪を所持しています】
【二日目 18:00】
- 114 : ◆YYVYMNVZTk :2009/04/07(火) 14:38:08 ID:ZqFkiURB
- というわけで投下完了です。
お待たせしてしまって申し訳ありません……今度からは時間あるときに予約しますですorz
矛盾点や誤字脱字などありましたらご指摘ください。
>>103
放送案についてはそれで問題ないと思います。
ユーゼスの首輪に関してですが、基地でゲッター線の影響を受けたり、竜馬のすぐ傍にずっといたりと他の首輪よりゲッター線に触れる機会が多かったため過剰に影響を受けた……などと理由づけ出来ますし。
あくまで放送の段階で首輪が止まっちゃってたということなんじゃないでしょうか。
これから先首輪の機能が復活した時に再度名簿が転送されるかは分かりませんがw
禁止エリアの指定ですが、B-6とE-5でお願いします。
- 115 :それも名無しだ:2009/04/07(火) 17:23:28 ID:xO88ykZE
- 名簿はデータ配信でなく紙って認識でいいんかな?
- 116 : ◆ZqUTZ8BqI6 :2009/04/07(火) 19:18:24 ID:dTkMJ1Sl
- 投下GJ!
正直喧嘩するんじゃないかと思って冷や冷やしてたけど見事にまとまったなあw
これでもう一方のチームもほぼ盤石だな。しかしユーゼス相手もつぶすつもりと分かりやすく腹黒い。
>>115
紙ってつもりで書いた。
あと……結構長めに1週間ほど期間を置きましたけど、◆ZbL7QonnV氏の反応がないようですね……
もしこのまま今日までないようなら、7v氏は放棄していますし、他の書き手の方々は2か所指定してますので自分がもう一か所
『G-3』を指定し、日付変更後投下させていただきます
- 117 :それも名無しだ:2009/04/08(水) 00:02:53 ID:20VoSYLs
- 日付が変更されましたので、放送を投下します。
- 118 :第三回放送 ◆ZqUTZ8BqI6 :2009/04/08(水) 00:04:43 ID:20VoSYLs
- また日は沈み、次なる夜がやってくる。しかし、この世界の夜はもう二度と訪れることはない。
比喩ではなく本当に最後の夜が来る。この夜が明けた時、この世界に立つのは誰か。
いや、箱庭世界の夜は明けるのか。澄明は、まだ遥か向こうにも見えない。
『皆さま、お疲れ様ですの。ここまで頑張った人たちは、もう少し。そのためにご褒美があるですの。
何か気になりますの? けど、まずは今回死んじゃった人たちの連絡ですの』
……ジョナサン=グレーン
……ベガ
……バーナード=ワイズマン
……オルバ=フロスト
……宇都宮比瑪
……クインシィ=イッサー
……ガロード=ラン
『―――以上、7名が皆様の犠牲となりお亡くなりになられましたですの。ちょっと勢いが落ちちゃってますの。
早く帰りたいならちゃきちゃき殺しちゃうことをお勧めしますの。
……次は、禁止エリアの発表ですの。
ここまで来て禁止エリアで死ぬなんて恥ずかしいからしっかりメモするべし!ですの。
禁止エリアは……A-1、B-6、E-5、F-1、G-3、G-6の六ヶ所ですの。
それじゃお待ちかねご褒美発表タイムですの。やっぱり目標があったほうがやる気も出ると思いましたので、特別に名簿をプレゼントしますの!
残りの人たち全員の名前が書いてある特注品、受けとってほしいですの。水や火からは離れて待っててくださいの。再度支給はなしですの。
残り人数といる人が分かれば効率もあっぷですの。あと……ちょっと会場に変なのが出ちゃったりもするけど、気にしないでくださいの。すぐに全部いなくなりますの。
あんなのは無視してお隣の人を撃つのに弾薬は使ってくださいですの。武器の弾薬サービスも大変ですの!
――それでは十二時間後、最後の一人として私とお会いできますよう、皆様の無事をお祈り申し上げますの。では』
そう言って、アルフィミィは通信を切る。そしてちらりと、視界の隅の机を見た。
「……あら?ですの??」
そこには、なぜか一枚だけ名簿が残っていた。
【アルフィミィ 搭乗機体:デビルガンダム(機動武闘伝Gガンダム)
パイロット状況:良好
機体状況:良好
現在位置:ネビーイーム
第一行動方針:バトルロワイアルの進行
最終行動方針:バトルロワイアルの完遂】
備考 転送されなかった一枚は、ユーゼス(首輪の機能停止が原因)の分です。
- 119 :それも名無しだ:2009/04/08(水) 00:05:40 ID:20VoSYLs
- では、引き続いて放送後の予約は解禁されたむねを連絡させていただきます。
予約があるという方はご自由にお願いします。
- 120 : ◆VvWRRU0SzU :2009/04/08(水) 23:47:55 ID:ObuZS6+R
- 放送後と言うか放送またぐ感じでもいいのかな
キョウスケ予約
- 121 :それも名無しだ:2009/04/09(木) 01:29:25 ID:Ea69g5gA
- 問題ないと思われ。
がんがってー
- 122 : ◆VvWRRU0SzU :2009/04/13(月) 19:40:22 ID:9CtQuGBQ
- ちょっとまだできてないので延長お願いします
- 123 :それも名無しだ:2009/04/14(火) 01:17:08 ID:oruPdp5G
- age
- 124 : ◆VvWRRU0SzU :2009/04/15(水) 00:58:35 ID:LWepa9H3
- 投下します
- 125 :貫け、奴よりも速く ◆VvWRRU0SzU :2009/04/15(水) 00:59:22 ID:LWepa9H3
- 辺りに動体反応がないことを確認し、キョウスケはステークの薬莢を排出した。
撃発し役目を終えた弾丸が地に落ち、新たに生成されたそれが装填される。
熱を持った弾丸が散乱するインベーダーの体液を焦がす。
見渡せば、死屍累々と言った風情で不定形の異形がそこかしこに積み重なっている。
他愛もない。
キョウスケにとってインベーダーの脅威とはその程度の印象だった。
数は多いが、一体一体の力はそれほどでもない。否、この機体の力をもってすれば脆弱とすら言える。
基地で相当数のインベーダーを屠ったが、あの程度では進化を行うには全く足りない。
インベーダーは単体ではさほどの力を持たず、機械と融合してこその真価を見せる。
もっと強く、激しい力。そんな力とぶつかり合わなければ今以上の力を得ることはできない。
かくして、キョウスケ・ナンブ――アインストの端末となった孤狼は敵を求めて静かなる行軍を続けていた。
思い出すのは基地での戦闘が終結した後、会場中心辺りから放たれた光。
波のように駆け抜けた波動は力を持たないインベーダーを消滅せしめ、キョウスケに一つの方針を与えた。
余波にしか過ぎないそれが会場中に影響を及ぼしたという事実。
離れた所にいた自分にさえ届いたあの力。
今戦えば敗北するかもしれない――もしその爆心地にいれば、あの光を直接叩き付けられれば。
力が必要だ。更なる力、何物をも撃ち貫く力が。
中央に向かうのは今ではない。経験を積み、進化を遂げなければ確実な勝利は得られない。
しかし時間の経過による進化を待つ余裕はない。創られた空間の崩壊、その時間は刻一刻と近づいている。
だからこそ、動いた。基地を出て、目に映るインベーダーを片端から砕きながら進む。
だが足りない……ステークの一撃で、踏み出す足の一撃で、容易く砕ける程度のインベーダーをいくら相手にしたところで糧にはなり得ない。
光の影響で、単体で存在を維持できないインベーダーはほぼ消滅した。
敵が減ったことにより道行きの幅は減った。
期待するべきは運よく打ち捨てられた機体に取り付くことができた個体。
何もない平原よりも、施設あるいは市街地の方が可能性は高い。
基地が潰えた今、向かうは南部に位置する市街地。
転進し、常人では身体が先に悲鳴を上げるほどの速度で突き進む。
視界に建造物の影が見えたところで停止した。
――いる。
廃墟の街の中に、とても大きな力が存在しているのを感じる。
取り立てて感知能力に優れているわけではないこの器にすら感じ取れるほどのプレッシャー。
キョウスケは口の端を吊り上げて街に踏み入った。
- 126 :貫け、奴よりも速く ◆VvWRRU0SzU :2009/04/15(水) 01:00:04 ID:LWepa9H3
- □
無数の戦闘機が、編隊を組んで突っ込んできた。
ゲシュペンストMkVが左腕のマシンキャノンを乱射する。
閃く火線がいくつもの火球を生み出し、しかしその光の中から次から次へと後続の機体が飛び出てくる。
実弾では埒が開かない。一機ずつ砕くのではなく、編隊ごと消滅させなければ数を減らすことはできない。
ディバイデッドライフルをチャージ。
戦闘機が放つ光線はビームコートと厚い装甲に阻まれ意味を成さない。
目前まで迫った戦闘機の機首にライフルを叩きつけ、発射。
凝縮された熱が解放され、溢れるエネルギーを存分に供給したライフルを横薙ぎに振るう。
射線軸上に合ったビルが撫で切りにされ倒壊していく。
濛々と上がった土煙りの中、蒼い巨人だけが屹立する。
目についた戦闘機はあらかた排除できたが、キョウスケが感知した脅威はこんなものではない。
街の中心へと足を向ける。これらの戦闘機は市街地に入ったキョウスケを迎撃しただけだ。
本命はこの先。機体のコンディションを確認し、問題ないと全速で突き進む。
やがて視界に大きな影が見えた。
恐竜の頭を持ち、力強く大地を踏みしめる四足。
中心に要塞の身体を持つ、巨大なメカザウルス――無敵戦艦ダイ。
良く見ればその片方の頭や足は黒く硬化したインベーダーが補っている。
命尽きたダイとアムロの放った光によりダメージを負ったインベーダー。
利害は一致し、生き返る/生き延びるために融合した両者。
メカザウルスとインベーダー。共にゲッター線を天敵とするモノ同士の、本来あり得ない合一。
言わばメタルビースト・ダイは、とあるガンダム以上親和性を見せ、ここに誕生した。
400mはあろうかという巨体を前に、キョウスケは歓喜に打ち震えていた。
これほどの敵がまだ残っていたという幸運。それと戦い、撃ち破れるという自信。
恐竜がその口から何十機もの戦闘機を吐き出す。一機残らずインベーダーと融合した恐竜ジェット機。
数の不利は構わない。むしろ力を発散できる対象が増えて望むところだ。
ダイの主砲がゲシュペンストMkVを照準した。一門一門がこのゲシュペンストMkV並の大きさ。
それが撃たれる前にスラスターを展開し、メカザウルスの頭部目掛けて突っ込んでいく。
如何に自機の装甲が厚いとはいえ、あのサイズの砲弾をまともに食らえばそこで終りだ。
轟音とともに放たれる砲弾を掻い潜る。
その過程でいくつかの戦闘機をも撃ち落とされていく。同胞という概念はないようだ。
味方に落とされても同様の気配を見せず群がる戦闘機を撃ち落とし、殴り付け、握り潰す。突進の勢いは些かの衰えもない。
大きく開いたダイの口腔にクレイモアを叩き込む……その刹那。
横合いから凄まじい衝撃を受けてゲシュペンストMkVは吹き飛んだ。
廃ビルに叩き付けられ、深く埋め込まれたゲシュペンストMkV。
衝撃は物理的な威力となって操縦席のキョウスケにも牙を剥く。DG細胞、そしてアインストの力がなければ即死していたほどの圧力をなんとか堪える。
衝撃の来た方向に視界を巡らせれば、そこにいたのは白いモビルスーツ。
RX-78ガンダム――連邦の白い流星アムロ・レイが駆り、この戦場では巴武蔵の乗機だった機体。
コクピットに空いた大穴をインベーダーの黒で埋め、トリコロールカラーではなくなったガンダムの腕の先には巨大なハンマーがあった。
どうやらあれを喰らったらしいと、思考する間にもガンダムはハンマーを振り回す。
増設されたブースターが火を吐き、豪速の鉄球が再びゲシュペンストMkVへと放たれる。
- 127 :貫け、奴よりも速く ◆VvWRRU0SzU :2009/04/15(水) 01:00:56 ID:LWepa9H3
- キョウスケはディバイデッドライフルで迎撃する。
だが速度の乗った巨大な質量体を止めることはできず、伸ばした左腕にハンマーがめり込む。
破砕音と共に左の肘までが持っていかれた。
停止したハンマーの鎖を掴み、引き戻される反動を利用してビルから一気に飛び出す。
加速し、ガンダムをクレイモアの射程に捉える。
だがトリガーを引き絞る寸前、背後から迫る熱源を感知した。
鎖を離し、横手へと直角に回避する。
直後、背後からキョウスケが一瞬前までいた空間へと龍の顎のような何かが喰らい付く。
虚空を引き裂いたそれは素早く引き戻される。その先、左半身をこれまたインベーダーで補った緑のガンダム。
そのインベーダー製の腕に握られた三又の槍から灼熱の粒子が迸る。
咄嗟にヒートホーンを起動。アルトロンガンダムの振り下ろすツインビームトライデントを受け止めた。
ステークをセット。同時に敵機も右腕のドラゴンハングを構える姿を視認。
示し合わせたように互いに一歩後退し、その一歩を改めて踏みこむことで加速する。
射出された龍の頭めがけてステークを叩きつける。
ゲシュペンストMkVの右腕を挟み込んだ顎が閉じられる前にステークを発射。龍が内部から杭を撃たれ、爆砕する。
そのままドラゴンハングの連結部分を掴む。
繋がった本体のアルトロンガンダムを手繰り寄せ、ゲシュペンストMkVは腰を落とす。
ヒートホーンを引っかけ、頭上へと打ち上げる。
クレイモアで破壊することもできたが、キョウスケはそれを選ばず機体を反転させて今まさにハンマーを投げんとしていたガンダムへと放り投げた。
何やら轟音が耳に飛び込み、縺れ合う二機から目を外してダイへと向き直る。
ダイはその巨体を疾走させつつ、主砲をゲシュペンストMkVへと向けていた。
戦闘機はともかく、あの機動性に劣る戦艦を守護する二機の機動兵器を失うのはまずいのであろう。
ゲシュペンストMkVが二機と離れた瞬間に砲弾が雨となって降り注ぐ。
テスラ・ドライブをフルパワーで稼働させ、鉄の嵐の中を振り切るように駆け抜ける。
誤射を恐れてかガンダム達の手出しはない。だがキョウスケにも、護衛を攻撃する余裕はなく回避に専念しなければならなかった。
視界に戦闘機が飛び込んでくる。自らも砲弾で傷つきながら、しかし怯むことなくゲシュペンストMkV目掛け突き進んできた。
唯一の武装たる光線が効かないことは証明されている。
怪訝に思った瞬間、疑問は氷解した。
足を止めるスプリットミサイルやクレイモアは使えず、マシンキャノンがマウントされた左腕はそれ自体が既にない。
手の届く範囲外から急接近した戦闘機が減速する様子もなくゲシュペンストMkVへと体当たり――特攻する。
先のハンマーに比肩し得るほどの衝撃がキョウスケを襲った。
機体自身にさほど損傷はなかったが、移動方向と正反対のベクトルを受けて機体の足が止まる。
空白の一瞬、狙い澄まして残存する戦闘機が殺到する。
全方位から砲弾となって向かってくる戦闘機に押され、一歩も動けない。
連続する衝撃に鞠のように翻弄され、今立っているのか倒れているのかすらもわからなかった。
突破口を開こうと展開した左のクレイモアの射出口に、ピンポイントで飛び込んだ戦闘機が内蔵されたベアリング弾と誘爆する。
弾け飛ぶ左肩。至近距離での誘爆の衝撃はゲシュペンストMkVをあっけなく大地に叩きつけた。
歯を食い縛りつつ機体を立て直すキョウスケ。絶え間なく揺さ振られる身体は弛緩する余裕もなく固く張り詰めたままだ。
インベーダー風情に良い様に追い詰められていると、キョウスケではなくアインストとしての憤怒が胸を満たす。
怒りをどうにか噛み殺したとき、気付けば戦闘機の特攻が止んでいた。
ついに数が尽きたかと思ったが、それなら二機のガンダムが仕掛けてこないはずがない。
廃墟に照り返す光で辺りは紅く染まっている。
その朱色の中、ゲシュペンストMkVのいる地点のみが黒く染まっている。
ガンダムが遠巻きにこちらを眺めている。では、あの戦艦は――。
- 128 :貫け、奴よりも速く ◆VvWRRU0SzU :2009/04/15(水) 01:02:14 ID:LWepa9H3
- ズシン、と。
ダイの存在にようやく思い当ったとき、ゲシュペンストMkVに凄まじい圧力が圧し掛かった。
視界が瞬く間に暗くなる。機体が上から押さえつけられている――否、踏まれている。
全長約400m、重量約80000tの巨体。
無敵戦艦ダイの足が、動きの止まったゲシュペンストMkVを踏み付けているのだ。
砲撃を受けている時移動していたのは知っていたが、戦闘機の特攻で接近を感知できなかった。
知能を持たないインベーダーにしてやられた。またマグマの如き怒りが湧き上がってくる。
膝を着いた姿勢でスラスターを全開し、足を撥ね退けようとダイに抗う。
機体の各部からアインストのエネルギーが漏れ出し、紫電となって弾ける。
だが一パーソナルトルーパーとしては破格の高出力も、こうまで重量が違えばどうしようもない。
ゲシュペンストMkVの原型たるアルトアイゼンの重量は85.4t。
巨大化したとはいえ現在の重さは重く見積もっても100tあるかどうか。ダイとの重量比は800倍近い。
機体が地面へとめり込んでいく。
圧力が段々と増してきた。恐らくは一息に踏み潰せるはずだが、こちらが足掻く様子を楽しんでいるのか。
歯噛みし、手立てを探す。ステークを備える右腕は頭上へと掲げ落ちてくる天井を支えている。
左腕はなく、クレイモアは射角の問題で使えない。
残るヒートホーンでダイの足裏を焼き切っていくのだが、切り裂いた片端からインベーダーが補充していく。
埒が開かないと限界を超えてヒートホーンへと力を注ぐ。赤熱した角がダイを焼き切るのではなく蒸発させていく。
機体の各部から集中させたエネルギーはあと数分も持たない。
エネルギーが尽きるより先に脱出できるかと見通しが立った瞬間、静観していたガンダムが動く。
その腕にあるのはハンマーではなく、ディバイデッドライフル。
ハンマーを迎撃し損ねた後に取り落としたのだろう。ガンダムのサイズなら十分に規格が合う装備だ。
先端に光が灯る。このゲシュペンストMkVほどの出力はないにせよ、ビームコートを展開できない今あれをもらうのはまずい。
だが当然、ダイの足に押さえつけられている今対抗手段はない――その先にあるのは、死だ。
初めて感じる焦燥と恐怖、それをもたらしたのがインベーダーであるという屈辱に、キョウスケの中のアインストが震える。
やがてキョウスケの視界を閃光が満たす。
熱波に飲み込まれる瞬間――。
- 129 :貫け、奴よりも速く ◆VvWRRU0SzU :2009/04/15(水) 01:03:41 ID:LWepa9H3
- □
――貫け、奴よりも速く――
- 130 :貫け、奴よりも速く ◆VvWRRU0SzU :2009/04/15(水) 01:04:21 ID:LWepa9H3
- このD-7にて行われた戦艦同士の激戦、ダイのジャンプによる衝撃。
既にかなりダメージを受けていた地殻の表層部に、大した抵抗もなく大穴が穿たれる。
もちろんそれだけが原因ではなく、この市街地に元々地下道が存在していたという事実もあった。
ゲシュペンストMkVのいた地点が崩落する。当然、中心地にいたゲシュペンストMkVも落下する。
突如体重をかけていた足場が消失し、ダイがたたらを踏む。
ガンダムの放ったビームがダイの足を焦がす。巨獣が怒りに吠え、ガンダム――に取りついたインベーダーの個体が後ずさる。
だがダイがガンダムへと行動を起こす前に、メカザウルスの部分が痛みの叫びを上げた。
地下道から蒼い流星が飛び出し、ダイの横腹に突き刺さったのだ。
要塞部分に空いた大穴から噴煙が湧き出す。
二機のガンダムが押っ取り刀で追撃した。まさかあの蒼カブトが動けるとは予想していなかったため行動が遅れた。
接近したものの、ダイの内部と言う場所が場所だけに砲撃で炙り出すわけにもいかない訳にもいかない。
接近戦を得手とするアルトロンガンダムが先行し、煙を分け入って要塞内部へと侵入していく。
ガンダムはディバイデッドライフルを構え、出てきたところを狙い撃つ役割を取った。
一分が立ち、二分が過ぎた。
いつまで経っても敵機が、そしてアルトロンガンダムが出てこない。これは自らも突入する必要があると、ガンダムを支配するインベーダーが思考した時。
穴から何かが飛び出してきた。迎撃の構えを取ったガンダムだが、すぐにその必要はないとライフルを下ろす。
何故ならそれは機械との融合を解除したインベーダーだったからだ。
敵機を破壊した際、依代もまた破壊されたのだろうか。
そう思って自身に同胞を迎え入れようとしたとき、闇を裂いて走った銃弾がガンダムの目前で同胞を存分に引き裂いた。
警戒を強めるガンダムの視界に、再び蒼カブト――ゲシュペンストMkVが現れた。
だがその姿は最前のものとは違う。
肥大した四肢。重厚さを増したボディ。
各所に設置された推進機は大型になり、クレイモアも一回りそのサイズを増している。
背部のスラスターには新たにスタビライザーらしきものが取り付けられ、両肩にも同じもの、つまりはテスラ・ドライブを模して生成されたバランサーが新たに備えられている。
そして何より、その右腕――この機体の代名詞ともいえる鋼鉄の杭打ち機、リボルビング・バンカー。
ステークよりも威力を求めた結果辿り着いた答え。
機体のコンセプトでもあるそれはすなわり、巨大化だ。より大きければそれだけ威力が、強さが増す。
機体バランスなど考慮の外。
各所のバランサー・推進機とて、言ってみればこの大型の武装を扱うための補助に過ぎない。
巨大化に必要な二つの要素、戦闘経験と甚大なエネルギー。
戦闘経験は申し分なく揃っている。
ならばもう一方、エネルギーはと言えば、メタルビーストとなりインベーダーというエンジンを得たことでことで半ば意味をなさなくなったダイの炉心を取り込んだ。
武装が変わっただけでなく、そのサイズ自体も一回り大きくなっている。
その姿の本来の呼び名は、巨人の名を冠する古き鉄。
だがこの場ではその呼び名は相応しくない。そう、呼ぶのなら――
「ゲシュペンストMkV・タイプRiese――ク、ククッ……クハハハハハハハハッ! 手に入れた、これが、この力こそが……!」
内から沸き上がる熱に狂笑を上げる男。
感情を持たないであろうインベーダーの身に、戦慄が走る。
『コレ』は、ゲッター線に匹敵するほどの脅威――自分達の天敵と。
ガンダムが、戦闘機がダイを傷つけることも厭わず攻撃を開始する。
ハンマーが、熱波が、怪光線が、その身を砲弾とした特攻が。
ありとあらゆる攻撃手段を持って蒼カブトへと攻撃を仕掛けるインベーダー達。
迎え撃つキョウスケは寸毫の恐れもなく迎撃を開始した。
- 131 :貫け、奴よりも速く ◆VvWRRU0SzU :2009/04/15(水) 01:06:45 ID:LWepa9H3
- □
右腕が可動範囲を超えて回転し、ゲシュペンストMkVのクレイモアが地面を向く。
鉄鋼球が放たれ、舗装された大地へと突き刺さる。間を置かず炸裂、いくつかは跳弾しゲシュペンストMkV自身を傷つけた。
ダメ押しにステークを撃ち付け、一瞬にして全弾を撃ち尽くす。
このD-7にて行われた戦艦同士の激戦、ダイのジャンプによる衝撃。
既にかなりダメージを受けていた地殻の表層部に、大した抵抗もなく大穴が穿たれる。
もちろんそれだけが原因ではなく、この市街地に元々地下道が存在していたという事実もあった。
ゲシュペンストMkVのいた地点が崩落する。当然、中心地にいたゲシュペンストMkVも落下する。
突如体重をかけていた足場が消失し、ダイがたたらを踏む。
ガンダムの放ったビームがダイの足を焦がす。巨獣が怒りに吠え、ガンダム――に取りついたインベーダーの個体が後ずさる。
だがダイがガンダムへと行動を起こす前に、メカザウルスの部分が痛みの叫びを上げた。
地下道から蒼い流星が飛び出し、ダイの横腹に突き刺さったのだ。
要塞部分に空いた大穴から噴煙が湧き出す。
二機のガンダムが押っ取り刀で追撃した。まさかあの蒼カブトが動けるとは予想していなかったため行動が遅れた。
接近したものの、ダイの内部と言う場所が場所だけに砲撃で炙り出すわけにもいかない訳にもいかない。
接近戦を得手とするアルトロンガンダムが先行し、煙を分け入って要塞内部へと侵入していく。
ガンダムはディバイデッドライフルを構え、出てきたところを狙い撃つ役割を取った。
一分が立ち、二分が過ぎた。
いつまで経っても敵機が、そしてアルトロンガンダムが出てこない。これは自らも突入する必要があると、ガンダムを支配するインベーダーが思考した時。
穴から何かが飛び出してきた。迎撃の構えを取ったガンダムだが、すぐにその必要はないとライフルを下ろす。
何故ならそれは機械との融合を解除したインベーダーだったからだ。
敵機を破壊した際、依代もまた破壊されたのだろうか。
そう思って自身に同胞を迎え入れようとしたとき、闇を裂いて走った銃弾がガンダムの目前で同胞を存分に引き裂いた。
警戒を強めるガンダムの視界に、再び蒼カブト――ゲシュペンストMkVが現れた。
だがその姿は最前のものとは違う。
肥大した四肢。重厚さを増したボディ。
各所に設置された推進機は大型になり、クレイモアも一回りそのサイズを増している。
背部のスラスターには新たにスタビライザーらしきものが取り付けられ、両肩にも同じもの、つまりはテスラ・ドライブを模して生成されたバランサーが新たに備えられている。
そして何より、その右腕――この機体の代名詞ともいえる鋼鉄の杭打ち機、リボルビング・バンカー。
ステークよりも威力を求めた結果辿り着いた答え。
機体のコンセプトでもあるそれはすなわり、巨大化だ。より大きければそれだけ威力が、強さが増す。
機体バランスなど考慮の外。
各所のバランサー・推進機とて、言ってみればこの大型の武装を扱うための補助に過ぎない。
巨大化に必要な二つの要素、戦闘経験と甚大なエネルギー。
戦闘経験は申し分なく揃っている。
ならばもう一方、エネルギーはと言えば、メタルビーストとなりインベーダーというエンジンを得たことでことで半ば意味をなさなくなったダイの炉心を取り込んだ。
武装が変わっただけでなく、そのサイズ自体も一回り大きくなっている。
その姿の本来の呼び名は、巨人の名を冠する古き鉄。
だがこの場ではその呼び名は相応しくない。そう、呼ぶのなら――
「ゲシュペンストMkV・タイプRiese――ク、ククッ……クハハハハハハハハッ! 手に入れた、この力こそが……!」
狂笑を上げる男。
感情を持たないであろうインベーダーの身に、戦慄が走る。
『コレ』は、ゲッター線に匹敵するほどの脅威――自分達の天敵と。
ガンダムが、戦闘機がダイを傷つけることも厭わず攻撃を開始する。
ハンマーが、熱波が、怪光線が、その身を砲弾とした特攻が。
ありとあらゆる攻撃手段を持って蒼カブトへと攻撃を仕掛けるインベーダー達。
迎え撃つキョウスケは寸毫の恐れもなく迎撃を開始した。
- 132 :貫け、奴よりも速く ◆VvWRRU0SzU :2009/04/15(水) 01:09:14 ID:LWepa9H3
- □
再生した左腕、マシンキャノンは5連装の機関砲へと変化していた。
迫る戦闘機の群れに向けて撃ち放つ。間断なく吐き出される実体弾は瞬く間に敵機を鉄クズへと変えた。
ダイの横腹から飛び出し、王を守る騎士たるガンダムへと突貫する。
ディバイデッドライフルが放たれる。
灼熱の奔流、だがしかしキョウスケはあえてそこに突っ込んでいく。
ゲシュペンストが右腕を突き出す。
ステークより二回りほど巨大なバンカーが、唸りを上げてビームの大河を掻き分ける。
距離が縮まるにつれ、圧力も比例して強まる――だが止まらない。アインストのエネルギーを加味されたバンカーはその程度では砕けない。
やがて、ビームが途切れた一瞬に距離は0になる。
咄嗟に盾に掲げられたディバイデッドライフルがバンカーに貫かれた。いや、ライフルだけでなくその向こうのガンダムの胸部も。
そのまま頭上へと持ち上げる。
ダイの砲撃をガンダムという盾で防ぎつつ、上昇。ダイを超えてもっと高く、空に届こうかと言うくらいまで。
恐らく地上からはゲシュペンストは点のような大きさだろう。
ダイの真上に位置するので、射角の問題から砲撃はない。
代わりに残存する戦闘機が我先にと上昇する。まるで天に向かう梯子のように――列を形成して。
バンカーを戻し、スクラップとなったガンダムを放り出す。
思い出すのは、かつて滅ぼした人間達の姿。
ノイ・レジセイア、自身の本体に痛烈な痛みをもたらした一人の男。
――この攻撃は叫ぶのがお約束でな!――
各部のエネルギーを一点に集中――右足、そのただ一点に。
テスラ・ドライブ、フルブースト。重力の力をも利用し、隕石の如くダイに向けて落下する。
「……究極ゥゥッ……!」
非力なはずの機体、だが使い方一つであらゆる攻撃を防ぐ歪曲フィールドを突き抜けた、あの技。
そしてこの機体は元を正せば奴の機体と同じフレーム、同じ系譜――できないはずがない。
「……ゲシュペンストォッ……!」
別に叫ぶ必要はないのだが……何故か、そうしなければ当たらないという気がしたのだ
それに、そう。ここで叫ぶのは……やぶさかじゃない。
だから――
「……キィィィィィィィィィィィィィィィックッ!!」
かつて人は天に至ろうとして煉瓦とアスファルトを用い塔を建てた。
バベルの塔と名付けられたそれは、しかし神の怒りに触れ、下された審判の雷により倒壊したという。
さながらその神の雷のように天から舞い降りたゲシュペンストの蹴りは、その進路上にあった全ての戦闘機を砕きダイへと突き刺さった。
ただの蹴り――されど究極の名を冠し、アインストの力で放たれた蹴り。
蒼い輝きを放つ、さながら流星のような一瞬。
その爆心地とも言える着弾地点から、衝撃が物理的な破壊力となってダイを蹂躙する。
莫大な量の運動エネルギーを一点に叩き込まれたメタルビースト・ダイは、苦しみを持続させることなくほぼ一瞬でバラバラになった。
やがて静寂を取り戻した廃墟の中に一機の巨人だけが佇立していた。
この場にはもうキョウスケしかいない。ゲシュペンストしかいない。
望んだ戦いを勝ち抜き、新たな力を得た。
孤狼はその結果に満足し、やがて意識を手放した。
- 133 :貫け、奴よりも速く ◆VvWRRU0SzU :2009/04/15(水) 01:10:39 ID:LWepa9H3
- □
声が聞こえて、キョウスケは目を覚ました。
計器を確認し、放送の時刻だと理解する。
この催しの進行役に任命した少女型のアインストの声が聞こえる。
死者の名前が列挙される。
今のキョウスケにとってはどうでもいいことだ。どうせ全ての生存者を砕くのだから。
しかし、
……ベガ
……バーナード=ワイズマン
この二つの名前だけが何故か頭に引っ掛かった。
記憶を掘り起こし――このキョウスケ・ナンブという器と特に関わりが深い者たちだったということがわかった。
完全に存在を呑み込んだはずだが、未だに消去しきれていないということか。
思い返せば先の一瞬。
ダイによって破壊させられる刹那、この右腕は勝手に動いたのだ。
クレイモアを地面に向かって撃ち起死回生の一手となったあの行動は、完全にノイ・レジセイアの意志を離れたものだった。
今はそんな名残を見せることもなく、身体の支配権は完全にアインストにある。
戦闘で追い込まれ、支配に割く力を削ぐことで奴は活性化する――そういうことだろうか。
脆弱な人間とは思えない意志力だが、もしそうだとすれば無視することもできない。
身体を奪い返されるということはないだろうが、一瞬の停滞は致命的な隙となるだろう。
ましてこれから戦う相手はインベーダーなどではなく、綺羅星の如き参加者の中で今まで生き残った強者ばかりだ。
内面と外面の敵。
これからはその二つに同時に対処しなければならない。
思考を纏め終えたとき、ちょうど放送も終わったようだ。
どう行動するかと思っていると、膝の上に一枚の紙が転送されてきた。
これが部下の言う名簿だろう。
キョウスケはそれを一瞥し、特に感慨もなく引き裂いた。
そう、どうせ全て倒すのだ。個人個人の名前などに意味はない。
名簿に対する興味を失くし、キョウスケはまずは休息と補給を、と補給ポイントを探す。
途中で撃破した敵機の武装、ハンマーを拾う。破壊したライフルの代わりにはならないが、ないよりはマシだ。
静寂の世界、その実現を目指し動き始めるキョウスケ。
破り捨てられた名簿、その一点――ある少年の名前のところで視点が一瞬、一瞬だけ留まったことなど、気付く由もなかった。
【二日目18:00】
【キョウスケ・ナンブ 搭乗機体:ゲシュペンストMkV(スーパーロボット大戦 OG2)
パイロット状況:ノイ・レジセイアの欠片が憑依、アインスト化 。DG細胞感染 疲労(大)
機体状況:アインスト化。ハイパーハンマー所持。機体が初期の約1,5倍(=35m前後) EN10%
現在位置:D-7
第一行動方針:すべての存在を撃ち貫く
第二行動方針:――――――――――――――――――――カミーユ、俺を……。
最終行動方針:???
備考1:機体・パイロットともにアインスト化。
備考2:ゲシュペンストMkVの基本武装はアルトアイゼン・リーゼとほぼ同一。
ただしアインスト化および巨大化したため全般的にスペックアップ・強力な自己再生能力が付与。
ビルトファルケンがベースのため飛行可能(TBSの使用は不可)。
実弾装備はアインストの生体部品で生成可能(ENを消費)。
備考3:戦闘などが行なわれた場合、さらに巨大化する可能性があります(どこまで巨大化するか不明)。
直接機体とつながってない武器(ハイパーハンマーなど手持ち武器)は巨大化しません。
胸部中央に赤い宝玉が出現】
- 134 :それも名無しだ:2009/04/15(水) 01:11:48 ID:LWepa9H3
- 投下終了。
>>130はミスで、>>131が正しい方です
- 135 :それも名無しだ:2009/04/15(水) 02:00:09 ID:hSZxOZdv
- 投下乙!!
そして一番乗りでGJと言わせて頂く!!
キョウスケがダークヒーロー化してるwww
『ガンダム・ザ・ガンダム』も(良い意味で)ぶっ飛んでると思ったけどユーゼスとコイツは一筋縄じゃ行かなそうだな……
- 136 :それも名無しだ:2009/04/15(水) 04:07:57 ID:/YD3nZTy
- 投下GJ!
キョウスケが更に半端ないことに……!
立ち回り方にもよるだろうけど、単騎でも集団丸ごとぶっ潰せそうな気がするから困るw
Jアーク組、危険人物組、アインスケと三つ巴の形になってきたな
- 137 :それも名無しだ:2009/04/15(水) 13:05:01 ID:mKj0ys4F
- 正直、人数的には最大派閥のはずのJアーク組が一番涙目とかwww
危険人物組はガウルン、アキト、統夜と特機3機にゼスト、アインスケはご覧のありさまだよ!だしw
- 138 :それも名無しだ:2009/04/15(水) 19:25:25 ID:UFWTZiiW
- それでもキングジェイダーならなんとかしてくれるはずw
- 139 :それも名無しだ:2009/04/15(水) 22:36:19 ID:zySqQXaT
- もはや特機としか言えないガンダムもいるしなw
- 140 : ◆mdbrCR1yEs :2009/04/16(木) 23:27:36 ID:5gKIPgg5
- 予約してませんが、ユーゼス、アキト、ガウルン、統夜、テニアの投下いきまーす!
- 141 :伏せた切り札 全ては己が目的のために:2009/04/16(木) 23:30:47 ID:5gKIPgg5
-
さて、どうする?
ガウルンは、放送を聴きながら思案する。
お互い、手を組む要件で今のところは決まった話し合い。
お互いの手札はもう開ききり、今のところは情報を共有した――ように見える。
しかし、それは違う。ガウルンは、手の中で白い粒を転がす。
それこそが、明かさなかったガウルン最後の札。
首輪の機能を一時的にカットする――つまり首輪の機能を停止させる魔法の錠剤。
服用すれば何か強烈な副作用があるらしいが、そんなデメリットは飲まなければ当然ゼロ。
つまり、解析する分には何の問題もないということだ。
機能を抑制する錠剤をもしユーゼスが手に入れたら、それこそ首輪はあっという間に外れかけない。
(それはお寒いねぇ、白けるってもんだ)
数分で外れるかもしれない。だがそんなことをして何が面白いのか。
自分もまあこの機体の受諾など随分とルール外のことをやってはいる。いるが、それでもだ。
折角ルールの内側で必死に集めたもので、知恵の輪を解こうとしている相手に答えを教えるなんてつまらない。
ユーゼスのやろうとしていることに興味はある。
しかし、それは首輪が取れる取れないではなく、純粋にユーゼスの行動に対してだ。
正直、ガウルンからすれば首輪を外す必要性すらほとんど感じていない。
別に、ここにいる全員を潰し合わせて帰るというのも方法の一つとしてあるし、事実彼はそれを狙って動いてきた。
自分がいままでの行動方針を曲げてユーゼスと組むだなんておとなしいことをするはずがない。
ユーゼスもそれは承知の上だろう――そうでなければ随分と馬鹿だ――し、アキトは重々理解している筈だ。
当面の方向は協力。首輪が外れなくても首輪が外れても、どっちにころぼうが適当な時にユーゼスとはおさらば。無論、永遠の。
首輪を自力で外せるほどの人間なら、手を組み続けるもやぶさかでもないが、それはうまみが少ない。
ユーゼスは、せっかく手に入れた手駒を放そうとはしないだろう。
そうでなければ、折角のとっておきも、最悪食いぞこなってしまう。こんなもったいない話はない。
とはいえ、ユーゼスを沈めるのは手がかかりそうだ。自分ひとりでやるのは阿呆だろう。
当面のチャンスとしては、向こうの戦艦との潰し合いの時がベスト。
それに……どうせ、ユーゼスも裏切るだろう。
ガウルン、その経験則による絶対の確信。理屈は、簡単だ。
ユーゼスの機体は、相手を食えば食うほど強くなる。
そのために、Jアークにいる連中の機体を食いたいとユーゼスは言う。
そしてパイロットはいらない、と。
あえて突っ込まなかったが、ガウルンにはすぐに分かった。
――じゃあ、Jアークを食った後は俺たちか?
ユーゼスは、他人なんて必要としていない。
せいせい駒、もしくは道端に転がる小石か。その程度の価値しか見出していない。
仮面からちらちら覗く目を見るだけで簡単に察することができる。
しかも、言動もガウルンの予感そのままだ。
自分以外どうでもいい――自分以外残す必要はない。
そんな奴が、わざわざ目の前に残った「餌」を食い残すことがあるだろうか。
はい、シンキングタイム一秒。答えは当然NO。前提さえありゃガキだって即答できる質問だ。
統夜みたいは駆け出しにはちょっと酷だが、歴戦の戦士なら簡単に理解できる。
ガウルンが、口を釣り上げたまま、ちらりとヴァイサーガ――統夜を見る。
とても、そこまで頭は回っていないようだ。
さっき、こちら3人で行動することを提案したことは正解だった。
とりあえず、ユーゼスが消えたらそこらへんを話すとしよう。
連中が死者を生き返らせることができるとかそこらへんを交えて。
アキトは……気付いてるだろ。おそらく、こっちが手を返せば、そこらは合わせるだろう。
自分への復讐一念で、こっちと戦うためユーゼスにつくってケースもあるが……それはそれで。
この薬は、絶対に渡さない。
ユーゼスが、だれも逆らえないような絶対な立場をそうそう作らないように。
- 142 :伏せた切り札 全ては己が目的のために:2009/04/16(木) 23:31:49 ID:5gKIPgg5
-
手元に届いた名簿をぱらぱらとめくる。指さし、一人一人確認する。
妥協でなく、方針の変更でもなく。ただ、ガウルンはガウルンらしく。
薬というジョーカーを離さず、常に最終ラインにおける有利な立場をガウルンは維持し続ける。
◇ ◇ ◇
さて、どうする?
アキトは、放送を聴きながら思案する。
はっきりアキトの心情を言おう。一分でも一秒でも早く、ガウルンを殺したい。
だが、それではいけないのだ。このユーゼスがいる限り、絶対にできない。
ギリリ、と奥歯が噛み砕けんばかりに歯を食いしばる。自分が優勝するためには、ユーゼスの薬が必要なのだ。
あと1錠では、次の戦い――おそらくJアーク掃討戦――で底が尽きる。
自分の勝ち残りの可能性、引いては自分自身の生存率はユーゼスが握っていることになる。
元はと言えば、アキトが優勝するため、ユーゼスは自分の生存のためと対等に、共犯者として結んだ協定だったはずだ。
なのに、気付けばその主従ははっきりと形と現れ、自分はユーゼスのいいように使われる人形と化している。
アキト自身、優勝を捨てたわけではない。
あのノイ・レジセイアは、ユリカを生き返らせてくれる保証はないが、死者を生き返らせる力を持っている。
ユーゼスは、ユリカを生き返らせることができるか保証もないし、死者を生き返らせるだけの力を持てるかも不明だ。
このまま、ユーゼスと行動し続け、ユーゼスの言うとおり行動する。
なるほど、生存のためなら非常に魅力的なプランだろう。――ただしユリカが生き返るかはかなり微妙なラインだ。
これでは、意味がない。ユーゼスとともに行動し、ノイ・レジセイアを倒し、元の世界に帰ってもユリカがいなければ意味はない。
ノイ・レジセイアを倒すか倒せないかは、ユーゼスの都合であって、アキトの都合ではない。
だが、優勝が遠い。
この巨大な機神を駆るユーゼス。
異常なまでの力を行使するキョウスケ。
そして、無傷の特機を手に入れたガウルン。
この全員の息の根を止める? どうやって?
アキトの前にあるのは、二つの道。どちらも険しく絶望しかないような道だ。
ユーゼスに従い、比較的平易な道を進む。ただし、ユリカは返ってこないかもしれない。
優勝をめざし続け、全てを殺す。 ただし、方法すら見えてこない。
ユーゼスを殺すことは、薬を放棄すること。薬を放棄すれば、優勝は消える。
しかし、ユーゼスを残し、一対一か二対一といった状態に持ち込んだとして、勝てるとは思えない。
放送が流れだす。
機体を修復した少女の声。
皮肉にも、彼女が修復したアルトアイゼンはキョウスケの手に渡り、彼女たちを脅かす存在になり果てた。
放送の内容に従い、名簿が手元に転送される。その名簿を眺め、視界のゆがみに目をこする。
この体が五体満足ならば。戦うことができるならば。
――ユーゼスを切ってしまうこともできるというのに。
目をこするため、黒い矯正機を上に押し上げる。
そして、気付く。
クリアになる視界。矯正機を外したほうが明確になる世界。懐かしい色の概念が、目に飛び込む。
信じられない出来事に、目を見開き、何度も目をこする。世界は変わらない。まったく、変わらない。
矯正機を外し、名簿に視界を落とす。――読める。何もかも。字のフォントの僅かなとめはねまで見える。
手が震える。気付く。今、この出来事に手を震わせている自分。つまり、この出来事がなければ、手が震えていなかった自分。
手に力を込め、握る――開く。しびれはない。震えはない。それどころか、手の感触もはっきり感じる。
今思い当たる――ここまで、自分はユーゼスの手を借りず、かなりの速度で飛んでいた。もはや、平時と遜色ない。
感覚が、五感が還っている。しかも、視界から推理するに健常者並みに。
アキトは、ディバックに手をおもむろに突っ込んだ。鞄の中をかき回し、取り出したのは固形食糧だった。
箱には、カロリーメイトチョコレート味と書かれていた。アキトは、その封を切り、そのまま口に放り込んだ。
- 143 :それも名無しだ:2009/04/16(木) 23:32:17 ID:SpyF2TiX
- sienn
- 144 :それも名無しだ:2009/04/16(木) 23:33:13 ID:SpyF2TiX
-
- 145 :伏せた切り札 全ては己が目的のために:2009/04/16(木) 23:33:15 ID:5gKIPgg5
-
涙が頬を伝った。涙は自然と溢れてきた。
お世辞にもうまいとは言えない。ぼそぼそとして、水気がない。気持ちチョコのような味がするだけだ。
けど。だけど。まずいと、分かる。味が、分かる。もう二度と戻ることはないと思っていた味覚が、ある。
ぐちゃぐちゃに頭をかき回され、奪われたモノ――料理人としての夢と、最愛の人。
過去は還らない。自分のやったこと、憎しみは消えない。
けど、諦めていたものが還ってきた。還ってきたのだ。
掌にある、小さな錠剤を眺める。自分の体に変化を与えたものは、間違いなくこれだ。
今思い返せば、薬を飲むたびに、回復していたのかもしれない。
――そう言えば、ユーゼスとともに遠方を確認した時、健常者並みに見えていた。
ただ、自分が気付けなかっただけで。バッドトリップも、程度がどんどん軽くなっていた。
最初は手足を震わせることしかできなかったが、先ほどのそれは、暴れるだけの余力があった。
今でも、健常者とほぼ同じ。最期の一錠を服用すれば、バットトリップはいくらかあるだろうが、その後は……
もう、薬はおそらく必要ない。少しずつ現状を回復させるならば、そう言わず説明をすればよかったろうに。
内心アルフィミィに僅かに毒づくが、ある意味納得もする。
アルフィミィは、ガウルンにも同様に強力な機体を与えていた。戦える素質あるならば、その力を与えていた。
自分には、特機を渡さない代わりに、加えて薬を渡した。薬は、あの特機のかわりだった。
――勝てる。
アキトは確信する。無論、優勝へのプランが見えたわけではない。
だがそれでもこの状態は見るべきところがある。それはユーゼスの不意をつけるかもしれないことだ。
やつは、相も変わらず自分は薬がなければ木偶だと思っているだろう。
そして、薬ある限り自分に逆らわないと思っているだろう。
その傲慢を、撃つ。撃ち貫く。そして、奪う――あの機神を。
別に機体の損傷を気にする必要もない。あれは、コクピットだろうと再生するのを自分は見ている。
ユーゼスの首を確実に描き切る瞬間まで顔を伏せ、そしてユーゼスの全てを奪うのだ。
名簿を見る。僅か、17名。殺すべきは現状16名。ユーゼスを殺した時点で最低15名。
いや、それまでの乱戦でさらに減るだろう。せいぜい10人か。
それならば、このゼストの力で押し切れる。
優勝への光明。今、それを悟られるわけにはいかない。
静かに涙をぬぐいアキトは黒い矯正機をかける。黒の下に眠る虹色を知られないように。
いいさ、ユーゼス。今は犬になってやる。お前の最期まで、従順な犬だ。
お前が隙を見せたとき――俺が猟犬として牙を見せた時、お前はもうこの世にはいない。
キョウスケ・ナンブにやったこと。忘れてはいないだろう?
取り戻すのだ。全てを。そして過去を清算するのだ。
愛する人と、夢を再び両手に掴むために。
自分の五感の回復を誰にも悟らせてはいけない。
手元に届いた名簿をぱらぱらとめくる。指さし、一人一人確認する。
妥協でなく、方針の変更でもなく。ただ、アキトはアキトらしく。
五感の回復というジョーカーを離さず、常に最終ラインにおける有利な立場をアキトは維持し続ける。
◇ ◇ ◇
- 146 :伏せた切り札 全ては己が目的のために:2009/04/16(木) 23:34:22 ID:5gKIPgg5
- さて、どうする?
ユーゼスは、放送を聴きながら思案する。
まず、自分たちは他者に先駆けて会談の地にいかなければない。
階段の主催者としてまず先に行き、地形やそこにあるモノをしっかり検分する。
そう、会談の地はそのまま奴らの墓場となるのだ。
消して逃がさず、完全な形でラプラス・コンピューターを手に入れるためにも、事前に全てを知りつくすのだ。
敵のデータ、地形、状況、一人一人の思想……分かる限りすべてをユーゼスは頭に叩き込む。
――それじゃお待ちかねご褒美発表タイムですの。やっぱり目標があったほうがやる気も出ると思いましたので、特別に名簿をプレゼントしますの!
残りの人たち全員の名前が書いてある特注品、受けとってほしいですの。水や火からは離れて待っててくださいの。再度支給はなしですの。
その言葉を聞き、僅かにモニターから視線を外し、周囲を探す。
「……?」
転送は、放送が終わった後かと思い、少し手持ちぶさながら待つ。
放送はすぐに終わった。しかし、何かが手元に届いたようには見えない。ディバックの中に転送されたかと鞄をあさる。
ない。そんなものは、どこにも見つからない。
名簿は転送されていないのか? いや、主催者サイドは、送ると言っている。
僅かに考えを巡らす。
ガウルンは聞いてもまともに答えない。
アキトは答えるかもしれないが嘘が混じったとき分かりにくい。
相手は、自然とお人よしそうで愚鈍な青年へ。
「統夜。名簿の記述を読み上げろ」
突然声をかけられ、少し声を裏返させながらも、統夜は答える。
「な、なんでだよ。あんただって名簿は持ってるだろ?」
「内容にズレがいないかの確認だ。主催者側が意図的に情報を改ざんし、個別に送っている可能性を調べる」
考える暇も与えない。一拍の間もおかずユーゼスは言いきった。
相手に、いらない勘ぐりをあたえさせない。統夜も、不満げではあったが、名簿を読み上げ始めた。
読み上げる名簿がある――つまり名簿を持っている。
ユーゼスは、正確に統夜の読み上げる名前を記録していった。
統夜が読み上げ終わると同時に、ユーゼスは他の面々の顔を見回したあと、確認を取る。
「全員、齟齬はあるか?」
にやにやと笑みのまま「さぁ?」と言わんばかりの表情の男が一名。
首を横に振るものが二名。どうやら、内容に差異はないようだ。
- 147 :それも名無しだ:2009/04/16(木) 23:34:59 ID:SpyF2TiX
-
- 148 :伏せた切り札 全ては己が目的のために:2009/04/16(木) 23:35:03 ID:5gKIPgg5
- どういうことだ?
内容に差異がないことを確認できる――イコール名簿を持っている。
何故か自分だけは名簿が転送されていない。原因を、ユーゼスは黙考する。
まず、真っ先に考えたのは、自分が主催者にとって目障りだからだ。気に食わない、だからこその嫌がらせ。
だが、その可能性を即座に切って捨てる。
主催者は、たしかに参加者全員に平等に接しているとは言い難い。
それでも、ゲームを進めるにあたって最低限の平等守っていた。
なにか異常事態がない限り無干渉で、全員に干渉するのは放送のみ。
そして、その放送で告げた内容を実行しないなど何かがおかしい。
第一、なにか自分に危機感などを覚えているというのなら、こんなすぐに取り戻せるような些細な嫌がらせでは済まないだろう。
首輪を爆発――はない。キョウスケが生きている以上、生死はルール上の規則以外では処理しないのだろう。
そうだとしても、いくらでもやりようはあるように思える。それこそ、空間転移の力で機体を破壊するのもいい。
直接、余った無人機でつぶしに来るのもいい。
ルールを破るなら、方法は選り取り見取りだ。
だというのに、わざわざ自分にだけ転送しなかった理由。
考えるが、ほぼないに等しい。
となれば、逆か。「転送しなかった」のではなく、「転送できなかった」。
そう考える。では、何故転送できなかった。
転送する位置が分からなかった。もしくは、自分の存在に気付かなかった。
これは考えにくい。なぜなら、これだけの大規模グループで動いておいて、そのメンバーを見過ごすなどあり得ない。
単独で行動し、うっかり忘れていましたというのも考えようだが、首輪で監視している以上集団が分からなかったというのは変だ。
自分の存在に気付かないはずがない。第一、グループでないのは自分だけなのだ。
違う、と判断できる。
転送したが、転送されなかった。
これは電波で例えるならば、発信はしたがこちらは受信できなかったという場合だ。
つまり、全員に向かって一斉送信はしたものの、自分の首輪だけは受信機能に破損があり、届かなかった。
これなら、他者全員に同一のものがあるのに、自分だけない理由にはなる。
だが、今度は、これはこれで問題がある。
何故、自分の首輪の機能が壊れているのか――ということだ。
自分の首輪に細工をした覚えは一切ない。正直、破損する理由がないのだ。
気付いたら自分の首輪の機能が壊れていました、と信じて喜べるほど頭が足りない人間ではない。
比較するべきだ。自分の首輪、つまりは自分が経験しており、他者にない経験を。
まず思い浮かぶのは先ほどの戦いでのゲッター線だった。現状、首輪の解除にもっとも役立つと思われていた存在。
それを、ユーゼスはF-1で大量に浴びた。
これは、違う。これで首輪の機能が停止するというなら、自分だけでなくガウルンとアキトの首輪も止まっていなければいけない。
次に思い浮かんだのは、ガウルンにも伝えた、空間と首輪の解除、その両方の鍵になると思われる熱気バサラの歌。
これも、やはり違う。あれを、あそこにいた全員が聞いていた。自分だけではない。
では、それ以前か。
ラーゼフォンを取り込んだとき。いや、体などには何もなかった。
しかも、自分はラーゼフォンの機能を熱気バサラのように引き出していない。
さらに遡る――思い当たる。
「そうか……あの、時」
- 149 :伏せた切り札 全ては己が目的のために:2009/04/16(木) 23:35:53 ID:5gKIPgg5
-
そう、首輪の解析とともに、始まった謎の侵食。食い合う異常な細胞同士のせめぎ合い。
あのまま進めば、自分の首輪にまで浸食が進むと追い詰められた。だが、それを救った存在があった。
ゲッター線だ。ゲッター線が、全てを抑え込み、正常に戻した。
その時、首輪は多少変質し――機能が停止した。ユーゼスは、その何らかの原因を探ろうとしていた。
形状の変化という目に見えて分かる変化があったために、そこに注目し、今まで頭の外に追いやっていた。
首輪の機能を停止させ、機体を正常に戻した緑色の輝き――ゲッター線を己も浴びていたことを。
あの時、空間を閉じるのに作用したゲッター線と、首輪の機能、侵食を停止したゲッター線では効能などが微細に違ったのだろう。
死者を蘇生する場合の力もあるなど、まったくその本質は見えておらず、単純にその力の発露しかないため分からなかった。
ウインドウに、自分の姿を映し、そっと服を下げ、首輪を露出させる。
本来、血の色に輝き脈動するはずの宝石は、黒ずみ光を失っている。
もう一度統夜――首がよく見える――を見る。その首輪の宝石は、赤々と輝いている。
自分の首輪と統夜の首輪の差異。それで、確信する。自分の首輪の機能が停止していることに。
一つ言っておこう。
このユーゼスの推論は間違っている。停止したのはF-1の戦いのときであり、原因もゲッター線化は不明だ。
間違いも混じったもので、あくまで推論以上でも以下でもない。
だが、ユーゼスの首輪が停止しており、ユーゼスがそれに気付いたことには間違いない。
「さて……話の細部を詰める件についてだが」
ユーゼスは、さらなる高まりを押さえ、話を切り出す。
「こちらは私とアキト。ガウルン、そちらは統夜とテニア……ということでよかったか?」
提案の確認を、ユーゼスはガウルンに振る。
こうなれば、ガウルン達とは離れたい。一刻も早く、首輪の状態を確認し、外したうえで理論を構築する。
後ろからばっさり切られかねない狂人は現状いらない。
アキトのような薬のため逆らえず、首輪をはずす実験台にもできる存在一つあればいい。
そのほうが、注意する対象がアキト一人ですむ。
「ああ、そうだよ。で、いつパーティの会場に行けばいいだ?」
「24時の会談の前に、来てもらえればいい」
戦闘が始まってから、飛び込んでこまれてはたまってものではない。
無論、素直に守るとも思えないが最低限釘を刺す。
「ところで……これを見りゃわかるがどうやら俺たちと、奴らと、あの化け物しかいないようだな。
まあ、適当にお譲ちゃんの要件をこなしてそっちに行くさ。ただし、あの青カブトは遠慮させてもらうがね」
「それでいい。勝ちが確実に見えるまであれ相手は撤退したほうがいい」
妙に話がかみ合うことに違和感を覚えながらも、ユーゼスは最後の詰めに入る。
お互い、情報を伝え切り、大まかな予定を伝えた。
両者が分かれたのは、その30分後のことだった。
- 150 :伏せた切り札 全ては己が目的のために:2009/04/16(木) 23:36:33 ID:5gKIPgg5
-
首輪の停止を誰にも悟らせてはいけない。
手元に届いたデータを確認。指さし、一人一人確認する。
妥協でなく、方針の変更でもなく。ただ、ユーゼスはユーゼスらしく。
首輪の停止というジョーカーを離さず、常に最終ラインにおける有利な立場をユーゼスは維持し続ける。
【ユーゼス・ゴッツォ 搭乗機体:メディウス・ロクス(バンプレストオリジナル)
パイロット状態:疲労(小) ハイ
機体状態:EN残量100% ヴァイサーガの五大剣を所持 データウェポンを4体吸収したため四肢が再生しました。
第三段階へ移行しました。
デザインの細部、能力(相転移砲などが使用可)が一部違いますが、基本MXのそれと変わりありません。
現在位置:B-2
第一行動方針:E-3に先んじて向かい、準備を整える
第二行動方針:AI1のデータ解析を基に首輪を解除
第三行動方針:サイバスターのラプラス・コンピューターの回収
第四行動方針:20m前後の機体の二人組みを警戒
第五行動方針:キョウスケにわずかな期待。来てほしい?
最終行動方針:主催者の超技術を奪い、神への階段を上る
備考1:アインストに関する情報を手に入れました
備考2:首輪の残骸を所持(六割程度)
備考3:DG細胞のサンプルを所持 】
【テンカワ・アキト 搭乗機体:ブラックゲッター
パイロット状態:五感が明瞭 意識の覚醒
機体状態:全身の装甲に損傷、ゲッター線炉心破損(補給不可)ゲッタートマホークを所持
現在位置:B-2
第一行動方針:ユーゼスと共に行動し、優勝を狙う
第二行動方針:ガウルン、ユーゼスの首を取る。ゼストを手に入れる。
第三行動方針:キョウスケが現れるのなら何度でも殺す
最終行動方針:ユリカを生き返らせる
備考1:首輪の爆破条件に"ボソンジャンプの使用"が追加。
備考2:謎の薬を2錠所持 (内1錠はユーゼス処方)
備考3:炉心を修復しなければゲッタービームは使用不可】
【ガウルン 搭乗機体:ダイゼンガー(バンプレストオリジナル)
パイロット状況:疲労(小)、全身にフィードバックされた痛み、DG細胞感染
機体状況:万全
現在位置:A-2
第一行動方針:存分に楽しむ。 まずはインベーダーで慣らしつつ疲れをとる。
第二行動方針:テニア、ユーゼスはとりあえず適当なところで殺す。
第三行動方針:アキト、ブンドルを殺す
第四行動方針:禁止エリアのインベーダー、基地のキョウスケの撃破
最終行動方針:元の世界に戻って腑抜けたカシムを元に戻す
備考1:ガウルンの頭に埋め込まれたチタン板、右足義足、癌細胞はDG細胞に同化されました
備考2:ダイゼンガーは内蔵された装備を全て使用できる状態です
備考3:謎の薬を一錠所持。飲めば禁止エリアに入っても首輪が爆発しなくなる(飲んだ時のペナルティは未定)】
- 151 :伏せた切り札 全ては己が目的のために:2009/04/16(木) 23:37:17 ID:5gKIPgg5
-
【紫雲統夜 登場機体:ヴァイサーガ(スーパーロボット大戦A)
パイロット状態:精神的に疲労 怒り
機体状態:左腕使用不可、シールド破棄、頭部角の一部破損、全身に損傷多数 EN70% 五大剣紛失 ガーディアンソード所持
現在位置:A-2
第一行動方針:インベーダー、キョウスケに対処
第二行動方針:ガウルン、ユーゼスと協力。でも信用はしない
最終行動方針:テニアと生き残る】
【フェステニア・ミューズ 搭乗機体:ベルゲルミル(ウルズ機)(バンプレストオリジナル)
パイロット状況:焦り
機体状況:左腕喪失、左脇腹に浅い抉れ(修復中) EN50%、EN回復中、マニピュレーターに血が微かについている
現在位置:A-2
第一行動方針:インベーダー、キョウスケに対処
第二行動方針:ガウルン、ユーゼスと協力。隙があれば潰す。
最終行動方針:統夜と生き残る
備考1:首輪を所持しています】
【二日目 18:30】
- 152 : ◆ZqUTZ8BqI6 :2009/04/16(木) 23:38:13 ID:5gKIPgg5
- 投下、完了です!
ここをこうしてはどうか?や、何か感想指摘などがありましたらお願いします。
- 153 :それも名無しだ:2009/04/16(木) 23:38:22 ID:SpyF2TiX
-
- 154 :それも名無しだ:2009/04/17(金) 22:11:06 ID:br+qdZI/
- 投下乙です。
ところで、ユーゼスが統夜に五大剣を返却してないのは?
- 155 :それも名無しだ:2009/04/17(金) 22:56:00 ID:daRMMO0e
- すいません、wiki収録時、そこを直しておきます……
- 156 :それも名無しだ:2009/04/18(土) 01:09:52 ID:M0Zx5MaM
- 投下GJ!
何だかんだで互いに信用はしていないコイツらが好きだw
ユーゼスは首輪の異常に気付くしアキトは五感をはっきりと取り戻し始めたし、転がり続けた話が終わりを迎えようとしてて凄くワクワクするw
- 157 :それも名無しだ:2009/04/24(金) 13:40:37 ID:dBU0m4ND
-
- 158 :それも名無しだ:2009/04/25(土) 14:57:20 ID:UJnYE0fk
- ほ
- 159 :それも名無しだ:2009/04/27(月) 00:38:08 ID:gbr3yueV
- ん
- 160 :それも名無しだ:2009/04/27(月) 17:45:36 ID:7v+AuBKo
- ま
- 161 :それも名無しだ:2009/04/27(月) 17:47:43 ID:vSwOucbw
- ぐ
- 162 :それも名無しだ:2009/04/27(月) 23:08:00 ID:g8kxzL3M
- ろ
- 163 :それも名無しだ:2009/04/27(月) 23:30:29 ID:Lhkxkm8s
- わ
- 164 :それも名無しだ:2009/04/28(火) 12:35:06 ID:Wz+tQt/j
- 武
- 165 :それも名無しだ:2009/04/28(火) 18:52:43 ID:etQhn/D+
- 蔵
- 166 :それも名無しだ:2009/04/28(火) 20:27:16 ID:qdff6siP
- ぃ
- 167 :それも名無しだ:2009/04/29(水) 09:12:17 ID:W535FGhH
- く
- 168 :それも名無しだ:2009/04/30(木) 16:12:55 ID:RkyB7u8b
- ッ
- 169 :それも名無しだ:2009/05/01(金) 15:03:23 ID:wjwGyLmm
- ッ
- 170 :それも名無しだ:2009/05/01(金) 15:45:03 ID:pZfjKf2Y
- この連休で勢い復活したらいいなぁ
- 171 :R-0109 ◆eVB8arcato :2009/05/02(土) 00:38:38 ID:dco/b9V3
- どうも、こんばんは。遅れて申し訳ございません。
「バトルロワイアルパロディ企画スレ交流雑談所(以下交流所)」の方でラジオをしているR-0109と申します。
現在、交流所のほうで「第二回パロロワ企画巡回ラジオツアー」というのをやっていまして。
そこで来る5/6(水)の21:00から、ここを題材にラジオをさせて頂きたいのですが宜しいでしょうか?
ラジオのアドレスと実況スレッドのアドレスは当日にこのスレに貼らせて頂きます。
交流所を知らない人のために交流所のアドレスも張っておきます。
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8882/1229832704/ (したらば)
ttp://www11.atwiki.jp/row/pages/49.html (日程表等)
- 172 :それも名無しだ:2009/05/05(火) 19:02:12 ID:6nOqsNK2
- ラジオ楽しみ保守
結局GWも予約は入らなかったかぁ……
- 173 : ◆ZqUTZ8BqI6 :2009/05/05(火) 21:23:42 ID:xbc6Rz5b
-
- 174 : ◆ZqUTZ8BqI6 :2009/05/05(火) 21:24:30 ID:xbc6Rz5b
- ミスった
全員を予約
- 175 :それも名無しだ:2009/05/05(火) 23:25:54 ID:40lKsuK3
- >>174
ちょwww
何する気だアンタwwwww
頑張ってください!
- 176 : ◆ZqUTZ8BqI6 :2009/05/05(火) 23:37:26 ID:cpy2yihl
- >>174
あのー、すいません、放送書いたり最新話かいた人間ですが……
トリが見事にかぶってるみたいなんで変えてくれないでしょうか?w
まずいんなら自分のほうがトリップキー変えますんで、一言リアクションお願いしますw
- 177 :それも名無しだ:2009/05/06(水) 02:22:40 ID:y12KN7Cp
- >>174>>176
ワラタw
まさかWikiの書き手一覧に二人気づかずに今まで混ざってたって事はないですよねw
- 178 :前からかいてる ◆ZqUTZ8BqI6 :2009/05/06(水) 02:38:27 ID:REnEh8ex
- >>177
ないないwww
そんなびっくりドッペルあったらびびるわw
- 179 :それも名無しだ:2009/05/06(水) 13:39:26 ID:tGnUAHlU
- >174
えっ全員?
みんな逃げて!!!特に機械獣と青い狼から
- 180 :R-0109 ◆eVB8arcato :2009/05/06(水) 21:01:06 ID:9qWWKs9d
- http://r-0109.ddo.jp:8000/ (ラジオアドレス)
ttp://cgi33.plala.or.jp/~kroko_ff/mailf/radio.htm (聞き方)
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/5008/1241611245/ (じっきょうすれ)
でし
- 181 :それも名無しだ:2009/05/12(火) 17:42:41 ID:LtwP5N7T
- ほ
- 182 :それも名無しだ:2009/05/12(火) 22:41:45 ID:1NRSoyIX
- ん
- 183 : ◆DWJ/O6494g :2009/05/15(金) 23:00:00 ID:7gCD3rB0
- 以前、◆ZqUTZ8BqI6と名乗り放送などを書いていたものです。
アムロ カミーユ キラ アイビス 甲児 ソシエ ロジャー ブンドル バサラ シャギア
ガウルン 統夜 テニア キョウスケ の14名を予約します!
事前に謝っておきます。延長が必要な時は申告しますが、それでも間に合わなかった場合すいません
- 184 :それも名無しだ:2009/05/16(土) 14:55:11 ID:8eUjsK+P
- >>183
それってほぼ全員…!?
期待age
- 185 : ◆VvWRRU0SzU :2009/05/17(日) 19:55:21 ID:TOQ/JZyv
- 予約してないけど投下するんだぜ
- 186 : ◆VvWRRU0SzU :2009/05/17(日) 19:56:01 ID:TOQ/JZyv
-
ページをめくり、そこにある名前と顔を一人一人確認していく。
このB-2エリアに存在するただ二人だけの生存者、テンカワ・アキト、ユーゼス・ゴッツォ。お互いもう随分前から無言だ。
打ち合わせることはいくつもあるはずだが、どうにも自分から口を開く気にはなれなかった。向こうもそう思っているのかもしれない。
ふう、とため息をつきアキトは水を一口飲んだ。
モニターの半分以上を占拠する巨体、ユーゼスの駆るメディウス・ロクス――ゼストを見やる。奪取するとは決めたものの、さてどうするか。
E-3のJアークに集う敵対者達と潰し合わせるにしても、問題が一つ。アキトが今現在搭乗しているこのブラックゲッターだ。
先程別れたガウルン達はもう影も見えない。こちらも24時までにE-3に向かう予定だが、ゼストとブラックゲッターなら二時間もあれば十分。
そう判断したユーゼスは休憩だとアキトに言い捨ててコクピット内で何やら作業しているようだ。おかげでアキトは手持無沙汰なまま黙然と時を待っている。
暇潰しがてらに機体の状況をチェックしてみる。どうやら、予想以上に酷使していたようだ。
炉心の破損による補給の途絶。貯蓄されていたエネルギーはそろそろ底をつくかというところ。
全身の装甲の破損も酷い。このままだと全速を出しただけでどこかの部位が欠落しかねないほどだ。
もはや唯一の武装と言えるゲッタートマホークも、刃毀れや投信の歪みが目立ってきた。インベーダーやマスターガンダム、ヴァイクランといった敵との交戦で全力で振り回していればこうもなるかと嘆息する。
とにかく、このままではユーゼスの機体を奪うどころかJアークの者達にすら太刀打ちできるかどうか怪しい。新しい機体を手に入れたガウルンなどは言わずもがなだ。
予定していたナデシコでの炉心の修理も結局は行えなかった。
現状、このフィールドで戦力的に一番劣っているのは自分だと言っても差支えないのではないか……アキトはそう踏んでいた。
気は進まないが、ここで取れる道は一つしかない。意を決し、通信機のスイッチを入れる。
「ユーゼス、話がある」
「……なんだ、手短に頼む」
「ブラックゲッターのことだ。もうこいつは限界だ。このままでは満足に戦えん」
「ふむ……」
ガウルンと手を組んだ現状、ここでユーゼスが戦力として数えられなくなったアキトを切るという可能性を考えなかったわけではない。
が、ユーゼスとてガウルンという男がどんな輩なのかはもう知悉しているはずだ。隙を見せれば食らいつく、油断ならない獣のような男だということを。
薬という枷がある点、少なくともアキトの方が御しやすい、そう考えることを期待しての問い。
その薬も、あと一度服用すれば完全に身体機能を取り戻せる見通しが立った。ユーゼスが処方した、どう考えても何か手が加えられている薬を使う必要もない。
そしてユーゼスの機体は自己再生機能を備えている。それを応用すれば、ブラックゲッターの損傷も修復できるのではないか。
ユーゼスの対応を想定しつつ、油断なくその挙動を観察する。万一ではあるが、ここで襲われるということになれば逃げるしかない。
「そもそも、同盟の条件は薬と情報だ。薬はともかくとして、俺は貴様から有用な情報というものを受け取ってはいない。が、俺はお前の用に幾度となく付き合っている。その対価を払ってもらおう」
「フ……私の機体を前に大した物言いだ。まあ、たしかにこのゼストは君の協力なくしては存在しない。いいだろう、君の提案を呑もう。機体の修復だな」
存外あっさりと了承され、逆に不穏なものを感じる。ユーゼスとてアキトが忠実な僕だと思っているわけではないだろう。
つまりは、いつ造反しようと力づくでねじ伏せる自信がある――それほどの力が、あの機体にはある。
同盟を組んだ間柄というのに明確な上下関係ができつつある。これはまずい……が、さりとて打破できるだけの力もない。今は服従の時、とアキトは己に言い聞かせる。
それに見方を変えれば、ガウルンと手を組んだこととて戦力に不安があったからと考えることもできる。
如何にユーゼスの機体が強力と言っても、Jアークに集まる全ての機体を相手にするのは難しいということだ。
ガウルンが信用しきれない以上、そのガウルンを狙うと公言しているアキトを楔として使う腹積もりもあるのだろう。
- 187 : ◆VvWRRU0SzU :2009/05/17(日) 19:56:42 ID:TOQ/JZyv
- 「幸いまだ時間はある。そうだな……」
カタカタ、とパネルを叩く音がする。アキトとしては炉心の修復ができれば御の字だというところだが。
「……よし、これだな。テンカワ、データを送る。目を通しておけ」
データが転送されてきた。光子力エンジン――マジンガーZ、アキトが撃破した機体に積んであった動力炉だ。
「これが、何だ。ゲッターとは規格が違うだろう?」
「君の機体を動かすには並大抵の動力炉では力不足だ。私の手持ちの中ではそれがもっともブラックゲッターに適応しているということだ。もちろんゲッター線を扱うことはできないが」
「機体を動かすだけということか」
「まあ待て。ゲッター線自体は先の交戦で十分すぎるほどに貯蔵できている。これを炉心に供給すれば当面は大丈夫だ。装甲についても、ラズムナニウムを応用すれば修復は可能だろう」
「……少なくともガウルンの機体と渡り合えるくらいにはしてもらいたい。できるか?」
「無論だ。私にしても奴は信用しきれん。君が抑えてくれると言うなら喜んで力を貸そう」
よく言うものだ。ガウルンの次は俺なんだろう――そう思ったが、別に構いはしない。俺も奴も、お互いにお互いを信用などしていないのだから。
ゼストが腕を伸ばす。掌の一部が盛り上がり、動力炉と思しきブロック体が姿を現す。
もう片方の腕がブラックゲッターを掴む。黒い流体が伝わってきて、ブラックゲッターを呑み込んでいく。
破損個所を埋めていく流体。ゲッター線炉心の横にスペースが開けられ、光子力エンジンとやらが積み込まれた。
「装甲の固着や回路の接続などにしばらく時間がかかる。24時まではまだ時間もあることだ、ここで君の機体を万全にしていこう」
「……礼は言わんぞ」
「構わんよ。これで我らの関係もイーブンということにしておこう」
それきり、ユーゼスからの通信は途切れた。あとは時間の経過に任せるということだろう。
さて、機体の問題はこれで解決した。何か細工をされるかとも思ったが、そこまで考えていても仕方のないことだ。いざとなれば奴がそれを使う前に殺すしかない。
残るはアキト自身の問題。おそらくあと一度薬を服用すれば完全に復調するが、副作用もまた一度は経験することになる。
以前のような重い症状は出ないだろうが、それでも戦闘中に発症するようならそこで終わりだ。ユーゼスやガウルンのみならずとも、見逃してくれようはずもない。
意を決し、薬を呑み込んだ。
30分、休憩に充てる時間としてはもったいないと思わなくもないが、これで以降は全力で戦える――ユーゼスに気付かれることなく。
ユーゼスに通信を繋げ、少し眠ると言い捨て反応を待たずに回線を切断する。激戦続きだったのだ、怪しまれることもないだろう。
ブラックゲッターが不意に動き出さないように、完全に炉心の火を落とす。聞こえてくるのは装甲が修復されゆく音だけだ。
これで次に目が覚めた時には自身の身体を100%自由に行使することができる。
バッドトリップも、アキトが眠っているとしていれば感知されないはずだ。
ユーゼスの裏をかけるのはおそらく一度きりだろう。その一瞬――乾坤一擲の機会に奴を殺す。
30分以内にJアークを排除し、薬の効果が切れたと思わせたところで、討つ。
ガウルンやキョウスケといった、警戒すべき敵は多い。だが何よりもまず、アキトを鎖に縛り付けられた犬だと勘違いしているこの道化からだ。
もちろん戦闘中にどさくさに紛れてガウルンを排除できればそれがベストではあるが、そう上手くいくものでもないだろう。
Jアークを排除しつつユーゼスを殺し、尚且つガウルンに横槍を入れられることなくゼストを確保する――考えるだに無謀なプランだが、アキトが優勝を達成するにはそれしかない。
この一時の同盟はブラフ。右手で握手し、左手に刃を忍び持つ。
早く来い――全てを決する時。殺意を凝縮し、押し固め、熟成させる。この一時間は休憩などではない。そう、言うなれば戦はもう始まっている。
昂る神経を自覚しつつ、アキトは努めて身を休める。
立ち止まるのはこれが最後。あとはただ、この身が壊れるまで走り抜くのみだ。
- 188 : ◆VvWRRU0SzU :2009/05/17(日) 19:57:23 ID:TOQ/JZyv
- □
変わりゆくブラックゲッターを見据え、ユーゼスはアキトの真意を考える。
アキトの提案を承諾したのはもちろん善意からなどではない。
Jアークと言う戦艦、そしてサイバスター。未知の機体である前者はともかく、後者がその力を完全に発揮できるのならゼストとて盤石とは言い切れない。
そのための方策として、ブラックゲッターだ。
ゼストを構成する物質、ラズムナニウム。それにより再生されたブラックゲッターは、いざという時の切り札。
万が一自己再生が不可能なほどにゼストが損傷した時、礎を同じくするブラックゲッターの躯体は言ってみればパーツ取りの予備となる。
切り離した部分の遠隔操作ができれば文句はなかったのだが、ブラックゲッターに固着した時点で支配権はあちらに映ったようだ。
まあそれはラズムナニウムがインベーダーとの融合物質となった以上、ゲッター線を有するブラックゲッターに支配されるのは致し方ないことと言える。
とにかく戦力として使え、加えて自機の保全にも繋がる。ユーゼスに取ってもアキトの提案は渡りに船だった。
そしてアキト自身、あと一度でも薬を服用すればナノマシンのキャリアとして完成を見るだろう。優勝を狙う奴が本気で従っているはずもないので、切り時はそこかもしれない。
統夜とテニアはどうにでもなるだろう。Jアークはともかくとして、警戒すべきはガウルンとキョウスケ。
常軌を逸した力を行使するキョウスケはともかくとして、ガウルンほど食えない男もいない。
協力を約束したとはいえ、あの男なら後ろから撃つことを躊躇いはしないという感触があった。
パワーで見るなら奴の機体はゲッターにも匹敵するだろう。ゼストには及ばないだろうが、それでも一撃が痛いことに変わりはない。
Jアークという餌があるうちはこちらに矛先が向く事もないだろうが、勝敗が決したとなれば話は別だ。首輪の解除など何のカードにもならないだろう。
アキトをぶつければ解決――する訳でもない。優勝狙いのアキトにとって、今のユーゼスは障害以外の何物でもないからだ。
Jアークを排除した後、おそらく二者とはぶつかることになる。どちらか一方が脱落していてくれれば楽にはなるのだが。
キョウスケがどういった思考の下動いているのかは分からないが、奴がJアークとの会談の場に現れればまたややこしいことにもなる。テニアの話では無差別に参加者を襲うとのことだが、この目立つゼストを放置して他を狙うとも考えにくい。
幸いあの機体はユーゼスが最初に搭乗したアルトアイゼンとさほど武装に違いはないらしい。せいぜい空を飛ぶようになったことくらいだ。
手の内を知っているという意味では、他の参加者より一歩先んじていると考えられなくもない。アキトにしてもそれは同様。
とにかく、24時だ。そのときに全てが決するといっても過言ではない。
首尾よくJアークを撃滅しその技術を取り込んだとして、首輪がある限り主催者の下に辿り着くことはできない。
既に理論はほぼ完成している。あとはアキトと言うナノマシンのサンプルを得て、統夜かテニアあたりで実験をすれば首輪を解除することも不可能ではないだろう。
アキトの役割はいざとなれば熱気バサラで代替することもできる。
奴とラーゼフォンが見せた空間の破壊をJアークが成し、アキトを確保できれば一番手間もないのだが。
ブラックゲッターの装甲が一時成形を終えたようだ。
ユーゼスがプログラムしたのは、もう一つのゲッターロボ、真ゲッターの姿。
あの時消え去ったオリジナルの真ゲッターと形を似せていれば、あの戦いを生き残った者達に一瞬の動揺くらいは期待できるかもしれない。ユーゼスの趣味という理由も幾分混じっていたが。
光子力エンジンも理論としては面白いが、ゲッター線や相転移エンジンほどの価値は感じられなかった。多少機体の出力は下がったが、さほどの問題でもない。
あと数時間。
ユーゼスは首輪解除の理論を再確認しつつ、静かにその時を待つ。
傍らの男の殺意を感じつつ、だがユーゼスはそれすらも小気味よいと感じる。
そう、全てはこの掌の上――。
- 189 : ◆VvWRRU0SzU :2009/05/17(日) 19:58:05 ID:TOQ/JZyv
- 【二日目 19:00】
【ユーゼス・ゴッツォ 搭乗機体:メディウス・ロクス(バンプレストオリジナル)
パイロット状態:疲労(小) ハイ
機体状態:EN残量100% データウェポンを4体吸収したため四肢が再生しました。
第三段階へ移行しました。
デザインの細部、能力(相転移砲などが使用可)が一部違いますが、基本MXのそれと変わりありません。
現在位置:B-2
第一行動方針:E-3に先んじて向かい、準備を整える
第二行動方針:AI1のデータ解析を基に首輪を解除
第三行動方針:サイバスターのラプラス・コンピューターの回収
第四行動方針:20m前後の機体の二人組みを警戒
第五行動方針:キョウスケにわずかな期待。来てほしい?
最終行動方針:主催者の超技術を奪い、神への階段を上る
備考1:アインストに関する情報を手に入れました
備考2:首輪の残骸を所持(六割程度)
備考3:DG細胞のサンプルを所持 】
【テンカワ・アキト 搭乗機体:ブラックゲッター
パイロット状態:五感が明瞭 意識の覚醒 薬の効果時間残り30分
機体状態:機体の形状が変化(黒い真ゲッター。性能に変化なし、変形不能) 装甲修復済み
光子力エンジン搭載 ゲッター線炉心破損(補給不可) ゲッタートマホークを所持 ゲッター線チャージ量100%
現在位置:B-2
第一行動方針:ユーゼスと共に行動し、優勝を狙う
第二行動方針:ガウルン、ユーゼスの首を取る。ゼストを手に入れる。
第三行動方針:キョウスケが現れるのなら何度でも殺す
最終行動方針:ユリカを生き返らせる
備考1:首輪の爆破条件に"ボソンジャンプの使用"が追加。
備考2:ユーゼスが処方した薬を1錠所持】
- 190 : ◆VvWRRU0SzU :2009/05/17(日) 19:58:56 ID:TOQ/JZyv
-
□
ゲッター線。進化を促進させるエネルギー。
マジンガー。機械に宿りし神にも悪魔にもなり得る魂の形。
とある世界の話。
その世界では本来交わるはずのない二者が出会い、新たな可能性として魔神皇帝を生み出した。
しかしそこには運命的な要素だけではなく、人の意志が介在した。
魔神を駆ることを運命づけられ、正義の炎を胸に灯す少年がいたからこそ起こるべくして起こった奇跡と言える。
さて、この世界では奇跡は起こるのだろうか。
ただ愛する者を取り戻すことだけを願う男の叫びは、因果の海を越えられるのか。
その結果は誰も知らない。
監視者だけがその答えを待ち続けている――。
- 191 :それも名無しだ:2009/05/17(日) 20:03:23 ID:TOQ/JZyv
- 短いけど以上で投下終了。
薬の問題とかがあるので、タイトルは通った時に改めてつけます。
- 192 : ◆XrXin1oFz6 :2009/05/18(月) 22:35:45 ID:a/YoMVof
- GJ!
特に問題はないと思いますが……というか逆にどこが問題なんだ……?
やっとアキトもまともにたたかえるようになるし、ユーゼスは虎視眈々とチャンスを待ってるしw
本当に盛り上がってきたなあw
あと、連絡ですが、ガウルン 統夜 テニアに関しては予約解除します……
矛盾が見つかり話に組み込むことが不可能になりましたので。
予約期限まではありますが、延長の申請もお願いします。
- 193 : ◆XrXin1oFz6 :2009/05/18(月) 22:36:38 ID:a/YoMVof
- あれ、トリが違う!?
何故だ!?何が違う?
- 194 : ◆XrXin1oFz6 :2009/05/18(月) 22:37:21 ID:a/YoMVof
- ええと、すいませんトリキ―が分からなくなったので、こちらで……何故だ……
- 195 :銃爪は俺が引く ◆VvWRRU0SzU :2009/05/20(水) 14:54:26 ID:NalR/Dcw
- タイトルは↑で
もはや唯一の武装と言えるゲッタートマホークも、刃毀れや投信の歪みが目立ってきた。
↓
もはや唯一の武装と言えるゲッタートマホークも、刃毀れや刀身の歪みが目立ってきた。
に修正します。
- 196 : ◆XrXin1oFz6 :2009/05/20(水) 22:49:20 ID:1eEPZeQc
- よし、完成!
11時から投下します!
- 197 :life goes on:2009/05/20(水) 23:01:40 ID:1eEPZeQc
- Jアークの小さな医務室のベッドで、シャギア・フロストは2時間ほど前に流れた放送を思い返していた。
放送と同時に配布された名簿を見て、彼は小さく息を吐く。
分かっていた。分かっていたことだが、その分かっていたことがとても重い。
オルバ、比瑪、ガロード――死したものが読み上げられる以上、放送名前が呼ばれるのも、この名簿に名がないのも当然だ。
だが、あのどこまでも自分たちの策謀を打ち砕き立ち塞がった少年、ガロード・ランならと小さく思ってしまったのも事実。
随分と弱気になったものだと自重する。
この世界に来る前ならば、おそらくこんなことを考えることもなかっただろう。
医務室から覗く窓の外では、機動兵器たちが落ちたパーツを回収している。
この二時間で、事態は大きく変わりつつあった。
話に聞くと、
騎士凰牙の腕は修繕できるとか、
マシンセルという特殊なナノマシン入りの腕が回収されたとか、
パーツの具合でもしかしたらストレーガとガナドゥールの再合体が可能になるかもしれないとか。
マテリアル的な話だけではない。
あのインベーダーたちの登場から続くさまざまな事態の急変。
もはやこのバトル・ロワイアルという形式を取ったデスゲームもまた崩壊しつつある。
終わりは、近い。
どんな結末になろうと次の放送はないだろうとシャギアは意識した。
ベッドから降りて、シャギアは立ち上がる。
適切な治療が施され、二時間以上ばかり休ませてもらった以上、身体的な疲れはもうそれほどではなかった。
寝ている熱気バサラ――そう言えば、ナデシコでも気絶していなかったか?――の横を抜け、医務室から出る。
医務室の外も、相変わらずの静寂だ。
おそらく医務室や解析器具のある中枢部などに人手を回すので精一杯なのだろう。
随分甘いことだとシャギアは小さく笑う。
自分が殺し合いに乗ってないという論拠など、どこにもない。
それにも関わらず、よくも自分を野放しにできたものだ。
今自分が銃器などを持って中枢などを強襲すれば、どれだけ被害が出るか、分からないわけでもないだろうに。
ギリ、と奥歯を噛み合せるシャギア。
奴らは、信じているのだろう。シャギアではなく、ガロードを。そして自分のニュータイプとしての感性を。
そして、ガロードが託したシャギア・フロストという人間が牙を剥くことはないだろうと思い込んでいる。
ガロード・ランの遺言まがいの言葉など知ったことかとシャギアは思う。
勝手に押し付け、消えていった相手の都合を聞き届ける理由はない。
ここに来て、紆余曲折あって自分が随分と曲がってしまった。
それを、シャギアは自覚する。
まして、ニュータイプと手を組もうなどど―――
シャギアの意識は、一時間半前にまで飛ぶ。
◆ ■ ◆
- 198 :life goes on:2009/05/20(水) 23:02:31 ID:1eEPZeQc
-
中枢で、マシンセルとトモロの回線をつなげ、アムロは携帯用の端末を叩いていた。
周りには、カミーユとキラもおり、キラはどうやら別の角度から解析をしているようだ。
『医務室を出たようだ』
トモロが義務的な口調で三人に告げる。
同時に展開されたウィンドウには、シャギア・フロストの姿があった。
「あの……本当に協力してくれるんでしょうか?」
キラが、おずおずとアムロに聞く。
『なんらかの敵害行動に出ようとした場合、隔壁を下ろして隔離する』
「トモロ、そういうことじゃなくて……!」
アムロは、少し考えてからキラの言葉に応じる。
「よくわからない。だが……協力してくれると信じるさ」
ニュータイプは万能なんかじゃない、人の心の奥まで覗くことなどできないし、やってもいけない。
だから、未来なんて不確かなものは分からない。
アムロはそう考えながらも、思考に陰りがあるのを感じていた。
一時間半前の、医務室での出来事。
―――「目を覚ましたのか?」
アムロは、打ち身などを癒すため、湿布薬を医務室に取りにいった時だった。
ちょうどシャギアが目をさましたのだ。
その時何げない調子でアムロは声をかけた。別に大した意味があったわけでもない。
目覚めたところに出くわした以上、無視するのもおかしいだろう――といった程度のものだ。
シャギアは周囲を見回し、場所と時間を確認すると、ここは何処かと放送の内容について聞いてきた。
アムロも、隠す理由もないため当然答える。
ここがJアークの医務室であること。次の禁止エリアは何処か。
そして、放送で呼ばれた死者も。
シャギアの顔が死者の名を聞き、一気に老けこんだ気がした。
魂が抜けたというべきか、疲れ切り呆けた顔になる。
呼ばれた名前には「オルバ・フロスト」という名前があった。おそらく、兄弟なのだろう。
いや、それだけではないのかもしれない。
今のシャギアから感じるものは、悲しみではなくどこまでも深い喪失感だ。
「まず、何があったか順番にいこう」
アイビスがちょうど格納庫に行っているタイミングに起きるとは。
自分は、あまり説明には向いてないなと思いながらも説明していく。
そして、同時にシャギアからもあの戦いの発端を話してもらった。
なぜなら、向こう側の乱戦、その全てを知るのはここで寝ていたシャギアとバサラなのだから。
途中からならば分かるが、始まりはなんだったのか。
アムロは、今からやること、今やることを話しながら時々シャギアにも口を開かせ、説明させた。
大まかにアムロ側の説明も終わり、シャギア側もあらかた話し終えたときだった。
アムロは、シャギアに問う。
「ガロードは……最期、何を?」
ガロードが最期に託した男だというのなら、この男はガロードから何を託されたのか。
アムロとしては、ただ純粋に知りたいが故の質問だった。
「ティファ・アディールに、必ず帰ると伝えろ、と言われただけだ。
……私が、ニュータイプの益になるようなことをすると思っているか。
むしろ逆にニュータイプを私が殺してしまわないかをガロード・ランは気にするべきだった」
- 199 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:02:58 ID:/qiyH9ap
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- 200 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:03:07 ID:LQEp+L6w
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- 201 :life goes on:2009/05/20(水) 23:03:15 ID:1eEPZeQc
-
僅かに他者へ嘲りと自嘲の混ざった笑いをこぼすシャギアに、アムロは目を見開いた。
「ニュータイプ……?」
アムロは自分の短慮を内心歯噛みした。
ガロードと同じ世界の人間ならニュータイプを知り、
そしてニュータイプに対して何らかの考えを持っている可能性は高い。
今は触れるべきではなかったかもしれない。
しかし、もう踏み出してしまった。なら、もう今更引くのは逆効果だ。
「ニュータイプを知っているのか?」
「その通りだ。我ら兄弟以上にニュータイプのことを知っているものはいない」
我ら兄弟。オルバ・フロストのことだろうか。
アムロの感覚に、ざらりとしたものが混じる。
間の前の男から放たれるのは、先ほどの喪失感を埋め合わせる泥のような何かだった。
「ニュータイプなど、ただの兵器に過ぎん」
絶対の確信。疲れた顔ながら、それが読み取れる。
同時に、深い憎悪も。
「……違う。兵器としか思えない人間がいるからこそ、兵器になるんだ」
しかし、アムロにもニュータイプには確固たる思いがある。
シャギアを見据え、アムロも言った。
「では、人間の革新とでも言うのか? 利用されるしかない無能な存在が?」
「それも違う。ニュータイプは、幻想だ。どんな力があろうと区別はないはずだ。……少なくとも俺はそう思う」
「まるでニュータイプを知るような口ぶりに聞こえるが」
アムロは、いったん区切り、息を吸い込む。
「黒歴史は知っているか?」
「黒歴史……?」
アムロは、ギンガナムから伝え聞いたことをそのまま話した。
ガンダム、ニュータイプ、スペースノイドも、どれも一つなぎの世界であることを。
そして自分がとある時代において、もっとも最初のニュータイプ、『ファースト・ニュータイプ』であることも。
話のスケールに少し呆然としていたが、アムロ自身がニュータイプである下りを聞いた途端、
シャギアの顔が歪んでいく。
「それが、どうした? 自分がニュータイプであることを得意げに話に来たのか?」
「そうじゃない。ただ、ニュータイプに捕らわれないでくれ。
歴史は繰り返している。ニュータイプも、等しくその輪の中にある。何も変わりはしない」
シャギアの、激昂。
泥のような何かが、マグマのように熱い憤怒になるのが即座に分かった。
最悪、こうなることも分かっての行動だったが、それはアムロの予想を超えるほどの怒りだった。
ニュータイプになれなかった――そんな嫉妬など欠片たりとも混ざっていない。
どこまでも純粋な憎悪と憤怒。
ニュータイプというものに対して無関心でもなく、さりとて嫉妬もなく、ただ憎しみだけ。
「我らはニュータイプに捕らわれてなどいない! 我らの手のうちにニュータイプがいるのだ!」
「ニュータイプという概念に縛られていることは、代わり………」
「黙るがいい! 黒歴史は全てがあったのだろう!? なら分かるはずだ、我らがどれだけ不当ないわれを受けたか!」
- 202 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:03:39 ID:/qiyH9ap
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- 203 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:03:53 ID:LQEp+L6w
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- 204 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:04:29 ID:/qiyH9ap
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- 205 :life goes on:2009/05/20(水) 23:04:47 ID:1eEPZeQc
-
アムロの返答は沈黙。
ギンガナムからは、全てがつながっているとしか教えられなかった。
目の前の男がいったい何をされたのかはわからない。
だが、それがどうしようもなくシャギアの逆鱗に触れてしまったのは分かる。
「分かるか!? 我ら兄弟はニュータイプなどというありもしない幻想のため存在を抹殺され、ないものにされた!
ニュータイプのできそこない、亜種……ただ兵器に順応できないだけでレッテルを張られたのだ!
私ら兄弟間では何よりも強い共感能力があったにも関わらずだ! 劣ることなどないのに劣等種として!
ニュータイプとして生きてきたお前のような存在に何が分かる!?」
シャギアが発した最後に言葉が、それだった。
………
……
『どうした? 手が動いてないが』
トモロの声ではっとする。
手元の端末の操作が御留守になり、どうやらさっきのことを思い出していたようだ。
(俺は、やっぱりなっちゃいないな……)
人の心など分かるはずもない。
だからどこが踏み込んではいけない領域かもわかるはずもない。
だが、先ほど自分は迂闊に土足で、もっとも踏み込んではいけない部分に踏み込んでしまった。
シャギアも、形はどうであれニュータイプに翻弄された人間の一人なのだ。
ニュータイプと似て非なる力を持つため、ニュータイプしても普通の人間としても扱われない苦しみ。
一体それはどういったものなのか。
しかも、おそらくそれを共有していた兄弟を失ったことへの絶望。
できることなら、解き放たれてほしい。
だが、自分にその資格があるのか。本当に、他者へ何か言う権利があるのか。
傲慢だな、とアムロは少し己を嫌悪した。
自分の価値観の押し付けに過ぎないのかもしれないことを自覚していながら、
自分の価値観を絶対のように言って押し付けようとする自分は、結局変わらないのではないか。
自分こそギンガナムの世界までつながる、人の業の輪の中に捕らわれた存在なのかもしれない。
その時、ブンドルから通信が入った。
「急な話ですまないが、カミーユをこちらに回してもらえないだろうか」
◆ ■ ◆
アイビスは格納庫の柵に手をあて、その上に顎を乗せていた。
目の前では、ブレンと、蛇の姿をしたデータウェポンがじゃれあっている。
よく考えればどちらも機械にも似た心持つ生き物だ。
趣味があってもおかしくないし、仲間ができたと思っているのかもしれない。
その姿を見てもアイビスの心はいまいち晴れることはない。
原因は医務室に入ろうと思った時中から聞こえてきたあの会話だ。
(劣等種、劣ってる、か……)
- 206 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:05:28 ID:LQEp+L6w
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- 207 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:05:33 ID:/qiyH9ap
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- 208 :life goes on:2009/05/20(水) 23:05:42 ID:1eEPZeQc
- その言葉を、彼女は理解できる。
『劣等』――ここに来る前、自分につけられた称号だ。
劣っているのは、自分でも訓練の時から分かっていた。
それでも、必ず追いつき夢をかなえると走ってきた。
だが、最期に待っていたのは、墜落と失墜だったのを覚えている。
途中まで確かに希望はあったのだ。
いつか夢にたどり着けると努力する余地があった。
自分が経験した挫折は、結局自分が弱くて再び努力するため、立ち上がれなかっただけ。
シャアや、ブレン。その他多くの人を見て、ここに来てやっとまた学べた。
彼女は起き上がれた。
しかし、そのチャンスもなく、努力も無為だとしたらどれだけその人生は辛いのだろう。
生まれ持った力だけで振り分けられ、他人に劣っていると断ぜられる。
ひたすら、挽回のチャンスもなく劣等種としてさげすまれる。
自分は、スレイを憎んだことはなかった。
同じ夢を持つ仲間だと思っていたし、今は無理でもいつかは並んで飛んでみせると信じていたからだ。
だが、もしも自分とシャギアと同じ立場だったらどうだろうか。
いくら努力したって届かないとフィリオからも言われ、味方は誰もいなくて。
実際努力する意味すらなかったら。
仮定の話とは言え、スレイを憎まなかったと胸を張っては言えなかった。
そうなったら自分は―――
きっと、ここに来る前のように生きる価値がないと陰鬱になり、命を絶っていたかもしれない。
それを考えればシャギアという人はものすごく強い人間だ。
自分が間違っている、自分が劣っているとは絶対に認めず、
逆に世界が間違っていると立ちあがることなど、自分にはできそうになかった。
「よう、どうしたんだ?」
「コウジ?」
横には、パーツをいじっていたのか油と煤だらけの甲児がいた。
おそらく、ふさぎこんだ顔をしていたのだろう。慌てて手を振り、そんなことないと否定した。
甲児は少し笑ったが、すぐ真顔になってうつむいた。
「シャギアさんの、ことだろ?」
「あ……え、どうして!?」
格納庫にいた甲児が、何故医務室の会話を聞いていたのか。
目を白黒させるアイビスに、そっと甲児は手を差し出した。
そこにあったのは携帯型の端末。
そこで、アイビスも気付く。
「もしかして……全部筒抜けだった?」
悪いことがばれた子供のような様子で、アイビスは甲児に問う。
甲児は頭を掻きつつ「まあな」と一言だけ答えた。
- 209 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:06:22 ID:/qiyH9ap
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- 210 :life goes on:2009/05/20(水) 23:06:25 ID:1eEPZeQc
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アムロは話す際シャギアに気を使いきちんと端末を切っていたが、
アイビスはいつでも反応できるようにつけっぱなしだったのだ。
つまり、アイビスの端末を通してシャギアの話は全員に伝わっているということだろう。
「知ってるのは、あの時聞いてた人だけだから、俺だけかもしれないし、他にいるのかもしれないな」
どれだけ知ってる人がいるのかはわからないと伝えると、
甲児はアイビスの横の柵に、背を預け天井を見上げた。
「シャギアさんってさー、底抜けに明るいんだぜ?」
突然の甲児の言葉。
アイビスは、その言葉の真意が、いまいちよくわからなかった。
甲児の顔を見上げるアイビスに、照れた様子で今度は頬を掻く甲児。
「いやさ、ずっとナデシコで一緒だったけどさ。
タマゴ焼き取り合って本気で喧嘩したり、一緒にアニメ見て盛り上がって笑ったり……
しかめっ面、見たことなかったよ。いつも自信満々で、みんな励ますようにしてて」
甲児は、アイビスの顔を見ながら、嬉しそうに言った。
シャギアが、アニメを見て拳を振り回してたとか、いきなりブイサイン相手にかましてなごませたとか。
本当にうれしそうに、身振り手振りを混じえ、満面の笑顔で甲児は言う。
その姿がどこか痛々しいと思ってしまうのは、アイビスの思い込みだろうか。
「だからさ、俺シャギアさんのこと、そういう人だと思ってたよ。
首輪の解析とかもできて、みんなを気遣えて、明るくて、挫けなくて……」
尻すぼみに小さくなる甲児の声。
「けど、違ったんだよな。あんな色々抱え込んで、それでもああやって笑ってたんだよな」
甲児の言葉は、さっき聞いたシャギアの言葉からは想像できない。
けれど、アイビスもさきほどのナデシコ直行から、甲児が嘘をつくような相手でないのを分かっている。
きっとその言葉は真実なのだろう。
少し、アイビスはその頃のシャギアが見たいと思ってしまった。
そこまで、立ち上がり続けられるのは何故なのだろう。
「思うけどさ、兄弟だけでもお互い考えてることが分かるってすごいことだよな。
俺もシロウって弟いるけど、なに考えてるかなんかわかりゃしないぜ。
あの人が劣ってるっていうなら俺なんかもうミジンコだよ」
- 211 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:07:04 ID:/qiyH9ap
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- 212 :life goes on:2009/05/20(水) 23:07:15 ID:1eEPZeQc
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人と違った力を持ってて、人より何をやらせても優秀で、周りも気遣える人のどこが劣等なのか。
甲児だけでない。自分だってそんな人に比べたら劣っている。
なのに、ただニュータイプと違うだけで差別される。そのニュータイプがどれほどのものなのだろう。
カミーユもアムロも、自分たちと何も変わらないように見えるのに。
「立派な人だったんだね」
「ああ、本当にな」
ブレンが、アイビスの横にいつの間にか、いた。
作業用の高い足場から、ブレンの頭をなでると、ブレンは心なしか嬉しそうにした。
蛇のデータウェポンはそれをじーっと見て、どこか拗ねているように見える。
「だからさ、シャギアさんが困ってるなら、こんどは逆に助ける時だと思うんだ」
甲児は、宣言するように拳を握り言った。
アイビスは、ブレンを撫でながら思う。
自分も、いろんな人の助けがあったからこそ、ここまで来れたのはさっきも思ったとおりだ。
なら、今度は自分が他人を助ける番ではないか。
もちろん、自分のことすら満足にできないのは分かってる。
それでも他人のため頑張りたいと願うのは悪いことだろうか。
「誰かの自由や幸せのために闘う」――それはとある時間軸において後々、彼女が語る言葉だ。
そのひな形が、今彼女の心にも灯り始めていた。
「私も手伝うよ」
差し出す手に、甲児は少し驚いたようだった。
だが、甲児も笑い、その手を握り返した。
作業場の高い場所で、二人がこうして握手を交わす。
◆ ■ ◆
その下で――
「……若いな」
「しかし、だからこそ美しい。打算の混じらない人の絆とは、どんな形であろうと美しいものだ」
二人のその遥か下、機体の足元に近い場所でブンドルとロジャー、二人の男がやれやれと笑う。
「しかし、注意深さが足りないな。先ほど、同じミスをしたというのにだ」
「若いということは青いということ。それも少しずつ治っていくものだと信じるべきだ」
端末から漏れるアイビスと甲児の声。
そう、アイビスはまたも端末のスイッチを切っていなかったのだ。
もっとも、甲児に指摘されるまでそれに気付かず、つい甲児と話し込む間もそのままだったのだろう。
- 213 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:07:16 ID:LQEp+L6w
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- 214 :life goes on:2009/05/20(水) 23:08:00 ID:1eEPZeQc
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「……さきほど話した内容。任せてかまわないか?」
ブンドルが顔を引き締め、ロジャーに問う。
ロジャーはゆっくりと大きく頷いた。
「残念だが答えはノーだ。私は交渉せず他者を排撃することを認めはしない。……急ぎすぎではないか?」
「いや、今でも遅すぎるくらいだろう。我々は超える壁は厚く、多い。
札を増やさねばおそらく最初の壁すら越えられない」
どこまでも冷静なブンドルに対し、ロジャーの顔には苦いものが混じっていた。
「アムロと君の二人にもしもの……汚れ役を任せることになることを詫びよう。
しかし、若さのままに走り、必要のない場所で散る様を見過ごすのは心苦しい」
気にすることはないとロジャーは答えると、ソシエ嬢に呼ばれ、凰牙のほうへ走っていく。
凰牙の調整はやはり搭乗者本人でなければ微妙な部分があるのだろう。
ブンドルは胸の薔薇を引き抜くと、それを眺める。
しかし、ブンドルが真に見ているのは今この場にあるものの向こう、未来だ。
ブンドルは、ユーゼスが絶対に自分たちを見逃すことはないと直感していた。
相対した瞬間にじみ出る、信頼や真実からほど遠いあの醜い雰囲気。
ブンドルは自分の美学に基づく予感だけは疑わない。二度目の遭遇で、それを確信していた。
このまま行けば、体よく駒として擦り減り切るまで使い捨てられるか、キョウスケのように殺されるか。
もっとも、結果としてキョウスケ・ナンブは予想外の変質を遂げたようだが。
しかし他者をあっさりと都合が悪くなれば切り捨て、
危険なものとも平気な顔で手を結ぶ人物であることは疑いない。
ブンドルの端正な顔がわずかにこわばる。
あまりにも、今の状況は前途が多難としかいいようがない。
いくらかパーツの回収やメンバーの集結がなり、風が吹き始めているが、それはそよ風のようなもの。
高い山にぶつかれははかなく消えてしまうものだろう。
この場から真の意味で脱出を狙うなら、大きく分けて3つの山がある。
一つ、キョウスケ。
二つ、ユーゼス。
三つ、アインスト・レジセイア。
この全てを乗り越えなければいけない。
そのためには、その時その時の的確な戦力の分配、そして何よりこちらの総合戦闘力の強化が必須だ。
キョウスケとユーゼスがつぶし合い、結果見据えるべきはノイ・レジセイアだけという最高のケースも考えられるが、
常に最悪の事態を想定して動くべきだろう。
都合のいい夢想ばかりで乗り越えられる地点はもうない。
- 215 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:08:18 ID:/qiyH9ap
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- 216 :life goes on:2009/05/20(水) 23:08:42 ID:1eEPZeQc
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ブンドルは、サイバスターを見上げる。
未だ、真の力を目覚めさせることなく沈黙する巨神。
その力を引き出すことは、絶対に必要な条件だ。
だが、あまりにも時間がない。
今の時間は、19時40分。ユーゼスとの会談まで4時間と20分しかない。
放送後からここまで慎重に吟味してきたが、ここが限界点だ。
ブンドルは、おそらくサイバスターの選んだ人間はカミーユだと思った。
熱気バサラもそれに近かったが、あのラーゼフォンにバサラが乗り込んだ時から、
サイバスターに乗るブンドルだけがわかる独特の感覚がなくなっていた。
そして、行動を共にして分かったが甲児も違う。
サイバスターは興味を示すことはなかった。
アムロやロジャーたちは最初から考慮の外だ。
あまりにもサイバスターが求めるものとは違いすぎる。
結果、残ったのがカミーユだ。
ブンドルもそれとなくカミーユが格納庫に来るたびに確認をしていたが、ほぼ間違いはないだろう。
ブンドルにはわかる。サイバスターの声なき声が、その本質を理解するものとして。
廊下の向こう側からカミーユの姿が見えた。
ブンドルは今一度惜しむようにサイバスターを見つめ、その荘厳な建造物のような表面を手でなでる。
損壊も最低限ではあるが修復され、両腕も使用可能になった。
もう一度、サイバスターを駆りたい気持ちはないわけでもなかった。
しかし、自分ではないのだ。自分では理解はできても行使はできない。
そっとその手をサイバスターから放す。
ブンドルは、もう振り返ることはなかった。
彼が向かう先にあるのは――VF-22S・Sボーゲル。
カミーユが乗っていたマシン。
今から自分は道化を演じよう。
それが、自分を含むこの場にいる全員の未来につながるならば。
VF-22S・Sボーゲルのシートに、静かに背を預ける。
同時に流れ込むこの機体の知識。
しかし、手に握られた機体のわりに大きすぎるライフルの知識はない。
これは別の機体の武器だったということか。
だが分からなくてもかまわない。そこは自分の腕でカバーする。
カメラから周りを確認する。
ロジャーやソシエ嬢の姿はない。
甲児とアイビスも、危険に巻き込まれない位置にいる。
なら、もう問題ないだろう。
- 217 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:08:54 ID:nTd3FPlg
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- 218 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:09:08 ID:/qiyH9ap
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- 219 :life goes on:2009/05/20(水) 23:09:27 ID:1eEPZeQc
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気難しそうな顔の青年の姿が見えた。
ブンドルは最期に一度目をつむる。
開かれた目に、迷いはもうなかった。
多少荒療治でもサイバスターの力を覚醒させ、実践に耐えられるだけの経験を積ませる。
そして、疲労のないベストコンディションでユーゼスと会談する。
これ以上遅れては、それは不可能だ。
「聞こえているだろうか、カミーユ・ビダン」
VF-22Sのガンポッドが、静かに標準させられる。
対象は―――生身のカミーユだ。
◆ ■ ◆
破壊を破壊――再生を破壊。
破壊を再生――再生を再生。
この身にこれ以上の休息は不要。
この機にこれ以上の補充は不要。
我は我が身を持って打ち砕くのみ。
宿り木が巣食いしこの体に、もはや救いはなし。
人の業。
人の技。
人の道。
それらの価値。
人の宿業の結末。
爆心地。
到達点。
- 220 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:09:40 ID:LQEp+L6w
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- 221 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:10:10 ID:/qiyH9ap
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- 222 :life goes on:2009/05/20(水) 23:10:10 ID:1eEPZeQc
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約束の地。
『望まれていない』
『望まれていない生命……修正』
『望まれていない存在……抹消』
『望まれていない未来……改編』
『望まれていない自分……到達』
我の願いは―――
◆ ■ ◆
「サイバスターの力はその程度ではないはずだ。その真の力を見せてほしいところだが」
失望の混じったブンドルの声が、カミーユに投げられる。
VF-22Sが、サイバスターの前をバトロイド形態のまま悠然と飛行する。
突然こんな場所に呼び出し、いったい何のつもりなのか。理由は分かっても、到底納得いくものではない。
操縦桿を握りなおし、サイバスターを立ち上がらせる。
サイバスターの操者として、カミーユが適任だと言われた。そしてその力を引き出して見せろと。
銃を突き付けられ、無理に機体に乗せられ、ここまで引き摺られ、戦わされた。
「―――勝手な都合でッ!」
機体を一機に加速させる。
今、目の前にあるのは今まで自分が乗っていた機体。
そして、その手に握られているのは、中尉から託された撃ち貫くための槍。
サイバードに変形して廃墟の市街地を駆ける。
軽過ぎた印象のVF-22Sよりも、サイバードはΖガンダムに近い。カミーユの感覚とうまく噛みあっている。
- 223 :life goes on:2009/05/20(水) 23:10:57 ID:1eEPZeQc
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VF-22Sがオクスタンライフルを腰のラックにおさめ、代わってガンポットを抜くのが見えた。
遠距離狙撃を捨てた以上、距離を詰めて来るつもりなのか。
それがまた余計にカミーユを煽る。今、サイバスターに中距離以上の有効な攻撃はない。
セオリーで言うなら、遠距離から射撃を繰り返すべきなのだ。
それをわざわざこっちの懐に飛び込んでくる理由は一つ。挑発だ。
サイバードの後ろにバルキリー形態のVF-22Sが追いすがる。
カチリと小さな音を立てたのち、閃光とともに吐き出される銃弾。
咄嗟に、急上昇し、射線から逃れる。しかしVF-22Sは突然バトロイドに変形。
勢いそのままに虚空を滑りながらも、ガンポッドを上に向けた。
慣性によって与えられる勢いが落ち、射撃が可能となる位置と、サイバードが上昇した位置が重なっていた。
サイバスターに変形し、剣ですぐ横のボロボロの巨大ビルへ切り込む。
砂糖菓子のように崩れたビルの隙間に身を隠すとともに、閃光が下から上へ駆け抜けていく。
これが初めてVF-22Sを与えられた人間の操縦とは思えない。
VF-22Sの微細な癖までブンドルは掴んでいるとしか思えなかった。
そのままカミーユは、ビルを横薙ぎにディスカッターで切り飛ばす。
ほこりまみれのガラスが砕かれ僅かに光を照りかえす。崩れたビルの残骸が、自由落下でVF-22Sに振り注いだ。
サイバスターはビルの反対側から脱出。周囲を索敵する。
しかし、そんな必要はなかった。ビルとビルのわずかな隙間からビームの輝きがこちらに迫る。
ぎりぎりスウェーバック同然に回避。ビームの発射地点にカロリックミサイルを叩き込む。
しかし、VF-22Sはそのビルの隙間の狭さを利用し壁に変え、奥の暗闇に消えていく。
今、VF-22Sが使ったのは間違いなくオクスタンライフルだった。
人の気を知らないで平然と使うんじゃないと言いたかったが、VF-22Sの姿はない。
驚くことに、気配すら見つからない。判然と、何箇所かに同時に存在しているのだ。
「殺気を消し、分け、切り込む。騎士道の基本だと覚えておくといい」
右ななめ後方。
殺気を感じた場所にカミーユが振り向くが、そこにあったのは、数m程度の瓦礫。
先ほどカミーユが落としたものだろうか。それが、一発のガンポッドに打ち抜かれ――
飛礫となってサイバスターの表面を打ちすえる。
「こんなもので!」
「しかし、その『こんなもの』もよけられない」
瓦礫の向こう、カメラのフォーカスが何に焦点を当てるかで僅かに混乱している間。
その間に正確にVF-22Sは距離を詰めている。
バリアを纏った拳をギリギリの場所ながらディスカッターで受け止めるが、体躯では勝るはずのサイバスターが弾き飛ばされる。
飛礫に足を止めたサイバスターとブーストを利用し上方から攻撃したVF-22S。
そしてなにより、人型ロボット特有の人間に近い重心を見切り、それをずらすように叩いたブンドルの技量。
- 224 :life goes on:2009/05/20(水) 23:11:45 ID:1eEPZeQc
-
落下するサイバスターに追撃はない。
いつでも倒せる余裕か、これは模擬戦に過ぎないといいたいのか、その両方か。
勝手な都合で戦いに引きずり出して、勝手な都合でやって見せろと期待して。
そして、これか。
地面に叩きつけられる直前、サイバスターの背面で精霊光が輝く。
逆噴射で大地に立つ大空の魔装機神。
見上げるサイバスターに、VF-22Sがオクスタンライフルを突き付ける。
「お前が、それを使うなッ!」
キラの時と同じ怒りが、意識を塗り潰す。
キョウスケから託されたものを、撃ち貫く槍を奪い挙句俺に向けるのか―― 勝手な都合で!
脚部、背面、腕のスラスターを限界まで一気に開放する。
一瞬でトップスピードまで加速したサイバスター。シートが体に食い込み、ギチギチと嫌な音を立てる。
天空まで駆け上がるサイバスターは、VF-22Sとの距離を瞬く間に詰める。
VF-22Sも急いで回避行動をとろうとしたが、あまりにもサイバスターに比べてその動きは鈍重と言わざるを得ない。
オクスタンライフルを構えていた右腕が、ディスカッターに切り飛ばされ、宙を舞った。
左手でガンポットを抜き、サイバスターに突きつける。
だが、サイバスターは切り飛ばされたVF-22Sの右手を空の手に掴み、距離を取る。
ガンポッドが放たれる――撃ったのは、何も掴まれていないVF-22Sの左手。
サイバスターは再び夜の空へ。
サイバスターの左手には、剣が。右手には槍が。
月光を受け、サイバスターが白銀に輝く。
「聖ジョージの騎士、か……」
ブンドルの呟きは、怒れるカミーユに届くことはなかった。
◆ ■ ◆
――美しい。
それが、サイバスターを始めて目にした時、ブンドルが素直に抱いた感想だった。
優美な印象を受ける純白。兵器としての無骨な印象に程遠い、芸術品的な美しさ。
大空に羽撃つ白鳥のようなその姿は、彼の美意識を刺激するに十分過ぎるものであった。
お前の美しさに私は誓おう――この醜き催しを企てた無粋なあの者達に、我が美学を知らしめんと。
だが、奇しくもサイバスターが望んだ者は、ブンドルではなかった。
ブンドルのようなものではなく、熱く滾る何かを持った若者こそが、サイバスターは求めていると感じた。
心の奥に少し、その組み合わせは美しくないのではないかと思う部分もあった。
- 225 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:11:56 ID:LQEp+L6w
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- 226 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:12:03 ID:/qiyH9ap
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- 227 :life goes on:2009/05/20(水) 23:12:28 ID:1eEPZeQc
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くだらない思い過ごしだった。
ブンドルは、静かに一人頷いた。
自分らしくもない杞憂であったことを嬉しくも思いながら、
その美しさを自分では引き出せなかったことへの、ほんの少し名残惜しさもある。
――本当に美しい。
それが、今のカミーユが駆るサイバスターを見て、ブンドルが素直に抱いた感想だった。
その表面は、戦闘を経て僅かに黒ずみ、元の純白さはない。動きも優雅とは言い難い。
しかし、この美しさは何たるものか。大空を羽撃つ白鳥ではなく、大空を支配し統べる猛禽類の王、鷹のようだ。
サイバスターは、やはり戦騎。その美しさは、躍動する戦いの中にこそある。
燃え上がるような情熱を受け、大空を舞う姿は、鑑賞物として置いてみるものとは別の美しさがあった。
剣と槍を携え闘う雄々しき姿に、ブンドルはイギリスの神話に登場し伝説の悪竜を屠った騎士、聖ジョージを見た。
徐々に、自分が乗っていた時より、サイバスターの速度が上がっていく。
それに合わせて、カミーユの動きも鋭くなっていく。
自分が押され始めている。
そうか、これこそが真のサイバスターか。
VF-22Sにサイバスターのオクスタンライフルが叩きつけられる。
静かにVF-22Sが失墜し、大地に落ちていく。だが、そのかわりに大空には羽ばたいたのだ。
ついに、願い続けていた翼が。サイバスターが。
ビルの壁を背に、蹲るバトロイドのVF-22Sの側に、サイバスターが立つ。
通信機越しに、カミーユの荒い声が聞こえてくる。
怒りに我を見失いとどめを刺す気かもしれない。
あえて道化に徹し、気を逆立てるような言葉を吐いてきた。
その結末は、けしておかしなものでない。
だが、みすみすやられるつもりもない。
命という対価を払うのは、まだ先のつもりだ。
オクスタンライフルが、VF-22Sを標準する。
警告メッセージのウィンドウをブンドルは片づけ、タイミングを待つ。
一瞬の攻防。それならまだ自分に分がある。
- 228 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:13:25 ID:/qiyH9ap
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- 229 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:13:39 ID:LQEp+L6w
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- 230 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:14:06 ID:/qiyH9ap
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- 231 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:15:29 ID:LQEp+L6w
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- 232 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:17:06 ID:nTd3FPlg
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- 233 :代理投下:2009/05/20(水) 23:17:45 ID:yHiRXmWm
-
撃つ瞬間、回避して機体の中にも伝わるように拳を打ち込む。
それだけを、狙う。
一秒。
二秒。
三秒。
静かに時間だけが経つ。
そして―――
すっとオクスタンライフルが下ろされる。
「聞いて分かってますよ。最初から、何が目的だったか。けど、こんな方法で何がしたかったんですか!?」
カミーユの怒りは、銃撃ではなく言葉という形でブンドルに向けられた。
「それも伝えているつもりだ。無論、その責任も負う覚悟はあった」
「だから、黙って殺されようとしたんですか!? 冗談じゃない!」
もっとも、本当は反撃する気だったのだが、今それを言うと余計にことを荒立てるだけだろう。
ブンドルは貝のように口をつぐむと、ボロボロのVF-22Sを立ち上がらせる。
「人をなんだと思ってるんです!? 死ねば責任が取れるなんて逃げているだけだ!」
「だが、現実の状況と折り合いをつかる形では、これしかなかったと思っている。私なりに『納得』しての行動だ」
次の瞬間、VF-22Sはサイバスターに殴り飛ばされていた。
メインカメラに砂嵐が混じる。
「『妥協』を『納得』なんて言葉でごまかして! 自分だけを納得させようとするのが大人のすることか!」
口をハンカチでぬぐう。
口を切ったのか、そこには赤いものが混じっていた。
気付けばドクーガの最高幹部になり、自分に苦言を呈するものは少なくなっていた。
無論、それはそれを必要ないほど自分も優秀だったと自負もある。
だが、これほど荒々しく想いをぶつけられたのは一体どれほどぶりか。
- 234 :代理投下:2009/05/20(水) 23:18:35 ID:yHiRXmWm
-
スラスターを噴射。
ほんの一瞬だったが十二分。
その腕についた巨大な杭打ち機を潜り抜ける。
激進する蒼い孤狼の懐にVF-22Sが潜り込む。
その拳が胸の赤い球体に叩き込まれる。
一瞬の空白。
ピシリと、何かが砕ける音が鳴る。
振われる蒼い孤狼の右腕がVF-22Sを弾き飛ばす。
VF-22Sの下半身が、ただそれだけで砕け散った。
「ブンド……ああああああああああ!!」
サイバスターの前に突然魔方陣が生成され、くぐった瞬間サイバスターが灼熱に燃え上がる。
ディスカッターが、火炎を纏ったまま振り落とされた。しかし、右手の杭打ち機がはっしとそれを受け止める。
カミーユの怒りに狂ったような笑い声の返答。それが怒りへさらに油を注ぐのだろう。
さらに攻撃の手を加速させるサイバスター。しかし、烈火のごとき攻撃も、蒼い孤狼には届いていない。
笑いは止まらず、一撃たりとも直撃はない。
一度、僅かにサイバスターと蒼い孤狼が空く。
VF-22Sは、どうにかその手に掴んだガンポッドで両者の間を抜くように撃つ。
お互い、その程度ではダメージにならないだろうが反射的に飛びのいた。
「無事だったんですか!?」
勝手に殺さないでほしいと言いたくなったが、そんな無駄口を叩いている暇はない。
「今のまま戦っても勝ち目はないようだ」
「ここでまた引けって言うんですか!?」
カミーユの声をブンドルは無視する。
- 235 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:18:38 ID:nTd3FPlg
-
- 236 :代理投下:2009/05/20(水) 23:19:19 ID:yHiRXmWm
-
「話は聞かせてもらっている。カミーユ、君はなんのため生き恥をさらすことを覚悟で引いた?
今目の前の変わり果てた中尉を確実に撃破するためだろう。たしかにサイバスターで君個人の力は上がった。
だが、一人で倒せる相手ではないだろう。だから、こうして私たちは集った。分かるな?」
今にも誘爆しそうなVF-22Sの中で言葉を紡ぐ。
カミーユは、けしてここできえてはいけないのだ。
この醜悪な殺し合いを仕組んだ主催者を撃破するために、サイバスターは必ず大きな力になるはずだ。
無駄に散らすことなど、許されるはずがない。
たとえ、どんな方法をとっても撤退させる。
ジリジリと蒼い孤狼は、距離を詰める。
一瞬で噛み砕ける時を、その名のとおり獰猛な肉食獣のように待っているのだろう。
「……どうやって、引くんです? 今のVF-22Sじゃ追いつかれます」
ブンドルを気遣っているというより、むしろ戦う理由づけにそれを盾にしている。
そんな響きがカミーユの声にはあった。
彼にとって、中尉という人物は、引くことを許されない存在なのだろう。
だが、そんな都合はブンドルには関係ない。
「簡単なことだ。サイバスター単騎なら離脱も簡単だろう。……援軍を呼んでくるまで、私が引き受けよう。
今、避けなければならないことは両方の撃墜。そしてわたしの機体では援軍を呼ぶまで時間がかかる。
ならカミーユ、そちらが呼びに行くのが適切だろう」
「そんなこと、できるわけがない! あなただって……」
「できない、と思うならばうぬぼれを改めたほうがいいではないかな?」
VF-22Sが、背面のスラスターを使い宙に浮く。
腕を失い、下半身を失い、全身傷だらけのその姿でなお、ガンポッドを構え、青い孤狼に対峙する。
蒼い孤狼の突撃を、紙一重でVF-22Sはかわす。
その姿は、竜巻にあおられ宙を舞う一枚の木の葉だ。
だが、消して当たることなくかわし、ガンポッドでけん制する。
「この戦いに呼び出した際、こうなることも『納得』していた」
その言葉に、カミーユが息をのむ。
- 237 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:19:27 ID:nTd3FPlg
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- 238 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:19:47 ID:LQEp+L6w
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- 239 :代理投下:2009/05/20(水) 23:20:30 ID:yHiRXmWm
-
「全て、私が『納得』しての行動であり、『妥協』ではないということだ」
――だから行け! 騎士よ!
サイバスターが背を向け、Jアークのほうへと飛ぶ。通信機から聞こえるのは、嗚咽だった。
また、つらい思いをカミーユに重ねさせ追い詰めてしまうことをブンドルは小さく謝罪する。
張り詰めきった糸が切れたとき、壊れてしまわねばいいが。
自分が行った考察も、知識も、今は全てJアークにある。
そしてサイバスターも今託した。
「役目を終えた役者は舞台から降りる……それが必然か」
サイバスターは美しい。
その本当の輝きを見せてくれた。
それだけであの少年を守る価値はある。
今の疲弊した聖ジョージの騎士に、悪竜……いや魔獣を倒す力はない。
だが、今一度立て直してくれれば。心強い騎士たちの力添えがあれば。
必ず、魔獣を打ち倒すだろう。
蒼い孤狼から漏れる嘲笑。
しかし、ブンドルは胸の薔薇を抜くと、静かに、そして高らかに宣告した。
「醜き者よ、今は驕っているが良い。だが、醜き者は滅ぶべき定めにある」
初めてサイバスターの前に立った時と同じ誓いを、今一度。
蒼い孤狼と、VF-22Sが夜の廃墟の中、交錯する。
そして―――
【レオナルド・メディチ・ブンドル 死亡確認】
- 240 :代理投下:2009/05/20(水) 23:21:16 ID:yHiRXmWm
- 【キョウスケ・ナンブ 搭乗機体:ゲシュペンストMkV(スーパーロボット大戦 OG2)
パイロット状況:ノイ・レジセイアの欠片が憑依、アインスト化 。DG細胞感染
機体状況:アインスト化。ハイパーハンマー所持。機体が初期の約1,5倍(=35m前後) EN100%
現在位置:D-3
第一行動方針:すべての存在を撃ち貫く
第二行動方針:――――――――――――――――――――カミーユ、俺を……。
最終行動方針:???
備考1:機体・パイロットともにアインスト化。
備考2:ゲシュペンストMkVの基本武装はアルトアイゼン・リーゼとほぼ同一。
ただしアインスト化および巨大化したため全般的にスペックアップ・強力な自己再生能力が付与。
ビルトファルケンがベースのため飛行可能(TBSの使用は不可)。
実弾装備はアインストの生体部品で生成可能(ENを消費)。
備考3:戦闘などが行なわれた場合、さらに巨大化する可能性があります(どこまで巨大化するか不明)。
直接機体とつながってない武器(ハイパーハンマーなど手持ち武器)は巨大化しません。
胸部中央に赤い宝玉が出現】
◆ ■ ◆
「この感覚は……!?」
震えのため手からこぼれおちた携帯端末が、地面にぶつかり音を立てた。
アムロは、この会場に来てこれほど大きな何かを感覚したことはなかった。
それほど、大きな何かが迫りつつある。
震えるほど冷たい異質な何か。
震えるほど巨大で異質な何か。
いやこれは、覚えがある。
この感覚は、あの最初の場所で感じたものだ。
そう、この名状しがたい人間ではありえない感覚は―――
「ノイ・レイジセイア……っ!」
虚空を睨み付け、手を震わせるアムロを奇妙に思ったのだろう。
平時のような柔らかい口ぶりでキラはアムロに声をかけた。
「あの、急にどうしたんですか? カミーユたちのことなら――」
「違うッ! 奴が来る! ノイ・レジセイアが今、カミーユ達の前にくるぞ!」
- 241 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:21:22 ID:nTd3FPlg
-
- 242 :代理投下:2009/05/20(水) 23:22:01 ID:yHiRXmWm
- アムロの鬼気迫る声に、若干キラはたじろぐ。
「そんな……本当なんですか!? なんで今になって主催者が!?」
「主催者、レジセイア……いや、微妙に混じり気がある。
これが、もしかしたらカミーユの言っていた……」
その時、Jアークに最大級のアラートが鳴り響く。
『信じられないエネルギーを感知した。
大きさは並みの機動兵器というのに、総量がJアークを超えている。
距離をこれだけあけても、正確に感知できるとは。
どうやってその質量にエネルギーを保存しているか不明』
トモロの声が、アムロのニュータイプ能力で感じ取った危険を客観的なデータと変える。
一斉にそのデータとアムロの音声が、Jアークに乗る全員に行きわたった。
空中にポップアップされたウィンドウから見える全員の顔は、緊張に張り詰めていた。
「急いで助けにいかないと、ブンドルさんとカミーユがあぶねぇ!」
甲児の言葉に、全員が頷き合う。
今は、一分でも一秒でも早くカミーユを助けに向かうべきだ。
アムロは解析を一時凍結し、キラもトモロに戦闘にCPUを割くよう依頼する。
格納庫とブリッジへ走りだす二人。
その途中、ロジャー、ソシエとも合流する。
既に格納庫にいる甲児とアイビスは、発進準備に回っているのだろう。
「トモロ。……もしも時もお願い」
キラの呟きが、アムロにも聞こえた。
Jアークとメガフュージョンし、キングジェイダーになれるのはせいぜい一回。
その一回を生き延びたとしても、体の酷使は限界を突破し、おそらく二度目の戦闘に耐えられないだろう。
それが、トモロの機構を調べてみたキラやカミーユ、それにブンドルとアムロの結論だった。
Jアークを超えるエネルギー量を持つ相手――そうなればキングジェイダーの力が必要になるかもしれない。
だが、それはキラの命と引き換えも同然の博打だ。
自分が代わってやれるならそれもやぶさかでないが、残念だがそういう問題ではない。
キラの、スーパーコーディネーターと呼ばれる特殊な強化された肉体の素質があってこそだ。
特殊な強化された肉体。
アムロの脳裏に浮かぶのは、数多の悲劇の中に消えていった強化人間たちだった。
たしかに、自分のいた時代においては、強化人間も随分と人間として安定していた。
だが、彼らはやはり戦火の中に放り込まれ、その大部分が散っていった。
キラに不安定なところはない。いや年のわりに大人びているくらいだ。
- 243 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:22:45 ID:LQEp+L6w
-
- 244 :代理投下:2009/05/20(水) 23:23:06 ID:yHiRXmWm
- だが、どうしてもキラのような存在を戦わせることに気後れを感じていた。
「キラ、君に聞いておきたい」
ロジャーとキラの一歩前を行くアムロが、後ろを向かず走りながらキラに声をかける。
「なんで……!?」
おそらく、「なんですか」と答えようとしたのだろう。
しかし、その言葉が最後まで紡がれる前に、くるりと後ろを振り向いたアムロの拳がキラの腹にめり込んでいた。
さらに首に手刀をアムロはキラに叩き込む。流れるようなアムロの動きによどみはない。
訓練とはいえ、暴徒の生身での鎮圧は軍人として叩きこまれている。
さしものコーディネーターも、信頼している相手に、
火急の用でうわついている時を狙われてはなす術なかったか。
「ちょっと、アムロ! どうしたっていうのよ!?」
ソシエの声に、いつもの黒服の襟を正しながらロジャーは答えた。
「言いたいことがあるなら、ブンドルに言ってやってくれ。
……軍警察にいたころからだが、やはりこういうのを見るなれないものだ」
ロジャーは今起こったことを悔やむように歯を食いしばっている。
手が震えていることにもアムロは気付く。彼は、こうなることを知っていてあえて傍観した。
それは彼の流儀に反することだったのだろう。
しかし、それを未来のため彼は呑み込んだ。
「どういうこと……?」
「ブンドルから頼まれた。
もし、キラが『第一の壁』を越えるために力を振るおうとするなら、必ず止めるように」
アムロの言葉を補填するようにロジャーは言った。
ユーゼス、キョウスケ、ノイ・レジセイアの三つの最大最悪の壁を超える必要がある。
しかし、最後のノイ・レジセイアにたどり着くためには、『首輪の解除』と『空間の突破』が必須。
そのために、武力とともに知力――それを調べ観測し蓄積し突破する能力――がなければいけない。
Jアークは、そのために絶対に沈んではならない。
ブンドル曰く、Jアークはノアの方舟。未来にたどり着くための最後の一つずつの希望を詰めた船なのだ。
キラはそれを了承しないだろう。
自分の命よりも他人の命を優先する若者は、おそらく突っ走ってしまうに違いない。
今真に必要なのは踏み止まり、希望を残す勇気だ。
だが、その感情を操作する知恵を若いキラに求めるのは酷だ。
だから、本当に少しでも多くの人を生き延びらせるため、キラ自身のため、気絶させてでも止めろと。
- 245 :代理投下:2009/05/20(水) 23:23:55 ID:yHiRXmWm
-
「ソシエ嬢、キラを頼む。そして、Jアークを後方で待機させてほしい」
「そんなのこと、聞けるはずがないわ!」
ロジャーは、けして押し付けずソシエと交渉する。
これが彼にとって譲れない性根の部分なのだろうかとアムロは思った。
拳をかざすことは最後の手段。言葉こそが真の力だとロジャーは思っている。
ブンドルに道理を説明されても、首を縦に振らなかったのだから本物だろう。
ロジャー・スミスが武力を振るうのは、真にネゴシエイションに値しない相手を止めるため。
交渉でどうにかできるというのなら、どれだけ希望が薄くてもそれを押し通す。
急ぐ状況でも、それは譲らず、粘り強く交渉するロジャー。
「……男って本当に勝手ね!」
「そう思ってもらっても構わない」
まだソシエは納得してないようだったが、一応の落とし所が見えたのか。
ロジャーはソシエに背を向け、アムロのそばに歩み寄る。
「走ろう。間に合わなくなる」
ロジャーの言葉にアムロも頷く。
たった二人になった廊下に、無言で足音だけが響いていた。
「医務室に、キラを運んではもらえるようだ。その後は、Jアークで後方射撃に行くと譲らなかった」
「そうか」
アムロもロジャーもお互いの顔を見ることなく、言葉だけを往復させる。
窓の外から、二機が飛び出していくのが見えた。
再び合体した無敵の巨人フォルテギガスとアイビスのブレン。
あえて通信は入れっぱなしにして、聞こえるようにしておいた。
おそらく、甲児からはあとあと怒られるかもしれないなと、思いながらも急ぐ。
だが、それもかまわない。若者の怒りを受け止め、道を拓くのは、俺たちの役目だ。
四角く切り取られた光が見えてくる。
格納庫は、もう目の前だ。
終わりへの序章の幕は閉じる。
これは葬列の始まりにすぎない。
蒼き孤狼の牙の前に、全員が並び激突するのはもう目の前。
アムロやブンドルの判断は正しかったのか。
未来はどこ繋がっていくのか。
それはまだ、見えてない。
- 246 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:24:31 ID:nTd3FPlg
-
- 247 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:24:32 ID:LQEp+L6w
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- 248 :代理投下:2009/05/20(水) 23:24:36 ID:yHiRXmWm
-
【共通の行動方針
1:24時にユーゼスと合流。現状敵対する意思はない
2:ガウルン・キョウスケの排除
3:統夜・テニア・アキトは説得を試みる。応じなければ排除
4:ユーゼスとの合流までに機体の修理、首輪の解析を行い力を蓄える】
【アムロ・レイ 搭乗機体:ガンダムF91( 機動戦士ガンダムF91)
パイロット状況:健康、疲労(中)
機体状態:ビームランチャー消失 背面装甲部にダメージ ビームサーベル一本破損
頭部バルカン砲・メガマシンキャノン残弾100% ビームライフル消失
現在位置:D-3
第一行動方針:機体の修復 首輪の解析
第二行動方針:D-4地区の空間観測
第三行動方針:協力者を集める
第四行動方針:マシンセルの確保
第五行動方針:基地の確保
最終行動方針:ゲームからの脱出
備考1:ボールペン(赤、黒)を上着の胸ポケットに挿している
備考2:ガウルン、ユーゼス、テニアを危険人物として認識
備考3:首輪(エイジ)を一個所持
備考4:空間の綻びを認識】
備考5:ゴッドフィンガーを習得しました。
残存エネルギーのほぼすべてを発動すると使用します。
また、冷却などの必要があるため、長時間維持は不可能です。
発動、維持には気力(精神力)や集中力を必要とし、大幅に疲労します。
ほぼ完全な質量をもった分身の精製、F-91を覆うバリアフィールドの精製、
および四肢に収束させての攻撃への転嫁が可能です(これが俗にいうゴッドフィンガー)。
【カミーユ・ビダン 搭乗機体: サイバスター
パイロット状況:強い怒り、悲しみ。ニュータイプ能力拡大中。疲労(小)
機体状況:オクスタン・ライフル所持 EN100%
現在位置:D-3
第一行動方針:合流
第二行動方針:ユーゼス、アキト、キョウスケを「撃ち貫く」
第三行動方針:遭遇すればテニアを討つ(マシンセルを確保)
最終行動方針:アインストをすべて消滅させる
備考1:キョウスケから主催者の情報を得、また彼がアインスト化したことを認識
備考2:NT能力は原作終盤のように増大し続けている状態
備考3:オクスタン・ライフルは本来はビルトファルケンの兵装だが、該当機が消滅したので以後の所有権はその所持機に移行。補給も可能】
【アイビス・ダグラス 搭乗機体:ネリー・ブレン(ブレンパワード)
パイロット状況:精神は持ち成した模様、手の甲に引掻き傷(たいしたことはない)
機体状況:ソードエクステンション装備。ブレンバー損壊。 EN100% 無数の微細な傷、装甲を損耗
現在位置:D-3
第一行動方針:使える部品を集めて機体を修理する
第二行動方針:協力者を集める
最終行動方針:精一杯生き抜く。自分も、他のみんなのように力になりたい。
備考:長距離のバイタルジャンプは機体のEN残量が十分(全体量の約半分以上)な時しか使用できず、最高でも隣のエリアまでしか飛べません】
- 249 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:25:14 ID:LQEp+L6w
-
- 250 :代理投下:2009/05/20(水) 23:25:30 ID:yHiRXmWm
-
【兜甲児 搭乗機体:フォルテギガス (スーパーロボット大戦D)
パイロット状態:健康
機体状態:頭部消失、全身にガタがきているが戦闘は可能
現在位置:D-3
第一行動方針:カミーユとブンドルを助ける
第二行動方針:誤解は氷解したため、Jアークに協力する
第三行動方針:ゲームを止めるために仲間を集める
最終行動方針:アインストたちを倒す 】
【ロジャー・スミス 搭乗機体:騎士凰牙(GEAR戦士電童)
パイロット状態:肋骨数か所骨折、全身に打撲多数
機体状態:右の角喪失、 側面モニターにヒビ、EN100%
現在位置:D-3
第一行動方針:殺し合いを止める。機体の修復 首輪の解析
第二行動方針:首輪解除に対して動き始める
第三行動方針:ノイ・レジセイアの情報を集める
最終行動方針:依頼の遂行(ネゴシエイトに値しない相手は拳で解決、でも出来る限りは平和的に交渉)
備考1:ワイヤーフック内臓の腕時計型通信機所持
備考2:ギアコマンダー(黒)と(青)を所持
備考3:凰牙は通常の補給ポイントではEN回復不可能。EN回復はヴァルハラのハイパーデンドーデンチでのみ可能
備考4:ハイパーデンドー電池4本(補給2回分)携帯
備考5:バイパーウィップと契約しました】
【シャギア・フロスト 搭乗機体:なし?
パイロット状態:健康
機体状態:なし?
現在位置:D-3
第一行動方針:??? (とりあえずキラたちについて行くつもりのようだが、内心何を考えているか不明)
第二行動方針:ガウルン、テニアの殺害
第三行動方針:首輪の解析を試みる
第四行動方針:比瑪と甲児・ガロードを利用し、使える人材を集める
第五行動方針:意に沿わぬ人間は排除
最終行動方針:???
備考1:首輪を所持】
- 251 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:26:02 ID:nTd3FPlg
-
- 252 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:26:07 ID:LQEp+L6w
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- 253 :代理投下:2009/05/20(水) 23:26:10 ID:yHiRXmWm
-
【ソシエ・ハイム 搭乗機体:なし
パイロット状況:右足を骨折
機体状態:なし
現在位置:D-3
第一行動方針:殺し合いを止める。バサラ・キラの看病
第二行動方針:出来るだけ多くの人を次の放送までにE-3に集める
第四行動方針:この機械人形を修理したい
最終行動方針:主催者を倒す
備考1:右足は応急手当済み
備考2:ギアコマンダー(白)を所持 ガトリングボアと契約しました
備考3:ハイパーデンドー電池4本(補給2回分) 】
【キラ・ヤマト 搭乗機体:Jアーク(勇者王ガオガイガー)
パイロット状態:健康、疲労(中) 全身に打撲 気絶
機体状態:ジェイダーへの変形は可能? 各部に損傷多数、EN・弾薬共に100%
現在位置:D-3
第一行動方針:殺し合いを止める
第二行動方針:機体の修復 首輪の解析
第三行動方針:マシンセルの確保
第四行動方針:生存者たちを集め、基地へ攻め入る
最終行動方針:ノイ=レジセイアの撃破、そして脱出
備考1:Jアークは補給ポイントでの補給不可、毎時当たり若干回復
備考2:D-4の空間観測を実行中。またその為一時的に現在地を固定
備考3:ユーゼスが解析した首輪のデータを所持(ただし改竄され不完全なため、単体では役に立たない)】
【熱気バサラ 搭乗機体:ラーゼフォン(ラーゼフォン)
パイロット状況:DG細胞感染。喉の神経圧迫は完治。気絶
機体状態:右腰から首の付け根にかけて欠落 胴体ほぼ全面の装甲損傷 EN残量20%
現在位置:D-3
第一行動方針:???
最終行動方針:自分の歌で殺し合いをやめさせる
備考1:真理の目が開いています】
【二日目20:00】
- 254 :moving go on代理投下:2009/05/20(水) 23:27:56 ID:yHiRXmWm
- 緊張だけが大空を支配する。
アクシズ落としの三十年後に生まれたニュータイプ専用マシン、F-91。
アルクトス王家に代々受け継がれ残されていた黒い守護神、騎士GEAR凰牙。
無限心臓レース・アルカーナを内蔵し、限界を知らぬ力を巨躯に秘めるフォルテギガス。
ダブル・リバイバルを経て成長したオーガニック・マシン、ネリーブレン。
ここまで生き残ったことは伊達でも酔狂でもなく、一騎当千とまでいかずとも強力な武力をもつ者である証明。
その四人が共闘するという形をとっているのに、そのパイロットたちの誰からも黒い闇がぬぐわれることはない。
それもそうだろう。
今から向かう先にあるのは、この殺し合いの諸悪の根源。
ノイ・レジセイアそのものなのだから。
「シャギアさん、大丈夫なのか?」
「ああ、心配をかけたようだ。今は、問題ない」
フォルテギガスのメインパイロットシート――ガナドゥールのコクピット――で、
シャギアは、ともにフォルテギガスに乗る甲児に返事を返す。
「無理しなくたっていいんだぜ?
俺だってこう見えても元の世界じゃ知る人がいないくらいのロボット乗りだったんだ」
大仰なガッツポーズを取る甲児。
そうやって自分を励ましてくれているのだろうか。
嬉しくも思うが、心苦しくも思う。
今シャギアが戦場に立つ理由は極めて個人的な理由だ。
同じ敵を撃破するためといった、信頼や友愛からほど遠い感情で動いている。
先に向かい敵に接触した少年も、横にならぶ男もニュータイプらしい。
ならば、ニュータイプに何ができるかを見届けてやろう。
どうせ、何もできないに決まっている。
今も仲間を見捨て、こちらに合流しようとしているらしい。
元の世界で、アベル・バウアーの戦いを傍観した時に近い、冷たい感覚。
ここに来る前はほぼ常にそうしてきたはずだが、それが随分と遠く感じるのは感傷なのか。
フォルテギガスのスペックを再度認識する。
たしかに、最大の長所である頑強さはある程度減ってしまっているが、かなりの高性能機であることに違いはない。
そうそう簡単に落ちるものではない。合体した状態のこの機は、ガドル・ヴァイクランに匹敵する。
ガドル・ヴァイクラン。その言葉でオルバを思い出し、小さく頭を振った。
もし、今フォルテギガスに乗るのが甲児ではなくオルバならば。
比べること自体、愚かしいと分かっていても、それを振り切ることができない。
もう、シャギアの精神感応(テレパス)はどこにも通じることはないのだ。
片方を失い、断線したまま二度と使われない。
もはや、カテゴリーFとしての能力もない。まさしく無能力者だ。
「あれは……カミーユ!?」
ニュータイプの男の声で、シャギアは意識をメインカメラに戻した。
そこに映るのは、鋭角的なデザインの白い機体、サイバスターだった。
以前はブンドルが乗っていたが、今はニュータイプが乗っているらしい。
自分たちの前まで来て、サイバスターは停止する。
無言のままのその様子だと、大方ブンドルは死んだのだろう。
切り捨てたことをごまかしでもしたいのか、とコクピットの中一人軽蔑の視線を投げる。
- 255 :moving go on代理投下:2009/05/20(水) 23:28:52 ID:yHiRXmWm
-
「……ブンドルは?」
腫物を触るようなロジャー・スミスの問いかけに、カミーユと呼ばれたニュータイプは答えた。
「また俺は……ベガさんと同じことを……っ!」
つっかえつっかえな台詞。
その様子に心が冷えていくのをシャギアは感じる。
相手がニュータイプというだけでここまで冷淡になれることを思い出す。
少しずつ余分なものが落ち、正しく『シャギア・フロスト』が帰ってくることを感じた。
そうだ、これが私なのだ。
自分の存在を再認識し、目的を再認識し、
流れる憤怒のマグマは少しずつ冷え、何よりも硬い石となる。
甲児やロジャーが何かカミーユをなだめるようなことを言っていたが、シャギアは聞いてもいなかった。
ニュータイプの戯言には一切興味がない。気にする必要もない。
ただ、ニュータイプという存在がちっぽけなものであるという事実だけあれば十分だ。
「来たようだ」
シャギアは、レーダーに映った影を全員に報告する。
一斉に全員の体がこわばったのが、シャギアにはわずかだが見えた。
超・超高度から何かが来る。
夜空を照らすスラスターの光を背に、蒼い孤狼が夜を切り裂き、大地へ落下する。
熟れ過ぎた果実が大地に落ち、炸裂するのと同じように、熟成された悪意が大地へ降臨する。
ニュータイプ能力などないシャギアでも、生物の本能として全身が泡立つような恐怖を感じた。
遠雷の如き音と共に、足もとにあるビルを砕き抜きそれは現れた。
音速をはるかに超過する落下速度により生まれた衝撃波が周囲のビルすら積み木の城のように吹き飛んで行く。
コロッセオのように丸く、そして蟻地獄のように大きくすり鉢型に陥没した中心に、それはいた。
「フ………フハハハハハッッハハハハハハハハッ、ハハハハハハハハハハハッッッ!!」
世界の全てをあざけ笑うが如き圧倒的な声量の嘲笑が、離れたビルの壁面を打ち反響する。
40m近い、半大型機並みのサイズ。
常軌を逸しているとしか思えないほど肥大化しバランスを欠いた右腕。
銃口という花を無理に纏めて乗せたような左腕。
両肩にあるのは破壊力だけを追求しそれ以外の全てを投げ捨てた破壊の鉄球詰め合わせ。
天も突かんと伸びた額の角。
そして、胸の中心で輝く深紅の宝球。
- 256 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:29:08 ID:nTd3FPlg
-
- 257 :moving go on代理投下:2009/05/20(水) 23:30:00 ID:yHiRXmWm
-
それは、人に在らざる者の駆る異形の魔獣。狂獣。悪竜。それら全て。
――――アインストアイゼン・ナハト・リーゼ !!
相手の気配に、呑まれそうになるのを、必死にシャギアは押さえる。
今必要なのは怒りだけだ。細部は違う。だが、オルバが最期に命と引き換えに送った念は忘れない。
その姿に映っていたのは、間違いなく目の前の存在。
シャギアは、覚えている。あのオルバがこと切れる寸前に送った言葉を。
―――助けて、兄さん
そう、助けてとオルバは最期に思ったのだ。
自分が、テニアを潰しておくため二分すると言ったせいで。
助けることも死に目を見ることもできず、オルバは死んだのだ。
自分の、せいで。
ならば、兄としてできることは奴を殺すことだけだ。
それをせめてもの手向けとしよう。
「選別する……正解に最も近い………欠片……人間……」
先ほどまでの狂った笑いと打って変わって、
何か抽象的な言葉を呟くキョウスケ――の姿をしたノイ・レジセイア。
「これもまた……近い……しかし……違う……」
その手に握られているモノを前に突き出す。
それが何か拡大し、認識した瞬間、シャギアも流石に息をのむ。
蒼い孤狼がその手に握っていたものは、一見すると何か鉄屑のようにも見える。
しかし、違う。格納庫で一度見ただけなので細部まで分からないが、あの可変機だ。
見る影もない姿に変わり果てた姿。
下半身を失い、両腕をなくしたそれの頭を、壊れた人形の頭でも掴むように無造作に握っていた。
蒼い孤狼が手を放す。重力に従い地に伏す可変機。
もう、ぴくりともしない壊れ切ったそれを、蒼い孤狼は―――
- 258 :moving go on代理投下:2009/05/20(水) 23:31:09 ID:yHiRXmWm
-
「故に……破壊」
踏み躙った。
砕け散る可変機。しかしそれでもなお執拗に踏み付け、細かく砕く。
そして、また思い出したように狂った調子で笑い続ける男。
「ハハハハハ……脆い……あの紛い物の人間と同じで……脆い。紛い物……処分」
シャギアは、全神経を目の前の蒼い孤狼に集中していたからこそ、気付けた。
『紛い物、処分』と言った時、確かに僅かだが自分を見たことを。
なら、『あの』紛い物の人間とは誰か。誰の事を指しているのか。
理解した瞬間、怒りが沸騰した。
そうか、お前も我々を認めないのか。
なら、我らの世界にお前は必要ない。
元より、逃がすつもりもない。
「中ぅぅぅぅぅ尉ィィィィィィ!!」
ニュータイプが、叫ぶまま蒼い孤狼に突撃する。
その様子では、周りなどまるで見えていないのだろう。
「まずい! 全員カミーユを援護しろ!」
もう一人のニュータイプの指示が飛ぶ。
日頃なら誰が従うものかと思ったかもしれないが、今一時は優先するべきことがある。
目の前の怪物を倒すためなら、力を合わせるしかない。
弟、オルバのため……今だけは屈辱を飲む!
「シャギアさん!」
「わかっている!」
フォルテギガスのフェイスオープンシステムが起動。
全身の排熱システムから蒸気が噴き出した。
並みの機動兵器のモノとは比べ物にならないほどの超大出力のビーム砲が腹部から打ち出される。
F-91は脇下からせり出したヴェスバーを、ブレンパワードはソードエクステンションを。
凰牙は、サイバスターの後を追って蒼い孤狼に迫る。
「選別……選定……破壊……!」
蒼い孤狼が、一気に飛び上がる。
降り注ぐ弾幕から逃げるのではなく、その中に飛び込む無謀にしか思えない行動。
しかし、蒼い孤狼にぶつかった瞬間ビームは爆ぜ、拡散していく。
対ビーム用のコーティングをしていることを気付き、シャギアは唸る。
飛び上がる勢いのまま、サイバスターと蒼い孤狼が激突する。
無敵巨人であるフォルテギガスを上回るほど肥大化した右腕の杭打ち機が、サイバスターに繰り出された。
サイバスターも、ディスカッターで迎撃する。
- 259 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:31:22 ID:nTd3FPlg
-
- 260 :moving go on代理投下:2009/05/20(水) 23:32:00 ID:yHiRXmWm
-
剣戟の閃光が、夜空に散った。
虚空で停止する両者。杭打ち機は、身を逸らしたサイバスターの動きのため空を切っている。
対して、サイバスターの剣は性格に巨大な片口と首の間に切り込まれていた。
が、その剣はまったく食い込んでいない。
信じられないほど強固な装甲が、比較的もろい部分だというのに攻撃をはじき返している。
続いて、凰牙の回転するタービンアームが、蒼い孤狼の顔に叩きつけられた。
しかし、蒼い孤狼から漏れる笑いは止まらない。獲物を前にした獣の口のように、両肩が開く。
サイバスターと凰牙が身をかげした次の瞬間、大量のベアリング弾が空間にまき散らされた。
「甲児!」
「わかってらあ!」
距離をつめて打撃攻撃を繰り出さねばあの強固な対ビーム防壁を突破できない。
甲児も同じ気持ちだったのだろう。フォルテギガスを突貫させると同時、フィガを射出してくれた。
掴んだフィガを、ビームハンマーへ。
棘のついた巨大な輝く球体が、ビームワイヤーで誘導させられ蒼い孤狼へ向けられる。
蒼い孤狼が、自分の背面にあるウェポンラックにおさめられた武器を引き抜く。
「な……!?」
そこにあるのは、ビームハンマーと同じ形をしたに鈍色をした鉄球だった。
違いは、明確な実体を持つことくらいで、外見はほぼ同一。
大ぶりな動きから繰り出されるガンダムハンマーが、こちらが放ったビームハンマーに叩き落とされる。
エネルギーが質量とぶつかり合ったことにより、ジュウと音を立てるハンマー。
お互いが攻撃を引き寄せるのまで同時。
一旦フォルテギガスが引くのに合わせて、横から巨大な焔を纏った大鳥が突撃していく。
業火の中に僅かに見えるのはサイバスター。自分の全長の三倍以上の炎を纏い、蒼い孤狼に進む。
対して、蒼い孤狼の行動はシンプルなものだった。蟻地獄の中心で、腰を落とし正面から腕を広げる。
よもや、とシャギアもこれから考えることを予想し、ありないと首を振る。
そのありえないことを蒼い孤狼は現実に変える。
激突するアカシックバスター。それを――正面から受け止めた。
後方へ一気に吹き飛ばされるかに見えたが、全開に解放されたスラスターがみるみる内に不死鳥の勢いをそぐ。
完全に停止したサイバードをそのまま鯖降りにするべく、締め付ける蒼い孤狼。
- 261 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:33:20 ID:LQEp+L6w
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- 262 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:35:55 ID:nTd3FPlg
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- 263 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:36:42 ID:LQEp+L6w
-
そこへF-91がヴェスバーを速射するが、蒼い孤狼は気にも介さない。
騎士凰牙のハイキックが、蒼い孤狼の右肩へ。
同時に、サイズを利用し懐に入ったブレンも指先にソードエクステンションを叩きつける。
その僅かな緩みの隙に変形して強引に離脱するサイバスター。
三機が一斉に離れると同時、大上段からシャギアは巨大な剣に変えたフィガで蒼い孤狼を両断しようと試みる。
生半可な攻撃では、まったく意味がない。ならば、最強最大の攻撃ならば――!
ライアットバスターが、すり鉢を左右に割る。砂煙をあげながらも、落ちていく剣が蒼い孤狼とぶつかった。
蒼い孤狼の角が輝き、一瞬受け止めた。
だが、それは本当に一瞬。
そのまま角をへし折ると、その大剣は、蒼い孤狼に直撃する。
「無限の心臓……! 異界の熱量……これも……!」
今までの嘲笑と平坦な声とは違う。僅かに興奮の混じった声だった。
蒼い孤狼の張るビームコーティングが発生した瞬間、剣と蒼い孤狼に少しだが空間ができた。
即座に剣でまた埋められるはずの僅かな空間と、それによって生まれる時間。
しかし、その時間を持って蒼い孤狼は血道をこじ開ける。
蒼い孤狼の肩が開く。
その中に見えるのは、無数のベアリング弾。
まずい、と引かせようとするが判断が遅れた。このままでは直撃する。
そう思い、せめて防御しようと腕を出そうとしたときだ。
出力全開でフォルテギガスが真上にすっ飛んだ。
「甲児か!?」
「おう! もしもの時は任せて、シャギアさんは攻め続けてくれ!」
攻め続けることしか考えてなかった自分と違い、甲児は失敗することを考えて自分のフォローに回ってくれていたようだ。
お調子者だと思っていたが、これはこれでもしかしたら気が利く性格かもしれない。
出力にものを言わせ、さらにベアリング弾を射出した勢いのまま蒼い孤狼が後ろに跳び退るのが見えた。
コンクリートを砕き、砂煙をあげながら獣のように四肢を大地につけ減速する。
再び集合し、ビルの上に立つ五機を、蒼い孤狼の赤い瞳が見つめていた。
- 264 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:37:24 ID:LQEp+L6w
-
「あれが、主催者……!?」
ロジャーの言葉に、ニュータイプの男が答えた。
「間違いない、ざらつきはあるがノイ・レジセイアそのものだ……!」
「中尉は……かつてアインストと戦って、勝ったと言っていました。
一番接点があり、ノイ・レジセイアにとって『確実』な体だったんでしょう……」
だから、こんなこと許されてたまるものかよ、とニュータイプ――カミーユの震えた声。
そうだ、許されてはならない。許せるはずもない。
操られていようがなんであろうが、あの男が弟を殺したことは紛いもない事実。
ならば、弟と同じ運命を奴にも突きつけなければならない。
「だけどよ、アムロさん! 倒すったってどうするんだよ!?」
甲児の言葉ももっともだ。
並大抵の攻撃では、とてもではないがあれには通用しない。
それこそ、通用するのは――
「空間突破のための、切り札。それの直撃、か」
つまり、
F-91のゴッドフィンガー。
凰牙のファイナルアタック。
サイバスターのコスモノヴァ。
フォルテギガスのライアットバスター。
この四つのうち、一つを完全完璧な形で直撃させなければ到底勝ち目はない。
「だが、どうやって直撃させる!?」
「それは……」
それ以上の言葉は許されない。
蒼い孤狼に、こちらを休ませるつもりはないのだろう。
その左手につけられた5連チェーンガンがマシンガン並みの勢いで吐き出された。
飛びのいたビルが、あっという間に穴だらけになり崩れていく。
シャギアだけでない。
誰もが行き詰まりを感じつつあった。
最強の必殺技を直撃させる。
言うのは簡単だし、コミックや、アニメ……それこそゲキガンガーではよく見る展開だ。
しかし、あの凶暴すぎる孤狼の首を縛り付ける鎖はなく、足を止める罠もない。
その状況で、目標を達成するのがいかに困難なことか。
数の利があり、疲労が先ほどまでの休憩で抜けているためしばらく持つが、いったいどこまで持つか。
戦闘とは、極度の緊張を強いるもので、そう長くはない。
決めなければ、じりじりと押し切られる。
だが、状況を打開する方法は見えてこない。
◆ ■ ◆
- 265 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:38:08 ID:LQEp+L6w
-
完全を砕けば、破片は無数の不完全となる。
無限を果てしなく切り分ければ、それは有限となる。
完全、無限からは不完全、有限は生まれえる。
これは真実。
無限を複製し重ねれば無限となる。
永遠はどこまで続こうと永遠は変わらない。
完全、無限から完全、無限は生まれえる。
これも真実。
混沌の中から完全なる生命は生まれる。
混沌たる我から完全なる生命は生まれる。
それは真実か?
―――否
数多の宇宙――その中における我。
その結果は全て失敗。
成功は無。
- 266 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:38:34 ID:nTd3FPlg
-
- 267 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:38:53 ID:LQEp+L6w
-
―――何故、完全な生命になれなかった……
―――何故、完全な生命を生み出せなかった……
完全な生命を生み出すには、我自身が完全に至らねばならない。
我が完全な生命になるのに必要なものは何か。
数多くの世界で我を凌駕する力を振るう、人間。
我を超える――我より完全に近い?
『この世界』において我は人間を凌駕した。
その違いは――――
生命は―――
完全は―――
人間は―――
◆ ■ ◆
- 268 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:40:13 ID:nTd3FPlg
-
- 269 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:40:14 ID:LQEp+L6w
-
機体がビルの側面に叩きつけられるのをすんでのところでアムロは回避する。
スラスターを、オーバーヒートを起こさんばかりに放出し、どうにかF-91を破壊から遠ざける。
「これが……ノイ・レジセイアの力だというのか……!?」
圧倒的なほどの強さだった。
今、アムロ達は五機がかりでレジセイアに立ち向かっている。
だというのに、『戦っている』という実感すらなかった。
獣のような読めない動きと異常なまでの俊敏性。そして異常過ぎるスラスターの出力。
直撃を当てることはおろか、小技がかすることさえまれ。
だというのに、当たっても通じない。
しかも、再生機能までついている。
「ハハハ……それが……完全の欠片か……」
「言っている意味が分からないな!」
「分かる必要もない……」
蒼い孤狼のスラスターの横の姿勢安定用ウィングが展開。
鈍重に見える外見からは想像も出来ない程のスピードで疾走を始める。
先ほどシャギアがへし折ったはずの角が再生し、赤熱化だけに留まらず電光を纏い振り上げられる。
目の前で戦っていたフォルテギガスが、その目標だった。
回避が間に合わない。さりとて、援護も間に合わない。
フォルテギガスが腰をおろし、その場で姿勢制御用のフィンを展開した。
そのまま、角を避けて体当たりを仕掛けるつもりだとアムロには分かった。
大型機同士の大質量が衝突し、衝撃波で空気を震わせる。
だが、こう着の後吹き飛んだのはフォルテギガス。
全身から脱落した装甲を周囲にふりまきながら、車か何かにひかれた人のように吹き飛び大地を転がる。
身長は、フォルテギガスは蒼い孤狼の1,5倍もあるにも関わらずだ。
だというのに、フォルテギガスが痩躯の人間、蒼い孤狼は大型トラック。
それだけの差があった。
「脆い……無限ではない……!」
蒼い孤狼の背後に、バイタル・グロウブの僅かな歪みによる光が洩れた。
アムロもそれに合わせて、ヴェスバーを牽制に発射する。
重力を感じさせない軽やかな動きで何度となくアイビスのブレンパワードが切りつける。
着弾するヴェスバーをすり抜けるように何度も何度も。
蒼い孤狼は、その中笑っていた。
蒼い孤狼の左腕が、消える――いや、こちらの認識を超える速度で振るわれる。
バイタルジャンプによる回避は間に合わない。アイビスのブレンが一直線にビルへと激突した。
「ブレンパワード……似ているが……我ほど完全ではない……」
- 270 :代理:2009/05/20(水) 23:41:02 ID:LQEp+L6w
- 蒼い孤狼には、寸分のダメージも感じられない。
小柄なブレンやガンダムのそよ風のような攻撃では、孤狼という大木を揺るがすことはできない。
蒼い孤狼が、吹き飛ばしたブレンをカメラ追った隙に、
ブレンとガンダムより大きなサイバスターと凰牙が格闘を仕掛ける。
「中尉! あなたはもういないんですかッ!?」
カミーユの言葉をあざ笑う蒼い孤狼。
二人に追撃する形でアムロも操縦桿を前に倒しF-91を動かした。
ギンガナムが遺したビームソードを引き抜く。
「立って、ブレン!」――ブレンも、アイビスの言葉を受けて傷ついた体を動かし、飛び込んでいく。
ニュータイプのアムロには、ブレンの痛みが分かった。
フォルテギガスも、フィガをツインブレード状に変えて切りかかった。
五機一斉の集中格闘攻撃。
「とどけぇぇぇぇ!!」
アイビスの声が、鼓膜を打つ。
回転し唸りを上げる凰牙の拳が蒼い孤狼の顔を。
フォルテギガスのストームブレードが蒼い孤狼の左肩を。
サイバスターのディスカッターが蒼い孤狼の右腕を。
ブレンのソードエクステンションが蒼い孤狼の背中を。
そして、F-91のビームソードが蒼い孤狼の脚部を。
「ハハハ……ハハハハハ……! それが……銀河を変える……力……!? 」
音無き鋼鉄の咆哮。
全身を抑えつけられているのを無視し、体を振るう。
振り回される腕。開口した肩。両腕にある無骨なライフルにハンマー。
全身の火器がまとめて火を噴いた。
花火がさく裂したように昼間の明るさに変わる。
「ぐああ……っ!」
千差万別、古今東西の別種の機体が、一様に吹き飛ばされる。
まずい。最初は疲れがなくかわせていたが、全員少しずつ動きが鈍り被弾が増えてきている。
もし誰かが撃墜されれば、即座に詰みだ。
五 対 一 だからこそできている拮抗状態は、あっさりと崩れ去るだろう。
- 271 :代理:2009/05/20(水) 23:41:48 ID:LQEp+L6w
- 「―――あれさえ決められれば……」
口から自然と漏れる呟き。
ギンガナムを倒したあれを決められれば、おそらく勝ち目も見える筈だ。
今は攻撃を気ままに受けてくれている。
だが、先ほどのシャギアのライアットバスターから分かるように、
おそらく危険な攻撃となれば回避しようとするだろう。
そうなれば、あの異常なスラスターなら緊急回避もたやすいはずだ。
フォルテギガスとサイバスターが何度も果敢に突っ込んでいく。
「弟を殺したことを……後悔するがいい!」
「やっちまえ、シャギアさん!」
「中尉……もう、あなたがいないというなら俺は躊躇しない!」
勝ち目が見えぬまま、突っ込んでいく三人。
アムロは、自分が一歩引いてしまっていることを自覚した。
あれほど我武者羅に突撃できない。冷静な戦略が、などと言いながら下がってしまう。
今、一番エネルギー消費や機体の新しい消耗が少ないのはアムロだろう。エネルギーは8割近く残っている。
ゴッドフィンガーは一撃限りの必殺技だ。気力、エネルギーともにほぼ限界まで消耗してしまう。
つまり、事実上戦線離脱は確実。
だからこそ、アムロは決め切れない。
もしも自分が外せばどうする? それこそ、敗北の決定的な一歩を作ってしまう。
敗北できない戦いなのだ。うかつなことはできようもない。
「飛んで、もっと、もっと――!」
何度もはじかれる二機への追撃を許すまいと、アイビスのブレンが距離を詰める。
その動きは、さながら戦闘機の妖精だ。高速機動と瞬間移動を組み合わせ、一定の距離を保ち蒼い孤狼を翻弄している。
シャアとともに初めて会った時の弱気さと、自信のなさが嘘のようだ。
アイビスも必死に、ひたむきに、ブレンと力を合わせ眼前にある最悪の現実と戦っている。
下手にもらえばそこで終わるというのに、そのことを恐れずに。
―――俺は、どうだ?
アイビスと似たり寄ったりの状況だというのに日和ってはいないか。
戦いに雑念を混じらせれば死ぬだけ。なのに、これはどういうことなのか。
「……届かない……足りない……」
- 272 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:41:53 ID:nTd3FPlg
-
- 273 :代理:2009/05/20(水) 23:42:44 ID:LQEp+L6w
-
ついに、アイビスが被弾する。
『く』の字に体を降り、吹き飛んで行くブレン。
しかし、それが大地に激突するより早く、凰牙が拾い上げた。
「ごめんなさい……!」
「気にすることはない。君はよくやっている」
凰牙が全体を見据え、腕から放つ竜巻でけん制しては動き回って別の機体のフォローをする。
黒ずくめの伊達男、ロジャー・スミス。交渉術で培った冷静さで、必死に戦っている。
「ロジャー、そちらはどうだ!?」
「まだ、ファイナルアタックを使用するだけのエネルギーは残しているつもりだ。だが……」
ロジャーも、アムロのゴッドフィンガーに似た攻撃としてファイナルアタックを持っている。
だからこそこういう立ち回りをしているのだろう。
だが、という言葉の後はアムロにも分かる。おそらく、同じ苦悩をロジャーも感じているのだろう。
その時、気付いた。ロジャーの腕が震えている。
そのことに、声を失ったアムロを見て、ロジャーは食いしばりながら答えた。
「恐怖は、この謂われのない不条理な感情は、生理反応でしかない。……理性で克服できるはずだ」
ロジャーもまた、蒼い孤狼が口を広げる領域に飛び込んでいく。
蒼い孤狼と凰牙が撃ち合うたびに、火花が散る。その中、何度倒れても起き上がりフォルテギガスが突撃していく。
サイバスターも、不死鳥へ姿を変えて突進する。
誰もが、戦っているのだ。
恐怖そのものと。恐怖を塗りつぶすほどの怒りの中。
恐怖を乗り越えた情熱で。
―――俺は、どうだ?
ただ、気配に呑まれていただけじゃないか?
ギンガナムと戦い黒歴史を知り、
ガロードを失ったことを突き付けられ、
シャギアに憎しみをぶつけられ、
目の前の大きな恐怖に呑まれていただけではないのか?
キラを戦いに遠ざけた時から何かずれていなかったか?
- 274 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:43:22 ID:nTd3FPlg
-
- 275 :代理:2009/05/20(水) 23:43:46 ID:LQEp+L6w
-
「情けない奴……!」
かつてシャアに言った言葉がそのまま自分に跳ね返る。
賢いフリ、賢明なフリをして下がって傍観する。若い時、自分が憤った大人の姿そのものではないか。
若者――未来が戦うならば、俺たちはそれを守るのが役目だろう。
だというのに、戦うことそのものを奪ってしまって何の意味がある。
これが年を取るということかと納得まではしたくはない。
だが、それでも。
何度でも立ち上がり勝利を目指す者たちの道を切り開く。
――それが、俺たちの役目だろう、シャア。
F-91が光輝に包まれる。
展開される三枚のフィン。金色の輝きが、全身を包み込んでいた。
ギンガナムを一方的に屠り去ったバイオコンピューターの最終形態――F-91・スーパーモード。
それが今、蒼い孤狼を前にして再び現出する。
このまま消耗を続けていては、勝ち目はないなんてことは分かっていた。
仮に勝っても、残り二つの壁を越えることなどできようか。
なら、どこかで勝負の流れを引き寄せる一手が必要になるのは当然なのだ。
それを躊躇していた自分をアムロは恥じる。
金色の矢となってアムロは突き進む。蒼い孤狼も危険を察知したのだろう。
目の前に相対していたフォルテギガスを無視し、F-91に向き合った。
その拳を、蒼い孤狼が受け止める。
「これか…… これが……」
蒼い装甲が砕け、中から爆ぜる。それとともに、大地に落ちて音を立てる無骨なライフル。
ついに、孤狼にダメージらしいダメージが通った。F-91がビームソードを引き抜き、叩きつけようとする。
だが、それより前に、蒼い孤狼の肩から無数のベアリング弾が飛び出した。
装甲解放、射出のタイムラグは先ほどまでと変わって、まったくない。
F-91のバリアフィールドとクレイモアがぶつかり合う。
- 276 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:44:27 ID:nTd3FPlg
-
- 277 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:46:48 ID:nTd3FPlg
-
- 278 :moving go on:2009/05/20(水) 23:49:29 ID:1eEPZeQc
- 「ぐっ……!」
その規格外の巨大なクレイモア。
最初バリアで逸らせたが、徐々に貫通しかねない勢いになっていく。
ベアリングの嵐で動くこともできない。このままでは、やられる。
だがそれも一人だけならば、だ。
F-91のバリアの陰に隠れるようにブレンが現れる。
次の瞬間、バイタルジャンプが再び行われクレイモアの中からF-91を救いだした。
ベアリングをばらまきながら方向転換をする蒼い孤狼。無差別に破壊が周囲にまき散らされる。
しかし、再び破壊がF-91を捕らえるよりも速く、蒼い孤狼の肩が爆ぜる。
離れた場所で倒れながらもオクスタンライフル・Wモードを構えるサイバスター。
その一発が、正確に肩の爆薬を打ち抜き、誘爆させた。
蒼い孤狼は爆発にのけぞる勢いを利用し、武器のハンマーを振り回す。
ハンマーの鎖が、別所から飛んできたハンマーのビームワイヤーにからめとられた。
バランスを崩しつつあった状況のため、踏ん張りがきかずガンダムハンマーはその手から引き抜かれる。
大地にがっしりと足を降ろし、ハンマーのワイヤーを引くフォルテギガス。
行ける、押し切れる!
ブレンから離れ、F-91は再び蒼い孤狼の支配する距離へ飛び込んでいく。
「完全に近い……生命の……欠片!」
「うおおおおおおおおおおおッッ!」
ビームソードにその力を収束させる。伸びるゴッドフィンガーソードが、空を割る。
蒼い孤狼もいまだ戦意は失せていない。大地で待つ気もなく、スラスターの加速で空へ走る。
裂帛の勢いで放たれる右手の杭打ち機。凰牙のタービンから放たれる竜巻が、蒼い孤狼をあおる。
大地に足を下ろしてのインファイトなら、この程度ではびくともしないだろう。
しかし、今蒼い孤狼がいるのは空。僅かではあるが風で蒼い孤狼の姿勢が崩れた。
杭打ち機は、バリアを容易に引き裂きはしたが、F-91の本体には届かない。
アムロの目の前にあるのは、がら空きになった蒼い孤狼の胸。
- 279 :moving go on:2009/05/20(水) 23:50:12 ID:1eEPZeQc
- (すまない……今は、そちらごと!)
心の中で、ノイ・レジセイアに乗っ取られた哀れな男に謝罪する。
そして、アムロは赤い球の下にある、コクピットブロックに深くゴットフィンガーソードを差し込んだ。
蒼い孤狼の、全身の間接から光が漏れる。
ゴッドフィンガーソードに、バチリと雷光が起こる。
「これは……!?」
次の瞬間、超高電流がアムロの体を打った。
◆ ■ ◆
シャギアは、複雑な目で空の光景を見ていた。
これが、ニュータイプか。
目の当たりにしたニュータイプの能力。
あれほどの脅威を、協力があったとはいえ、一息に跳ね返すだけの力。
到底、ただの人間では及び付かない戦闘力。
オルバの仇をこの手で打つことができないばかりか、結局はニュータイプ一人の独壇場。
見せつけられた力の差。ただの無能力者とニュータイプ。たったそれだけでこれだけ差があるのか。
ニュータイプは幻想だと、あのニュータイプは言った。傲慢だ。
自分自身が異能そのものの力を振るっていながら、幻想と嘯くのか。
ニュータイプは幻想ではないと否応なしに認識させられるシャギア。
この連中とはともにいられない。
ここはナデシコとは違う、自分の居場所などないのだ。
甲児も、よくオルバの代わりに自分を助けてくれた。
一人でフォルテギガスを動かしていては、おそらく撃墜されていただろう。
だから、甲児にまで自分のわがまま巻き込むわけにはいかない。
- 280 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:50:17 ID:nTd3FPlg
-
- 281 :moving go on:2009/05/20(水) 23:50:55 ID:1eEPZeQc
-
弟を失い、ニュータイプの力を見せつけられた。
自分は失敗を繰り返し、多くのものを失ってきた。
もういい。
シャギアの体を覆う、言いようのない疲労感が精神すら苛む。
少し、眠ろう。そう思い、重くなった瞼を閉じた。
だが、ゆるんだ心に、そっと差し込まれるように悪寒が走る。
はっと目を開く。
そして、空中で起こった出来事に、唇をわななかせた。
「ハハハ……人間……進化……欠片……成長…………!!」
膨れ上がっている。
あの蒼い孤狼が、空で大きくなる。
月が、蒼い孤狼によって覆い尽くされ、地を闇が覆う。
ニュータイプはビームソードを刺したまま動かない。
ズゥゥゥン……と大地を揺らす重低音。
腕が、肩が、消し飛ばしたはずの部分が、光に包まれ再生していく。
バチバチと金色の電光を纏い、再び大地に立ちあがる。
大きい。フォルテギガスが、見上げなければ全長すら見えない。
ユーゼスのマシン……いや、あれより一回り大きいのではないか。
上半身が立ち並ぶビルよりも高い場所にある。
成長が止まると同時、その全身を包んでいた光が消える。
それと同時に、F-91もまた静かに地に落ちた。身動き一つしない。
まるで、その命の全てを蒼い孤狼に吸い取られてしまったように。
空を見上げていた蒼い孤狼……いや魔王が、大地を睥睨する。
意思を持たぬはずの機械の目に見られただけだというのに、自分の内面奥底まで覗きこまれる感覚。
全身を覆う恐怖が、体を震わせる。止めようのないほど汗が流れる。
「う……おあああああああああ!!」
思考が、すべて吹き飛んだ。
シャギアらしくもない、咆哮。フォルテギガスが、蒼い魔王へ飛ぶ。
しかし、無敵の巨人も蒼い魔王の前ではあまりにも矮小だった。
- 282 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:50:59 ID:nTd3FPlg
-
- 283 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:51:07 ID:LQEp+L6w
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- 284 :moving go on:2009/05/20(水) 23:51:50 ID:1eEPZeQc
-
蒼い魔王の巨体が一瞬で目の前から消失した。
ブンドルとカミーユが不意をつかれた理由がここにあった。
バイタルジャンプは、バイタルグロウブに乗れればブレンでなくとも使用できる。
ブレンをこの場に呼び寄せた張本人であり、半機半生半魔のアインストアイゼンナハトなら不可能ではない。
今まで使わなかったのも、ハンデでしかない。
僅か数秒の出来事だった。
フォルテギガスの背後に現れた魔王の、腕の一振り弾き飛ばされ、F-91の横に叩きつけられる。
同じように突撃したサイバスターも同じだった。まとめてなぎ払われ、ビルにめり込む。
恐怖で動かない凰牙が、蹴り一撃で沈黙。
距離を取ろうとしたブレンの前に再び跳躍し、まるで羽虫をはたくように地面に叩きつけた。
武器など使ってない。
ただ、手足を振り回しただけ。
ただそれだけで―――全員が沈黙していた。
目の前のそれは、こう言った。
絶望と。
「ハハハハ…… 進化……完全に至る……人間は……!」
- 285 :moving go on:2009/05/20(水) 23:52:47 ID:1eEPZeQc
-
どこまでも高らかに笑う魔王。
先ほどまでは不快に感じていたそれが、今のシャギアには恐ろしくてたまらない。
フォルテギガスは先ほどの一撃でほぼ機動停止状態だ。
「な……なんだ、これは……」
シャギアには分からない。
自分の理解を超えた場所にあったニュータイプ。
そのさらに向こう、理解などほど遠い世界にある目の前の物質は何だ。
ニュータイプだのカテゴリーFだのと比べることすら馬鹿らしい、『人』の枠を超えてしまったこれはなんだ。
恐怖と畏怖、そして絶望以外の感情を持つことすら許されない。
自分が生きて培ってきた価値観すら根こそぎ吹き飛ばすほどの恐怖。
思考力すら根こそぎ奪う悪寒。
無理だ。何をどうしても、勝つことなどできない。
仮にオルバがここにいて、万全の状態のフォルテギガスあっても嬲り殺されるだけだろう。
死にたくない。彼は即座に逃げることを選択した。
フォルテギガスを立ち上がらせようとスイッチを押しまくる。
けれど、完全にダウンしたシステムは何の返答も返さない。
ゆっくり、ゆっくりと巨体がシャギアたちのほうへ歩いてくる。
酷く遅く見えるが、巨体故に想像以上に早く距離は詰まっていく。
なにか、なにか手はないのか。
無様な姿ながら、どうにか生きている有視界システムで周囲を見る。
あった。
フォルテギガスのすぐ横にあったのは、こと切れて動かないF-91。
F-91も機動停止しているかもしれないのだが、そこまで今のシャギアは頭が回らなかった。
コクピットの緊急解放のレバーを引き、強引にハッチを吹き飛ばす。
冷たい風がコクピットに流れ込んできた。
外に出て、転がり落ちるように地面へ。体を打ちつけ、酷く痛むが気にしている暇はない。
今も刻一刻と魔王は迫っている。
必死に、横倒しになったF-91に登ろうとする。
しかし当然ながら足場もなしに横倒しになったMSにそうそう上がれるものではない。
焦りとぬめる汗が余計に速度を遅くする。
- 286 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:52:57 ID:nTd3FPlg
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- 287 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:53:05 ID:LQEp+L6w
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- 288 :moving go on:2009/05/20(水) 23:53:31 ID:1eEPZeQc
- もう魔王は目の前だ。
間に合わない。
ここまでなのか。
絶望の瞳で全貌すら見えない魔王を見上げた。
だが、
「―――やいやい! この兜甲児さまが相手だぁぁっ!!」
その場に似つかわしくない、快活な青年の声が響いた。
フォルテギガスが、音を立てて二つに割れる。それは、分離のシークエンス。
そう――元々損傷の大きいガナドゥ―ルは直撃を受け機能を停止しても、
下半身を構成するストレーガはまだ動くことが出来たのだ。
と言っても、ストレーガもまた損傷は大きくボロボロであることには変わりない。
一撃受ければ、以前の蒼い孤狼の一撃でも容易に吹き飛ぶほどの損傷だ。
「やめろ……」
シャギアは、うわごとのように呟いた。
勝てるはずがない。即座に粉砕されるだけだ。
立ち向かうこと自体、間違っている。なのに。
「シャギアさん! 早く、そっちに乗ってくれ!」
ストレーガがF-91を指さす。
これは、F-91に乗って戦えと言っているのだろうか。
『戦う』――目の前のあれと?
そんなことは不可能だ。
魔王が、足を止めた。
空に浮かび上がり、自分の5分の1程度の黄色い機体を凝視している。
魔王は、どうやらストレーガを敵として認めたようだ。
「やめろ! 逃げろ甲児!」
シャギアはあらん限りの声で叫ぶ。
オルバは死んだ。ヒメは殺してしまった。
もうあの時間は帰ってこないと分かっていても、最後に残った甲児に死んでほしくなかった。
だが、甲児はなにも答えず魔王へ突っ込んでいく。
- 289 :moving go on代理投下:2009/05/20(水) 23:54:09 ID:yHiRXmWm
-
- 290 :moving go on:2009/05/20(水) 23:54:12 ID:1eEPZeQc
-
甲児は、その技量で器用に魔王の繰り出す腕の指先を抜けた。
そのまま背後に回ると、一時停止。魔王はゆっくりと後ろを向く。
甲児の目的は明らかだ。自分から、魔王を引きはがすつもりだ。
「シャギアさん、俺、人間の革新とか全然わからないけどさ」
呆然と空を見上げるシャギアに、オープンチャンネルで甲児の声が届く。
何を、いったい言っている。そんなスタズタの機体でどうして立ち向かっていけるんだ。
何故―――戦うことを考えられるのだ。
「けど、シャギアさんは立派な人だと思うぜ?
だってさ、ずっと俺たちを励ましてさ、引っ張って。
きっとシャギアさんがいなかったらここまで生き残れなかったと思うぜ」
やめろ。やめてくれ。
『ここまで生き残れなかった』だなんて言わないでくれ。
これからも甲児は生きるのだ。そんな不吉なことを言わないでくれ。
「俺さ……神にも悪魔にもなれるって言われたよ。
けどさ、俺は馬鹿だから神になんてなれないし、悪魔なんてまっぴらごめんだ。
俺は、人間で十分だし、人間でいいと思ってるよ」
魔王は、あいも変わらず遊んでいるだけだ。
だが、本気になればその加速を利用した体当たり一撃で面単位の攻撃で粉砕できるはずだ。
早く、逃げてくれ。私など気にすることはない。
「俺は、シャギアさんたちの世界のことがわからないから、ニュータイプなんてわからない。
けどさ、シャギアさんはシャギアさんなんだから、胸を張っていいと思うんだ」
分かった。そうしよう。だから、逃げてくれ!
その機体では無理だ! 逃げてくれ! 逃げてくれるなら、なんでも聞こう!
「ニュータイプも人間なら、シャギアさんだってニュータイプになれるかもしれないぜ?」
蒼い魔王の動きが変わる。
その影が、ゆらりと動いたかと思えば、一気に巨大化したスラスターが火を噴いた。
ストレーガは、急上昇でかわそうとする。ストレーガの場所を通り過ぎた瞬間、魔王が消えた。
魔王が、再び現れたのは、ストレーガの真横だった。移動の加速のまま、その巨体が動く。
- 291 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:54:41 ID:nTd3FPlg
-
- 292 :moving go on:2009/05/20(水) 23:54:57 ID:1eEPZeQc
-
「俺たちみんな、神でも悪魔でもない人間なんだ」
もはや、勝負にもならない。
ストレーガは一瞬で粉々になった。砕けた腕が、足が、胴が、頭が、大地に振り注ぐ。
疑いようはない。甲児は、死んだのだ。
「ハハハハハハハハハハハハハッハハハハハッハハハハ!!」
死者を冒涜する、嘲笑。
―――シャギアの中で、何かが爆ぜた。
一息で、ガンダムのコクピットがある胸部までかけ上げると、外部からの解放ハッチを引く。
シャギアを包むのはどうしようもないほどの怒りだった。怒りが突き抜け、逆に頭がクリアになる。
自分が肝心のところで感情的になることは、サテライトランチャーとサテライトキャノンの打ち合いの時から分かっていた。
しかし、これほどとは自分でも思わなかった。甲児を殺した魔王が許せなかった。
だがなにより情けなかった。自分が許せなかった。自分への怒りがあった。
もし、自分がF-91で援護していれば甲児は死ななかったかもしれない。
もちろん、まとめて潰されていた可能性は高い。だが、それでも何かが変わったのではないか。
だというのに、自分は何をしていた。手も動かさず、いもしない神に祈り、呆然としていただけだ。
なんという無様な姿だ。自分が、甲児が認めるシャギア・フロストとしてあってはならない行動だった。
- 293 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:55:10 ID:yHiRXmWm
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- 294 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:55:28 ID:nTd3FPlg
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- 295 :moving go on:2009/05/20(水) 23:55:40 ID:1eEPZeQc
-
開いたコクピットから臭うのは、強烈な異臭だった。
黒こげに近いニュータイプが、コクピットにうずくまっていた。
シャギアは知る由もないが、魔王は電撃のエネルギーを大量にため込んでいた。
そして、それとアムロのニュータイプ能力で作られたエネルギーが反応を起こした結果、魔王は肥大化したのだ。
だが、それは100%の変換能率ではない。
そのため――漏れた電気エネルギーが、生体エネルギーの発生源のアムロに集中した結果だ。
F-91はそれほどの消耗でもないのに、アムロだけはこのようになったのはそのためだ。
「どけ!」
シャギアは一切気を使うことなくアムロをどけると、シートに座り機体を操作する。
異臭は、開きっぱなしのハッチから逃げていく。しかし、機体が起動しない。
いくらキーを叩いても、立ち上がらないのだ。機体の損傷などは、それほどでもないにもかかわらず。
エネルギーも、アムロのアクションが途中で強制終了したため5割は残っている。
パネルをシャギアは叩く。自己診断で帰ってきた答えは『問題なし』。
この機体の特性を思い出し、シャギアの顔が歪む。
そう、F-91はニュータイプであることが最大最高の性能を発揮する条件だ。
まさか、自分がニュータイプでないから起動しないのではないか。
ここまで来てニュータイプでないことが足を引くのか。どこまでも自分を縛るのだと拳を震わせる。
「動け! 何故動かない! 私がニュータイプではないからか!」
ニュータイプに何の価値がある。そうではないというだけで戦う力すら奪うものに何の意味がある。
そんなものはありもしない。誰もが神にも悪魔にもなれる。
それは個々の潜在的な力であって、ニュータイプと言うくくりで決められるものでない!
足元の、黒い塊がもぞりと、動いた。
「違う……おそらく、電流で……一部にバグが……」
伸びた手が、端末を叩く。
すると、一部の不可解な文字列だったプログラムが修正された。
ウィンドウが点灯し、F-91に制御のための秩序だった言葉が表示される。
- 296 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:55:54 ID:yHiRXmWm
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- 297 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:56:14 ID:nTd3FPlg
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- 298 :moving go on:2009/05/20(水) 23:56:29 ID:1eEPZeQc
-
「生きていたのか」
礼を言うつもりもない。
シャギアはそちらも見ずに一言それだけ言った。
「ああ……」
向こうもそれだけ言うのが精いっぱいだったのか。
そのまま口をつぐんでいる。メインカメラに映るのは、魔王の姿。
甲児のおかげで、かなり離れた所に降りたようだ。だが、再びこちらに迫って来ている。
「ニュータイプは……ありもしない……」
突然の、言葉。
「その通りだ」
時間が惜しい。それだけ答えてシャギアは立ち上げを急ぐ。
足もとから、小さく笑ったような息使いが聞こえてきた。この状況で何がおかしいのか。
相手をする暇も惜しい。
「やっと……振り切ったようだな……
それでいいんだ……ニュータイプに振り回されるのは……終わりだ……」
振り切った、という言葉にさらにシャギアは顔をしかめた。
言われて気付いた。今の自分が、それほどニュータイプに執着が……ない。
キーをタッチする腕を、突然掴まれた。
「ただ、ニュータイプと呼ばれたものがあったことを忘れるな。
ニュータイプと呼ばれて消えていった俺たちのことを、忘れないだけでいい」
半死人とは思えないほど、力のこもった言葉。
言葉にしようのない迫力が、ニュータイプ――いや、アムロ・レイにはあった。
シャギアは、初めて正面からアムロを、ニュータイプという存在を見た。
その言葉には嘘偽りない、幻想ではない切実さがあった。
- 299 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:56:47 ID:yHiRXmWm
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- 300 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:57:05 ID:nTd3FPlg
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- 301 :moving go on再び代理投下:2009/05/20(水) 23:58:45 ID:yHiRXmWm
-
「死者は、消えることはない。お前が閉じていると思うから見えないだけだ。
思い込むな。引きずられず、繋がっていることを意識しろ。人の心を、その力を」
アムロの手が、通信機のスイッチを入れた周辺の機体全てにチャンネルを開いている。
「俺やシャアのようにはなるな。歴史を―――繰り返させるな!」
アムロの手が離れ、その体が後ろに倒れていく。
反射的にシャギアは手を伸ばしていた。アムロの手とシャギアの手ががっしりと組まれる。
だが、次の瞬間アムロの腕は炭化していたのか崩れ去った。
そのまま、やっと立ち上がったF-91の機体の外へ落ちていく。
シャギアの手の中には、黒い炭とその熱だけが残っていた。
その手にアムロが残ったものをシャギアは握る。
F-91のウィンドウに無機質な言葉が並ぶ。
SYSTEM_ALL GREEN
BIO COMPUTER_LIMIT CUT
PSYCO-FRAME_ON
警告メッセージ_ 許容限界を超える空間認識能力を確認。MEPEが起こっています_■
シャギアの中で爆ぜたもの、それは―――
◆ ■ ◆
- 302 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:59:01 ID:LQEp+L6w
-
- 303 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:59:05 ID:nTd3FPlg
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- 304 :それも名無しだ:2009/05/20(水) 23:59:45 ID:nTd3FPlg
-
- 305 :moving go on再び代理投下:2009/05/20(水) 23:59:48 ID:yHiRXmWm
-
―――「俺やシャアのようにはなるな。歴史を―――繰り返させるな!」
激しい衝撃で頭を打ち、まどろむ意識にアムロの言葉が飛び込む。
アムロさんも、クワトロ大尉も、ブンドルも、誰も彼も勝手だ。勝手に都合を押し付け、期待し、消えていく。
自分たちは何もしてないのに。自分たちだってまだやることがあるのに。それを全て投げて、逝く。
受ける側は、いい迷惑だ。追いつくため答える余裕もないこっちを少し見て、笑い、納得し、それですべて分かった気になる。
そのくせ、いつも出てくる最期に出てくる言葉は自分が失敗だった、そしてそれも悪くなかったと言うばかり。
本当に、そうなのか? 頭の中の冷たい部分が、そう聞いた。そうに決まってる。だって、そうでなければ―――
「俺やシャアのようにはなるな。歴史を―――繰り返させるな!」
「全て、私が『納得』しての行動であり、『妥協』ではないということだ」
「これが、若さか」
何だ。一体何なんだ。みんな揃って俺たちに、俺に何をさせたいんだ。
一度でも、俺の希望なんて聞いてくれたこともない。なのに、することばかり目の前に積み立てる。
そのくせ、自分だけ『妥協』して『納得』して。それが他人にも伝わるとどうして信じられる。
自分勝手で、臆病者で。大人の責任ばかりを押し付けるくせして、一人前の大人として扱おうともしないのに。
人に夢みたいな綺麗事ばかりを説きながら、自分は前に進もうともしない。どうしてだ。
三人ともまだやるべきことがあったはずだ。その責任を全うせず、どこへ行くんだ。卑怯じゃないか。
物分りがいい大人を演じて、人の話を聞いているふりをして。あなたたちは何をした。
本当に、そうなのか? 頭の中の冷たい部分が、また聞いてきた。何度聞いたって同じだ。
暗く重苦しい意識の中、緑に似た水泡が浮かんでは消えた。
なんだ? 温かい。これは、見覚えがある。
けど、思い出せない。思い出せるはずなのに。思い出さないといけないのに。
どうして、忘れてしまったんだ。
カミーユは、意識の中のそれを触れる。
壊さないように、なくしてしまわないように沿えるように、そっと。
- 306 :それも名無しだ:2009/05/21(木) 00:00:31 ID:LQEp+L6w
-
- 307 :moving go on再び代理投下:2009/05/21(木) 00:00:41 ID:yHiRXmWm
-
―――ああ。
「カミーユ、聞いてほしいの」
―――ああ、この声は。
「確かに、私は汚い大人のやり方に見えると思うわ」
―――何で、あの時俺は耳を傾けなかった。
「カミーユ、私はあなたに間違った大人になってほしいの。
ううん、私だけじゃない。あなたを大切に想っている人、全員が、よ」
―――その後も気が動転して。自分の身勝手さをあのジオン兵に向けてごまかして。
「私たちは何度も失敗して、何度も後悔した。それを、あなたに繰り返してほしくないの。
どうでもいい人なら、こんなことも言わない。けど、伝えようと思ったら伝え切れない。だから――――」
―――ベガさん………。
だから、なんですか。伝え切れないから、受け取るか受け取らないかは二の次で渡してくるんですか。
それが大切に想っているってことになるんですか。みんな、俺なんかを買被りすぎなんだ。
俺は、何回同じ失敗を繰り返した? そんな俺が、四人を受け継ぐなんてできるはずがない。
「受け継ぐなんて、硬く考えることはないわ」
「ただ、覚えていてくれればいい」
「失敗は失敗だ。消すことはできない。しかし、塗り替え乗り越えることはできる」
「それが美しくあれ、ということだ」
これは、夢だ。みんな死んでしまった。死人は、話しかけたりなんかしない。
俺が都合よく生み出した幻想が、みんなを踏みにじって好き勝手言わせてるだけだ。
けど、どうしようもなく温かい。
俺は……俺は守ってもらうばかりで、何もできなかったじゃないか。
俺の不手際で、みんな消えてしまった。俺のやったことのしわ寄せは、何も俺には来なかった。
こんな言葉をかけてもらう資格なんて、あるはずがない。
- 308 :moving go on再び代理投下:2009/05/21(木) 00:01:31 ID:yHiRXmWm
-
「打ち貫け!」
―――中尉まで……どうして、
「それいいのか、お前は。いつまでうずくまっているつもりだ」
どうして、そんな言葉をかけられるんだ。俺のせいなのに。
「お前に責がないとは言わない。だが、覚えておけ」
そうだ、俺のせいなんだ。責めるべきなんだ。
「俺たちはこの結果を後悔してなどいないし、託したことも間違っているとは思っていない」
カミーユの目に、空間を縦に裂く光が飛び込んでくる。
光から現れたのは、一本の槍。それは、直視できないほどの輝きにあふれていた。
手を伸ばすことすらはばかられるそれ。しかし、カミーユはそれを掴まんと手を伸ばす。
カミーユの腕だけではなかった。見覚えのある誰かの腕が、カミーユの腕が前に進むたびに増えていく。
ベガさん、クワトロ大尉、中尉、ブンドル、大尉。
俺は――――
◆ ■ ◆
- 309 :それも名無しだ:2009/05/21(木) 00:01:45 ID:nTd3FPlg
-
- 310 :それも名無しだ:2009/05/21(木) 00:02:12 ID:LQEp+L6w
-
- 311 :moving go on再び代理投下:2009/05/21(木) 00:02:23 ID:yHiRXmWm
-
度重なるMEPE現象の結果、その全身に付着した塗料がはがれていく。
金属箔の上に張られた塗装が、めくりあがり、消えていく。
放出しきらない熱が、機体の表面を焼く。
コクピットのある青い胸部や関節などの耐熱性が高い部分は黒に。
白かったはずのボディはくすんだ銀色になったのち、熱で赤へ。
フェイスオープンの排熱のため、額の金色のセンサーのみが塗料を残していた。
かつての騎士を思わせたF-91の姿はない。
淀んだ赤と黒を身につけ、歪む深紅の蜃気楼を纏う姿は悪魔〈ヴァサーゴ〉。
サイバスターの全身が聖なる光輝に包まれる。
染みわたるように周囲に広がる緑色が、周囲ごと聖別する。
これは、儀式。真実と共に戦う戦士を受け入れるための必要事項。
サイバスターの周囲を風が纏う。全身についた砂埃がはがれ、純白を取り戻す。
精霊光、バタイルウェイブ、人の心――その全て、本質は同じ。
大空を悠然と舞う四つの属性〈エレメンタル〉の一つを統べるもの。
右手に剣を携え、左に魔王を討ち貫くための槍を構え。
自ら光を放ち、闇の中導くは、真・魔装機神、サイバスター。
深紅と緑の光が空に浮かび上がる。
目の前には、蒼い魔王。恐れも怯えも気負いも捨てて、今、再び『戦い』が始まる。
- 312 :それも名無しだ:2009/05/21(木) 00:03:08 ID:LQEp+L6w
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- 313 :それも名無しだ:2009/05/21(木) 00:03:09 ID:nTd3FPlg
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- 314 :moving go on再び代理投下:2009/05/21(木) 00:03:11 ID:yHiRXmWm
-
◆ ■ ◆
個では――不完全。
群にて――完全。
我もまた、個であるかぎり不完全。
人間は、完全の欠片。
――『機』の肉体――白き魔星――不要
――『人』の肉体――完全の一部――必要。
観測し、確保し、理解した完全の欠片。
最も完全に近い欠片に我は宿る。
それに数多の欠片の力を加え、完全に至る。
個でありながらも完全に至る道。
我は、得た。
完全に近い覚醒者の力を。
- 315 :moving go on再び代理投下:2009/05/21(木) 00:03:51 ID:KviZBHQv
-
さらなる完全への跳躍。
―――理解不能。
―――理解不能。
―――何故だ?
これらは、完全に遠い欠片。
何故我は――完全から遠いはずの欠片に敗れようとしている?
◆ ■ ◆
(怯えているのだ……この私が怯えている!? この謂われのない感情を喚起するものは何だ!?
こ、これは生理反応でしかない。理性で克服できるはずだ! こんな……こんな不条理な感情!)
アムロに言ったはずの言葉をもう一度己に言い聞かせる。
それでも、悪寒は消えない。振り切れない恐怖が、苛み続ける。
「う、う、うわぁぁーーっ!!」
その叫びとともに、瓦礫の中ロジャーの意識は再び戻った。
目の前にあるのは、ビッグオー……ではなく凰牙のコクピット。
光はメインカメラからも側面モニターからも確認できない。
僅かに映る黒いものの輪郭から、ロジャーは今自分が瓦礫にいることを理解した。
荒い息を必死に整えようとするが、おさまらない。
いつか見た地下の悪夢が、頭にフラッシュバックする。
「外は……あの主催者はどうなっている!?」
凰牙を動かそうとするが、あまりの圧力にびくともしない。
少しのすきまでもあれば勢いで吹き飛ばすこともできるが、密着するように敷き詰められた瓦礫は動かすことも難しい。
いくら動かそうと動かない現状。何をしても無駄という状況が逆にロジャーを落ち着かせた。
行動をやめれば、熱は引く。当然の話だ。
- 316 :それも名無しだ:2009/05/21(木) 00:04:28 ID:yruzgTg/
-
- 317 :moving go on再び代理投下:2009/05/21(木) 00:04:33 ID:yHiRXmWm
- そうなると浮かぶのは最悪の状況。もしや、自分以外、すでに死んでいるのではないかという不安。
いや、そんなあるはずがないとロジャーの理性は言う。しかし、感情はそれを否定した。
終わったのか。自分たちのやったことは、所詮、主催者の前ではうたかたの夢だったのか。
それを思い知らされるほどの戦力差。
ロジャーの体が沈む。
ただ、ぼんやりすることしかできない。
ふと、空気はどれだけ持つのだろう、そのまま自分は朽ちるのかと思い、
それすら関係ないと頭を振った時、
「ロジャー! ロジャー、どこ!?」
外から聞こえてくるのは、アイビスの声だった。
「どこにいるの!? 答えて!」
生きていたのか。ということは魔王は去ったのか。
そのロジャーの問いを否定するように、激しい地響きが聞こえてきた。
これは、戦いの印だ。
つまり、まだ魔王と戦うものがいる?
馬鹿な、勝てるはずがない。このまま黙っていろ。そう感情が訴える。
しかし――ロジャー・スミスをロジャー・スミスたらしめる理性と記憶(メモリー)が許さなかった。
「私はここだ! ここにいる!」
ロジャーは、通信機に声を張り上げる。
すると、ロジャーの前にあった瓦礫がはじけ飛ぶ。
目の前にいたのは、ソードエクステンションを構えるブレンだ。
「助けて! シャギアとカミーユが戦ってる!」
ロジャーは、はっと気付き、シャギア同様怯えていた自分を恥じた。
通信に映るアイビスに、恐怖の色はない。ただ、未来を信じ、切り開こうとするひたむきさがあった。
自分は、いったい何をしていたのか。ほんの少しでも恐怖に震えたことが馬鹿馬鹿しい。
- 318 :それも名無しだ:2009/05/21(木) 00:05:01 ID:CMur9omo
-
- 319 :moving go on再び代理投下:2009/05/21(木) 00:05:26 ID:yHiRXmWm
-
「凰牙、アークションッ!!」
凰牙が再び起動する。
瓦礫を払い、立ち上がる黒金の巨人。
その巨人の前に広がるのは、ただひたすらに吼えながら巨大な魔王に立ち向かう二人の青年の姿だった。
しかも押している。再生されても、ひたすら、諦めず押し続けている。
「手伝って、ロジャー! あたしじゃいい考えも浮かばないし……力が足りない!
あれを倒すのに、凰牙とロジャーの力を、あたしとブレンに貸して!」
今にも戦場へ飛び込んで行こうとするアイビス。
ロジャーは、なぜか笑いがこみあげてくるのを止められなかった。
笑うロジャーを見て、ポカンとするアイビスに、口の端を小さく吊り上げロジャーは言う。
「この世界にもいつか太陽が昇る。そう信じている若者は素晴らしい。
そして……青春は降りかかる現実を有り余る勢いで押し切ること。ロジャー・スミスの法則だ」
自分もまだまだ若いつもりだが、と小さくロジャーは付け加えた。
ロジャーは、目の前の戦いを凝視する。こうして戦いを遠くから俯瞰できるのは自分とアイビスだけだ。
冷静さといままでの記憶(メモリー)を振り絞れ。
一分、二分と時間だけが過ぎる。
ロジャーは、頭を全開で回転させる。
ビックデュオ、ゴースト、多くのメガデウス……それらの戦いを機転でロジャーは乗り越えてきた。
今、もう一度その閃きを自分へ手繰り寄せる。
この状況でなお札を伏せる余裕はあるとは思えない。ならば、今目の前で起こる戦いが相手の全てのはず。
蒼い魔王は、巨大化したことと、バイタルジャンプができること以外は以前と同じだ。
かならず、どこかに突破口があるはずだ。
アイビスの焦る声が、さらにロジャーを煽る。
しかし、ロジャーもそうそう思い付くものではない。
なにか、ヒントが欲しい。目の前に与えられた記録だけでは足りない。
せめて、複数方向から見ることができれば。例えば、見上げるような今の位置からではなく空から――
- 320 :それも名無しだ:2009/05/21(木) 00:06:15 ID:nTd3FPlg
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- 321 :それも名無しだ:2009/05/21(木) 00:06:56 ID:LQEp+L6w
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- 322 :moving go on再び代理投下:2009/05/21(木) 00:07:11 ID:yHiRXmWm
-
「空?」
空。その一言が急激にロジャーの頭をまとめる。
そうだ、空だ。それが唯一蒼い孤狼が動きを鈍らせた場所だ。
相手が動けない状況に持ち込み、こちらの最大の攻撃を叩きこめば――
一瞬、またアムロのようになるのではと考えがよぎる。
だが、頭を振る。そんなことを悩んでいては進まない。
賭けるしか、ない。
自分の行動が、全てを決めるかもしれない。
潰されそうなプレッシャーがロジャーにかかる。
しかし、それでもなおロジャーは不敵に笑う。
私は、私だ。私自身の記憶(メモリー)から導いた考えを信じずになにを信じる。
「どうやら空は常に、我々の味方のようだ」
ロジャーは、アイビスに自分の計画を打ち明ける。
それは、アイビスにとっても危険が大きいものだった。
だが、アイビスは迷うことなく頷いた。どこまでも強い娘だ。
データウェポン・バイパーウィップを左腕に凰牙が装着する。
一度目を閉じ、ゆっくりと目を開く。
迷いを断ったロジャー・スミスが動き出す。
◆ ■ ◆
- 323 :それも名無しだ:2009/05/21(木) 00:07:29 ID:1eEPZeQc
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- 324 :それも名無しだ:2009/05/21(木) 00:07:56 ID:CMur9omo
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- 325 :moving go on再び代理投下:2009/05/21(木) 00:08:08 ID:KviZBHQv
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「おおおおおお!!」
ガンダムF-91・ヴァサーゴの手のビームソードが蛇のように伸び、魔王にかみついた。
蒼い魔王の装甲をもぎ取り、さらに突き刺す。その動きは、クローアームによく似ていた。
サイバスターの手の中の剣が、渦巻く風を纏い疾走する。
細剣、一閃。明らかに剣より広い範囲の装甲を、一撃で切り飛ばす。
「お前のような奴はここにいちゃいけないんだよ!」
サイバスターから溢れた光が、青い魔王を打ち付ける。全身くまなく光にやられ、蒼い魔王がたたらを踏む。
その光の中、ヴァサーゴが蒼い魔王の眼線に迫る。魔王は、そのF-91の全長はあろうかという角を振り回した。
しかし、それはヴァサーゴの揺らめく蜃気楼を引き裂いただけだった。
「いいか、これは甲児の分だと思うといい」
コツンと、音を立て、先ほどまで赤熱していた角にヴェスバーが押し付けられる。
ヴァサーゴが引き金を引くと、そこから溢れた光が、角をへし折る。
それだけにとどまらず、魔王の頭が完全に消滅する。即座にビームソードが、ぽっかり空いた首に入り込んだ。
植物と機械が混じり合った内側がかき混ぜられ、肩などから汚わいな液体がこぼれた。
不死鳥に姿を変えたサイバスターの突撃。
しかし、先ほどまでとは熱量が違う。燃えるような赤の炎ではなく、収束させさらに火力を高めた青い炎。
首を失いながらも、必死に軸をずらす蒼い魔王。さらに、左手をかざし、不死鳥に叩きつける。
魔王の左腕が空を舞う。さらに、その脇腹を抉り飛ばした。
―――ヲオオオオオオヲヲヲヲヲオオオオ………
首を失い、抉られた空洞から響く苦悶の声。
間違いない。蒼い魔王は、初めて苦しみ、己の不利を感じている。
さらに追撃を仕掛けようとするが、魔王はバイタルジャンプで二機から逃げるように距離を取る。
損傷部分が何度もなく弾け、光を放ち、再生していく。
アムロの力を吸い取った結果が、この燃えるような生命エネルギーによる再生能力だった。
肩で息をするように、機体の上半身を上下させる魔王。
- 326 :それも名無しだ:2009/05/21(木) 00:08:23 ID:yruzgTg/
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- 327 :それも名無しだ:2009/05/21(木) 00:08:47 ID:CMur9omo
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- 328 :moving go on再び代理投下:2009/05/21(木) 00:08:48 ID:KviZBHQv
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「ありえない……認めていない……!」
サイズ比そのままに巨大化し、威力を高めた5連チェーンガンが打ち出される。
だが、その悪意を掻い潜り、さらにヴァサーゴとサイバスターは肉薄した。
ヴァサーゴのハイパービームソードが、サイバスターのディスカッターが、蒼い魔王の両腕を落とす。
魔王は、姿勢制御用のウィングを展開、スラスターで空に飛び上がる。
そして、その勢いのまま大地に落下した。
鋼鉄の巨獣のスタンピートが、大地を貫き、地盤を沈下させる。
最初の落下よりもはるかに広い範囲のビルが倒壊した。
激しく動き回り、攻撃を阻む間に魔王は再び腕を再生させる。
「再生が早い……!」
シャギアは、ガンダムF-91ヴァサーゴの中で顔をゆがませる。
あまりにも再生速度が速すぎる。しかも、その巨体から繰り出される攻撃は強力無比で、一撃でも当たれば落とされる。
バイタルジャンプと言う切り札まで相手が持っているため、その体を削り切るよりも早く再生されてしまう。
「それでもやらなきゃいけないんだよ!」
オクスタンライフルに、サイバスターの風の力が収束する。
撃ち出されたBモードの弾丸が、風の力を受けて碧に輝き、蒼い魔王を貫通する。
このまま行けば、サイバスターとヴァサーゴのエネルギーが尽きるのが速いか、
それともあちらの再生力が尽きるのが先かの勝負になる。
あれだけの巨体が保持しているエネルギーを考えれば、無謀に思える勝負だ。
ヴァサーゴと、サイバスターが攻め立てる。
戦闘力では、蒼い魔王を凌いでいながら、倒しきれないが故に勝てもしない。
消耗戦だけが続いていた。
どこまでも続く繰り返しの中、サイバスターとヴァサーゴが戦い続ける。
徐々に、エネルギーがつき始めている。このまま、では、早晩落ちることは間違いない。
あともう一つ、手があれば。それを何度も呟きながらも、状況は変わらず続いていく。
もうすぐ、ヴァサーゴの状態を維持する限界だ。
- 329 :それも名無しだ:2009/05/21(木) 00:09:25 ID:yruzgTg/
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- 330 :moving go on再び代理投下:2009/05/21(木) 00:09:31 ID:KviZBHQv
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「アイビス! 用意は終わっているかな!?」
「もちろんだよ!」
だが、間にあった。
カミーユとシャギア以外の声が、ついに現れる。
再び現れた、ブレンと凰牙。
「そちらは、最大の攻撃を用意してほしい!」
「信じていいのか?」
その答えは、ロジャーの笑み。
その顔は、自信に満ち溢れていた。
「存在は……許されない……破壊する!」
蒼い魔王の声に、もう恐怖はない。
「いくよ、ブレン!」
ヴァサーゴの横を通り抜け飛ぶブレンが消えた。
その姿は見えない。だが、見えなくても場所は、すぐに分かる。
魔王が、背中を掻くようにもがく。しかし、次の瞬間魔王の姿は空高くにあった。
「騎士(Knight)凰牙、ファイナルステージ!」
左手の鞭が伸びあがり、凰牙の頭上で回転する。稲妻を何重にも纏い、大嵐を巻き起こす。
それが持ち主の意志に呼応し、まっすぐに蒼い魔王に飛ぶ。
アルクトスに伝わる電子の聖獣が一体、バイパーウィップのファイナル・アタック。
鞭の先端が、プラズマを帯び、加速して射出される。
ブレンが、背中からバイタルジャンプで離れる。その直後、蒼い魔王にファイナルアタックが直撃する。
ただ一発当たっただけではなく、文字通り蛇のしつこさで何度となく魔王の手を掻い潜り複雑な軌跡を描きぶつかっていく。
そして――気付いた時には蒼い魔王の体を締め上げる。絶え間なく流れ続ける紫電が、蒼い魔王を叩く。
ブレンにとって、極度に負担がかかる状況でバイタルジャンプはできないし、無理に行えばどこに飛ばされるかわからない。
おそらく、蒼い魔王も、状況は同じ。ならば、常に締め上げ圧力を加え続ければ回避はできないのだ。
大地にいるならおそらく、その質量で強引に突破も可能かもしれない。
だが今、魔王はブレンのバイタルジャンプのために空にいる。
空は、唯一魔王が自由にできない空間だ。
- 331 :それも名無しだ:2009/05/21(木) 00:10:13 ID:CMur9omo
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- 332 :それも名無しだ:2009/05/21(木) 00:10:18 ID:yruzgTg/
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- 333 :moving go on再び代理投下:2009/05/21(木) 00:10:39 ID:KviZBHQv
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「今だ!」
ロジャーが、サイバスターとヴァサーゴに檄を飛ばす。
「ここからいなくなれぇぇぇ!!」
空が澄んだ青に染まる。精霊光の輝きがサイバスターの周りを飛ぶ。
穏やかな光が、一気に四つに収束した。青と緑の中間に近い色合いのそれが、輝きを増す。
サイバスターの組んだ腕が、集積した力の大きさに震えた。
世界の理を塗り替える、局地的な宇宙の新生――コスモノヴァ。
どこまでも広がる青空へ、夜の闇を変える。
「いけええええええ!!」
「何故だ……!」
放たれた極光が、蒼い魔王を討つ。
目を開くこともできないほどの光が、魔王を包む。
「次は、私だ……!」
もし、死者は消えないというのなら。オルバが、甲児が、ヒメくんが見ているというのなら。
今この一瞬だけでもいい。力を、貸して欲しい。そう――人間として。
排熱で背後の空気が歪む。放出される黒ずんだ金属の塵が、何かを形作る。
F-91ヴァサーゴの背中に黒い六本の翼が広がった。
それはヴァサーゴを超えたヴァサーゴ。
―――ガンダムF-91ヴァサーゴ・チェストブレイク!
深紅の腕が、金色に変わる。握ったビームソードが、巨大な上二本、下一本の金色の爪になる。
翼をはためかせ、ヴァサーゴ・チェストブレイクが飛ぶ。インパクトの瞬間――爪が相手に合わせてさらに巨大化。
竜の顎〈アギト〉の如く、金色の爪が魔王を上下から挟みつぶした。
「何故……完全に……近付ける―――!」
- 334 :moving go on再び代理投下:2009/05/21(木) 00:11:41 ID:KviZBHQv
-
唯一拘束を逃した杭打ち機が、ヴァサーゴ・チェストブレイクに迫る。
しかし、杭打ち機の部分だけが突然蒼から紅に色を変え――自分の胸の中心にある球体に打ち込まれた。
「――今まで使ってくれた分、上乗せして返してもらうぞ!」
『何故だ――何故――こんなことが―――』
男の声に、人間の感情が宿る。それとは別に、言いようもない淀んだ声が場に響いた。
この声は間違いない。あの、最初の時のノイ・レジセイアの声。
「言ったはずだ。
『もし貴様が人間を取るに足りない存在だと驕っているのなら、遠くない未来貴様は再び打ち砕かれる』とな。
忘れたか? それとも、俺の言葉など覚える価値もなかったか!?」
『何故――――』
球体に杭を打ちながらも、指ではっきりと胸の赤い球体をキョウスケは指す。
「カミーユ! ここを撃て! 撃ち貫け!」
「あああああああああああああああああああああああああああ!!」
蒼い炎を纏いながら、オクスタンライフルをまっすぐに構え、サイバスターが疾走する。
ライフルの先端が、杭打ち機で割れた隙間に飛び込む。
繰り返されるゼロ距離射撃。
ひび割れていく赤い球体。
『何故―――――完全な生命に―――――!!』
最期に聞こえたのは、ノイ・レジセイアの絶叫だった。
【アムロ・レイ 死亡】
【兜甲児 死亡 】
【キョウスケ・ナンブ 死亡】
- 335 :それも名無しだ:2009/05/21(木) 00:11:45 ID:yruzgTg/
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- 336 :それも名無しだ:2009/05/21(木) 00:11:49 ID:CMur9omo
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- 337 :moving go on再び代理投下:2009/05/21(木) 00:12:36 ID:KviZBHQv
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「本当に、行くのか? 意味があるとは思えないが……」
「それは行ってみなければわからない。今の私の目で見て、なにか分かることがあるか……それを知りたい」
凰牙とF-91が向かい合う。
その横では、力を使い果たし動かないブレンとサイバスター。
アイビスとカミーユはずっと気を張っていた。緊張の糸が切れたのだろう。
気絶……なのだろうがその顔は随分と安らかに見える。
塗装がはげ、ヴァサーゴとしての状態が切れた今のF-91は全身灰色だった。
もしも見る人が見れば、こう言ったかもしれない。PS装甲を切ったガンダムのようだ――と。
シャギアは、自分が基地跡に行くことをロジャーに告げた。
アムロが言ったとおり死者は消えることなく、今もオルバと自分がつながっているとしたら。
何もなくても構わない。それでも弟が潰えた地に行きたいと。
「無論、24時までは会談の場所に行く。私の地図には基地とここの途中の補給ポイントも記録されている」
「だが……」
おそらく自分が襲われることを心配しているのだろう。
ならば、答えは一つ。かつてのように、自信を持って、答える。
「お任せを。 わたしの愛馬は凶暴です」
そう言って、空を見上げる。空には、一面赤い光が渦巻いていた。
あの球体を砕いた瞬間溢れた光が夜空を染めた。それと同時、この世界にあった邪気は全て消失したのだ。
何故自分にそんなことが分かるかはたいしたことではない。分かるから、分かる。理由はいらない。
大切なことは、おそらくもうこの世界への横やりはないということだ。
インベーダーが消え、あのレジセイアもこの世界からとはいえ去った。
「決着は、人の手でということか」
いまや沈黙している蒼い魔王。いや、もはやそれは魔王ではなくただの孤狼。
コクピットには誰もいないにもかかわらず、誰かがいた暖かさだけが残っていた。
おそらく、最期にあの男が遺したものだろう。
まだポカンとしているロジャー・スミスをおいて、F-91がスラスターを吹かす。
- 338 :それも名無しだ:2009/05/21(木) 00:12:49 ID:CMur9omo
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- 339 :それも名無しだ:2009/05/21(木) 00:13:04 ID:yruzgTg/
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- 340 :moving go on再び代理投下:2009/05/21(木) 00:13:18 ID:KviZBHQv
-
「ガナドゥ―ルのレース・アルカーナは回収しておくといい!
あれを増幅し射出すれば空間突破には十分のはずだ!
空間突破に必要な四つの攻撃のうち、Jアークが沈まないかぎり反応弾も加えて三つを確保できる!」
「ま、待て!」
その言葉を無視し、F-91は空を飛ぶ。
視界は、見渡す限りの空が広がっていた。
【共通の行動方針
1:24時にユーゼスと合流。現状敵対する意思はない
2:ガウルン・キョウスケの排除
3:統夜・テニア・アキトは説得を試みる。応じなければ排除
4:ユーゼスとの合流までに機体の修理、首輪の解析を行い力を蓄える】
【カミーユ・ビダン 搭乗機体: サイバスター
パイロット状況:強い怒り、悲しみ。ニュータイプ能力拡大中。疲労(大)気絶
機体状況:オクスタン・ライフル所持 EN30%
現在位置:D-3
第一行動方針:合流
第二行動方針:ユーゼス、アキト、キョウスケを「撃ち貫く」
第三行動方針:遭遇すればテニアを討つ(マシンセルを確保)
最終行動方針:アインストをすべて消滅させる
備考1:キョウスケから主催者の情報を得、また彼がアインスト化したことを認識
備考2:NT能力は原作終盤のように増大し続けている状態
備考3:オクスタン・ライフルは本来はビルトファルケンの兵装だが、該当機が消滅したので以後の所有権はその所持機に移行。補給も可能
備考4:サイバスターと完全に同調できるようになりました】
- 341 :それも名無しだ:2009/05/21(木) 00:13:54 ID:CMur9omo
-
- 342 :moving go on再び代理投下:2009/05/21(木) 00:14:08 ID:KviZBHQv
- 【アイビス・ダグラス 搭乗機体:ネリー・ブレン(ブレンパワード)
パイロット状況:精神は持ち成した模様、手の甲に引掻き傷(たいしたことはない) 気絶
機体状況:ソードエクステンション装備。ブレンバー損壊。 EN50% 無数の微細な傷、装甲を損耗
現在位置:D-3
第一行動方針:使える部品を集めて機体を修理する
第二行動方針:協力者を集める
最終行動方針:精一杯生き抜く。自分も、他のみんなのように力になりたい。
備考:長距離のバイタルジャンプは機体のEN残量が十分(全体量の約半分以上)な時しか使用できず、最高でも隣のエリアまでしか飛べません】
【ロジャー・スミス 搭乗機体:騎士凰牙(GEAR戦士電童)
パイロット状態:肋骨数か所骨折、全身に打撲多数
機体状態:右の角喪失、 側面モニターにヒビ、EN0%
現在位置:D-3
第一行動方針:殺し合いを止める。機体の修復 首輪の解析
第二行動方針:首輪解除に対して動き始める
第三行動方針:ノイ・レジセイアの情報を集める
最終行動方針:依頼の遂行(ネゴシエイトに値しない相手は拳で解決、でも出来る限りは平和的に交渉)
備考1:ワイヤーフック内臓の腕時計型通信機所持
備考2:ギアコマンダー(黒)と(青)を所持
備考3:凰牙は通常の補給ポイントではEN回復不可能。EN回復はヴァルハラのハイパーデンドーデンチでのみ可能
備考4:ハイパーデンドー電池4本(補給2回分)携帯
備考5:バイパーウィップと契約しました】
【シャギア・フロスト 搭乗機体:搭乗機体:ガンダムF91( 機動戦士ガンダムF91)
パイロット状態:健康 ニュータイプ能力覚醒
機体状態:ビームランチャー消失 背面装甲部にダメージ ビームサーベル一本破損
頭部バルカン砲・メガマシンキャノン残弾100% ビームライフル消失 ビームソード保持。 EN5%
現在位置:D-3
第一行動方針:基地へ行き、オルバが亡くなった場所へ行ってみる。
第二行動方針:ガウルン、テニアの殺害
第三行動方針:首輪の解析を試みる
第四行動方針:比瑪と甲児・ガロードを利用し、使える人材を集める
第五行動方針:意に沿わぬ人間は排除
最終行動方針:主催者の打倒
備考1:首輪を所持】
※1 会場のインベーダーは全て消滅しました。
※2 戦場跡には、無傷、無人のアルトアイゼン・リーゼが放置されています。
【二日目20:30】
- 343 :それも名無しだ:2009/05/21(木) 00:14:17 ID:yruzgTg/
-
- 344 :moving go on再び代理投下:2009/05/21(木) 00:14:49 ID:KviZBHQv
- これで終了です。
投下、支援、お疲れ様でした。
- 345 :それも名無しだ:2009/05/21(木) 00:26:06 ID:qORjkvxM
- なんつう長編…!!GJ!!ただGJ!!
ついに一区切りできたって感じがするぜ…!!
- 346 :それも名無しだ:2009/05/21(木) 00:27:35 ID:DtvPFE0W
- ちょ、ちょっと待った。
なんだこの勢い…すまん、もう一回しっかり読み直してから感想つける。
遅くなっても絶対に感想つけるから、勘弁してくれ。
とりあえず、今はひたすらにGJ!
超大作、お疲れさまでした…!
- 347 :それも名無しだ:2009/05/21(木) 14:50:15 ID:pnVWT6ac
- 投下GJ!
ノイ・レジセイアが降臨してから猛威を振るったキョウスケもついに退場か……!
アムロ、ブンドル、コウジも死ぬ寸前まで熱いし、ついにサイバスターとシャギア兄さんは覚醒するしで最高すぎる。
インベーダーもいなくなって会場の決着はユーゼスたちを残すだけ。
もうあとはクライマックスに向けて加速する一方だなwww
- 348 :それも名無しだ:2009/05/21(木) 15:51:03 ID:yTs+HmjA
- しかし、またユーゼスがラスボスか?w
存在感あるやつだなぁw
- 349 :それも名無しだ:2009/05/21(木) 18:27:28 ID:2UepCPGL
- いや、まだアルフィミィが残ってる。
ノイ・レジセイアが消滅しても、アルフィミィ消滅までは時間差があるから、
フィールド脱出→デビルネビーイームとのラストバトルの可能性もある。
- 350 :それも名無しだ:2009/05/21(木) 18:35:17 ID:xOOcnkvd
- 「この世界からとはいえ去った」て書いてあるし、レジセイアのご本尊は無事だからなあ……
原作で言うエクセレンを殺しただけで弱っててもレジセイア本体があるからまだ一波乱二波乱ある予感……w
- 351 :それも名無しだ:2009/05/21(木) 20:31:09 ID:Fic1AhLF
- 熱かった……!!
物語には何ら関りない読者の一人に過ぎないが、それだけ言わせて欲しい!
- 352 :それも名無しだ:2009/05/21(木) 20:57:00 ID:xOOcnkvd
- すいません、>>233と>>234の間にこれをはさんでください
「これも、若さか……」
口元が自然と緩むのが分かった。
久しぶりの血の味もけして悪くないのかもしれない。
自分を振り返るというのは苦いものが往々にして混じるものだ。
「戻りましょう、みんなも待ってます」
カミーユの疲れた声。
やはり感情の爆発で力を出すが、それをコントロールできないタイプなのだろう。
長所でもあるが、短所でもあるところだ。
いや、これはあの場にいる全員に言えることか。
VF-22Sのスラスターが火を噴く。
まだあと一回二回は戦闘で持つだろう。
サイバスターと並び、戦艦へ帰還しようとする。
その時だった。
「ククク……ハハハハハハハハハハハハハハ!! フフフハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!! 」
廃墟のビルの静寂を引き裂き、夜気を切り裂き、条理を噛み裂く、蒼い鋼鉄の孤狼。
戦闘時から平時へ意識が切り替わったことによる弛緩。
緊張が解け、疲れから注意が散漫になるその間隙。
一流の戦士なら物質なおせば剃刀一枚ほどしかない時を突き、疾走する蒼い奔流。
ブンドルも、カミーユも気付かなかった。いや、気付けなかった。
理由なく、突然膨張した殺意がその場に現したのだ。
空を駆けるサイバスターに対し、地を走る狂獣。
そのスピードは、サイバスターのトップスピードに匹敵する――!
カミーユの回避は、間に合わない。
ブンドルだけが、対応できた。
先ほどのカウンターのため拳に溜めていたエネルギーを反射的に開放。
- 353 :それも名無しだ:2009/05/21(木) 21:52:44 ID:dsSoSflV
- 乙!!
いよいよ終わりが近づいてきました
あとシャギアのこれは消したら?
第四行動方針:比瑪と甲児・ガロードを利用し、使える人材を集める
- 354 :それも名無しだ:2009/05/21(木) 22:05:43 ID:lDxxT2BL
- 同感。
今のシャギアならユーゼスたちに何か吹き込まれて自分たちの陣営に付くよう誘われても
「寝言は寝て言うのだな」ってあっさり跳ね除けそうだしな。
- 355 :それも名無しだ:2009/05/21(木) 23:15:58 ID:xOOcnkvd
- すいません……現在wiki編集しておりますが、そちらでは消しておきます
- 356 :それも名無しだ:2009/05/21(木) 23:28:12 ID:zdwMVA/H
- ちと思ったんだがシャギアが反応弾がどうとか言ってるけど、それってブンドルが乗ってたVF22に積まれてなかったっけ?
キョウスケ相手に使わないのはなんでだろうと思ってたんだが…
- 357 :それも名無しだ:2009/05/21(木) 23:38:28 ID:xOOcnkvd
- 至近距離で核を使えば逃げるサイバスターどころかJアークまで巻き込まれる気がしたので、考慮にも入れていませんでしたが……追加しておきます。
あの状態で核を使うのは鶏さばくのに牛刀どころか家吹き飛ばす爆弾使うようなものかな……とw
最初はARMSネタで核爆弾を吸収させる予定でしたwwww
- 358 :それも名無しだ:2009/05/21(木) 23:43:38 ID:zdwMVA/H
- うわ、素早いレスどうもです。
たしかにまあ過剰な破壊力かなと思うんだけど、積んであるのなら使うんじゃないかと思って。
貴重な空間破壊の手段を使わないまま破壊されるのも間が抜けてるし。
まあJアークに保管していた、なら納得なんだけど
- 359 :それも名無しだ:2009/05/21(木) 23:48:16 ID:xOOcnkvd
- Jアークに保存しておいた、と言うほうが言われてみれば自然ですね。
そちらにwikiで差し替えておきます
- 360 :それも名無しだ:2009/05/21(木) 23:51:05 ID:xOOcnkvd
- 追記ですが、キョウスケがディバイデッドライフルを失っていたようなので、そこに関しても修正いたしました。
これで武装などに矛盾はなくなったと思います
- 361 :それも名無しだ:2009/05/22(金) 14:11:45 ID:4RP62GNb
- インベーダーとアインストって敵対してる間柄なんだよな?
アインスケを倒したらインベーダー消えるってのも少しおかしいような・・・
ガウルンが依頼された禁止エリアのインベーダーの排除や薬も無駄になるし
- 362 : ◆XrXin1oFz6 :2009/05/22(金) 16:35:22 ID:G6f0GunT
- >>361
すいません、消し忘れですorz
当初の予定だとロジャーさんがレジセイアに交渉を成功させて会場には参加者以外、
手を出させないと約束させる予定だったので、その名残です……むう、これは補足話書いたほうがいいな……
アルフィミィとレジセイア予約します。
- 363 :Disillusion ◆XrXin1oFz6 :2009/05/23(土) 00:29:17 ID:kN0BUlU/
-
―――ノイ・レジセイアには、目的がある。
当然のことだ。
何か目的がなければ、ノイ・レジセイアもこんなことはしない。
彼の心は一度も揺れていない。ただ愚直なまでに目的に邁進し続けている。
だが彼の行動、彼の言葉。その全てに一貫性を感じることはできるだろうか?
――なぜか、アインストを外れた人間に近いアルフィミィを作り出し、
―――なぜか、最初から参加者に加わらずキョウスケに憑依と言う手段をとり、
――――なぜか、アルフィミィにろくな指示を伝えず、
―――――なぜか、用意されたネビーイームと融合を拒否し、
――――――なぜか、インベーダーの排撃を命じながらも空間の穴を補修しない。
どれもが同一の意思の元に動いているようには見えない。矛盾すらはらんでいるようにも見える。
以前と同じアインストに近しいアルフィミィを作り出したほうが連絡などは楽に取れる。
参加するのなら、最初から憑依した駒を用意しておけばよかった。
儀式を成功させたいならアルフィミィとは密に連絡を出すほうがいい。
強い体が欲しいならネビーイームは最高の素材だ。
インベーダーが邪魔なら空間の穴ごとシャットアウトするのがベストだ。
もっといい方法がいくらでもあったにも関わらず、
何故このような行動をノイ・レジセイアは取らなければならなかったか。
殺し合いは最終局面を迎えようとしている。
そしてノイ・レジセイアもここに至り盤上に登る時がきた。
幻覚を見せ、思念を送るだけでその本体を見せることのなかったノイ・レジセイア。
それが今、覚醒を迎えていた。
- 364 :それも名無しだ:2009/05/23(土) 00:29:33 ID:C8qupYBz
-
- 365 :Disillusion ◆XrXin1oFz6 :2009/05/23(土) 00:30:08 ID:kN0BUlU/
- ドクン、とノイ・レジセイアの体が脈動する。
――まだ……遠い……――
遥か昔にあった銀河での戦い。
その時より失った力と肉体は、いまだノイ・レジセイアに帰還を果たしていない。
失ったまま動けずにいた膨大な時間は、彼の体に化石化を起こさせ、身体の自由をさらに奪った。
ネビーイーム内にその肉体は安置されたまま、身動きすら出来ずにいる。
それでもなお、力を失わなかった胸の中心の赤い球体に、罅が入る。
内側から砕けるがごとく広がる亀裂に、ノイ・レジセイアは苛まれ苦しむ。
――何故だ……何故――
儀式を繰り返すことなどできない。
これ一界/回で成功させねばならない状況だというのに、理想に至る方法の一本はとん挫した。
ついに明かされる、彼の望みはたった一つ。自分が完全な生命に生まれ変わり、その上でかつての力を取り戻すことだ。
かつての力を取り戻すだけでは駄目だ。それでは宇宙を新生することはできても、完全にすることはできない。
今のノイ・レジセイアでは完全なる世界を生み出せなかったのは、MUの内側を垣間見た時から理解した。
白き魔星の眼下に広がる茶褐色から白の中間色を幾層にも重ねたような柄をしたもう一つの球体。
東京ジュピターに似た『箱庭』は、かつて彼がラーゼフォンに撃破されたMUの力のかけらを手にした結果生まれたものだ。
MUとは、 平行宇宙という概念の外側にいる存在。
何万もの平行宇宙を覆い、それらの宇宙をレンズ状の隔離空間に歪める。
そうやって時間軸そのものを捻じ曲げ、各々の宇宙にループ現象を引き起こした。
ラーゼフォンのいる平行宇宙を自身の中に閉じ込める、そのために。
無限に連なるはずの平行世界の一部を覆うことで平行世界を平行で無くした。
結果、生まれたのが東京ジュピターとも呼ばれる空間。
ノイ・レジセイアはこれを応用して会場を作りあげたのだ。
願いをかなえるという言葉も、この力から出たものだ。
つまりは、願いが全て叶った並行世界を探し出し放り込んでやる。
それが彼の言った願いを叶えるという言葉の真実だった。
事実、ノイ・レジセイアは優勝者の願いを叶えるつもりだった。どんな願いでもかまわない。
彼からすれば完全な宇宙さえできれば人間一人の未来や世界などはあまり興味ないのだ。
- 366 :Disillusion ◆XrXin1oFz6 :2009/05/23(土) 00:30:57 ID:kN0BUlU/
- 人間とは、複数集まりお互いを補い合った時、より完全な生命すら超越するさらに完全な存在になりうる。
それを彼は銀河の戦いを経て、並行世界を見た結果理解した。
だから、最後に残った一人きりは観測する必要もない。
だが、ノイ・レジセイアとMUでは根本的に違いが一点あった。
欠片は小さく、並行世界をゆがめ、時間軸を束ねることはできても、ループを繰り返させるだけの力がなかった。
言い換えるなら彼の力では歪んだ世界から並行世界の住人を呼べても、それを繰り返せない。
故に、この『儀式』もこれ一回。
MUの力の一部を得てからは、探求の旅だった。
人間とは何か。人間が完全になる状態は何か。そして自分が完全になるためには何が足りないか。
彼はその力を使い数多の世界を思念だけになりながらも見続けた。
戦争も、平和も、時に人の中に混ざりながら渡り歩いた。
人間は一人一人が違いすぎる。同じ人間という種なのに個々の違いが甚だしい。
種族全体を統一する意識もなければ、共通の意識野も持たない。
だが、それがいい。それが結果として完全へ繋がっている。
かつては宇宙を乱すと人間は排除すべきと思っていたが、今の彼はそれほど人間が嫌いではない。
選定のため、必要なので殺すだけだ。
そうして旅した結論――人間とは極限に追い込まれた時こそ真実が見える。
それが良いほうに転ぶとは限らない。むしろ、悪意が噴き出すことも多かった。
だが、それも含め人間。問題はその中でどれが完全に必要か、だ。
そのために、意図的に不純物の混ざらない『箱庭』に極限状態を生み出し人間を放り込んだ。
これこそが今回の儀式、『バトルロワイアル』の全貌である。
――なぜか、アインストを外れた人間に近いアルフィミィを作り出し、
今回生まれたアルフィミィこそ、まさに彼の試行錯誤の象徴だ。
彼は、自分が世界を見た段階で、完全に至る人間が作れるのではないかと自惚れた。
そのさい制作された人間が、今回のアルフィミィ。
アインストから遠い――そして人間に近い。明確に理由があってそうなったのだ。
彼の行動に無駄はない。
- 367 :それも名無しだ:2009/05/23(土) 00:31:07 ID:C8qupYBz
-
- 368 :それも名無しだ:2009/05/23(土) 00:31:36 ID:nP4kzrRE
-
- 369 :Disillusion ◆XrXin1oFz6 :2009/05/23(土) 00:31:42 ID:kN0BUlU/
- ―――なぜか、最初から参加者に加わらずキョウスケに憑依と言う手段をとり、
最初から手を加えるのでは以前と同じ結果だ。だから、4割を切るまで彼は手を出さず傍観した。
そしてそこで残った人間を見比べ、完全に近いものを選定した。
あの段階では、キョウスケはその最右翼だったのだ。憑依するのに都合のいい状態になったのも忘れてはならない。
そして、キョウスケをベースに完全に足らないものを補充して完全になろうとした。
アムロの力を吸収し、ニュータイプ能力を手に入れたのもそのためだ。
彼の行動に無駄はない。
―――――なぜか、用意されたネビーイームと融合を拒否し、
ネビーイームでは単純な力を増大させるだけだ。
自分という存在の本質が変わらない以上、何の意味もない。
むしろ、余計な不純物を混入させてしまうという意味では害悪ですらある。
だから頑なにネビーイームを彼は拒否したのだ。
彼の行動に無駄はない。
――――――なぜか、インベーダーの排撃を命じながらも空間の穴を補修しない。
インベーダーは自分と同じ閉鎖空間の異物だ。
自分のように一参加者としてならまだしも、全体の影響が大きすぎる。
しかし、迂闊に次元の穴は修復できない。ただでさえ彼自身の力は限界でループを作ることすら難しいのだ。
アルフィミィが作業に当たるとは言っても使われる力は彼のもの。
これ以上擦り減らせば最後までもたない恐れがあった。だから隠ぺいだけにした。
彼の行動に無駄はない。
だというのに――失敗した。
手を尽くし、考えられるだけの知恵をめぐらせやってきた。
自分に落ち度はない。それでも失敗するのか。
その考えをノイ・レジセイアは即座に否定する。
これは自分が完全でないがために招いた出来事だ。完全であればこのようなことは起こらない。
自分が不完全であったため、シャギア・フロストやカミーユ・ビダンの進化――つまり完全への跳躍を把握できなかった。
それが結果としてこういう結末を招いた。
――おお……おおおおお……――
- 370 :それも名無しだ:2009/05/23(土) 00:32:04 ID:C8qupYBz
-
- 371 :Disillusion ◆XrXin1oFz6 :2009/05/23(土) 00:32:23 ID:kN0BUlU/
- 失敗の結果は、己が身に跳ね返る。
完全へ至る進化のため、力の多くや意識を割り振り、同調した結果が自分の身へと跳ね返りつつある。
今の彼の体は急速に滅びに向かっている。おそらく、あと残りの命は数十分だろう。
彼の意識が、苦しみながらも一人の名を呼ぶ。
自分が生み出した眷属でありながら、アインストではない一人の少女の名を。
アルフィミィ、とひたすらに呼び続ける。
手足のように扱える眷属と違い伝わりにくい思念を世界全てに伸ばし叫ぶ。
白い魔星が振動する。
同じく最下層に安置してあったデビルガンダムが移動し、レジセイアが保管されていた場所に現れた。
コクピットが開き、その奥からウェーブのかかった蒼い髪の少女が現れる。
「どうしましたの?」
不安げで、そして焦りを浮かべたその表情に、ノイ・レジセイアは感動した。
もしも彼が人間ならば、大きく静かにうなずいていたかもしれない。
手を尽くしたが所詮人間でない。アインストの遠い亜種に過ぎないはずのアルフィミィが感情をあらわにしている。
初代も表情は豊かだったが、それは表情のみ。こういった感情は最初のアルフィミィではほとんど見られなかった。
これは、アインストでありながらアルフィミィが人間に近いことを示している。
アインストも、人間に――完全の欠片に近付けるという証明に他ならない。
昨日までは、このような感情や表情を表すことはなかった。むしろ初代より無機質な印象だった。
だというのに……人間の行いから発生する感情を受け止めるだけでここまで変わるのか。
レジセイアも、アルフィミィが受信した情報で、『完全に至る』に必要と思われる部分だけは取り寄せていた。
だが、その全てを受け止めるだけでこれほど感情豊かに人形が、人間に近づくのか。
アインストでしかないヒトモドキが人間へ。不完全な自分が完全に至るのも、よく似ている。
彼の行い、研究の一種が正しかったという一種の発露だ。
自分の活動が間違っていなかったという証明物は、彼にはまぶしかった。
おそらく、ここまで自分から遠く離れた存在である今のアルフィミィなら、
自分が消滅しても連鎖的に滅びることはない。
自分の思念波を受けにくく、種として離れればそういう現象はおそらく起こらない。
ノイ・レジセイアは心底惜しいと思った。
これほどの存在のこれからを観測できないことを、心から悔やむ。
できるなら、この『儀式』の観測と、並列してアルフィミィの今までの変化とこれからの変化も見たかった。
- 372 :それも名無しだ:2009/05/23(土) 00:32:45 ID:C8qupYBz
-
- 373 :Disillusion ◆XrXin1oFz6 :2009/05/23(土) 00:33:07 ID:kN0BUlU/
- しかし、それはできない。
彼には、時間がない。
アルフィミィが、自分に死ぬなとかそういう趣旨のことを告げていた。
他者を気遣うことができる。そしてその感情が自分に向いている。
本当に、惜しい。
レジセイアの顔が、砕けていく。
化石化した手足はボロボロと欠片となり硬質な金属の床に落ち、煙となって消える。
自重に耐えかねたように落下していく体。
それでも最後の一瞬までノイ・レジセイアはアルフィミィを凝視する。
認識と思考の間隔が少しずつ開いていく。
ああ、残念だ。
ああ、残念だ。
- 374 :それも名無しだ:2009/05/23(土) 00:33:16 ID:nP4kzrRE
-
- 375 :それも名無しだ:2009/05/23(土) 00:33:27 ID:C8qupYBz
-
- 376 :Disillusion ◆XrXin1oFz6 :2009/05/23(土) 00:34:18 ID:kN0BUlU/
- ああ、残念だ。
ああ、残念だ。
ああ、残念だ。
ああ、残念だ。
- 377 :それも名無しだ:2009/05/23(土) 00:34:43 ID:C8qupYBz
-
- 378 :それも名無しだ:2009/05/23(土) 00:34:52 ID:nP4kzrRE
-
- 379 :Disillusion ◆XrXin1oFz6 :2009/05/23(土) 00:35:01 ID:kN0BUlU/
- 嗚呼、残念だ。残念だ。残念だ。
――――これを壊してしまうなんて。
崩れていく体の奥、最後まで化石化しなかった僅かな部分が触腕となって伸びる。
それは、正確にアルフィミィの四肢に巻きつく。身動きをまったくとれない状態へと拘束する。
突然のことに驚いた顔を浮かべるアルフィミィ。こんな表情もできるのか。なおさら惜しい。
一つだけ、説明していない要素があった。
――――なぜか、アルフィミィにろくな指示を伝えず、
- 380 :それも名無しだ:2009/05/23(土) 00:35:36 ID:nP4kzrRE
-
- 381 :それも名無しだ:2009/05/23(土) 00:35:40 ID:C8qupYBz
-
- 382 :Disillusion ◆XrXin1oFz6 :2009/05/23(土) 00:35:46 ID:kN0BUlU/
- これの、答え。それを教える時がきた。
アルフィミィは、別にいてもいなくてもよかった。
放送など適当に自分がやれば十分だった。首輪の管理などは自分がやればより盤石だろう。
だが、わざわざこの作ったアルフィミィをこの『儀式』に使ったか。
『箱庭』では、多くの人間が死んでいった。
だが、その中でも細部に分かるまでその感情の機微をアルフィミィが認識でき、彼女の変化を流した者がいた。
その者の名は、グラキエース。元・ではあるが破滅の王ペルフェクティオに仕えていた女性だ。
――破滅の王ペルフェクティオ、彼が姿を現す前触れというのならまだ分かる。
――用意された小さな空間に呼び寄せ、崩壊していく空間ごと彼の者を取り込むことによってツンクーフトへの階段を登る。
思い出してほしい。これは、かつてアルフィミィがデータウェポンの流出したさい、考えたことだ。
だが、よく考えてもらおう、
宇宙の創造を司る存在であるノイ・レジセイアと、宇宙の無差別な破壊者であるペルフェクティオが相容れるか。
答えは絶対にノー。水と油よりも差がある両者は、決して入り混じることはない。
両者の力を混ぜるには、緩衝材がいる。そのために、いやその目的のためにもアルフィミィは必要だった。
アルフィミィは、人間を目指して作られたが、
同時にアインストから切り離し人間に近付けるかを実験するにあたり、
さまざまな因子を埋め込まれていた。
例えば、それはメリオルエッセ。あるいはゲッター線被爆者。
研究して学んだ人間と言うものに加えてそういった要素を既存のアインストに混ぜたからこそ、
今のアルフィミィは逆に人間に近い。
もうはっきり言ってしまおう。アルフィミィはスペアだ。
別に、いてもいなくてもいい存在。むしろ、もしものことを考えれば下手に戦場などに出てほしくない。
だから、あえて行動しないように極力放置していた。
もしもペルフェクティオの力が流入すれば、アルフィミィにその力を注入し、
ノイ・レジセイアはアルフィミィの体を乗っ取ることでそれを手にする。
もしもゲッター線で進化が起これば、アルフィミィにそれをあびせ、
ノイ・レジセイアはアルフィミィの体を乗っ取ることでそれを手にする。
もしもノイ・レジセイアが死に瀕すれば、その力をアルフィミィの体に移し、
ノイ・レジセイアはアルフィミィの体を乗っ取ることでそれを手にする。
- 383 :それも名無しだ:2009/05/23(土) 00:36:20 ID:nP4kzrRE
-
- 384 :Disillusion ◆XrXin1oFz6 :2009/05/23(土) 00:36:31 ID:kN0BUlU/
-
もしもの時の、自分のもう一つの肉体。ある意味使い捨て。知らなかったのは当のアルフィミィだけだ。
もっとも、ゲッター線に関してはアルフィミィの体を借りる前にキョウスケの体で浴びることが出来たが。
ノイ・レジセイアの赤い核が光となる。
それに伴い、胎動する赤い光が触手からアルフィミィに流れ込んでいく。
「あ…あ……ああ………」
絞り出すような声がアルフィミィの声から聞こえてくる。
同行は開き切り、足は震え、おそらく触腕がなければそこに倒れこんでいただろう。
それとともに、ノイ・レジセイアに流れ込むのはアルフィミィの記憶。
――「……うらやましいですの」
――「……人間を求めていましたの?」
――「……また一人……逝ってしまいましたの」
――人間とは何ですの?
ああ、本当にもったいない。
これほどまで成長した者の芽を摘み取ることになるのは。
進化しなければ、こうも思わなかったというのに。
「わたしは……だれ……ですの?」
それが、『アルフィミィ』の最期の言葉になった。
周囲に、赤い光が漏れる。そして―――――――――――
- 385 :Disillusion ◆XrXin1oFz6 :2009/05/23(土) 00:37:13 ID:kN0BUlU/
- 自分を認識することから、全ては始まる。
陶磁器のような白く透き通った腕。一切無駄な肉のついてない肉体。
猫のようにぱっちりと開いており、少しツリ目だが大きなアイスブルーの瞳。
人間とは思えないほど整っており、それでいてどこか幼い顔立ち。
ほとんど凹凸のない素晴らしい体格だが、臀部や胸部は性別を示す小さく柔らかいふくらみがあった。
不健康さはなく、むしろ快活な印象すらあった。
足もとに映っている自分の顔を隠す、床まで届く蒼いストレートヘアを足でどける。
あまりに邪魔な量の髪に、すこし考えた後、手に光の輪を作り、髪を後ろに束ねた。
馬の尾のように垂れる形に髪がまとまり、邪魔にならなくなる。
光沢ある金属の床に映る自分の新しい顔を、『彼女』は凝視し、小さく驚きを顔に浮かべた。
グラキエースをそのまま小さくし、流竜馬の雰囲気とエクセレン・ブロウニングの髪型を合わせたような、その姿。
『彼女』の名はノイ・レジセイア。
もっとも、アインストに生別と言う概念はない以上、憑依した対象の生別に依存して決定しているだけだが。
「これが……表情か……」
キョウスケの体のときは、鏡など見ることがなかった。
故に、自分に表情があったことなど認識することがなかった。
さきほども言ったが、アルフィミィはメリオルエッセやゲッター線被爆者……つまりグラキエースや流竜馬の因子を含んでいた。
エクセレン・ブロウニングの因子も含んでいたが、ノイ・レジセイアが憑依したことで、ノイ・レジセイアの要素を加え再構築された。
その瞬転(パラダイム・シフト)というべき出来事の結果、あえてアルフィミィの場合外見に出るのを押さえていた因子が表層化した。
目の前で、かつて自分だったものが脆くも崩れ去る様を彼女は見届けると、ゆっくりと新しい体を守る鎧に入っていく。
デビルガンダムが、彼女をアルフィミィ同様に包む。
しかし、アルフィミィの時とは比べ物にならないほどの力がデビルガンダムに流れ込んでいた。
彼女は、デビルガンダムの中、静かに目を閉じる。
彼女の脳裏に投影されるのは、いまだあの世界で戦う12人の人間の姿だった。
誰もが、思い思いに願い、戦い、もがいている。
そう言えば先ほど自分が撃破されたため空間に力が満ちていることを思い出した。
この力を利用して環境をインベーダーだけが朽ちるように設定すればインベーダーを駆逐できるかもしれない。
- 386 :それも名無しだ:2009/05/23(土) 00:37:18 ID:nP4kzrRE
-
- 387 :それも名無しだ:2009/05/23(土) 00:37:39 ID:C8qupYBz
-
- 388 :Disillusion ◆XrXin1oFz6 :2009/05/23(土) 00:37:58 ID:kN0BUlU/
- どうしようかと考えた後、彼女はそれを実行した。インベーダーが実験の妨げになるのもある。
だが、ここまでくれば決着は参加者だけで付けさせるべきだと思うところがあった。
――そうでなければ報われない。
それは、彼女自身も認識できない意識の外にあるものだった。
だが、なんとなくノイ・レジセイアはそう思ったのだ。
デビルガンダムをネビーイームの中心に移動させ、彼女は眠るように意識を落とす。
多少体が馴染むまで体は休ませたい。もう、代えの体もないのだから。意識は、アルフィミィ同様ひたすら『箱庭』に向け続けよう。
ノイ・レジセイアもまた、後がない。彼女もまた、参加者同様瀬戸際にいる。
【アルフィミィ 死亡確認】
【ノイ・レジセイア 搭乗機体:デビルガンダム(機動武闘伝Gガンダム)
パイロット状況:良好、睡眠
機体状況:良好
現在位置:ネビーイーム
第一行動方針:バトルロワイアルの進行。そのためなら殺しも辞さないが、意味もなく殺すつもりもない。
最終行動方針:バトルロワイアルの完遂。優勝者の願いはどんなものでもいくらでも叶える】
【二日目20:30】
そう言えば、最期まで説明できなかった彼女の行動が一つだけあるが、これはそのせいだろうか。
「究極ゥゥッ……!ゲシュペンストォッ! キィィィィィィィィィィィックッ!!」とお約束を叫んだ理由だ。
人間の行動を真似る理由はどこにもないし、お約束に従う意味も薄い。それでも彼女は何となくやってみた。
もしかしたら歪んではいれど、彼女は彼女自身が思うよりも人間が好きだし、興味があるのかもしれない。
- 389 :それも名無しだ:2009/05/23(土) 00:38:34 ID:C8qupYBz
-
- 390 :それも名無しだ:2009/05/23(土) 00:38:43 ID:nP4kzrRE
-
- 391 :それも名無しだ:2009/05/23(土) 00:40:01 ID:C8qupYBz
-
- 392 :Disillusion ◆XrXin1oFz6 :2009/05/23(土) 00:40:12 ID:kN0BUlU/
- 投下、完了です!
支援ありがとうございました。
これで本編の彼らの行動はつじつまが合ったはず……
東京ジュピターがらみは、小説版の設定をなぜ作れたかの理由付けで引用しただけで、
空間突破の方法や本質はロワはTV準拠なので、気にしないでください。そういうものがあるんだなあ、程度で。
感想、意見、こうしてはどうか、などありましたらお願いします!
- 393 :それも名無しだ:2009/05/23(土) 01:50:57 ID:uj3UZNEV
- おおう
読み終えた感想だよ!GJ!
一箇所、多分『促す』が『流す』になってた気がした
- 394 :それも名無しだ:2009/05/23(土) 05:28:51 ID:d2nnkI7y
- 一日でこの量でこの内容か・・恐ろしいなw
でも、正直この話はどうなんだ。一応メインの進行役だったミィをつじつま合わせのために脈絡なく使い潰してるように見えるんだが
まだ10人以上残ってるのにこのレベルのネタばれは早過ぎたんじゃないのかな・・・
単にインベーダーは消えなかったか、多少数を減らしたってことでも良かったんじゃないかと思う
- 395 :それも名無しだ:2009/05/23(土) 07:36:52 ID:t1VAicGR
- 同じくそう思うなあ
- 396 :それも名無しだ:2009/05/23(土) 08:08:51 ID:Bi3fKGxy
- なんかこのタイミングでこのコンビってことで
アルフィミイが死ぬのが薄くながら予想できてしまった…
- 397 : ◆XrXin1oFz6 :2009/05/23(土) 09:49:37 ID:kN0BUlU/
- 了解しました。
では今回の話は破棄で、最新話におけるインベーダーが〜の下りを消しておきます
- 398 : ◆XrXin1oFz6 :2009/05/23(土) 09:52:39 ID:kN0BUlU/
- 修正をしておきました。
あくまでノイ・レジセイアが消えただけ、に変更してあります。
- 399 :それも名無しだ:2009/05/23(土) 11:53:17 ID:bpTbB6jQ
- ちょ、ちょっと待て、破棄は早すぎる
あとは会場で派手な戦いは会談の乱とそれの残り火くらいだし、
時期としてもそろそろ主催者側が見えてもおかしくないだろ
乗り込む直前に唐突に明かされるより、このくらいのタイミングのほうがいい
アルフィミィが死ぬのはちょっとどうかと思うが、
今まで書かれた主催側をここまできれいにまとめてるのを破棄するのは惜しい
破棄申請の破棄と、アルフィミィが死なない形への修正要望を出したいが他の連中はどうだ?
- 400 :それも名無しだ:2009/05/23(土) 14:31:53 ID:kN0BUlU/
- ええと、修正でいいんでしょうか?
でしたら長くなるので入れてなかった今までに関してのネタを4,5個追加。
アルフィミィが死亡せず、かつ会場のインベーダーは消えない。
これでいいでしょうか?
意見をお願いします。
規制で書き込めない方は、二次スパ避難所のこちらへ書き込みを。
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/game/30868/1175929011/l50
- 401 :それも名無しだ:2009/05/23(土) 15:27:55 ID:lF04EeHZ
- なんというか最近は特定の書き手だけで進めすぎてる気がする。
もちろん書き手さんの都合もあるし書いたもん勝ちなのが正しいんだが、超展開というものをここまで乱発されるとちょっと…。
話自体はすごい面白いしGJなんだけど、他の書き手さんが描く余地も残して置いた方がいいんじゃないか?
- 402 :それも名無しだ:2009/05/23(土) 16:01:00 ID:rxr4jhGB
- そうは言うがな、大佐
他人が繋げるように話を書いて、且つ面白くというのは大変なんだぜ
悪く言えば良いとこを取らせる訳だし
クライマックスはどんでん返しの4つや5つあるもんさ
正直言えば御大将復活〜ゴッドフィンガーの時点で超展開には耐性がついた
- 403 :それも名無しだ:2009/05/23(土) 16:39:10 ID:/nKQke59
- けどさーインベーダーがでたあたりからロワじゃなくなって来てるだろ
いやその前のキョウスケのあたりからか?
参加者同士の殺し合いのロワで主催とかインベーダーいらねえ
むしろノイが帰ってインベーダーきえるんなら大歓迎だ
参加者同士で決着つけてほしい
インベーダーやキョウスケみたいな超展開のせいでできたロワの歪みは、
超展開で治すしかないんじゃないの?
これからはまた超展開なしのロワに戻るだろ
- 404 :それも名無しだ:2009/05/23(土) 16:40:13 ID:3BgWbAJy
- 超展開のないスパロワなんてスパロワじゃないよ
- 405 :それも名無しだ:2009/05/23(土) 17:53:36 ID:ZM0WTwkF
- 今更超展開自重の二次スパに戻ろうったってソイツァ無理だ
思えばカズィがAI1萌になったりフロスト兄弟がガドルヴァイクラったりシャアが核ミサイルに乗ったりした時点でもう無理だったんだ
- 406 :それも名無しだ:2009/05/23(土) 18:08:41 ID:Cw6BkyWc
- 自分好みの展開にしたかったら、自分でタスキを受け取るしかないんだぜ?
- 407 : ◆XrXin1oFz6 :2009/05/23(土) 18:30:16 ID:kN0BUlU/
- あの……結局破棄すればいいでしょうか、修正すればいいんでしょうか?
- 408 :それも名無しだ:2009/05/23(土) 18:45:18 ID:lF04EeHZ
- 別に超展開が嫌だから破棄しろって言ってるわけじゃないぞ?
ただ超展開を収めるためにさらなる超展開っていうのはそろそろもうお腹いっぱいって言いたいんだよ
>>407
修正でいいかと。
一つ言うなら心情的なものなんだけど、主催者が「手出ししない」んじゃなくて「手出しできない」方がいいなぁ
アムロとかキョウスケが最後まで食い下がったのにまだ掌の上って言うのもなんか切ないし
- 409 :それも名無しだ:2009/05/23(土) 19:35:20 ID:/nKQke59
- インベーダーに関しては消す方法であとは修正でいいと思うぞ
寧ろこれでロワに戻るからマジGJ
- 410 :それも名無しだ:2009/05/23(土) 20:01:25 ID:4o8dOQDo
- 破棄する必要はまったくない。面白かったし修正で十分かと
個人的にはアルフィミィにアムロについてのリアクションが欲しかったかなぁ
まああの状況じゃそんな余裕なんてなさそうだけど
- 411 :それも名無しだ:2009/05/24(日) 06:19:18 ID:HptJTrEa
- 369って『最右翼』→『最有力』の間違い…だよな?
- 412 :それも名無しだ:2009/05/24(日) 11:22:52 ID:TwsoTzRN
- もっとも有力な、っていう意味もある
あそこだと最右翼最有力って言うよりも最適って言った方がきれいな気はするけどね
- 413 : ◆XrXin1oFz6 :2009/05/24(日) 21:50:59 ID:1S2Uio8H
- 了解しました。皆さんの意見をまとめて、
さらにブラッシュアップしたものを水曜日(予約の期限)16:35:22までに、仮投下スレに投下しておきます
- 414 :それも名無しだ:2009/05/25(月) 00:33:43 ID:PTg2jMkH
- みんな、臆せずガンガン予約しようぜ!
今更書き手参加しにくいとか気にせず参加してくれ、文章力とか気にする前に投下してみるんだ、投下しなきゃ始まらない。
初代だって、今活躍してるVv氏みたいに後半参戦者もいるんだし、三次から〜と言わずに書いてみよう!
途中抜けていまさら戻りにくいって人もいるかもしれないけど、気にしないでお願いします。
特定の書き手さんだけが頑張ってるって意見もあるけど、それならそうならないようみんなでリレーなんだし盛りたてようぜ。
みんな、二次スパに力を分けてくれ!
予約を! 誰でも構わない、予約の手を!
- 415 :それも名無しだ:2009/05/25(月) 19:23:55 ID:nSPmH9It
- な、なんだ?そんなに焦るほど切羽詰った状態なのか?
- 416 :それも名無しだ:2009/05/25(月) 23:34:50 ID:vaSgXUlc
- さっきイデオン見たんだけどさ…コスモの運命はロワでも何も変わらないな
- 417 :それも名無しだ:2009/05/25(月) 23:48:38 ID:ObqYHHpa
- この流れでイデオンの名前を出すなw
- 418 :それも名無しだ:2009/05/25(月) 23:55:09 ID:1W0kMzNS
- さっきチェンゲ見たんだんだけどさ
…竜馬の運命はロワでも何も変わらないな
- 419 :それも名無しだ:2009/05/26(火) 13:22:48 ID:Fj+ffWHv
- スパロボDでは地球に残ってるけどね。
ACE3はやってないけど。
- 420 :それも名無しだ:2009/05/26(火) 14:29:00 ID:ehcUoRnC
- 基本ゲッターやらイデやらに選ばれたような人間は似たような死に様しかさらしてないなw
- 421 :それも名無しだ:2009/05/26(火) 16:23:22 ID:zbuKK3De
- さっき一次スパロワ見たんだけどさ…ヒイロの運命は二次でも何も変わらないな
- 422 :それも名無しだ:2009/05/26(火) 20:01:09 ID:w97f9TQg
- グリリバのせいか?
- 423 :それも名無しだ:2009/05/26(火) 22:30:51 ID:zbuKK3De
- さっきヒイロ死亡シーン見たんだけどさ…グリリバキャラの運命はマサキでも何も変わらないな
主催者の目前まで行った?何寝言言ってるんですか
ていうか某所でマサキが完全にオオカミ少年として蔑まれてるのに吹いたw
- 424 :Alchimie , The Other Me:2009/05/26(火) 22:38:59 ID:no0Iaq9U
- 避難所のSS投下スレに、投下完了です!
すいません、アルフィミィの心理も書きたかったのですが、何度かいてもまとまりませんでしたorz
どうにも、テニアとアルフィミィに関してはかなり自分は適性がないようです……
題名が途中で変わっていますが、間違いに気付いたので直しただけです。
正確には『Alchimie』らしいので、そちらで登録をお願いします。リアルが多少忙しいので、すいません大幅な修正が必要な場合破棄でお願いします。
- 425 :それも名無しだ:2009/05/27(水) 07:44:23 ID:xRhRwQPf
- >>423
某葉鍵の初代最高は熱い死に方をしたんだぞ!
別のところでは後半、暗黒進化した某少女に殺されたけどな!
- 426 :それも名無しだ:2009/05/27(水) 22:52:38 ID:ghWiYukE
- >>424
忙しい中、修正乙でした!
大筋を変えることなく、要望も取り入れつつ綺麗にまとめてると思う
旧ミィの健気さがいい余韻になってるし、ユーゼスがラスボス化しそうな今、
レジセイアがどう化けていくか楽しみだ
- 427 :それも名無しだ:2009/05/28(木) 01:05:44 ID:LPtRBVNf
- 今年中に終わるかな
- 428 : ◆VvWRRU0SzU :2009/05/28(木) 21:55:45 ID:Gjc4gCu2
- ガウルン 統夜 テニア
投下します
- 429 :竜が如く ◆VvWRRU0SzU :2009/05/28(木) 21:56:48 ID:Gjc4gCu2
- 紫雲統夜は舞い踊る。死を撒き散らし破壊をもたらす闘争の舞踏を。
お前一人でやってみろ。戦場の師にしていつか命を取り合うと約束した男はそう言った。
目前には大軍――そう、大軍としか言えないほどの化け物達。どうやらインベーダーと言うらしい。
ヴァイサーガの武装では分が悪いと言ってみても、師は甘えるなと突き放す。
条件が悪いからやらないってのはただの臆病者だ。本当に強い奴ってのは、どんな状況からでも結果を出すもんだ――そう言われては言い返せない。
ダイゼンガーがその巨大な刀を一振り、大地に轟と深い溝が刻まれた。
『この線を越えさせるな』。師が出した条件はそれだけ。ただし、師も、護るべき少女の手助けもない。
いざとなれば助けてやるとは言われたものの、信用できたものではない。
しかしこれしきを乗り越えられないようでは、来たるJアークとの戦いに置いてテニアを護りきることなどできるはずもない。
そう己に言い聞かせ、統夜はヴァイサーガを黒い異形達へと突っ込ませた。
ユーゼスから取り戻した五大剣を当たるを幸い振り回す。
剣の結界は触れたもの全てを切り裂き、押し潰し、吹き飛ばしていく。
一瞬たりとも立ち止まらずに、さながら疾風の如く立ち位置を変えインベーダーを刻み続ける。
傍から見れば黒の濁流の中に一瞬ぽっかりと空白が生まれ、一瞬だけ蒼い影を見つけるもすぐに見失うことだろう。
そしてまた別の場所で空白地帯が生まれ、また別の場所で……そうして黒は刻一刻と駆逐され、蒼い影がその身を晒す時間も比例して増えていく。
しかし足りない、これでは足りない――何よりも、そう。先程まざまざと見せつけられたダイゼンガーの暴虐に、これでは全く届かない。
所詮は剣の届く範囲しか斬ることのできないヴァイサーガと違い、ダイゼンガーは豊富な武装と圧倒的なパワーを有している。
いわゆるロケットパンチというやつか、肘から先を発射してその強大なパワーと質量で薙ぎ倒すダイナミック・ナックル。
大量のインベーダーを一瞬にして焼き払う高熱放射砲、ゼネラル・ブラスター。
取り回しに優れた近接武装ガーディアン・ソード。これは現在も予備と称して統夜に貸し付けられているが。
そしてあらゆる形状、大きさへと変化する斬艦刀。統夜からすればこれが一番恐ろしい。
その巨大質量による一撃は戦艦ですら真っ二つだと思わせる威力。隙も大きいが、そこを液体金属による形状変化で千変万化に補っている。
刃の嵐をくぐり抜け、なんとか近づいたインベーダーを一瞬にして大刀からナイフへと姿を変えて切り刻んだのは記憶にも新しい。
遠距離では熱線砲。中距離ではロケットパンチと斬艦刀。近距離にはこれまた斬艦刀が活躍する。
どこから見ても隙がなく、またそれを操る操縦者も統夜の遥か上を行く男。
いつか戦うかもしれない、手を組んだことを今さらながらに後悔するが、逃げることもできはしない。
今の統夜には護るべき者がいる。最後まで共に生き残ると、誰かを殺してでも共にいると誓った少女……テニアが。
強くならなければいけない。テニアを護ることができるほどに、ガウルンさえも超える力を手に入れなければ。
インベーダーを相手取りながらも、統夜の脳裏に映るのは巨大な鎧武者、ダイゼンガー。
もし戦うことになればどうやって制するのか。どのような戦術なら有効なのか。
統夜はありったけの戦闘経験を動員して、インベーダー/仮想ダイゼンガーへと挑みかかる。
今までに戦った、見た、体験したあらゆる戦いから使えそうな情報を抽出し、分析し、練り上げる。
現実の戦いと、仮想の戦いと。二つの戦いを同時にこなす統夜の動きは、本人も気付かない極めて小さなレベルで変革を始めていた。
やがて脳裏に去来したのは市街地で交戦した、変形する白い特機。
目にも止まらぬ動き――超音速の世界。
- 430 :竜が如く ◆VvWRRU0SzU :2009/05/28(木) 21:57:30 ID:Gjc4gCu2
- □
ユーゼス達と別れて街を南下し、休憩を挟み何時間か過ぎた頃。
禁止エリアのすぐ傍で、アタシ達はインベーダーと戦いになった。
たっぷり休んだし、こっちは三機だ。恐れることもなく蹴散らしてやろうと思ったら、ガウルンは統夜に一人で戦えって言った。
当然アタシ達は抗議したけど、統夜がガウルンの挑発に乗って一人で突っ込んでいってしまった。
すぐさまアタシも後を追おうとしたけど、ガウルンが「統夜が強くなる最後のチャンスだ」と言ったためここでこうして見ているという訳。
でも、アタシやガウルンが手を出すまでもなく、インベーダーは一匹たりとも線を越えて向かってくることはなかった。
アタシにはそれが、統夜の働きによるものかあるいはこの物騒極まりない獲物を肩に担いで観戦している男を恐れているのか、判断はつかなかったけど。
とにもかくにも、おかげでベルゲルミルは再生に全ての力を回していられる。
いざとなればすぐに動く準備はしているものの、この様子ではその必要はなさそうだ。
警戒すべきはインベーダーではなくこの男、ガウルン。アタシの理性や野性、本能といった全てがガウルンを危険だと叫んでいる。
モニター越しに睨みつけていた視線に気付いた訳でもないだろうけど、当のガウルンから通信。
「いやいや……やるもんじゃねえか、統夜は。俺ぁ十匹くらいは取り逃がすかと思ってたんだが、中々どうして。愛は偉大ってことかねぇ」
「……何が言いたいのよ」
「嬢ちゃんがいるからこそ、統夜は強くなれるってことさ。青春ってな良いもんだぜ、俺にゃ眩し過ぎるくらいにな」
吐き出す言葉全てに裏があるんじゃないかと思える。
ガウルンはアタシのしたことを知ってる。それを統夜に言うことなく、ヌケヌケと協力を持ちかけてきた。
どうせこう言いたいんでしょ? 『統夜にバラされたくなければ黙って俺と手を組んでな』って。
機会があればと思わざるを得ない。ガウルンを排除する機会――。
しかし、主催者から譲り受けたって機体、ダイゼンガー。これは反則でしょ?
傷一つないまっさらの新品ってだけでもズルいのに、その性能はアタシのベルゲルミルや統夜のヴァイサーガがオモチャに見えるほど。
こんな奴にあげるくらいならアタシに――いや、アタシじゃ上手く使えないか。ならせめて統夜に――くれればいいのにさ。
「ところで、テニア。今の内に話しときたい事があるんだがよ」
「何よ。統夜が戻ってきてからでいいでしょ?」
「いや、あいつは駄目だ。なんせ、あいつがアテにしてるユーゼスについてだからな」
ガウルンの声の調子が変わる。真面目な話ってことだろうけど。
「率直に言ってだ。俺はあいつが信用できない。テニア、お前さんはどうだ?」
「信用できないって、首輪の解除がってこと? 確かにあいつがアタシ達の首輪を素直に外すとは思えないけど」
「いや、それ以前の問題だ。あいつが言ってたろう、Jアークの技術を手に入れるって。じゃあ手に入れた後、あいつの機体はさらに手がつけられなくなる訳だ。
それこそ俺達が束になっても叶わないくらいにな」
「……だから何よ。主催者と戦うんだったらむしろ心強いじゃない」
「そこだよ。主催者と戦うにはそりゃ強い機体が、あるいは大勢の手駒がいる。
あいつは今そのどっちも持ってるわけだが、もし手駒も要らなくなるくらい機体が強化されたらどうする?
首輪の解除なんて餌をくれてやる必要もない。邪魔なら踏み潰せばいいだけだからな。その時点で協力関係なんて破綻すると思わねえか?」
「じゃあ、邪魔しなければいいじゃない。ユーゼスに協力すれば、少なくともこの殺し合いは終わるでしょう?」
「そして、あいつが新たな絶対者になる……ぜ?」
「ユーゼスが、アタシ達を切り捨てるって言うの?」
「俺ならそうするね。考えても見ろ、お前がユーゼスの立場だったとして俺やJアークを見逃すか?
自分に歯向かうかもしれない、痛手を与えるかもしれない奴がいるってだけで間引く理由にゃ十分だ。そして、それは何も主催者を倒した後には限らない」
「どういう意味よ……?」
「Jアークを沈めた時点で俺らは用済みってことさ。十中八九、奴は俺達も喰おうとするぜ?
目を引く技術ではなくても、動力や装甲なんてな機体を強化する材料になる。
特に嬢ちゃん、お前の機体はアウトだ。そいつぁ自力で再生する機能を持ってるだろ? あいつが見逃す訳はない」
むう、と考えさせられる。たしかに何でも取り込むユーゼスの機体からすれば、ベルゲルミルの持つマシンセルとて狙われてもおかしくはない。
- 431 :竜が如く ◆VvWRRU0SzU :2009/05/28(木) 21:58:12 ID:Gjc4gCu2
- 「そしてお前さんが喰われちまえば統夜が黙っているはずがない。が、統夜一人であいつに勝てるはずもないだろ?
結局お前も統夜も、そして俺もあいつの胃袋の中で仲良く消化されるのを待つだけってこった。ククッ、とんだ同盟もあったもんだな、おい?」
そう言うくせにガウルンはとても楽しそうだ。どう見てもその結果を受け入れているとは思えない。つまり――
「喰われる前にユーゼスをやる……そう言いたいの?」
「Exactly(その通りでございます)。お前さんだって、あいつの言うなりに動くつもりはなかったんだろ?
ここは俺に賭けてみないか? まあ、損はさせないと思うぜ」
「じゃあ……じゃあ、首輪はどうするのよ。これがなきゃ結局同じことじゃない」
「俺と考えが違うのはそこだな。いいか、首輪なんざ『外す必要はねえ』。俺はそう思ってるんだよ」
「は、外す必要がないって……どういうことよ! それじゃアタシと統夜が生き残ることなんてできないじゃない!」
「二人で生き残る、ってのを違う視点から解釈すればいいのさ。いいか、お前さん達は要するに二人で元の世界に帰れりゃいいんだろ?
何も主催者を倒す必要なんてない。優勝して、残った片方を生き返らせりゃいいだけだ。シンプルにして確実な方法だろ?」
「生き返らせるって……そんなこと信用できる訳ないじゃない。いくらあいつらが化け物だからって……」
「いや、証拠ならあるさ。お前さんの目の前にな」
目の前……アタシは目を丸くした。それは、つまり。
「そう、俺も実はここに来るまでに死んだんだよ。砲弾に腹吹っ飛ばされてな。朦朧とする意識の中、最後はここに一発喰らった。ありゃ間違いなく死んだだろうぜ」
トントン、とガウルンは額を指で叩く。
そこにはたしかに薄っすらと……銃創のようなものが見えなくもない。
死んだガウルンを主催者が蘇生させた。なるほどこれは嘘ではないのかもしれない。
「優勝しさえすれば人を生き返らせることだってできる。これは信用してもいいと思うぜ?」
「……そのためには、アンタだって排除しなきゃいけない。それはわかってるの?」
「もちろんさ。俺だってそりゃ生きて帰りたいんでな。いつかお前さん達と俺と、戦うことになるのは間違いない。
が、それはユーゼスを排除してからだ。あんな奴がいたんじゃ優勝なんて夢のまた夢だからな」
「でも、Jアークはどうするのよ? 見逃すって言うの?」
「まさか。まずはあいつらをユーゼスにぶつけるのさ。で、適度に消耗して警戒が逸れたユーゼスを背中からバッサリ……な。
さすがにあいつだって敵と戦ってる時はこっちまで気を配ることはできねえだろ。逆に言えばその瞬間しか、あの機体をやるチャンスはねえってこった」
「……具体的には、どうするの?」
「Jアークの奴らは手練れだ。ユーゼスも相当の手傷を負うだろう。そこまで俺達が落ちてないことがまず大前提。
次にJアークの戦力が低下していることも重要。ユーゼスを殺った後あいつらにやられちゃ世話ねえしな。
最後に、アキト……ユーゼスの手駒だな。こいつもおそらくだが、俺達と同じことを考えてるはずだ。俺達が動けば多分乗ってくるだろ」
「アキト……アンタ、あいつに狙われてたんじゃなかったの?」
「さすがにあいつだって状況を読めないほど馬鹿じゃない。俺を殺したって、ユーゼスがいればその時点で優勝なんて不可能だ。
ユーゼスを取り除く絶好の機会、逃す奴じゃねえよ」
「つまり、半壊したJアークとアキト、そしてアタシ達でユーゼスを袋叩きにするってことね」
「そういうこった。で、首尾よくユーゼスを落とせば次にアキトとJアーク。アキトは俺に任せてくれりゃいい。お前らは弱ったJアークに止めを刺す」
「そして、最後にアンタとアタシ達で決着をつける……」
「そう、それで終いだ。俺が生き残るかお前らが生き残るか……それはその時の運次第だ。悪くねえ話だろ?」
現状、アタシと統夜以外は全て敵と言っていい。これで生き残るのは正直厳しい。
しかしガウルンのプランが完遂すれば、残るのはアタシと統夜、そしてガウルン。
一筋縄でいく男ではないけど、それでもアタシと統夜の二人掛かりなら勝機はある。
よし……
「乗ったわ、その話」
「オーケー。わかってくれると思ってたよ、嬢ちゃん」
「あまり馴れ馴れしくしないでよ。最後は戦うんだから」
「つれないねぇ。まあいい、よろしく頼むぜ。統夜にはお前さんから話しといてくれ。俺が言うとなんだ、変に勘ぐられるだろ?
- 432 :竜が如く ◆VvWRRU0SzU :2009/05/28(木) 21:58:54 ID:Gjc4gCu2
- と、すっかり一人で戦っている統夜のことを忘れていた。
視線を戻し――アタシは愕然とした。
「インベーダー……もうほとんどいないじゃない」
「ははぁ、こいつぁ驚いたな。お喋りしてる間に全部やっちまうとは」
ガウルンもさすがに驚いたようだった。
ダイゼンガーみたいな武装があるならまだしも、ヴァイサーガは基本的に剣一本で戦う機体だ。こんなに早く多数の敵を殲滅できるとは思えなかった。
視界に一瞬、蒼い影が揺らめく。
巨大な異形が、影目掛けて突き進む。あわや激突すると思わせたそれは、しかし影を『すり抜けて』地面へと激突する。
インベーダーの頭に鋭い小刀が突き刺さり、弾ける。
投げたのはさっきと寸分違わぬ位置にいるヴァイサーガだ。
「あれ、今……? すり抜けた、よね?」
「分身、ってやつかね。ぎりぎりまで敵を引き付けておいて、紙一重でかわしたのさ」
ヴァイサーガは、よく見れば足を絶えず動かしている。
全体としてはそこにいる、でもいざぶつかろうとしても風に舞う木の葉のようにふわりと逃げる。
ヴァイサーガは最高速はそれほどでもないが、瞬発力には秀でている。
静止状態から最高速への、一瞬の加速。
大仰な推進装置を持たないヴァイサーガがそれを可能とするには、足捌きこそが肝要だとガウルンが言う。
走り回るのではなく、最小限の動きで攻撃をかわし、隙を見せた敵に反撃を加えていく。
「どうやら、ヴァイサーガを完全にモノにしたみてえだな。ククッ……いいねぇ統夜。それでこそ……そうでなきゃ面白くねえ……」
ぼそりと呟かれた声に込められた、滴るような悪意。全身が総毛立つような、おぞましい気配。
アタシはガウルンが今にも統夜に襲いかかるんじゃないかと警戒したけど、幸いガウルンは自制したようだった。
わかっちゃいたけどコイツはヤバい。
統夜に早く戻ってきて欲しいと、必死で祈る。
その統夜に、残ったインベーダーが合体して(というか融合して)大蛇のようになって突進する。
ヴァイサーガの姿が一瞬ブレて――大蛇の周りを、蒼い騎士が剣を掲げて包囲する。
遠目に見てもどれが本物かわからない。対峙していたインベーダーは尚更だっただろうと思う。
やがて分身たちが消え――否、一つになり。
インベーダーがそれを察知した頃には、光のように駆け抜けたヴァイサーガの剣が大蛇を一刀両断に切り裂いていった。
- 433 :竜が如く ◆VvWRRU0SzU :2009/05/28(木) 21:59:42 ID:Gjc4gCu2
- □
全てが己の掌の上で回っている。
ガウルンはまさに今そんな気持ちだった。
インベーダーを殲滅した後。
完全に陽が落ち、静寂と共に暗い夜が訪れる。
さすがに疲労した様子の統夜を休ませつつ、テニアが先程の件を話している。
見張りを買って出たガウルンはその様子をさも愉快そうに眺めていた。
統夜の成長は予想以上だ。
欲を言えばJアークの連中と戦わせることでもう少し経験を積ませたいが、この分では先にガウルンの方が参ってしまいそうだ。
あと少しすれば会談の場に出発しなければならない。が、今しばらくは休憩の時間がある。
「もう少し……もう少しの我慢だな。ああ、でも……俺は我慢弱いからなぁ。待てるかどうか……」
テニアもこれでユーゼスを殺す方に大分傾いただろう。
主催者が人を生き返らせることができるかどうかなんて知らないし、興味もない。あれで騙される方がマヌケというものだ。
とにかくこれで下地はできた。
Jアークと、ユーゼスと、アキトと、統夜・テニアと、そして自分。
誰もが誰かの背中を狙う、考えるだに楽しげなブラッド・パーティ。
頭の中で『その時』のことを想像するとそれだけで身体が震える。しばらくはこれだけで退屈しない――そう思っていると、通信を求めるランプが点灯する。
このコードはオープン回線ではない。ガウルン個人に宛てた内容、ということだ。
統夜達との通信を切り、その秘匿回線を開く。
そのモニターに映ったのは、つい数時間前に仕事を依頼してきた主催者の少女だ。
あまり進捗しない仕事に痺れを切らしたのだろうか。宥めすかす言葉をいくつか脳裏に浮かべ、ガウルンは笑みを浮かべ応対する。
「よう、お嬢ちゃん。どうした恐い顔して。ああ、仕事ならサボってるんじゃねえよ。今は機を窺ってるところだぜ」
「あなたにお伝えしなきゃいけないことがありますの」
「ん? なんだって?」
「先程、あなたに依頼した仕事の達成を確認しましたの。ただし、あなた以外の人物による、ですけども」
「へへぇ……誰かがあの化け物を殺ったてのかい? そりゃすげえな。一体誰だ?」
「それは、お答えできませんの。公平性を欠きますから」
そうかい、と投げやりに答えた。元より聞いたところでどうする気もなかったが。
しかしアレを撃破した者がいたとは驚きだ。おそらくユーゼスの機体ですらあれには手こずるだろうに。
「しかし……だとするならお嬢ちゃん。俺の仕事ってな、どうなるんだ?」
「要件はそれですの。あなたは本来なら数時間前に『死んでいる』はずでしたの。それをこの仕事を行うために延命させた……でもあなたは仕事を達成できなかった」
「お、おいおい。じゃあもう用済みだから死ね、だなんて言わねえだろうな?」
「そうは言いませんの。ただ……ペナルティを受けてもらいますの。でなければ、『公平』ではないでしょう?」
少女が言葉を切る。瞬間、懐に違和感。
探ってみれば少女から渡された薬だ。それが――蠢いている。
滑らかだった錠剤の表面が粟立ち、細い糸のようなものを四方に撒き散らす。糸は寄り集まり、束になり――ガウルンの掌へと突き刺さる。
「な、なんだ……こいつはッ!」
「あなたがそれを飲んでいてくれればもっと簡単でしたのに。種明かしをしますと、それはあなたも現在感染している『DG細胞』の結晶体ですの。
ただ、別の方に渡したものと違ってほとんど希釈していない……どころか、『私達』の眷族をちょっぴりブレンドしたスペシャル版。
飲めば首輪が爆発しなくなるというのは、要するにあなたを『私達』と同じモノと認識させることで共食いを避けるということでしたの」
- 434 :竜が如く ◆VvWRRU0SzU :2009/05/28(木) 22:00:43 ID:Gjc4gCu2
- 淡々と説明する少女に反論もできない。掌に解けた薬は血管へと染み入り、凄まじい違和感とともにガウルンの身体を駆け廻っていく。
異物が体内を蹂躙する感触の後やってきたのは、激烈なまでの痛みだ。
外傷ではない……体内から発する痛み。しかもこれには覚えがある。
「あなたは元々癌に侵されていましたの。それをDG細胞が同化することで沈静化していた……これも考えてみれば出血大サービスでしたの。
ともかく、その癌細胞を今新たに生成いたしましたの。あなたにとっては慣れた痛みでしょう?
あ、義足までは取り上げませんから安心してほしいですの。その機体は身体の動きに連動して操縦する物ですから、そこは配慮いたしましたの!」
指をVの形に突き立てる少女に悪態の一つも吐いてやろうとしたが、あまりの痛みに声も出ない。今まで好き勝手やってきた分反動で一気に来たということなのか。
が、時が経つにつれて痛みを幾分和らいでいく。顔中に脂汗を浮かべ、ガウルンはモニターの向こうの少女を睨みつけた。
息も絶え絶えに声を出す。
「ありがとよ……と、言えばいいってのかい? 違約金にしちゃ、随分……あこぎじゃねえかよ」
「あなたがモタモタしているからですの。とにかく、これで全ては公平――ここからはあなた達だけのステージ。もう、私からは一切の手出しは致しませんの。では、健闘をお祈りしていますの」
通信が切れた。もう用済みということなのだろう。
息を吐く。とんでもないことになった……ガウルンは己の身体の状態を冷静に観察する。
懐かしい癌の痛み。すぐに動けなくなるということはないだろうが、このダイゼンガーを操縦する上では長時間の戦闘はかなりの危険を伴うだろう。
(どうやら俺にはもう時間がねえらしい。だが、それならそれで……)
やり様はある。
元々は棺桶に片足を突っ込んでいたような自分なのだ。ここまで楽しめた事、それ自体が僥倖。
あとはこのまま心穏やかに最期の時を迎える――そんな訳はない。
どこまで行っても俺は俺だと、痛みの中でなお男は笑う。
残り時間が少ないのなら、その中でできるだけ、やれるだけ楽しむ。
命が惜しい? 冗談じゃない。そんな瑣末ごとで妥協はしないからこそのプロなのだ。
方針が変わるわけではない。
ユーゼスを切る。これは確定事項。
先程までならその後そこにいる全ての者を味わうつもりだったが、そうもいかなくなった現状、目標を絞る必要がある。
紫雲統夜。
こいつしかいない――ガウルンは強くそう思う。
別に死ぬことなど怖くはないが、やり残したことがあるまま朽ちるのは我慢ならない。
カシムと、それが叶わないのならせめて統夜と。
心ゆくまで殺し合い、充足を得たい。それだけが、今のガウルンが望むただ一つの夢だ。
(アムロ、ブンドル……あいつらはもういい。Jアークの奴らもだ。シャギアって兄ちゃんは惜しいが、これもパス。ユーゼス……大物だが、これもいい。どうせ奴には蟻が砂糖に集るみてえにお相手がいることだしな)
ユーゼスの目的を考えれば、Jアークの面々が抑えてくれるだろう。戦力的な面から抑えきれずとも、要するにこちらに回す手がなければいい。
(アキト……あいつぁ、もったいねえなぁ。できればあいつも喰っちまいたいところだが……まあ、欲張るのはうまくない。あいつから来るってんなら話は別だが、そうでない限りはお預けだな)
思い返してみればガウルンはここでずいぶん色んな奴に会った。
会ったが、その数に比較して彼自らが手を下した人物はそれほど多くはない。
良い機会だと、ガウルンは己の軌跡を思い起こしていく。
- 435 :竜が如く ◆VvWRRU0SzU :2009/05/28(木) 22:01:50 ID:Gjc4gCu2
- まず密林で交戦したガンダムに乗っていた老人だ。
中々どうして、年齢に似合わずかなりの手練れだった。年寄りの冷や水とは言うが、あの勝利は機体性能によるものと言ってもなんら不思議ではない。
開戦の狼煙としては幸先が良かったと言える。
次はあの戦艦同士の乱戦の中で戦った少年だ。
彼もまた中々の粘りを見せたが、いかんせん機体のクセが強すぎたのだろう。しかるべき機体に乗っていればもっと楽しめたのだろうと思う。
そう言えばあの機体、何故か修復されてキョウスケという男に乗り代えられていたが……ガウルンと同じく、あの主催者の少女の下へと転移したのだろうか?
彼のような正義感溢れる若者が死に、自他共に認める外道であるところの己が生き残る。神様とは全く捻くれたものだと笑う。
最後に、アキトの思い人である女。
これについてガウルンに特に思うところはなかった。彼女はあくまでアキトをこちら側に引き寄せるための餌でしかない。
そして、視線を傍らの少年少女へと巡らせる。そう、彼らこそがガウルンの人生における最後の『ご馳走』だ。
統夜の戦闘技術。愛しのカシムと比べればまだまだ不満があるが、それでも一応は及第点というところだろう。
戦場の機微という物も心得てきている。先程見せた動き。あれなら十分すぎる。
残る必要な物は精神的な『突破』だ。統夜がそれこそ自分の命以上に護ろうとする者……すなわちテニアを奪うことでそれは完成を見る。
ガウルンが、あるいは誰でもいいがテニアを殺したとすれば、統夜は間違いなくその下手人を殺そうとするだろう。
それがJアークの者であるとすれば、おそらく彼は獅子奮迅の働きを見せ難なく復讐を達成するはず。
だが、それではダメだ。その後ではもう、統夜は燃え尽きた灰のような残骸になる。
立ち直らせることもできないではないが、やはりその熱はテニアを失った直後よりは冷めている。何よりガウルンにはそれを待つ時間もなくなった。
己が死んだ後にも祭りが続くのは癪だとガウルンは思う。どうせなら、最後の一花を咲かせるところで全てを決してしまいたい……誰も彼も巻き込んで。
そのためにはユーゼス側によるJアークの一方的な蹂躙というのは面白くない。
適度にJアークを攻撃し、場の趨勢が決しかけたところで――ひっくり返す。
テニアに話した通り、アキトは乗ってくるだろう。奴は完全な優勝狙い。
奴にとって目下のところ最大の障害はJアークではなく、頭一つ二つは飛び抜けた力を有するユーゼスだ。
Jアークをある程度叩き力を奪っておけば、アキトは必ずその狙いをユーゼスに変えるはずだ。
でなければその後必ずユーゼスに喰われる。チャンスはその時しかない。
まずガウルンがユーゼスを撃つ。アキトがそこに乗ってくる。生き残ったJアークの者達も、この時とばかりユーゼスを落とそうとするだろう。
そしてその時こそ、統夜とテニアは完全なフリーになる。
思い出す。カシム――いや、『相良宗介』と千鳥かなめの関係を。
今の統夜とテニアの関係は彼らに酷似している。
これは予行演習なのだ。万が一己が生き残ったとき、もう一度その甘美な果実を味わう。いや、より上手く事を成すための。
竜は古来より生贄を求めるものだ。そして生贄は若い娘と相場が決まっている。
さしずめ統夜は騎士だろうが――残念なことに今の彼は竜を敵とは見ていない。
護る間もなく姫を奪われた騎士に残るのは何だ? 決まっている――竜への復讐だ。
(なあ、統夜。俺の最後のダンスのお相手はお前だ。頼むぜ、俺を失望させないでくれよ……?)
獲物を前に舌舐めずり。
恋焦がれる宿敵に窘められたこれは、永遠に直ることのない癖だなと笑う。
毒に侵された竜は、その背に覇を競うべき騎士を乗せて舞う。
最後の戦場、騎士との決着の場へ向けて。
来たるべき破滅を恐れることなく、心待ちにして――。
- 436 :竜が如く ◆VvWRRU0SzU :2009/05/28(木) 22:02:31 ID:Gjc4gCu2
- 【ガウルン 搭乗機体:ダイゼンガー(バンプレストオリジナル)
パイロット状況:疲労(小)、全身にフィードバックされた痛み、DG細胞感染 ガンが再発
機体状況:EN100%
現在位置: H-3
第一行動方針:『最高に熟した』統夜と戦う。そのため乱戦に紛れテニアを殺す。
第二行動方針:次の戦いで生き残っている者を全員殺す。
最終行動方針:元の世界に戻って腑抜けたカシムを元に戻す
備考1:ガウルンの頭に埋め込まれたチタン板、右足義足はDG細胞に同化されました
備考2:ダイゼンガーは内蔵された装備を全て使用できる状態です】
【紫雲統夜 登場機体:ヴァイサーガ(スーパーロボット大戦A)
パイロット状態:疲労
機体状態:左腕使用不可、シールド破棄、頭部角の一部破損、全身に損傷多数 EN50% ガーディアンソード所持
現在位置: H-3
第一行動方針:Jアークに対処。
第二行動方針:ガウルン、ユーゼスと協力。でも信用はしない
最終行動方針:テニアと生き残る】
【フェステニア・ミューズ 搭乗機体:ベルゲルミル(ウルズ機)(バンプレストオリジナル)
パイロット状況:焦り
機体状況:左腕喪失、 EN50%、EN回復中、マニピュレーターに血が微かについている
現在位置:H-3
第一行動方針:Jアークに対処。最中にユーゼスを討つ
第二行動方針:ガウルンと協力。隙があれば潰す。
最終行動方針:統夜と生き残るor統夜か自分どちらかが優勝して片方を生き返らせる。
備考1:首輪を所持しています】
【二日目 20:45】
- 437 :それも名無しだ:2009/05/28(木) 22:04:05 ID:Gjc4gCu2
- 投下終了
- 438 :それも名無しだ:2009/05/28(木) 23:06:19 ID:w2Bw80bZ
- 投下GJ!
ついにガウルンもここまで順風満帆だった反動が来たかw
しかし統夜もいい調子で成長してるし、裏取引も進んで……本当に最後が近いんだな……
ガウルンの回想を見て、ふとそう思った。いや本当にGJでした!
- 439 :それも名無しだ:2009/05/28(木) 23:43:13 ID:VL/LNAA9
- ん、ヴァイサーガの刀って取り戻したんだっけ?
てっきりガーディアンソードで戦うもんだと思ってた
- 440 :それも名無しだ:2009/05/28(木) 23:45:36 ID:4xKHZPOI
- 投下乙!
統夜の成長も進みガウルンのもくろみも進み先が気になります。
ただ統夜は白い特機を思い浮かべたようですがサイバスター(ブンドル)と統夜は未遭遇だったように思います。
- 441 :それも名無しだ:2009/05/28(木) 23:46:20 ID:w2Bw80bZ
- >>439
状態表見ると返されてるのが分かるよ
それ指摘されて作者が返したことにしてたし
- 442 :それも名無しだ:2009/05/28(木) 23:48:53 ID:Gjc4gCu2
- >>440
いや、真ゲッター2です
- 443 :それも名無しだ:2009/05/28(木) 23:58:14 ID:4xKHZPOI
- 成る程失念してました。
白い特機+高速でサイバスターしか思い付かなかった。
ありがとうございます。
- 444 :それも名無しだ:2009/05/29(金) 18:35:30 ID:iSEFVwf1
- しかし気付けば容量が425k……500kまであとSS二本くらいかな?
次スレの観察日記とか用意したほうがいいかも……w
ガチな話、次スレの10で終わりか?
もつれこんでもその次、11で終わりそうだが
- 445 :それも名無しだ:2009/05/29(金) 20:02:25 ID:90/OqYUT
- そういや開始はもうちょい先だけど今日で二次スパの初代スレが立ってからちょうど三年か
最初のスタートダッシュとここ半年を除けば過疎りっぱなしだったのによくここまで来たもんだ
初期から見てた人間として何か感慨深いな
- 446 :それも名無しだ:2009/05/30(土) 17:35:23 ID:FrXGjEVE
- 本当に加速したよなあ
気付けばあと12人だぜ?
全員の先頭突入までのつなぎのターンが終わればたぶんノンストップで行きそうだw
- 447 :それも名無しだ:2009/05/30(土) 19:57:54 ID:Ap1iSoST
- 正直、昔の次はどれだけさきか……って感覚はなくなったw
展開が加速したのもあって、気付いたら「次は、次はまだか!?」って感じだwww
- 448 :それも名無しだ:2009/05/30(土) 21:19:07 ID:Zep/Trvg
- しかしなんでこんなに一気に加速したのかw
- 449 :それも名無しだ:2009/05/31(日) 01:39:27 ID:dzwFIf1c
- このスレも、600行くか行かないかのペースで消費されそうだ……w
- 450 :それも名無しだ:2009/05/31(日) 20:52:47 ID:XifiCllP
- ::| 从
::| 从从
::| 从从从
::|. / |.| ヽ.
::|. / |.| ヽ
::|-〈 __ || `l_
::||ヾ||〈  ̄`i ||r‐'''''i| | 一次に参加していた私も応援しているぞ。
::|.|:::|| `--イ |ゝ-イ:|/ ところで、私の出番はまだかな?
::|.ヾ/.::. | ./ 終盤の展開で困った時は、いつでも呼んでくれたまえ。
::| ';:::::┌===┐./
::| _〉ヾ ヾ二ソ./
::| 。 ゝ::::::::`---´:ト。
::|:ヽ 。ヽ:::::::::::::::::ノ 。 `|:⌒`。
::|:::ヽ 。ヾ::::::/ 。 ノ:::i `。
::|:::::::| 。 |:::| 。 /:::::::|ヾ:::::::::)
::|::::::::| . 。 (●) 。 |:::::::::::|、 ::::〈
- 451 :それも名無しだ:2009/05/31(日) 21:09:57 ID:dzwFIf1c
- ちょっと……頭燃やそうか……
- 452 :それも名無しだ:2009/06/01(月) 15:11:32 ID:Go96jw9V
- 最近の加速具合からすると7v氏が戻ってくるまでに終わりそうだな…
ここのエースはやっぱあの人と思うから間に合って欲しいが
- 453 :それも名無しだ:2009/06/02(火) 15:11:33 ID:krLZU5kY
- 俺も後半参加で結構書かせてもらってるけど、やっぱり7v氏に終盤参加してほしいと思う。
やっぱり、二次スパのエース書き手というと7v氏だと思うよ。
- 454 :それも名無しだ:2009/06/06(土) 10:26:32 ID:pAG7Y3PA
- 職人に期待age
- 455 :それも名無しだ:2009/06/06(土) 21:58:22 ID:HIUAvnxy
- 7v氏の復帰はいつだっけ?
まだまだかと待っている書き手がここにも一人
- 456 :それも名無しだ:2009/06/07(日) 00:54:40 ID:PsDu0tYx
- 7v氏は俺も待ち遠しいが他の人が投下しにくくなるから程々にな
- 457 : ◆VvWRRU0SzU :2009/06/07(日) 02:58:58 ID:ODozYKxW
- 空気は読むものじゃない、作るものなんだ
ということで全員予約
- 458 :それも名無しだ:2009/06/08(月) 00:26:07 ID:tgwVd/EE
- なん……だと……?
じっくり書いていってね!
- 459 :それも名無しだ:2009/06/08(月) 14:44:07 ID:qapd2aN6
- 次スレが必要なのは確定的に明らか
どうするよ? 何時に投下しますとか投下予告があったら立てる?
- 460 :それも名無しだ:2009/06/08(月) 21:08:24 ID:JfFp3GPd
- 大惨事流用とかは?
- 461 :それも名無しだ:2009/06/08(月) 21:55:47 ID:qapd2aN6
- 第三次は埋め立てにあって既に消滅しておるぞ
- 462 :それも名無しだ:2009/06/08(月) 23:02:29 ID:ioZHOBFA
- 第三次なんて立ってたのか…
初代完結のときに二次終了後に考えることにしたんじゃなかったけか?
- 463 :それも名無しだ:2009/06/09(火) 03:00:51 ID:nvKbS0rw
- 次スレは問うか予告の後で賛成。
早すぎると保守がいるし。
- 464 :それも名無しだ:2009/06/09(火) 16:16:24 ID:nvKbS0rw
- 前も同じこと書き込んだが、7v氏復帰を待ってたもののこの速度だと無理かもなw
書き手として最終回の準備を進めよう。もうあと数話でそこまで行きそうだ。
てか、こんなことを言うと鬼が笑うかもしれないが、そろそろガチで見え始めたから聞くが
最終回の予約とか形式どうしようか。いろいろ方法はあるが。
- 465 :それも名無しだ:2009/06/10(水) 00:20:19 ID:Q8/0q73i
- いつもどおり、やりたい人が予約する方針を提案したい。
ただし、予約期限は長めにとっていいんじゃないか? 3週間か、一か月かそのくらいは。
- 466 :それも名無しだ:2009/06/10(水) 00:31:28 ID:BK0MOFyG
- あとは、過去に投下実績がある人に限定すればいいと思う。
もしあればエピローグも同様で。
次スレかその次で最終回+大感想大会になるかな?
- 467 :それも名無しだ:2009/06/10(水) 01:35:57 ID:mRvrYpvW
- >>462
そうだな、つまり立てたのはそういう奴だ
>>464-465
ここまで頑張ってきた作家諸氏は皆最終回書きたいんじゃないか
個人的には希望者複数なら競作もありかなーと思わんでもないが…戯言だ、忘れてくれw
- 468 : ◆XrXin1oFz6 :2009/06/10(水) 22:54:42 ID:Q8/0q73i
- ええと、これでトリキーあってるかな?
自分が投下したlife goes on からAlchimie , The Other Meまでの誤字や脱字を修正しておきました。
読みやすくなっていると思います。あと、Alchimie , The Other Meに関してですが仮投下に1レス分抜けていることを確認しましたorz
そちらもwikiに収録しておきましたので、よければチェックをお願いします。
- 469 :それも名無しだ:2009/06/11(木) 01:02:55 ID:uVRWPQrW
- 修正GJ!
で、最終回はまだ早くね? 一桁半ばになってからでいい気がする
- 470 : ◆VvWRRU0SzU :2009/06/11(木) 22:09:59 ID:P8usi2Ro
- えー、延長をお願いします。
新スレは必須だと思うので、完成次第投下予告します。
- 471 :それも名無しだ:2009/06/11(木) 23:19:36 ID:RwMG5HPu
- 了解〜
- 472 :それも名無しだ:2009/06/12(金) 00:20:09 ID:F0ZTVoYX
- っ「応援」「激励」
しかしスパロボNEOは凄いな。第三次スパロワだとマグナムエースがガイキングに乗ったり
ダ・サイダーがダンクーガに乗ったりする可能性があるわけか…
- 473 :それも名無しだ:2009/06/12(金) 01:35:23 ID:ky9zx302
- MAP上の学校が変型したりエルドランが見せしめにされたりするかもな
- 474 :それも名無しだ:2009/06/12(金) 01:47:43 ID:aXhdjS5S
- あー…まあ、把握とか書きやすさと化も考慮する心遣いも忘れずにな。
自分が書き手として最後まで付き合う気なら全然気にしなくていいが。
- 475 :それも名無しだ:2009/06/12(金) 09:02:21 ID:4pw4eejF
- 新ゲ竜馬の第三次参戦フラグktkr
- 476 :それも名無しだ:2009/06/12(金) 10:45:00 ID:56xQmdtD
- >>475
いっそのことダブル竜馬+ゴウでゲッター愛に満ち溢れた会場をだな…
- 477 :それも名無しだ:2009/06/12(金) 11:03:58 ID:6Gb9/BYA
- >>470
つ「火星丼」
つ「母さんのシチュー」
期待してるぜ
- 478 : ◆VvWRRU0SzU :2009/06/13(土) 14:56:50 ID:95dt0FM2
- すみません・・・ほんとすみません
投下予告といきたいところなんですが、今日の夜にはちょっと投下できそうにないです
分量があるので支援も必須でして、明日の夜9時頃に投下してもよろしいでしょうか?
ご意見をお願いします
- 479 :それも名無しだ:2009/06/13(土) 17:21:21 ID:TXJ8qgAT
- そう焦ることもないでしょうし、大幅な遅刻さえなければ住人たちから文句が出ることもないと思います
無理のないようなペースで頑張ってください、待ってます
- 480 :それも名無しだ:2009/06/13(土) 17:43:00 ID:FD1fjY34
- OK
- 481 :それも名無しだ:2009/06/13(土) 21:55:01 ID:hkwG7ZNg
- 別に一日も遅れないくらいなら全然おkですよー
- 482 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 19:20:01 ID:suwvwFCT
- あと2時間くらいっつーことでスレ建てた。
第二次スパロボバトルロワイアル10
http://jfk.2ch.net/test/read.cgi/gamerobo/1244974746/
観察日誌は、投下後に大変動起こしそうだしそれからでおkだよね?
- 483 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 19:32:36 ID:1W8kAORq
- 君のスレたて、イエスだね!
- 484 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 20:12:45 ID:pgpDKVtX
- ライダーロワはキング氏とドットレ氏、GR1はマスターとtu氏、スパロワはしーぽん、二次スパは7V氏、漫画はボイド氏ドットレ氏、ロボはあにじゃーんドットレ氏康一くんあたりがいなきゃとっくに潰れてる(06/14 20:04)
byマダオン
- 485 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 20:30:40 ID:iKYluDnh
- スレ建て乙!
あと30分が待ちきれないw
>>484
?
これって何かのコピペ?
確かに7v氏が支えてくれたからこそ今の状況があるんだよな
- 486 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 20:34:16 ID:suwvwFCT
- 実際投下数30と抜きんでてるしな。だから何?としか。
7v氏中心に、YY氏、Vv氏、Zb氏、Zq氏の五人が中盤から今まで柱として書いてくれたから今があるんだし。
書き手みんなに感謝。
- 487 : ◆VvWRRU0SzU :2009/06/14(日) 21:35:55 ID:8wilipiU
- すいません、ちょっと仮眠取ってたら寝過ごしました。
22時から投下開始します
- 488 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 21:38:30 ID:2glbQmhL
- 了解!お待ちしてます
- 489 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 22:01:23 ID:suwvwFCT
-
- 490 : ◆VvWRRU0SzU :2009/06/14(日) 22:01:50 ID:8wilipiU
- では投下します。
おおよそ70レスくらいなので、規制受けたら避難所に続きを投下します
- 491 : ◆VvWRRU0SzU :2009/06/14(日) 22:03:15 ID:8wilipiU
- 見渡す限りの空が血のような朱に染まっている。
夕暮れ時でもないのに不思議なものだと嘆息した。
無人の荒野を、灰色の巨人が飛んで往く。
不意打ちを警戒する必要はなかった。
芽生えた新たな力はエリア一つを覆うほどに広がっていて、自分以外の命がいないことを告げている。
今、ここにいるのは自分一人だけ。音の無い世界が否応なくその事実を突き付けてくる。
一人。
思えば、ここに来てから――否、生まれて初めて。シャギア・フロストはたった一人で行動している。
ずっと弟と一緒だった。
生まれてからずっと、片時も離れたことはない。
たとえ傍にいなくても繋がっていた。どこにいてもシャギアは弟を感じ取ることができ、弟もまた兄を見失うことはなかった。
カテゴリーFと名付けられた力。距離を超越し感応する魂。
もう一人の自分。欠くべからざる、二つで一つの心。
「……オルバ」
応える声はない。
それが――ひどく悲しい。
当然ながら、基地も無人だった。視界に映るのは無残に砕かれたインベーダーの死骸のみ。
カミーユ、そしてユーゼスが滞在したという基地もその面影すらなく、散らばる大小様々な瓦礫が数時間前までここに建造物があったと感じさせる。
そんな中、見覚えのある色がシャギアの目に留まる。
赤銅色の破片。かつてディバリウムと呼ばれていた機体の、残滓。
シャギアは固く目を閉じた。
結果はわかっていた。断たれた感覚がそれを事実だと痛いほどに主張していたのだから。
だが、やはりそれを目の前にすると。
改めて自身の半身はもういないのだと、シャギアは一人なのだと。
喪失感は鋭い刃のように、シャギアの心を切り裂いていく。
探せるだけの破片を集め、シャギアはF91から降りた。
コクピットらしい部分の損傷が一番激しい。おそらくそこに直撃を受け破壊されたのだろう。
せめてオルバの遺体を、と願っていたシャギアの望みは叶えられない。
弟がいたことを示すものは、もはや何もないのだ。
数時間前を思い出す。
ナデシコでの一幕。甲児がいて、比瑪がいて、自分がいて、そしてオルバがいた。
もう一人余計な者もいたが、それはあえて考えない。
和やかな空気。
もちろんそれは甲児や比瑪の信頼を得るための演技だったものの、今考えれば悪くない時間だった。
甲児の底抜けの明るさや、比瑪の優しさ。そういったものを無意識ながらに心地良いと感じていたのかもしれない。
戦争の傷跡が色濃く残る世界、存在を否定されたシャギアとオルバは兄弟二人で生き抜いてきた。
兄弟はお互い以外誰も信用せず、差し伸べられた手を逆に引き摺り降ろすことすら躊躇いはしない。
そうした生き方の果て、ニュータイプを幻想と言い切る少年に敗北しその野望を否定されても――兄弟が離れることはなかった。
そんな兄弟の前に現れたあの少年と少女は、オルバ以外の人間に価値を認めていなかったシャギアの心にするりと入り込んできた。
今ではもう素直に認めることができる。
甲児と比瑪は兄弟に初めてできた、仲間だったのだ。
「しかし、もう……誰もいない。オルバよ、私にはもう……お前も、比瑪君も、甲児君も。誰もいないのだ」
- 492 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 22:03:52 ID:bGptgBZm
-
- 493 : ◆VvWRRU0SzU :2009/06/14(日) 22:04:05 ID:8wilipiU
- シャギアは地面に力無く座り込み、通り過ぎてしまった者達のことを思い浮かべる。
比瑪はシャギア自らが殺した。
人を殺すこと、自分を信じた人間を殺すことなど初めてではない。なのに、この手にはあの時の感触が今なお色濃く残っている。
銃口の先に飛び出してきた比瑪。瞬間気付いた意識は止めようとするものの、怒りに支配された身体は既に引き金を引いていた。
一瞬が引き延ばされ、永遠に感じられて――言い残すことを言う間もなく比瑪は消えた。
甲児はシャギアを守って死んだ。
怯え、甲児を置いて逃げ出そうとしたシャギアを救うために囮となって。
恨み言の一つもなく、ただただシャギアの身を案じ、最期にシャギアを縛る呪縛を振り払うかのように言葉を遺して。
オルバはこの地でテニアと、そして先刻打倒したキョウスケ・ナンブによって命を絶たれた。
弟の最期の言葉――助けを求める声に、シャギアは応えられなかった。
仇の片割れであるキョウスケは討ったものの、テニアはまだ生きている。テニアの協力者であるガウルンも。
「ガロードも、か」
そして、ガロード・ラン。
宿命のライバルとシャギア自らが評した、何の力も持たない少年。
ティファ・アディールを巡り幾度も戦場で相対し、兄弟が生きる意味を完全に否定した少年。
しかし不思議と憎いと思うことはなかった。それは彼がニュータイプではなく、ただの人間として兄弟の前に立ち続けたからだろう。
彼は何故か宿敵たるシャギアに、ティファ・アディールへの言葉を託した。ガロードなりに、シャギアの変化を感じ取っていたのかもしれない。
ニュータイプでも、カテゴリーFでもない、一人の人間。
神でもない、悪魔でもない、ただ一人の人間。
甲児が言い遺した言葉は正にガロードそのままではないか。
今さらながらにシャギアは納得した。兄弟がガロードに敗れたのは、力で劣っていたからでも運が悪かったのでもない。
その行動を決定づける意志が、ガロードの方が強かったというだけ。
ガロードにあり、甲児にあり、比瑪にあり。
そしてオルバにはなく、シャギアにもなかったもの。
皮肉にも半身を失ってからやっと、シャギアはそれに気付くことができた。
今の自分なら、あの月での戦いに負けはしないのに。そう思うと苦い笑みがこぼれる。
力は手に入れた。憎み消し去ろうとしたニュータイプの力。
オルバ、比瑪、甲児、ついでにガロード――シャギアを取り巻く全ての命と引き換えに、手に入れた。
だが、だがしかし――
「こんなに寂しいのなら……力なんて要らないよ、オルバ」
項垂れ、拳を強く地面へと叩きつけた。
どんなに強くなっても、たとえ世界を変えることができても。
オルバのいない、比瑪や甲児のいない現実を変えることはできない。
オルバとともにガロードとティファ・アディールの旅に横槍を入れることはもうできない。
比瑪の笑顔を見ることも、甲児とふざけ合うことも、もう。
「寂しいよ……一人では寂しい」
失ったものは大きく、そして数多い。
だが諦観が心を埋め尽くす前に、シャギアは立ち上がった。
やることがある。過去へ囚われ立ち止まることはできない。最後に生き残ったナデシコのクルーとしての矜持がそうさせる。
- 494 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 22:04:08 ID:suwvwFCT
-
- 495 :Alter code Fire ◆VvWRRU0SzU :2009/06/14(日) 22:05:41 ID:8wilipiU
- 借りを返さねばならない。
弟を殺し、比瑪までも犠牲にしたテニア。間接的に同罪のガウルン。
テニアの逃亡を幇助した統夜なる少年、ガロードが狭間の世界に消える原因となったユーゼス、アキト。
そして何より、こんなふざけた殺し合いに兄弟を呼び寄せた主催者。
これら全ての愚か者どもに、ケジメをつけさせねば気が済まない。否、利子をつけて横っ面に叩きつけてやる。
不意に目尻から温かいものが溢れ出す。
顔を拭い、振り払ったその手から滴が飛び散る。
「だが、私はこれを言わねばならん……ガロード、甲児君、比瑪君、そしてオルバ」
ぐっと、腹に力を込める。
足を肩幅に広げ、強く大地を踏み締める。
深く息を吸い、震える戦意を叱咤する。
ディバリウムの残骸、そこにいたであろうオルバ。
もはやこの世界に存在を示すものなき比瑪、甲児。そしてガロードへ向けて。
「さよならだ」
短く、ただそれだけを。
シャギアは踵を返し、振り返ることなくF91へと歩いていく。
くすんだ灰色の巨人。
何もかも失い、それでもまだ倒れることのできない――白と黒、どちらも選べないどっちつかずの自分には相応しいと皮肉気に笑う。
コクピットに座る。シャギアはそこに自分以外の臭いを感じ、フッと鼻を鳴らした。
「お前もだ。この機体、そしてJアークの面々は私に任せておくがいい。お前が担うはずだった役割くらいは代わりにこなしてやる」
虚空へ告げると、温かな、どこか包容力のある声が伝わってきたような気がした。
任せた――そう言いたげな声が。
今際の時、握り締めたこの手に託されたもの。
アムロ・レイの想いもまた、シャギアへと受け継がれたものの一つ。
別れは告げた。
しかし忘れることはない。
死者が見守っているなど、現実を知らぬ子どもが口にするような世迷言。だが今のシャギアは信じて見てもいいと思った。
アムロ・レイ、ガロード・ラン、兜甲児、宇都宮比瑪、そしてオルバ。
この背に五人もの想いを背負っている。簡単に倒れることなど許されない。
ガウルンやテニアなど恐れるに足りない。
ユーゼス、アキト。所詮は通過点だ。
主催者? 待っていろ、すぐに貴様達の喉元を食い千切ってくれる。
身体の底から力が湧いてくる。
得体の知れない、でも頼もしいこの感情――シャギアの得た、唯一無二の力。
F91がビームソードを抜き放つ。
その刀身は激しい閃光を撒き散らし、膨れ上がっていく。
空へ、天へ至る塔の如き光剣を掲げる。
これは狼煙。開戦の狼煙だ。
- 496 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 22:06:00 ID:suwvwFCT
-
- 497 :Alter code Fire ◆VvWRRU0SzU :2009/06/14(日) 22:06:50 ID:8wilipiU
- 「見るがいい……これが私の、私達の! 天を衝き、闇を払い、そして世界すらも変えていく――」
振り下ろす。
瞬間、たしかにシャギアは見た。
閃光が赤い空を切り裂き、その向こう……紅い宇宙に座す巨大な白き魔星を。
主催者が潜む、乗り込むべき旅の終わりの場所。
一瞬だ。もしかしたらシャギアの錯覚かもしれない。ただのビームソードでそんなことができるはずもない。
だが、そんな現実などどうでもいい。
シャギアがそうと望み、その意志の下で現実と対決していくのならば、きっと。世界は変わる、変えていくことができる。
「――――――――――――勇気の力だ!」
上がるのだ。
主催者との、仇敵との、オルバを奪ったこの世界との――対決の舞台へ。
□
日付が変わるまであと一時間。
愛用の腕時計が示す刻の経過を、ロジャー・スミスは憂鬱な気持ちで眺める。
その時が来たということだ。
この世界から脱出し、主催者の下へ乗り込む――そのために、ユーゼス達と協力する。
だがロジャーは、いや、おそらくここにいる全員が。荒事なく主催者の下へと辿り着けるとは思っていない。
ユーゼス・ゴッツォ。ロジャー自身が拳を交え排除すべき敵と見定めた男。
かつて交渉してきたどのような悪党とも違う、純粋なる悪。
交渉に武力は必要ないというのが持論のロジャーをして、騎士凰牙の状態を万全にして当たらねばならないと思わせる男。
凰牙の背から排出された電池を適当に放り出し、凰牙から降りた。
余った電池の内2セットを腰のアタッチメントに固定し、もう1セットをJアークに残す。
格納庫の一角へと腰を下ろし、ふうと息を吐くロジャー。
凰牙の横に並ぶ機動兵器群を見上げる。
魔装機神サイバスター。
アンチボディ・ネリーブレン。
そして――
「アルトアイゼン・リーゼ……」
頭部の角、肥大した肩、厚い装甲、右腕に誂えられた巨大な杭打ち機。
そしてその体躯を包む色――真紅。
先の戦いでレオナルド・メディチ・ブンドル、アムロ・レイ、兜甲児という三人の尊い命と引き換えに得た勝利。
主催者の手駒と成り果てたキョウスケ・ナンブという男の悪夢。
その悪夢を断ち切った少年、カミーユ・ビダンはロジャーの見つめる先で一心不乱にJアークの機材を使って何かを作っている。
彼は意識的にアルトアイゼンに視線を向けないようにしているようだ。
約束だとはいえ、仲間を討ったその心の傷は深いはず。そう思い、ロジャーもあえて声はかけずにいる。
- 498 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 22:06:51 ID:suwvwFCT
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- 499 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 22:07:04 ID:bGptgBZm
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- 500 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 22:07:12 ID:1W8kAORq
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- 501 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 22:07:48 ID:TPBJ7S6B
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- 502 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 22:08:03 ID:1W8kAORq
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- 503 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 22:08:15 ID:bGptgBZm
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- 504 :Alter code Fire ◆VvWRRU0SzU :2009/06/14(日) 22:08:17 ID:8wilipiU
- あの戦闘が終わった後、遅れてやって来たJアークから降りたキラ・ヤマトの顔は生涯忘れないだろうとロジャーは思う。
仲間を失った悲しみ、参戦できなかった自分の無力、主催者への怒り――色々な感情がごちゃ混ぜになった、何とも言い難いあの表情を。
彼と協力して医務室へと運んだカミーユとアイビス・ダグラスもすぐに目覚めた。
カミーユは自分の手でキョウスケを討ったことを確かめるかのように歯を食い縛り、アイビスはもういないアムロやブンドル、甲児の事を思い涙を流した。
唯一の年長者となったロジャーは、悲しみに暮れる少年達へと絞り出すように言った。
泣いたり、後悔するのは後にしろ。すぐにユーゼス達が来る、準備をしよう。
アイビスを慰めていたソシエからすぐさま盛大な罵声が浴びせられた。
死者を悼む事すら許さないなんて、そんなことはないでしょうと。
ロジャーとてもちろん気持ちは同じだった。が、ここで現実的に物を見ることができるのはもはやロジャーだけだ。
だからこそ、たとえ憎まれても彼らを前へと進ませなければならない。
決意も新たにソシエを諭そうとした時、意外にも泣きじゃくっていたアイビスがロジャーに同意した。
アイビスの瞳を見たロジャーはすぐに自分が無用な心配をしていた事に気付いた。
その瞳には絶望の影はない。どこまでも真っ直ぐに前を見つめる瞳だ。
キラも、そしてカミーユも何かを呑み下すように深く呼吸して言った。
キラは首輪をプログラム面から解析する。
カミーユは先程入手したベルゲルミルの腕からマシンセルを抽出し、ハード面から首輪へとアタックする。
その間ロジャー、アイビス、ソシエは機体の補給と空間の観測を。
これ以上誰の犠牲も許さない――その強い決意とともに。
これにはソシエも仕方ないとばかり槍を納め、そして彼らは各々の役目を果たすべくこの数時間を過ごした。
ロジャーが調べた限りこのアルトアイゼンにはアインストの痕跡は一切なく、使用するには何の不都合もなさそうだ。
破壊したはずの蒼いアルトアイゼンの残骸から埋もれ出たこの機体は、あるいはキョウスケが最後に残した希望なのかもしれない。
ゲシュペンストではなくアルトアイゼンとして。
アインストではなく人間として。
支配から解き放たれるためにあえてこの因縁深き機体を使えと、そういうことなのだろうか。
しかし問題もあった。機体ではなく、それを操るパイロットの面で。
一つ、誰が乗るかという事。
順当に考えれば現在機体のないソシエ・ハイムが乗るのが妥当なのだが、それはできない理由がある。
二つ目の理由。このアルト、クセはあるが非常にピーキーな仕上がりで凄まじく扱い辛いという事だ。
操縦方法はすぐに理解できても、それは使いこなす事とは全く別の事。
元々が一か八かの出たとこ勝負好みのキョウスケ専用に調整されたこの機体に(もちろんキョウスケの優れた操縦技術の裏付けがあってのことだが)、他の者が乗っても性能を活かし切れる訳もない。
キラやカミーユ、ロジャーなら時間さえあればあるいは乗りこなす事もできるが、あいにく今はその時間がない。
アイビスの持ち味は高機動領域でのヒットアンドアウェイ。この機体の扱い方とはまるで噛み合わない。
そして問題のソシエはその負けん気こそ強いものの、パイロットとしての腕は正直なところ他のメンバーよりいくらか見劣りする。
加えて今、ソシエは足を骨折している。アルトの巨体を無理やり飛ばす推力を司る重いペダルを踏み抜くことなど到底不可能。
ソシエ本人は自分が乗ると頑として譲らない。それもロジャーの頭を痛める要因の一つ。
「ん……?」
回想の海から浮上し、ロジャーは耳を澄ませた。艦内放送が聞こえる。
『キラです。皆さん、ブリッジに集まってください。僕の仕事は完了しました』
告げる声。
いよいよ最後のピースが埋まったという事か。ロジャーは勢いよく立ち上がり、カミーユへと目を向けた。
少年もまた立ち上がったところだった。その顔には疲労の色が濃いが、同時に達成感のようなものがあった。
「行きましょう、ロジャーさん。俺の方も終わりました」
「つまり、鍵は揃ったという事か。いよいよだな」
「はい」
カミーユと肩を並べ、ブリッジへと歩き出すロジャー。
お互いが無言。しかし気不味いという訳ではなく、むしろ和やかな空気があった。
(生まれた世界も年代も違う我らだが、事ここに来て本当の仲間になれた――と、いう事だろうか)
- 505 :Alter code Fire ◆VvWRRU0SzU :2009/06/14(日) 22:09:05 ID:8wilipiU
- 願わくばこんな形で会いたくはなかった。それは今までに戦った者達も同様だ。
この殺し合いの中で出会わなければあるいは手を取り合い共に戦う事もあったかもしれない。
(皮肉なものだ。出会わなければ殺し合う事もわかり合う事もなかった。しかし私は今、彼らと出会えた事を嬉しいと思っている)
パラダイムシティ。記憶のない街。
ネゴシエイターとして活動していたロジャーは、ある意味では誰よりも孤独だった。
信頼できる執事や気の置けない同居人。
腐れ縁のチンピラや度々迷惑をかける元上司。
謎の女スパイや街の支配者。
一癖も二癖もある面々ばかり。だが考えてみれば、ロジャーと対等である存在はいなかったのかもしれない。
背中を預け、同じ目的に一丸となって突き進む。
集団行動は好むところではないが、たまには悪くない。今となってようやくそう思えた。
物思いに耽っている内、ブリッジへと着いた。
扉を潜るとそこにいたのはキラ・ヤマトただ一人。女性陣は遅れているようだ。
「アイビスとソシエは?」
「二人は少し遅れるそうです。バサラさんが起きたそうで、少し様子を見ていくと」
「そうか、彼も気がついたか。これで我らは六人だが、彼を戦力として期待するのはおそらくできんな」
「ええ。あの人は戦う人じゃない。本当に、歌う事だけを考えているんでしょう」
「今はあの人のことは置いておこう。とりあえず現状の確認からでいいか、キラ?」
「うん。今、僕らはE-3にいる。隣のD-3の上空に、ブンドルさんが観測した空間の綻び――ヘブンズゲートがある」
Jアークのモニターが映す赤い空に一点浮かぶ黒の歪み。鳴動を続けるそれは、今にも決壊し溢れ出しそうなダムの水を思わせる。
言葉からタイピングに切り替える。
『あれを突破するには強力なエネルギーが最低六つは必要。しかし、今の消耗した我らではその条件を満たす事は難しい』
『ええ。いえ、突破するだけならできるかも知れません。
Jアークのフルパワー、ブンドルさんが置いて行った反応弾、サイバスターのコスモノヴァ、レース・アルカーナ……とかいうよくわからないエンジン、そして騎士凰牙のファイナルアタック。
後はアムロさんがいてくれれば確実に突破できたんですがね……』
『シャギア・フロストなら大丈夫だ、カミーユ。彼は必ず我々の力になってくれる』
『うん、信じようカミーユ。とにかく、僕達だけでゲートを突破するのは不可能じゃない、でも難しいっていうのは……』
『我らの全力を使い果たすという事だ。凰牙のファイナルアタックや核を撃つのはもちろんの事、カミーユのサイバスターは全力を出し切るならその身を削らねばならない。Jアークも同様だろう』
『その覚悟はあります。でも、僕達の目的はゲートを突破して主催者の下へ辿り着くことであって、ゲートの突破だけじゃない』
『そうだ。ユーゼスがどういう意図で我らと接触したかは分からないが、いざ相対した時我らに戦う力がないとわかれば』
『必ず牙を剥いて来る』
カミーユが一際強い音を立ててキーを押し込む。
個人的な感情が含まれるとはいえ、その意見にロジャーも疑うところはない。
ユーゼスにはロジャー達と同じ主催者を倒す目的があるとは言え、足手まといを連れていくよりは始末して取り込む事を選ぶだろう。
ゲートを突破した時点で用済みとして排除。あるいはもっと直接的に、Jアークの機体を取り込んだ力でゲートを突破するか。
『さっきの戦いで、こちらの戦力はかなり減衰した。フォルテギガス、VF-22……そして三人の命』
『今の俺達の戦力はこのJアーク、サイバスター、ネリーブレン、騎士凰牙』
『別行動してるシャギアさんのF91もだね』
『ラーゼフォンは……バサラさんと同じで、戦力としては見れないな。空間を突破する補助にはなるのかも』
『そして、あのアルトアイゼンか。あれはどう扱うべきかな』
『僕は、ソシエが乗ることは反対です』
『今は一機でも人手は欲しい。選択肢としてそれも考えておかねばなるまい』
『でも』
喰い下がろうとしたキラを抑え、カミーユが指を躍らせる。
- 506 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 22:09:26 ID:TPBJ7S6B
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- 507 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 22:10:03 ID:2glbQmhL
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- 508 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 22:10:03 ID:bGptgBZm
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- 509 :Alter code Fire ◆VvWRRU0SzU :2009/06/14(日) 22:10:12 ID:8wilipiU
- 『でも実際問題、あの機体は扱い辛いですよ。俺やキラならともかく、女のソシエに、しかも足を怪我してるんです。役に立つとも思えない』
『それは同感だ。しかしな、もしユーゼス達と戦闘になるとしたら彼女はどうする? 我らが出撃すれば彼女を抑える者はいない。勝手に出撃する姿が目に浮かぶのだが』
『一応、考えています。ソシエにはバサラさんを診ていてもらおうと思ってます』
『彼を?』
『ええ。ラーゼフォンはJアークの格納庫に入らないから地上に下ろしてますよね?
もし、もしもの場合ですがバサラさんの歌が必要になった時、ソシエにはバサラさんをラーゼフォンまで運んでもらおうと』
『彼女がそれを納得するか?』
『しないでしょうね。だから、言わないで行くつもりです。どちらにしろバサラさんは下の街に隠れていてもらうつもりですから、ソシエにも付き添って降りてもらってそのまま発進します』
『それはまた……』
思い切ったものだ。この場にソシエ本人がいなくて良かった。こんな企みが知られればキラはまた鈍器で殴られて昏倒させられかねない。
『アルトアイゼンは状況に応じて僕が乗ります。Jアークがもし被弾して動けなくなった時のために』
『ふむ……そうだな。それが最善かも知れん』
『怒りそうですね、彼女は。キラ、こっちに火を飛ばさないでくれよ?』
『同罪だよ、カミーユ。その時は一緒に殴られよう』
少年達が笑い合う。ロジャーも薄く口の端を吊り上げた。
「お待たせ。あれ、どうかしたの?」
その時、アイビスとソシエがブリッジに入ってきた。その手に湯気の立つコーヒーのカップを乗せたトレイを持って。
キラが後ろ手にログを削除するのが見えた。全く、抜け目がない。
「これが最後なんだし、決戦に備えてお茶にしましょう。お茶っていうか、コーヒーなんだけどね」
「いや、良いタイミングだ。丁度熱いコーヒーが飲みたかったところでね」
「はい、どうぞ。ミルクはいるかしら?」
「まさか。紳士はブラックで飲むものだ」
「僕はもらうよ。砂糖もある?」
「俺もブラックで。根を詰めて作業したから、目の覚めるくらいのが良い」
ブリッジに温かな湯気が満ちる。熱いコーヒーは凝り固まった頭も程良くほぐしてくれた。
全員が落ち付いた笑顔を見せたのを確認し、ロジャーが一歩進み出る。
「さて、では改めて作戦会議といこうか。まず各々の成果から。私、アイビス君、ソシエ君の三人で機体の整備は万全だ」
「それに、あのアルトアイゼンもだね」
「あの赤カブトは私が乗るんですからね。止めても駄目なんだから!」
「うん、わかってるよソシエ。止めないってば」
平然と嘘を吐くキラを見て、したたかなものだとロジャーは笑った。途端ソシエに睨まれたが、その視線を柳のように受け流す。
「シャギアさんは間に合うかな? 基地まで行ったんなら、結構ギリギリだね」
「わからない。でも、ここにいない以上はないものとして考えるしかない。そのつもりで作戦を立てよう」
「うむ……そう言えば、バサラ君はどうしたのだ? 目が覚めたと聞いたが」
「それがね、起きた途端に『食い物はないか?』ですって。お礼の一つもなかったのよ!」
「ずっと寝てたんだから仕方ないよ。とにかく、すごい勢いで食べ物食べてまた寝ちゃったの。でも顔色も良くなったから、もう大丈夫だと思うよ」
「あの人なりに準備をしているんだろうな。体力を回復させて、温存しておこうって事なのかも」
「たしかに、彼の歌は何か尋常じゃない力を放出しているように見えた。ひどく体力を消耗したのもわからんではないな」
「ま、放っとけばその内起きるんじゃない? まさかドンパチやってる間まで寝てるほど図太くはないでしょ」
「それなんだけどね。いっそ、あの人は艦を降りてもらおうと思ってるんだ」
キラが言う。意味ありげに向けられた目配せは、ロジャーとカミーユに話を合わせろという事だろう。
ここは話術の専門家たるロジャーの出番と、内心で張り切って言う。
- 510 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 22:10:45 ID:1W8kAORq
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- 511 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 22:10:54 ID:suwvwFCT
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- 512 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 22:11:07 ID:TPBJ7S6B
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- 513 :Alter code Fire ◆VvWRRU0SzU :2009/06/14(日) 22:11:44 ID:8wilipiU
- 「先程話し合ってな。どの道彼は戦う事が出来ないのだから、Jアークに乗っているのはむしろ危険だ。市街地の片隅にラーゼフォンと一緒に隠しておこうという事になった」
「もしユーゼスと戦って俺達に何かあったとしても、あの人は空間の歪みに干渉する力がある。早々殺したりはしないはずだ」
「戦わないに越した事はないけど、楽観するのは危険だからね。あの人の力が必要になるのは会談を乗り切ってから。それまで休んでいてもらおうよ」
「うん……それがいいね。私も賛成かな」
「で、ソシエ嬢。後で彼を下に運ぶから手伝ってくれ。私が凰牙でお送りする」
「また私にそういう事を押し付けて。ま、いいわ。それくらいはするわよ」
バサラの処遇について大体決まり、次にキラがアムロが遺していった首輪を取り出した。
解析された首輪の断面図が表示され、いくつもの計算式が付随する。
続いて、今まで沈黙を保っていたもう一人の仲間――トモロが発言した。
『キラ、頼まれていた仕事が終わった。結果はやはり、君の想像通りだ』
『そう、やっぱりダメだった?』
『うむ。ユーゼスから渡されたプログラム、それを私と君が可能な限り補い、取得したマシンセルと組み合わせたアンチプログラム。
シミュレーション上ではあるが、やはり駆逐されたのはこちらのプログラムだった』
『俺もマシンセルを解析してわかったんだけど、ユーゼスの送ってきたナノマシンよりやっぱり力で劣ってる』
『器も、それを満たす水も用意できた。足りないのは水の絶対量という事か』
『うん。マシンセルの力をもっと強めるか、あるいは首輪のアインスト細胞の支配力を弱めるかしないとダメだね』
『私達だけじゃ解除はできないの? やっぱりユーゼスを頼らなきゃ……』
『……とにかく、僕のプログラムとカミーユのマシンセルを組み合わせた物を後でみんなに渡すよ。Jアークが沈んだりしたら解析もできないからね』
そして話題はもっと差し迫ったもの、ユーゼスの機体にどう対処するかに移る。
100mを超える巨体、先のキョウスケの機体とほぼ同サイズ。機体出力も同じかそれ以上と見るべきか。
再生能力もまた、かの機体と同じく強力なものがある。
鋭い爪や肘から突き出た触手が武器で、腹部から突き出た砲身はおそらくナデシコを取り込んだもの。恐らく他にも取り込んでいるだろう。
重力波砲や未知のエネルギーによる砲撃も可能という事だ。有り余るほどの出力から放たれるそれらはオリジナルを遥かに超えているだろう。
キョウスケと比べても見劣りしない強敵だ。しかも乗っているのがユーゼスな分、どんな奥の手があるかもわからない。
こちらで対抗できる手札はまずキングジェイダーだ。しかしこれを使えるのは一度きり、切り札中の切り札。できる事ならノイ・レジセイアとの戦いまで温存しておきたいところ。
Jアークを戦艦として運用し、次点のサイバスターがユーゼスを相手取ると結論が出た。
「でもカミーユ、あの力をそう何度も使うのは君の身体が保たないよ」
キラの言うとおり、サイバスターとのシンクロは絶大な力をもたらす半面操縦者に凄まじい負荷を与える。
キョウスケを撃破した時のような力を振るい続ければ、先にカミーユの身が朽ちることになるのは明白だった。
- 514 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 22:11:50 ID:1W8kAORq
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- 515 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 22:11:53 ID:TPBJ7S6B
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- 516 :Alter code Fire ◆VvWRRU0SzU :2009/06/14(日) 22:12:30 ID:8wilipiU
- 「それはシャギア・フロストのあの力も同様だな。命を削って力に変える。あまり多用するべきではない」
「そんな事言ってられないでしょう。力を出し惜しんで負けたらそれこそ元も子もない。数が行える分、キラより俺が行く方が理にかなってるはずだ」
「でも……」
「サイバスターを調べて、わかった事もある。次はもっと負担を減らして戦えるはずさ」
「……現実問題、私やアイビス君では奴に対抗できん。君に無理を強いることになるが、頼む」
「ええ、わかってます。敵はユーゼスだけじゃないんだ。あなた達は俺とキラがユーゼスに集中できるよう、他の奴を抑えてください」
「紫雲統夜と、フェステニア・ミューズ。そしてテンカワ・アキトとガウルン、か。前二人はともかく、後ろ二人までが生きているなんてね」
「アキトって人はユーゼスに任せたから、納得できなくはないけど。ガウルンって奴、一体どうやって生き残ったのかな? あいつの機体、ユーゼスに取り込まれてたけど」
「わからない。が、少なくとも無力ではないだろう。あの男なら生きていれば必ず戦の匂いがするところに現れる。
統夜少年と組んでいたところからして、その少年と逃げたフェステニア嬢もまた同行していると見るべきだ」
「ユーゼスとアキト、ガウルンと統夜とテニア。五人……数の上では僕らと同じですね」
「アキトはガウルンを憎んでいる。交渉人としてどうかとは思うが、彼らが敵対していればやり様はある。が、もし手を組んでいるとなれば」
「私達にとっては最悪って事ね」
「そうだ。中尉は強力ではあっても一人だったから、他に気を散らす事も連携を警戒する必要もなかった。でも奴らは違うかもしれない」
「軍隊というのは一個一個は雑兵の群れでも優秀な指揮官がいればがらりと働きは変わる。ユーゼスが指揮するとなれば、一筋縄ではいかんな」
重い空気が落ちる。
せめて集団を率いる長であるブンドルか、モビルスーツ隊をまとめる隊長だったアムロがいれば対抗もできただろうが。
しかし、キョウスケの時はなし崩しに戦闘になったから考える暇もなかったが、今は少なくとも作戦を立てる時間はある。
数と能力の不利は策で埋める。たとえ敵陣にそれ以上の策士がいようと、考える事をやめてしまえばそれ以上の進歩もない。
じっと考えていたキラが物憂げに言った。
「いざという時は……核、反応弾を使う事も検討に入れた方がいいかも知れません」
「む……核か。たしかにあれなら戦況をひっくり返せるかも知れんが」
「人に、個人に向けて撃つのはやはり許されない事だとは思います。でも僕らは負ける訳にはいかない……だから、撃つ時は僕が銃爪を引きます」
「……」
言うべき事も思いつかず、沈黙する。
未だ撃っていないため反応弾を補給できるかは分からない。だがおそらく、殺し合いというバランスを崩す要素たる核を何度も支給する事はないはずだ。
一発きりのジョーカー。撃てばゲートの突破も危うくなる。
「結局……なるようにしかならないって事ね」
と、ソシエがこれまでの議論の結果を容赦なく切って捨てた。
苦笑するが、たしかにその通りだ。先の事を考え過ぎて動けなくなれば本末転倒というもの。
ユーゼス達と和解するにせよ、戦うにせよ、その時その時で最良と思った道を行くしかない。
開き直りに近い感情だが、無理に気負うよりはマシだ。
時計を見れば24時まであと30分ほど。
「そろそろ我らの切り札――バサラ君を市街地に運ぼう。ソシエ嬢、来たまえ」
「はいはい。まったくあの寝ぼすけは世話を焼かせるわね」
ソシエを促し、ロジャーはブリッジを出る。去り際、少年達に任せておけとアイコンタクトで伝える事も忘れない。
眠っているバサラを背負い、格納庫へ。凰牙のコクピットへ乗り込み、掌にバサラとソシエを載せる。
Jアークを出て、廃ビルの影に隠したラーゼフォンの近くで機体を止める。
程なく、病人を安置するに丁度良い民家を見つけた。
古ぼけたベッドへバサラを寝かせ、ソシエに細々とした処置を任せる。
水や食べ物を枕元に置き、バサラの体調を診ているソシエを尻目にロジャーは屋外に出てギアコマンダーを操作する。
凰牙の手が静かにロジャーの下へ。飛び乗った直後、民家からソシエが転がり出てきた。
- 517 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 22:12:31 ID:bGptgBZm
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- 518 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 22:12:54 ID:suwvwFCT
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- 519 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 22:12:59 ID:1W8kAORq
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- 520 :Alter code Fire ◆VvWRRU0SzU :2009/06/14(日) 22:13:13 ID:8wilipiU
- 「ちょっとロジャー! 私を置いて行こうっての!?」
「済まないがその通りだソシエ嬢。君にはバサラ君の看護を頼む」
喚き散らすソシエに胸を痛ませつつも、ロジャーは素早く凰牙へと乗り込みソシエから飛び退いて離れる。
見ればJアークも浮上を始めている。これで徒歩の彼女はもう戻ってこれない。
ラーゼフォンが起動しないことも確認していた。首輪が反応しないことからしてあの機体はもう死んでいるか、あるいはバサラでなければ動かせないようだ。
非情と思わないでもない。ロジャー達が勝てばともかく、敗北した場合は彼女たちの命運も尽きるのだから。
しかし先の取り決め通りソシエは役に立つとは言い難い。脱出の鍵となるバサラを一人にしておけない以上、彼女を割り当てるのは致し方のない事だった。
外部スピーカーを閉じる。
ショックを受けた少女の顔をできるだけ見ないようにして、ロジャーはJアークへと急ぎ帰還した。
発進したJアークの格納庫。既にアイビスとカミーユはそれぞれの乗機の中で待機していた。
ソシエとバサラを置いてきたと、手短に告げる。キラやカミーユからは嫌われ役を押し付けたという謝罪の、そしてアイビスからは怒りの言葉が届いた。
「……そうしなきゃいけないって事情はわかるよ。でも納得はできない。私がソシエの立場なら、きっと傷つくよ」
「承知の上だ。生きてまた会えたのならどんなお叱りも受けるさ」
「お付き合いしますよ、ロジャーさん」
「僕もです。まあ、もうバールで殴られるのはちょっとごめんだけど」
「お前がそれを言うか?」
茶化すような少年達にアイビスの頬が膨らむものの、それを吐き出す前に四人目、トモロの声が響いた。
『話はそこまでにしろ。来たぞ、ユーゼスだ』
感情のないその声が、今はどこか緊張を孕んでいるように聞こえた。
言い様もないプレッシャーを、誰もが感じていた。隠そうともしない巨大な存在感。
数時間前に対峙した時と同じ、ざらりとした気配。
このままの速度なら接触まで数分。
「カミーユ・ビダン、いつでも行けます!」
「アイビス・ダグラス、ネリーブレン。こっちもオーケー!」
『Jアーク、各部異常なし。戦闘モードへ移行する』
「みなさん、Jアークの事は気にしないで! 各自の安全を優先して下さい!」
頼もしい仲間達の声。誰一人として怯えに呑まれてはいない。
これでは大人がカッコ悪いところを見せる訳にも行くまい――ロジャーは自身の内に薪をくべる。
困難を打開するのは「熱」だとロジャーは思う。
誰しもが持つ欲望、希望と言った意志の力。それこそが不可能を可能にしていく原動力。
一つ一つは単なる火でも、二つ合わされば炎となり、三つ合わされば火炎となる。
(じゃあ四人では――知らん、そんな事。とにかく、だ。我らの力、合わされば――どんな敵でも、粉砕する! そう信じる!)
スウ、と大きく息を吸い込む。
不敵に、高らかに。パラダイムシティでいつもそうしていたように、自信に満ち溢れたロジャー・スミスという男を見せてやる。
紫紺の蛇がそれでこそ我が主だというように鎌首をもたげ鳴く。
「よろしい。さあ、行こうか諸君。ここがいわゆる正念場――ショウ・ダウンと言うやつだ!」
- 521 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 22:13:30 ID:TPBJ7S6B
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- 522 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 22:13:58 ID:bGptgBZm
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- 523 :2nd Ignition ◆VvWRRU0SzU :2009/06/14(日) 22:14:02 ID:8wilipiU
- □
Jアークが見えた。
真紅のカーテンが舞う空の下、白亜の艦は市街地の中心へとゆっくり進んで来る。
ユーゼスはメディウス・ロクス――ゼストを止め、Jアークの正面へと位置を調整した。
既にJアークから他の機体が発進している。いつでも戦闘に移れる体勢だ。
アキトは後方で待機させている。名簿により生存は知られているだろうが、わざわざ帯同させて奇襲の機を逃すのも馬鹿らしい。
発進した機体は三機。サイバスター、青い小型機、ネゴシネイターの乗る陸戦機。
ユーゼスが知っているだけでも他にストレーガとバルキリーがいたはずだが、その機影はない。
アキトと同じように、艦内に待機させておいて状況次第で対応させるという事だろうか。
まあどちらでも構わないと、ユーゼスは鼻で笑って通信を開く。
「Jアーク、こちらはユーゼス。約束の時間だ」
「こちらはJアーク、キラ・ヤマトです。あなた一人ですか?』
「そうだ。私が誰かと徒党を組んでいると思ったかね?」
「ブラックゲッター……あれに乗っていたテンカワ・アキトと言う人は放送では呼ばれなかった。
あなたの話ではブラックゲッターを自爆させてインベーダーを排除するという話でしたね。では、アキトと言う人が呼ばれなければおかしいでしょう」
「ふむ、道理だ。それについては謝罪させてもらおう。君達と別れた後すぐ、奴は逃げ出したのだよ。
私は群がってきたインベーダーに対処していてまんまと逃してしまった訳だ」
「では、彼は今あなたと行動を共にしていないと?」
割り込んできたのはMr.ネゴシエイター。キラという少年とこの交渉人がJアークの折衝役という事か。
目を細め、サイバスターを観察する。
数時間前に接触した時とは明らかに違う。サイバスターから確固とした意志を、荘厳なまでの念を感じる。
ブンドル以外の相応しい乗り手を得たという事だろう。
そしてこの感覚、おそらくは……
(カミーユ・ビダン。チッ、小虫と思って見逃したのが仇になったか。奴のプラーナならサイバスターの力を十二分に引き出せる――厄介だな)
ラプラスデモンコンピュータを有するサイバスターに、感応力に優れたカミーユが乗る。
因果を操作するとまではいかなくとも、少年の鋭敏な感覚を何倍にも増幅する事は間違いない。
内心の苛立ちを噛み殺し、顔にはまったくその色を出さずにユーゼスはロジャーに返答する。
「そうだ。あの一帯は磁場や探査粒子が混沌としてどこへ行ったかすら定かではなく、追うにも追えなかった。
が、あの損傷だ。生きていたところで何をする事もできまい。放っておけば野垂れ死ぬだろうさ」
もちろんそのブラックゲッターを修復した事など言う気はない。
アキトは今もこの会談を遠くから監視している。ユーゼスからの合図があれば全速で飛び込んで来るはずだ。
「では他に仲間はいるか? と言っても、生き残っていてここにいないのはあなたも知っているガウルンという男、紫雲統夜という少年、フェステニア・ミューズという少女だが」
「いや、私に仲間はいない。ガウルンなど、どうやって生き残ったのかは知らぬが剣を交えた相手だ。手を組むはずはないだろう?」
これまた平然と嘘を吐く。どこまで信じるかは相手次第だが、ガウルンが主催者の下へ行ったなどという発想はまず出てこないだろう。
ガウルンと手を組み、統夜とテニアをも取り込み、お前達を狙っている。言わずともすぐに知れるのだ、彼らにとっては最悪の形で。
「情報交換はフェアに行うべきだな? こちらからも聞きたい。今発進していない機体があるようだが、私を警戒しての事かね?
だとしたら残念だ。少なくとも私は君達と手を手を取り合うためにここに来たのだが」
「いや、私達はこれで全員だ。三時間ほど前に一戦交えてな、多くの仲間がそこで命を落とした」
「なんだと……?」
ガウルン達が約束を守らずに先に仕掛けたのかと思ったが、それでは先の質問の意味がない。
仲間割れでもなければ、盤上に残る駒は一つだ。
「キョウスケ・ナンブ――か?」
「そうだ。奴の奇襲によって、アムロ・レイ、兜甲児、レオナルド・メディチ・ブンドル、熱気バサラ、ソシエ・ハイムを失った」
- 524 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 22:14:09 ID:1W8kAORq
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- 525 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 22:14:27 ID:suwvwFCT
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- 526 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 22:14:28 ID:TPBJ7S6B
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- 527 :2nd Ignition ◆VvWRRU0SzU :2009/06/14(日) 22:14:49 ID:8wilipiU
- ロジャーの声色は沈んでいる。演技かどうかはユーゼスの目を以ってしても見抜けない。食えない男だ。
しかし真実だったとして、熱気バサラ。奴を確保できなかったのは痛い。
ナノマシンサンプルはアキトを使うしかなさそうだ。
だがそれ以上に、よくあの蒼いアルトを撃破できたものだ。正面から当たればこのゼストすら危うかったかもしれないのだから。
それとなくどうやって撃破したのか聞くと、
「俺が討ったんだ。ユーゼス、お前のおかげで変わってしまった中尉をな」
と、サイバスターのカミーユ。声は今にもこちらへ躍りかかって来るのではないかと思わせるほどに鋭い。
暴走するアインストの力を、仲間の力を借りたとはいえ上回る。
サイバスターへの警戒をさらに一段上げた。
「カミーユ、君は口を挟むな。……さてユーゼス氏。約束の件だが、このデータを見てくれ」
尚も言い募ろうとするカミーユを制し、ロジャーが切り出す。
転送されてきたデータはこのあたり一帯の空間を観測したもののようだ。
このD-3エリアの上空、天蓋に届こうかという高度に不自然な程巨大な重力場の歪みが発生している。
データを見るに、その歪みは数時間前から加速度的に広がっている。
時系列で見ると、インベーダーが発生した頃が特に顕著だ。
あの時、F-1には吸い寄せられるように様々な事象が連続して起こった。
熱気バサラとラーゼフォンによる空間構造への干渉。
小さく開いたその歪みから飛び出て来た電子の生命、データウェポン。
進化する異形、インベーダーの出現。
そして真ゲッターによる、ゲッター線の莫大な放出・消失。
ユーゼス自身空間の歪みに多少なりとも干渉したので他人事でもない。
とにかく、今や歪みは目視でも確認できるほどにその領土を広めている。
予測される限界点――空間の自己修復作用を超えるレベルの歪みの発生、即ちこの世界の崩壊までもう二時間もない。
思ったより猶予は少ないようだと歯噛みする。予定を更に前倒しで進めねばならない。
「確認した。あの空間の綻び――ヘブンズゲート、か。皮肉の利いた名だ――を突破するためには、高エネルギーの攻撃を複数ぶつけなければならないという事か」
空間の綻びが飽和を迎え世界が自壊する前に、こちらから指向性のある力を叩きつけ歪みのベクトルを短時間ながら外側へ向ける。
そのベクトルが形作る通路を通ってこの世界から脱出し主催者の元へ迫るには、ユーゼスが見てもたしかにこの方法しかない。
どこを破壊すればいいのかはわかった。次なる問題は、どうやって破壊するかだ。
「僕達が提供できる力は、サイバスター、Jアーク、騎士凰牙の三つです。確実を期するなら、同レベルの力があと二つ――いえ、三つは欲しい」
「それを私に期待する、という事かね?」
「ええ。あなたの機体が有する力は僕達のそれとは段違いだ。ナデシコのエンジンが発生させたエネルギーパターンもこちらで確認できます。
どれだけの機体を取り込んだのかはわかりませんが、その機体なら不可能ではないはずです」
「ふむ……」
考えるに、この提案は是か非か。
と言ってみたところでどの道機体を戴くのだから、今戦うか後で戦うかの違いでしかないのだが。
もし提案を呑んだとして、ゲートは順当に突破できるはずだ。しかしその場合、ゼストも力の大半を出しつくす事になる。
彼らの機体を取り込む事も目標の一つである以上、抵抗を踏み潰せるだけの力もないほどに戦力を投げ捨てるのは得策ではない。
ネリ―ブレンと言うらしい青い小型機だけならアキトが苦もなく粉砕できるだろうが、その場合アキトですらも信用は置けない。
奴が動けなくなる30分を耐え凌げなければ意味がないのだ。
同様の理由でガウルンも危ない。ユーゼスが弱みを見せれば即座に噛み付いて来るのは想像に難くないのだ。
統夜とテニアは首輪の解除をちらつかせれば容易くこちらに転ぶだろうが、考えてみればガウルンと行動を共にしているのだ。
あの狡猾な男に何を吹き込まれてもおかしくはない。
- 528 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 22:15:21 ID:bGptgBZm
-
- 529 :2nd Ignition ◆VvWRRU0SzU :2009/06/14(日) 22:15:54 ID:8wilipiU
- 翻って提案を蹴るとどうか。
向こうに必要な力が三つあるのなら、取り込むことができればゼスト一機でその条件は満たせると言える。
消耗した状態で戦うか、万全の状態で戦うか。もちろん選ぶとしたら後者だ。
敵方にもそれは同じ事が言えるが、こちらにはアキトとガウルンというカードがある。
ユーゼスが描くシナリオとして理想的なのは、いずれ噛みつくとわかっている手駒とJアークを潰し合わせ双方を弱らせる。
そして全てをゼストが取り込み、生き残るのはユーゼス一人――これがベスト。
統夜やテニアは万が一の保険として使ってやってもいいとは思う。あの二人に自分を出し抜く程の知恵はないだろうとユーゼスは評価していた。
主催者の下へ迫る方法を見つけてくれたのはいいが、こちらも失うものが大きすぎる。
彼らがキョウスケを排除してくれたのは僥倖だったかもしれない。あれに横槍を入れられてはいくらなんでも手に余る。
そして都合のいい事にユーゼスがあまり必要としていない機体、純戦力としてのストレーガやバルキリーを間引いてくれた。
Jアーク、サイバスター、ネリ―ブレン、そして騎士凰牙。
ネリ―ブレンと騎士凰牙の性能は把握している。
Jアークはおそらくユーゼスの知るヘルモーズ等の戦艦に比べても見劣りしない強力な艦なのだろうが、今のゼストにしてみれば図体が大きいだけの的だ。
唯一未知なる力を行使するサイバスターのみが脅威。ならばユーゼスはサイバスターに専念し、残りをアキトに処理させる――決まりだ。
「協力してもらえますか、ユーゼスさん」
「残念だがキラ・ヤマト、返答はNOだ。もし私が協力したとして、このゼストの力を使い切った後に君達に袋叩きにされてはたまらない。
私が提供するのが三機分の戦力に加え苦労して解析した首輪のデータ、君達は戦力のみ――では、割に合わないのでな」
「ッ……ですが、あなたも主催者と戦うつもりなんでしょう!? だったら仲間は多い方が良いはずです! 僕達は裏切ったりなんかしません!」
「言っただろう、私に仲間などいないと。あれはな、仲間など『必要ない』という意味でもあるのだ」
言い捨て、ゼストを後退。
ナデシコより取り込んだ重力波砲。ゼスト内部で凝縮したエネルギーを砲身へ通し、チャージタイムなしに撃ち放った。
Jアークのやや前方で重力波は何かとぶつかり合い、激しく干渉し合い諸共に消え去る。
強力なバリアを持っているようだ。
「ユーゼス、貴様ッ!」
弾かれたようにサイバスターが――いや、鳥のような形に変形したサイバスターが迫る。
瞬く間に距離を詰め、交差する一瞬に切り返す。後に残るのは空を走る二条の軌跡、ミサイルだ。
ユーゼスはこれを回避も迎撃もせず、悠然とその巨体で受けた。
軽い衝撃。だが、ゼストの装甲にはいささかの損傷もない。
宙で旋回し再び人型となったサイバスターが降って来た。その手には剣と長大なライフル――たしかキョウスケが使っていたものだ――を携えている。
サイバスターから剣へと揺らめく炎のようなエネルギーが伝わり、刀身を包んだ。
ゼストの左腕を掲げエネルギーを集中。剣を受け止めた。
「その機体はお前如きには過ぎた玩具だ。私に譲ってもらおうか」
「抜かせ!」
力任せに剣を砕こうと――いや、砕けない。相転移エンジン以下11のエンジンが絞り出す圧倒的なパワーが、たった一機の機体と拮抗している。
サイバスターが全身から黄金の輝きが放った。
「おおおあああああああああああああああああッッ!」
「ぬうっ……!?」
気配が爆発したかのように膨れ上がり、可視化するほどに巨大な念がサイバスターを取り巻く。
サイバスターを中心として、風が――否、嵐が巻き起こる。
全方位からゼストを風が打ち付ける。ただの風ではない。魔力を織り込んだ――物質を削り取る、質量を持った鉄槌だ。
ゼストの巨体が揺れる。
(この力……! やはりサイバスターと完全に同調したか!)
AI1がサイバスターの予測出力を弾き出した。
ゼストの全力とまではいかないが、それでも並の機体の2〜3倍は軽く超えている。
- 530 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 22:16:10 ID:1W8kAORq
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- 531 :2nd Ignition ◆VvWRRU0SzU :2009/06/14(日) 22:16:38 ID:8wilipiU
- 「チッ……生意気な!」
「我らを忘れないでもらいたいな!」
大地を疾駆してきた黒い機体、ネゴシエイターの駆る騎士凰牙が左腕を振り上げる。
先は隻腕だったくせに、今は両方の腕がある。
補修されたらしき左腕には蛇の頭を模したデータウェポンの鞭。右腕には鋭い棘の生えた見るからに原始的な武器――ハンマー。
凰牙は突進から急停止へ。下半身の力を全て上半身、更に腕へと集約し突き出してきた。
弾丸の如き勢いで射出された鞭とハンマー。
ハンマーを掌で受け、触手で鞭を迎撃する。
サイバスターと騎士凰牙がゼストへと張り付いている間、一瞬ネリ―ブレンから目を離した隙に小型機は消えた。
気付いた瞬間、ゼストの背部に反応。短距離転移。
振り下ろされた剣を、残る左腕の触手で切り払う。崩れた態勢をそのまま追撃。
ほぼ同サイズのクローアームとネリーブレン、しかし命中の手応えを得る前に再びブレンは掻き消えた。
かと思えば左下方、空白のポジションで剣、いや銃剣のような装備を構え、光弾を発射した。
被弾。損傷などないが、直撃弾を受けたという事実がユーゼスのプライドを痛く傷つける。
「貴様らぁっ!」
「こんなもんじゃない……この程度では済まさないぞ、ユーゼス!」
鍔競り合っていたサイバスターが一転、剣先を跳ね上げ頭部を狙う。巨体を反らし避ける。
広がった視界の向こう、艦首に位置する錨へとエネルギーを集約させるJアークが見えた。
その瞬間サイバスター、凰牙、ブレンがパッと離れる。
各部に振り分けていた力の行き所を失い、ゼストが一瞬間、停滞した。
「ジェイクォース!」
キラの声が響き、錨は不死鳥となってゼストへと突っ込んできた。
両腕を交差、不死鳥の頭を抑え留める。
だがさすがに戦闘艦の主砲だからか、ゼストを以ってしても一瞬では掻き消せない。
そこにサイバスターが再び風を放つ。
黄金の旋風を不死鳥の翼が捉まえて、一気に圧力が増す。
「ぐうう……舐めるなぁっ!」
突きだした腕はそのままに、ゼストの胸部中央から球体が飛び出る。
これぞゼスト始原の動力炉――TEエンジン。
今はそこに相転移エンジンや量子波動エンジン、核融合炉など十個のの動力炉が加わった超高出力のジェネレータ。
この莫大なエネルギーをそのまま砲弾として叩き付ける。高威力ゆえにエネルギーの消費も大きい。連発はできないが――
「身の程を思い知るがいい!」
発射。
解き放たれたそれは不死鳥を一瞬で呑み込み、その向こうのJアークへと一直線に突き進む。
回避運動を行いつつバリアを展開し受け止めようとするJアークだが、展開した瞬間に消滅した。
閃光の槍は間一髪で急速回避を終えたJアークの左舷を掠め、多大なダメージを与える。
だがまだ終わらない。Jアークを突き抜け彼方で炸裂すると思わせたそれは天へと急激に進路を変え、頂点へと達した時幾重にもその身を分かった。
光の雨となって地上に降り注ぐゼストのエネルギー。
「うわああっ!」
「くうっ……みんな、Jアークの下に隠れて!」
巨体を活かし、Jアークがバリアを上方へ展開し盾となる。
その下へと駆け込んだ凰牙とブレン――サイバスターがいない?
「余所見をするな、ユーゼス!」
「むっ!?」
- 532 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 22:16:48 ID:suwvwFCT
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- 533 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 22:17:10 ID:TPBJ7S6B
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- 534 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 22:17:22 ID:bGptgBZm
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- 535 :2nd Ignition ◆VvWRRU0SzU :2009/06/14(日) 22:17:36 ID:8wilipiU
- 光の雨の中を、それ以上のスピードでサイバスターが駆け抜けて来る。
剣を再び爪で受け、返す刀で斬りつける。だが機動性ではサイバスターが遥かに勝っていて、影を追う事すらできず空振りに終わった。
パワーと装甲に秀で広範囲の敵を殲滅する事に優れたゼストだが、この巨体が仇となって接近戦ではサイバスターのスピードについていくのが難しい。
「ユーゼス、覚悟!」
位置すら定かでないサイバスターからカミーユの声が聞こえる。決めに来る――
「――何ッ!?」
凄まじい衝突音がした。
しかしゼストに衝撃はなく、直撃を受けた訳ではない。
その原因はすぐにわかった。
「良いタイミングだ、テンカワ」
黒の鬼神。ブラックゲッターがそこにいた。
「もう少し見物していたかったのだがな。まさかこの数相手に押されているとは思わなかった」
「油断していたのは認めよう。だがサイバスターには気をつけろ。お前の機体にも引けを取らんぞ」
後詰めとして待機させておいたアキトが間に合った。
声の調子からするにユーゼスが追い詰められているとわかっていて、あえて手を出さなかったらしい。
腹立たしくはあるが、これで二対四。
Jアークの面々も体勢を立て直したようだ。並び立つゼストとブラックゲッターを攻めあぐねるように動かない。
「真ゲッター……ううん、違う! あの黒いゲッターだ!」
「アキト! 君なのか!?」
アイビスと言う少女に続いてロジャー。黒い真ゲッターのインパクトはそれほどでもなかったようだ。
まあ考えてみればこの面々は真ゲッターとの関わりは薄いから仕方ないのだが。
アキトは応えず、トマホークを一振りして機を窺っていたサイバスターへと斬りかかる。
「テンカワ……! やっぱり生きていたのか!」
「会うのは二度目だな。今度は逃がさない」
白と黒が交錯し、目にも止まらぬスピードで何度もぶつかり合っては離れていく。
ユーゼスの見る限りスピードではサイバスターが上だが、ブラックゲッターはパワーで勝っている。
その証拠にブラックゲッターの振るう斧をサイバスターは決して受けようとせず、高速を活かした一撃離脱戦法を行っていた。
とにかくこれでゼストを翻弄できる者はいなくなった。
30分。この数ならアキトの薬の持続時間以内に仕留められるだろう。改めてJアークへと向き直る。
未知のエネルギーで駆動するJアークを沈める訳にはいかない。あまり高出力の砲撃は行えないだろう。
騎士凰牙はデータウェポンを武器としている。破壊すれば元の動物の像を結ぶのかどうか。
「面倒な事だ。だが、それをやり遂げてこその私と言うものだ……!」
四肢に力を漲らせ、Jアークへ向かってゼストが飛ぶ。
迎え撃つはJアークと騎士凰牙、ネリーブレン。
ガウルン達が来る前に仕留めると、ユーゼスは操縦桿を握る手に力を込めた。
- 536 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 22:17:43 ID:suwvwFCT
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- 537 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 22:17:54 ID:TPBJ7S6B
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- 538 :2nd Ignition ◆VvWRRU0SzU :2009/06/14(日) 22:18:19 ID:8wilipiU
- □
「ああ、もう! 動け、動きなさいよこのデカブツ!」
操縦席――らしき物、の残骸を引っ叩いた蹴っ飛ばす。
しかし巨体はうんともすんとも言わず、むしろ叩いた側であるソシエの手が痛くなった。
このラーゼフォン、何が切り札だ。
要は邪魔だから捨てて行ったって事じゃないかと、頭の中でカラス野郎と男だか女だかわからない名前の少年、そして今一押しの弱い少年を鈍器で激しく殴打した。
ひとしきりいじってみて、やはり動かせそうにないとわかるとソシエはその辺で見つけた棒きれを杖にコクピットを降りる。
ロジャー達がソシエを置いて行った理由はわかる。
いくら使える機械人形――アルトアイゼン・リーゼ――があるとは言え、この足ではまともに動かせるはずがない。
あれはどうやらマサキの機体が変化した物らしいが、彼の扱いにくそうな様子からもそれは薄々わかっていた事だ。
もしかしたら、キラ辺りが仲間の棺となった機体にソシエを乗らせることを嫌がったのかもしれない。
そう、理由は、理屈はわかる。しかしだ、
「納得できる訳ないでしょう! みんな戦ってるのに私だけ指を咥えて見てるなんて!」
それで納得できないのがソシエのソシエたる由縁だ。
かつて使用人であるロランがホワイトドールでムーンレィスと戦った時も、お嬢様らしく守られることを良しとせず発掘された機械人形で前線に赴いた程の負けん気。
無謀だ何だと人に言われても、これだけは変えられないと自分でも悟っている。
さてそんなソシエがやろうとしたのはもちろん戦場に舞い戻る事。
移動したのは1エリアだけとは言え、人の足では何時間かかるのか。ましてこの足だ、徒歩で向かうのは有り得ないと言っていい。
ソシエが目をつけたラーゼフォンも、叩いても引っ掻いても動かない始末。
いよいよ手がなくなったと落胆するソシエの耳に、遠くから飛翔音が聞こえてきた。
ロジャー達が戻ってきた――と大声を上げようとしたソシエ、しかし背後から伸びた手が口元をがっしり塞いで物陰に引き寄せる。
「む……むーっ!?」
「静かにしろ。あの音はお前のお仲間じゃねえ」
なんとか目線を向ければそこにいたのは先程まで気持ち良さそうに夢の中にいた熱気バサラと言う男だった。
その顔が緊張に強張っているのを見て、ソシエも自然息を止める。
果たして数秒の後、上空を駆け抜けていったのは見た事もない大きな――大きな剣を担いだ、大きな機体だった。
そしてその後を追従するように、今度は見覚えのある機体が二つ。
ソシエも見知っているフェステニア・ミューズの機体、そしてテニアと共に逃げたという話の騎士のような機体だ。
どう見ても追って追われてという関係ではない。
何があったか知らないが、テニア達とあの大きな剣を持っている機体は手を組んだようだ。
そして向かっている先はD-3、今まさにロジャー達が戦っているであろう方向。
バサラの手を振り払い、再度ラーゼフォンへ向かうソシエ。
力無い足取りでコクピットをよじ登り、再度操縦席へアタックを開始する。
「動け、動け、動きなさいよっ! あいつら、絶対私達を殺しに来たんだわ! ただでさえこっちは数が減ったって言うのに、あいつらまで来たら……!
もし奴らがユーゼスと合流したら――その先は考えなくてもわかる。
Jアークは沈み、ロジャーやキラ、カミーユやアイビスは――。
ソシエの知らないところで、ブンドルとアムロ、甲児は散った。
今また、自分の知らない遠くで仲間達が失われる事になったら? いいや、そんな事はもう二度と許さない。
足が折れてるのが何だ、機体がない、それがどうした。
仲間達と共に戦えない、その事の方がずっと辛い。
「そうよ、這ってでも行ってやるんだから……!」
動かないラーゼフォンに見切りをつけ、言葉通り這ってでも行く覚悟でソシエは駆け出した。
そのソシエの手を黙っていたバサラが掴む。
- 539 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 22:18:51 ID:TPBJ7S6B
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- 540 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 22:19:00 ID:1W8kAORq
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- 541 :2nd Ignition ◆VvWRRU0SzU :2009/06/14(日) 22:19:43 ID:8wilipiU
- 「ちょっと、離しなさいよ!」
「なあ、お前さっきから何やってるんだ?」
「はあ? 見て分からないの? ロジャー達を助けに行くのよ!」
「そうじゃなくて。なら何でこいつで行かないのかって」
と、バサラは指でこいつ――ラーゼフォンを示す。
苛立ち紛れにソシエは叫んだ。
「動かないのよこのポンコツ! これが使えるならとっくに行ってるわよ!」
「動かない? おかしいな、俺が乗った時はまだ……」
そう言って、バサラは操縦席に腰掛け――本当に腰を下ろしただけだ。ベンチに座るみたいに――背中のギターを引っ張り出した。
ソシエが何を言う暇もなく、ギターの旋律が響く。すると、
ゴウッ、
と。今までピクリとも反応しなかったラーゼフォンの腕が持ち上がった。
呆然とするソシエを尻目に、ラーゼフォンはその体内に二人の人間を乗せたまま立ち上がる。
「動くぞ?」
「う、動かなかったのよ! 何なのよそれ、ギターで動くとか普通有り得ないわよ!」
「別にギターで動かしてる訳じゃねえよ。銀河に響く俺の熱いハートがだな」
「どうでもいいわよ! 動くならさっさとあいつらを追うわよ!」
「ああ、それなんだが……」
顔をしかめ、ギターを激しくかき鳴らすバサラ。しかしラーゼフォンはその頭の翅を使わず、二本の足でのろのろと歩き出した。
「ちょっと、何で飛ばないのよ?」
「飛べないんだよ。くそっ、どうやらコイツもそろそろ限界らしい。反応がやたら鈍い、歩いていくしかなさそうだ」
ゆっくりと流れていく景色――それでももちろん徒歩より断然速いが――に苛々とし、ソシエは唇を噛む。
これでは間に合わない。どころか、着いた頃にはこちらの仲間は全滅して敵だけの真っただ中に飛び込む事にすらなりそうだ。
「ああ、もう! どうしろってのよ!?」
「どうもこうもねぇ、俺達は俺達がやれる事をやるしかねえだろう。あまり喋んな、舌噛むぞ」
ラーゼフォンは幅の広い道に出るとやおら走り出した。しかし右上半身が丸々欠けているためバランスが取りづらいのかひどく揺れる。
平然とギターを鳴らすバサラの横で操縦席の残骸にしがみつくソシエ。
「この際乗り心地には文句言わないわ! 急いでちょうだい!」
「わかってる……いや、待て。また何か来るぞ」
どうやらバサラはソシエより数倍耳が良いようだ。ソシエには何も聞こえないのに、何かが来ると言う。
また敵か、と身構えた二人の前に現れたのは、
「……あ、あなたは!」
「何をしている……と聞くのも時間の無駄だな。急げ、もう始まっているぞ」
知っている機体、知っている男。でもこの組み合わせは初めてだった。
ガンダムF91、シャギア・フロスト。
会場にある、最後のガンダム。ここで生まれた、最新のニュータイプだった。
- 542 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 22:20:15 ID:bGptgBZm
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- 543 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 22:20:32 ID:1W8kAORq
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- 544 :2nd Ignition ◆VvWRRU0SzU :2009/06/14(日) 22:21:00 ID:8wilipiU
- □
「おうおう、派手にやってるじゃねえか。俺達も仲間に入れてくれねえか?」
その声を聞いた瞬間、操縦桿を握る手に軋み、アキトは痛いほどに歯を食い縛った。
ついにあの男も来た。いよいよ以って、戦局は混沌としてきた。
新たに戦場に現れた三機の機体に、敵は戸惑っているようだ。数でも逆転されて、攻め方を迷っているのだろう。
「遅いぞ、ガウルン。どこで道草を食っていた?」
「まあまあ、そう怒るなよ。メインディッシュには間に合っただろ」
ふざけているような声。戦いを楽しんでいるような。
あの時もそうだった。Jアークとダイ、ナデシコの三つ巴の戦いに横槍を入れて来た時も――。
胸を塗り潰す程に沸き上がった殺意に抗い、アキトは当面の敵手、サイバスターを睨み付ける。
ガウルンは後だ。まずこいつ、そしてユーゼス。ガウルンはその後、ユーゼスの機体を奪ってからだ。
「チンピラが……やはりまだ生きていたか!」
「おうネゴシエイター。このザマを見るに、またお前のネゴシエイションは失敗に終わったのかい?」
「ふん、私は礼を尽くした対応をしたつもりだ。し貴様らには度が過ぎた試みだったと後悔しているよ」
「言ってくれるねぇ。まあいい、ユーゼスさんよ。俺達はどいつをやればいいんだい?」
「君は私と共にJアーク、統夜は黒い機体、テニアは青い小型機を頼む。君をアキトと共に戦わせると、嫌な結果しか思い浮かばないのでな」
「ははっ、違えねえや。聞いたな、お前ら。散開だ、一気に喰い尽すぞ」
ガウルンの号令で三機は分散した。
統夜の乗る青い騎士、ヴァイサーガがロジャー・スミスの騎士凰牙へ。
テニアのベルゲルミルはネリーブレンに。
そしてガウルンとユーゼスがJアークへと向かっていく。
凰牙とブレンはともかく、Jアークは明らかに不利だ。
戦艦の火力は強力とは言え、相対するのがそれ以上の火力を誇るゼスト、そして艦すら斬ると言う名の刀を持つダイゼンガー。
傍目にもわかる戦況の不利に、サイバスターが反転し援護に向かおうとする。
そのがら空きの背を、
「……ゲッタービーム」
ぼそりと呟き、撃つ。
解き放たれたゲッター線の破壊エネルギー。サイバスターの背に直撃――しない。
基地の時にも見た驚くべき反応の速さでカミーユは対応した、振り向きざまにオーラを纏った剣で斬り払う。
「テンカワ……!」
「言ったはずだ、逃がさないと。気を散らす余裕があるのか?」
トマホークを振りかぶり、と見せかけて肩口からトマホークブーメランを射出。
これまた斬り払われるが、その隙にブラックゲッター自身がサイバスターへと肉薄する。
加速のたっぷりついたトマホーク。
轟、と唸りを上げて奔るその一撃を、サイバスターは今度は受け止めることなく機体ごと横にスライドして避ける。
それで確信した。
(あの機体はたしかに強力だが、ばらつきがある。あの光――あれを纏っていない時なら十分に破壊できる。そして)
そのまま距離を離すことなく追撃を仕掛ける。アキトの思ったとおりサイバスターは反撃よりも回避、間合いを空けることを優先する動きを見せた。
(あの力は無限に続くものじゃない。かなりの消耗を強いる、制限付きの力――俺の薬のように。ならば)
- 545 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 22:21:15 ID:1W8kAORq
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- 546 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 22:21:27 ID:bGptgBZm
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- 547 :2nd Ignition ◆VvWRRU0SzU :2009/06/14(日) 22:21:47 ID:8wilipiU
- 戦い始めて時間はそろそろ10分は経つ。あと動けるのは20分――とユーゼスは計算しているはず。
このままこの敵手を倒すのは得策ではない。倒せはするがアキトもかなりの消耗を強いられるからだ。
ユーゼスの機体を奪う事を考えれば、
(適当に損傷を受け、撃破したと思わせる――か。しかし、それが容易い相手でもないが)
あの光を纏った一撃を受ければ、いかにゲッターとはいえ真っ二つになってもおかしくはない。
適度な損傷というが、どうするか。このゲッターなら半身を吹き飛ばされでもしない限り大丈夫のはずだが。
「くそっ……、時間がないって言うのに!」
苛立たしげなカミーユの声を聞き、それはお互い様だと小さく漏らす。このままじりじりと長期戦になればアキトとて窮地に陥る。
いっそ他の機体に手を出すか、と考えた時、サイバスターが動いた。
剣を空に掲げ、その身体を凄まじいまでの風が取り巻く。
「だったら――俺も、ジョーカーを切らせてもらうぞ!」
ある男の口癖。そうとは知らずカミーユがその言葉を口にする。
天を衝く剣先に光が集う。小さな形に圧縮され、サイバスターへと降り立ち――
弾けた。
そう、光が弾けたとしか言いようがなかった。
なんだ、と確認する間もなく。
ブラックゲッターの状態を示すサブモニターに、一瞬前まではなかった損傷の文字が踊る。
サイバスターはまだあの位置にいる。こちらにライフルを向けている訳でもない。
一体何が、と思った瞬間、
「……ぐっ!?」
再びの衝撃が機体を揺らす。
サイバスターを正面にしていたため、今度は見えた。
何かがいる。サイバスターとブラックゲッター以外の何かが表れ、攻撃を仕掛けているのだ。
全周囲に知覚の指を伸ばす。
戦士としての勘が、次に来る攻撃を予測、対応させる。
機体を回したアキトの目に映った物、それは。
「わかるか!? これが俺の身体を通して出る力……!」
一瞬目に映ったそれは輝きを放ちサイバスターの下へ。その数、二つ。
白い流星と、黄金の彗星。
剣をブラックゲッターへ突き付ける。
それはまるで、猟師が獲物へ猟犬を差し向けるような仕草で――。
「行け、ハイ・ファミリアッ!」
カミーユの号令と共に小型機が飛び出て来た。
「遠隔攻撃デバイスか!」
その正体を瞬間に看破し、トマホークを振り回す。
所詮自動操縦、迎撃は容易い――はずだった。だが、
「何ッ!?」
- 548 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 22:21:50 ID:suwvwFCT
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- 549 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 22:22:11 ID:1W8kAORq
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- 550 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 22:22:23 ID:TPBJ7S6B
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- 551 :2nd Ignition ◆VvWRRU0SzU :2009/06/14(日) 22:22:38 ID:8wilipiU
- 白のファミリアがまるでトマホークの軌道を予測していたかのような有機的な軌道を見せ、滑らかに回避。懐に潜り込まれ、駆け抜けざまに光弾を乱射。
衝撃に息が詰まった一瞬、黄金のファミリアが迫る。ならばと拡散ゲッタービームで回避する空間自体を埋め尽くす。
ビームが放たれ、広範囲へと広がっていく――瞬間。
黄金のファミリアはそれまでの速度がまるで遊びだったと言うように急加速、瞬間移動でもしたのかというスピードでブラックゲッターの横を擦り抜けていった。
もちろん、光弾の置き土産つき。ご丁寧にゲッタービームの砲口へピンポイントに。
チャージされていたゲッター線が暴発し、ブラックゲッターの巨体が揺らぐ。
『先読みする白』、『三倍のスピードで動く黄金』。
これが奴の切り札かと、余裕もなしにサイバスターを睨むアキト。
このままでは本当に撃破されるかもしれない。それでは意味がないと、全力で挑みかかる決意をする。
「名付けてA.R、そしてC.A。これが俺が受け継いだもの、俺達を繋ぐ人の心の力だ!」
「この程度で……いい気になるな!」
「わかってるさ。あんたには、俺よりももっと借りを返したがっている人がいる」
しかしサイバスターは剣を収めた。もう勝負はついたと言わんばかりに。
舐めるな、という叫びが喉を出る前に、
「――ッ、なん……だと……ッ?」
ブラックゲッターの腹から、何かが生えてきた。
杭――そうだ、杭だ。まるであの、『アルトアイゼンのステーク』の、ような。鋭い杭が、ブラックゲッターを背後から串刺しにしている。
それが頭の中で像を結んだ瞬間、半ば予想通りに次の衝撃が来た。
その数、六回。あのリボルバーに内蔵されていた火薬と、同じ回数。
内部からの衝撃がゲッターの装甲を突き破り外部へと逃げる。腹に大穴が空いた。
「キョウスケ・ナンブッ……!」
「背中から斬ってくれた礼だ。あの人の代わりに、俺が返す」
サイバスターがライフルを構える。
見覚えがあると思ったら、あのライフルはキョウスケ・ナンブが乗っていた機体のものだ。
キョウスケの乗っていた機体。古い鉄と、鋼鉄の隼。
(最後の最後で、お前が俺を止めるのか――皮肉なものだ)
ライフルが火を噴いた。
弾丸は寸分違わずブラックゲッターの頭部――すなわちアキトのいるところへ、正確に叩き込まれた。
衝撃が駆け抜け、コクピットの至るところが砕け割れる。
もちろんアキトにもその余波は回って来た。身体のあらゆる部分が盛大に痛みを訴えてきた。
操縦桿を握っていられず、ブラックゲッターの姿勢が崩れた。
見渡す限りに血の赤が広がっている。これがあの男の見た景色――。
「これで、貸していた物は全て返してもらった。お前はここで朽ちて逝け」
言い捨てるカミーユの声が遠い。
(いや、落ちて……いるのは……俺、か)
地上へと真っ逆さまにブラックゲッターが墜落していく。
それを見届ける事なく、サイバスターは仲間の救援に向かうべくその身を鳥へと移し替えた。
暗闇に満ちていくアキトの視界に、神鳥の軌跡が色鮮やかに残り――。
- 552 :それも名無しだ:2009/06/14(日) 22:22:53 ID:1W8kAORq
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- 553 :2nd Ignition ◆VvWRRU0SzU :2009/06/14(日) 22:23:26 ID:8wilipiU
- □
戦況は極めて劣勢だ。
ただでさえユーゼス一人の機体に圧倒されていたのに、アキトの黒い真ゲッターに最大の打撃力たるカミーユを抑えられた。
加えて後方から新たに三機、テニアと統夜なる少年、そしてガウルンという最重要危険人物が迫って来た。
ロジャーは統夜に、アイビスはテニアに封じられ、キラは一人でユーゼス・ガウルンと相対せねばならない。
「トモロ! ESミサイルを指定するポイントに! あの特機を近づけさせないで!」
『警告、ユーゼス機から高エネルギー反応。砲撃が来るぞ』
「……ッ、攻撃中止! ジェネレーティングアーマーを前面に最大展開しつつ後退!」
ゼストの発射した重力波の黒い大河が、Jアークの展開したバリアと干渉し激しく放電した。
先の超圧縮された砲撃ではなかったが、それでもこの圧力は脅威だ。一撃でJアークの足が止まる。
そして、その動きの止まったJアークの艦橋目掛け天から巨大な剣が降ってくる。
「ESミサイルを発射、敵機との中間地点で自爆させる!」
キラの命令通り、上方へ向けてESミサイル、空間に穴を空けるミサイルを発射する。
目前で何故か自爆したミサイルに危機感を感じたか大剣を振るう特機は急停止、離脱していく。
本来この空間が不安定なD-3エリアでは使うべきではない武装である。綻びを加速させるため、事前の作戦会議でも使わない方向で話が決まっていた。
その取り決めを破りESミサイルを使わざるを得ない事態と言う事だ。
予想以上にまずい状況に、キラの心に弱気の影が伸びる。
(カミーユも、ロジャーさんもアイビスも必死に戦ってる……! なのに僕だけが諦める事なんて、出来る訳ないじゃないか!)
そのまま全砲門を後退していく特機へ向ける。その先にはゼストがいた。
射線が重なり、特機が回避すれば射線は当然ゼストへと通る。
特機の行動は他にもおかしいと思う事があった。
攻撃がどうにも『甘い』のだ。本来戦艦を操る事など得手ではないキラが対処できるほどに。
「なんだ……? あいつの戦い方、遊んでるのか?」
『たしかに不自然な行動を取っている。だがキラ、油断している余裕はないぞ』
トモロの声を裏付けるかのように、ユーゼスの機体が突進して来た。
立派な武装を持ちながらも中々それを活かさない突起に変わり、接近戦を挑んできたのだろう。
カミーユでなければ、接近戦であれを止める事は出来ない。
キングジェイダー――ここで切り札を切るべきか?
(いや、まだ早い……! せめてゲートを突破して、主催者の前に立ってからでなきゃ)
あの力は一度きり。しかし、ここを乗り切れなければそもそも力を温存する意味がない。
ロジャー、アイビス、カミーユ。誰もが手一杯というところで、援護に来れそうにはない。
「ジェイクォース、最大出力で発射! 足を止める!」
ここは自分達だけで乗り切るしかない。迫る巨体に震える心を押し隠す。
解き放たれた不死鳥はゼストへと迫り――
「小賢しいわッ!」
不死鳥の顎、そこへ突き入れられた獣の両腕。
炎の鳥が内側から左右へと引き裂かれ、姿を現した錨を横合いから機を窺っていた特機が飛び込んで、
「獲物はもらったぜッ!」
502 KB
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
>>203
さあ来年来年〜今年の事はもう忘れて〜♪
>>211
時間が空いたので、コタツに入って応援しますわ〜
>>212
新スレおつかれさま
ゥに大事かってことですね。
孫子で言えば兵は拙速を聞くも、巧遅なるをいまだ見ずかな・・・これは蛇足w
紀文はたぶんそういう気分だったんでしょう。
>>207おつかれさま〜♪
>>208ちょ、マウントポジションw
>>209おはようムギュ♪
>>211どうかご無事で・・・
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